児童福祉法違反と売春防止法違反③

児童福祉法違反と売春防止法違反③

~前回からの流れ~
京都府在住のAさんは、滋賀県大津市において、女性Bさん(16歳)が18歳未満と知っていながら、出会い系サイトを通じて男性Cさんに紹介し、ホテルで売春させました。
ホテルでの性行為を終えたBさんとCさんが2人で歩いていたところに、巡回中の滋賀県大津北警察署の警察官がやってきて、職務質問を行いました。
そこからBさんCさんの売春行為が発覚し、Aさんが売春の仲介をしていたことも明らかとなりました。
その結果、Aさんは滋賀県大津北警察署に、児童福祉法違反売春防止法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※平成31年4月3日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・Aさんに他の罪は成立する?

前2回の記事までは、今回のAさんの逮捕容疑である児童福祉法違反売春防止法違反について触れてきましたが、児童福祉法違反売春防止法違反以外にAさんに成立する可能性のある犯罪はあるのでしょうか。
実は今回の事例のような場合には、児童福祉法違反売春防止法違反に加え、児童買春防止法違反という犯罪が成立する可能性が出てきます。

児童買春防止法は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」という法律です。
児童買春防止法では児童買春や児童ポルノの規制やそれらの行為の処罰、被害に遭った児童の保護などを定めており、この法律では、児童買春を周旋した者についての処罰も定めています。

児童買春防止法5条
児童買春の周旋をした者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
※注:業として行った場合には七年以下の懲役及び千万円以下の罰金

前回の売春防止法の部分で見た通り、「周旋」は仲立ちをすることを指します。
児童買春防止法では、児童買春を児童本人等に「対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすること」とされています(児童買春防止法2条2項)。

Aさんは、18歳未満の児童であるBさんとCさんの売春=対価を目的としての性交等を仲介していることから、児童買春の周旋をしていると考えられます。
ですから、Aさんには児童買春の周旋をしたという児童買春防止法違反が成立する可能性が出てくるのです。

しかし、ここで注意すべき点は、この児童買春を周旋したことによる児童買春防止法違反が成立するには、周旋した人(今回の事例であればAさん)だけでなく、児童買春の相手方(今回の事例であればCさん)が、これが児童買春である=相手(今回の事例であればBさん)が18歳未満であると認識している必要があるという点です。
過去の裁判例では、「児童買春周旋罪は、児童買春をしようとする者とその相手方となる児童の双方からの依頼又は承諾に基づき、両者の間に立って児童買春が行われるように仲介する行為をすることによって成立するもの」であることから、「被周旋者において児童買春をするとの認識を有していること、ずなわち、当該児童が18歳未満の者であるとの認識を有していることを前提にしていると解される」とされています(東京高判平15.5.19)。
つまり、今回の事例の場合でいえば、CさんがBさんについて18歳未満であることを知らなかった場合には、Aさんに児童買春防止法違反が成立しない可能性が出てくる、ということになります(その場合、Aさんには児童福祉法違反売春防止法違反が成立するにとどまるということになります。)。

こうした事情から、18歳未満の者の売春を周旋したような刑事事件では、何罪が成立するのか又はしないのか、ということが非常に分かりづらく、さらに成立しうる犯罪も多いことから、その見通しや弁護活動についてもなかなか想像しづらいところがあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門弁護士刑事事件の専門知識や経験をフルに活用しながらご相談者様の対応に当たりますから、こうした複数の法律に抵触しうる刑事事件についても、安心してご相談いただけます。
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