【事例紹介】暴力行為等処罰法違反事件と脅迫罪 現行犯逮捕された事例

暴力行為等処罰法違反事件で現行犯逮捕された事例を基に、暴力行為等処罰法違反と脅迫罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合京都支部が解説します。

事例

京都府警宇治署は2日、暴力行為等処罰法違反の疑いで、(中略)現行犯逮捕した。
逮捕容疑は(中略)宇治市役所内の相談室で、小型ナイフを机の上に置き、「刺したら痛いんやで。あんたら痛みを知らんやろ」などと(中略)脅した疑い。
「刺すとは言っていない」と容疑を否認しているという。

(11月2日 京都新聞 「「あんたら痛み知らんやろ」ナイフ置き市職員脅す 容疑で79歳女を逮捕」より引用)

脅迫罪

簡単に説明すると、生命や身体に対して害を与えると伝えて、人を脅した(脅迫した)場合に脅迫罪が成立します。

今回の事例では、容疑者が被害者を脅した疑いで逮捕されていますが、容疑者は「刺すとは言っていない」と容疑を否認しているようです。
今回の事例のように、「刺す」と被害者に直接言ったわけではない場合にも、脅迫罪は成立するのでしょうか。
今回の報道が事実であった場合を仮定して、容疑者の行為で脅迫罪が成立するのかについて説明していきます。

一般の人が恐怖を感じるような内容を相手に伝えることを脅迫といいます。
しかし、恐怖を感じるような内容であれば何でもいいというわけではなく、伝えた人が実際に実行できるような内容でなくてはなりません。

今回の事例では、容疑者が小型ナイフを机に置き、「刺したら痛いんやで。あんたら痛みを知らんやろ」と被害者に言ったとされています。
この言葉の中身を見ると、直接的に「刺す」とは言っていないものの、小型ナイフを机に置かれて、「刺したら痛い」と伝えられれば、一般の人は机に置かれた小型ナイフで刺されるのかもしれないと恐怖を感じるでしょう。
今回の事例でも「小型ナイフで刺されるのかもしれない」といった、一般の人が恐怖を感じるような内容が被害者に伝わっていると考えられるため、容疑者は被害者に対して脅迫したと疑われているのだと考えられます。
小型ナイフで刺された場合は当然生命や身体が害されるでしょうから、今回の事例では、被害者は生命や身体に害を与えると容疑者に脅迫されたとされ、容疑者の行為は脅迫罪と疑われる行為であると考えられます。

暴力行為等処罰法と脅迫罪

しかし、報道によると、容疑者は暴力行為等処罰法違反の容疑で逮捕されています。
なぜ脅迫罪ではなく、暴力行為等処罰法違反での逮捕なのでしょうか。
暴力行為等処罰法について簡単に説明していきます。

暴力行為等処罰法第1条では、多人数や凶器を用いて暴行罪、脅迫罪、器物損壊罪の罪を犯した場合についての処罰を定めています。
小型ナイフは凶器にあたりますので、今回の事例のように小型ナイフを用いて脅迫罪に当たる行為を行った場合は、暴力行為等処罰法違反にあたります。
ですので、今回の報道が事実であった場合には、容疑者は脅迫罪ではなく暴力行為等処罰法違反の罪に問われることになります。

また、暴力行為等処罰法第1条に違反した場合の法定刑は3年以下の懲役または30万円以下の罰金脅迫罪の法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金(刑法第222条1項)になっており、暴力行為等処罰法第1条と脅迫罪では法定刑が少し異なっています。
これは、暴力行為等処罰法が、凶器を用いるなどして脅迫罪などを犯した場合を、刑法で定めるよりもより重く処罰するために定められているものであるためです。
脅迫罪などの犯罪を一定の条件・態様で行うと、暴力行為等処罰法によってより厳しく処罰されるというイメージとなります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービス、無料法律相談を行っております。
ご相談等のご予約・お問い合わせは、0120ー631ー881でいつでも承っておりますので、脅迫罪暴力行為等処罰法違反などの刑事事件でご不安な方は、ぜひ一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら