京都府宇治市で起きた刑事事件を基に、傷害罪と傷害致死罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
京都府宇治署は23日、傷害の疑いで、京都府宇治市の男(44)を逮捕した。
(10月24日 京都新聞「同じアパートの住人に傷害疑い逮捕 蹴られた男性9時間後に死亡 京都・宇治」より引用)
逮捕容疑は(中略)男性(72)の顔を足で蹴り、頬や額に打撲などのけがを負わせた疑い。
同署によると、男性は病院で容体が急変し約9時間後に死亡した。
(後略)
傷害罪
簡単に説明すると、人に暴行を加えてけがを負わせた場合、傷害罪に問われることになります。
報道によると、容疑者は被害者の顔を足で蹴り、被害者の頬や額に打撲などのけがを負わせたとされています。
人を蹴る行為は暴行にあたりますし、その暴行の結果打撲などのけがを負わせているので、報道されている行為は傷害罪に該当します。
報道では容疑者の認否が明らかにされていませんが、報道が事実であり、傷害罪で有罪になった場合は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。(刑法第204条)
傷害致死罪と殺人罪
今回の事例では、被害者が9時間後に死亡しています。
先ほど、今回の事例の行為は傷害罪に該当すると書きましたが、被害者の死因が容疑者の暴行によるものであった場合、傷害致死罪や殺人罪が適用される可能性があります(現時点では、捜査は傷害致死罪の容疑に切り替えられているようです:参考記事)。
では、傷害致死罪と殺人罪は何が違うのでしょうか。
傷害致死罪と殺人罪の違いを簡単に説明していきます。
傷害致死罪は傷害の結果、人を死なせてしまった場合に適用される犯罪です。
一方で殺人罪は殺意をもって、人を殺した場合に適用されます。
傷害致死罪と殺人罪は、どちらも加害者の行為により人が死んだ場合に適用されます。
しかし、傷害致死罪と殺人罪には明確な違いがあります。
殺人罪が適用されるためには、加害者が被害者に対して殺意をもっている必要があります。
一方で、傷害致死罪の場合は、加害者が被害者に暴行を加えけがを負わせた結果、死んでしまった場合に適用されますので、殺人罪のように殺意をもっている必要はありません。
ですので、今回の事例の容疑者が殺意をもって被害者の顔を蹴り、殺したのであれば殺人罪が、殺意がなく単に傷害の結果被害者が亡くなったのであれば傷害致死罪が適用されることになります。
(※報道では認否や死因が記載されていないため、報道内容が事実であり、被害者の死因が容疑者の暴行であった場合を仮定しています。)
傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役(刑法第205条)、殺人罪の法定刑は死刑または無期もしくは5年以上の有期懲役(刑法第199条)です。
傷害致死罪とは違って殺人罪の場合は死刑や無期懲役が科される可能性があります。
殺人罪の場合、殺意をもっていたことが重要になりますので、裁判で殺意がなかったと判断されれば傷害致死罪など、殺人罪以外の罪が適用されるでしょう。
また、殺人罪、傷害致死罪はどちらも、被害者の死因が加害者の行為によらなければなりませんので、因果関係が認められなかった際にはどちらの罪にも問われない場合があります。
こうした、容疑をかけられ得る犯罪・成立し得る犯罪が複数考えられるケースでは、そのポイントを抑えながらの対応が必要になります。
専門家である弁護士のフォローを受けながら対応することで、スムーズな対応が期待できます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件を中心に取り扱う法律事務所です。
殺人罪、傷害致死罪、傷害罪でお困りの方は刑事事件に強い、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。