【事例紹介】万引きが強盗致傷罪に

万引き強盗致傷罪になった事件を基に、強盗罪強盗致傷罪などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警山科署は22日、強盗致傷の疑いで、京都市伏見区の男(78)を現行犯逮捕した。
逮捕容疑は22日午前9時50分ごろ、山科区のスーパーで袋入りみかん(販売価格322円)を盗んだ後、店の外で呼び止めた男性店員(44)の右人差し指と、男性店長(46)の右腕にかみつき、出血させるけがを負わせるなどした疑い。「分かりません」と容疑を否認しているという。
(後略)

(12月22日 「スーパーでみかん盗み、呼び止めた店長らの手をガブリ 容疑で78歳男逮捕」より引用)

強盗罪

刑法第236条1項
暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。

大まかに説明すると、抵抗されないように故意に暴行や脅迫を行って財物を奪った場合は、強盗罪が成立します。
また、強盗罪が成立するためには、一般的に見て抵抗が困難になる程度の暴行や脅迫が必要ですので、その程度に満たない場合は、強盗罪は成立しません。

今回の事例では、容疑者が袋入りみかんを盗み出し、店の外で店員や店長に呼び止められたと報道されています。
実際に容疑者が袋入りみかんの代金を支払わずに店を出たのであれば、窃盗罪が成立します。
ですので、報道内容が事実であれば少なくとも容疑者は窃盗罪に問われることになります。

次に今回の事例で強盗罪が適用できるのかを考えていきましょう。

報道によると、容疑者は呼び止めた店員や店長の指や腕にかみついたと報道されています。
かみつく行為は暴行にあたりますので、報道内容が事実であった場合には、容疑者は袋入りみかんを奪って逃げるために故意に店長や店員に暴行を加えたことになります。

では、今回の事例では強盗罪が成立するのでしょうか。

先ほど確認したように、強盗罪の成立には財物を奪いとる際に暴行や脅迫が必要でした。
ですが、今回の事例では、容疑者は袋入りみかんを盗んだ後に、呼び止めた店員と店長の指や腕にかみついたとされています。
報道が事実であった場合には、容疑者は袋入りみかんを盗んだ後に暴行を加えていますので、強盗罪の要件は満たさないことになってしまいます。

しかし、報道内容が事実であった場合には、強盗罪と扱われる可能性が出てくるのです。

実は、窃盗罪を犯した犯人が逮捕を免れるために逃げる際に暴行や脅迫を行ったときは、事後強盗罪が成立し、強盗罪と同じとして扱われます。(刑法第238条)
この場合であっても事後強盗罪が成立するためには、世間一般的に見て、抵抗が困難になる程度の暴行や脅迫を加える必要があります。

今回の事例では、かみつかれた店員や店長は出血したと報道されていますので、容疑者が相当強くかんだのだと思われます。
出血を伴うほど強くかまれたということであれば、抵抗することは相当程度難しいように思われますが、事後強盗罪が成立するためには、被害者一や個人ではなく世間一般の人が抵抗することが困難だと思う程度でなくてはなりません。
ですので、実際に容疑者が逮捕を免れるために暴行を加えており、世間一般の人が指や腕をかまれると抵抗が難しいと判断された場合には、事後強盗罪が成立することになります。

強盗致傷罪

刑法第240条
強盗が、人を負傷させたときは無期または6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑または無期懲役に処する。

刑法第240条の前半部分が強盗致傷罪の条文になります。
簡単に説明すると、強盗を行った際に暴行を加えてけがを負わせた場合は強盗致傷罪が適用されます。

今回の事例では、店員と店長がけがを負ったと報道されています。
先ほど説明したように今回の事例で事後強盗罪が成立する場合には、報道によると、強盗の際に容疑者の暴行によりけがを負っていることから、強盗致傷罪が成立する可能性があります。

なお、報道が事実であり、容疑者による暴行が抵抗を困難にさせる程度には満たないと判断された場合には、容疑者は窃盗罪傷害罪に問われる可能性があります。

スーパーで商品を盗んだ(万引きした)場合には、当然に窃盗罪が成立しますが、警備員や店員などに呼び止められた際に暴行を加えた場合には事後強盗罪強盗致傷罪が成立する場合があります。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役か50万円以下の罰金(刑法第235条)ですが、強盗罪事後強盗罪強盗致傷罪には後述のように罰金刑がなく、有罪になった場合には懲役刑が科されることになります。

強盗罪事後強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役であり、強盗致傷罪無期または6年以上の有期懲役です。
執行猶予は3年を超える懲役刑が言い渡された場合には付けることができませんので、強盗罪事後強盗罪強盗致傷罪で有罪になると刑務所に入らなければならなくなる可能性があります。
ですから、そもそも不起訴を獲得して刑事裁判にしないように活動をしていったり、情状酌量によって刑罰の減軽やそれによって執行猶予を獲得することを目指していったりすることが考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件を中心に扱う法律事務所です。
刑事事件に強い弁護士による検察官・裁判官への交渉や、被害者への示談交渉により、不起訴処分の獲得や刑罰の減軽を目指していくことができます。
初回接見サービス、無料法律相談を行っていますので、ご家族が逮捕された方や強盗致傷罪などでお困りの方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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