営業秘密侵害による不正競争防止法違反③

営業秘密侵害による不正競争防止法違反③

~前回からの流れ~
滋賀県高島市にある会社V社に勤務していたAさんは、競合他社であるB社に転職しようと、V社から業務のために開示されていたV社の顧客情報やV社の売上データ、統計などの情報を私物のUSBにコピーし、それをB社の面接の際に見せ、自分を売り込みました。
それらのデータには、限られた人しかアクセスできず、情報を閲覧するにはパスワードの入力が必要とされていました。
また、データの最初には「マル秘」のマークがついているものもありました。
そしてAさんはB社に転職し、V社のデータを利用して営業活動を行っていましたが、滋賀県高島警察署の警察官から営業秘密の侵害をした不正競争防止法違反の容疑で逮捕されてしまい、Aさんの両親は急いで滋賀県を含む京都府周辺の刑事事件を扱う弁護士に相談しました。
(※この事例はフィクションです。)

・Aさんの行為

前回の記事では、不正競争防止法上の「営業秘密」がどんなものであるのかに触れましたが、今回の記事では具体的にAさんの行為と不正競争防止法を照らし合わせていきます。
もう一度、Aさんが容疑をかけられているであろう不正競争防止法の該当条文を見ながら検討してみましょう。

不正競争防止法21条

次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは2,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

3号 営業秘密を保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得した者

ロ 営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成すること。

4号 営業秘密を保有者から示された者であって、その営業秘密の管理に係る任務に背いて前号イからハまでに掲げる方法により領得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用し、又は開示した者

まず、今回のAさんがV社のデータをUSBにコピーして持ち出した目的は、B社への転職で自分の売り込みに使うためです。
一番最初の記事でも触れた通り、不正競争防止法の「不正の利益を得る目的」とは、公序良俗や信義則に反する形で不当な利益を得ることを目的とすることを指します。
V社としては、社員を信頼してデータを開示していたと考えられますから、競合他社に開示することはV社の信用を裏切るような形となっているでしょう。
そして、Aさんが情報を利用して自分を売り込むことは不当な利益を得ようとしていると考えられるため、Aさんの行為は「不正の利益を得ることを目的」と考えられるでしょう。

また、AさんがUSBにコピーしたV社の情報は、限られた人しかアクセスできず、パスワードも必要な情報でした。
そして、「マル秘」のマークもついていたことから、秘密の情報であることは明確に示されていたと考えられます。
これらのことから、当該情報が「秘密として管理されている」と言えそうです。
さらに、当該情報はV社の顧客データや売上データなど、競合他社からすれば役に立つ営業の情報ですから、「事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」とも言えるでしょう。
加えて、先ほど触れたように情報はアクセスできる人が限定されているうえ閲覧にパスワードがかかっているものですから、「公然と知られていない」情報であるでしょう。
よって、AさんがUSBにコピーしたV社の情報は不正競争防止法上の「営業秘密」であると考えられそうです。
この営業秘密をAさんはUSBにコピー=「複製を作成」しているのですが、先ほど触れたように、V社の業務のために情報を競合他社に開示したり競合他社で使用することは、V社の業務に反することですから、「その営業秘密の管理に係る任務に背」いていることであると言えるでしょう。
このことからAさんにはまず、不正競争防止法21条3号ロに該当する不正競争防止法違反が成立する可能性があることになります。

さらに、Aさんはその複製した営業秘密をB社に開示し、B社転職後に使用していることから、不正競争防止法21条4号にも該当する可能性があります。

こうした不正競争防止法違反事件では、営業秘密の侵害によって損害が出ている場合には被害弁償活動を行ったり、逮捕・勾留されている場合は身柄解放活動を行ったりする弁護活動が考えられます。
営業秘密の侵害による不正競争防止法違反事件では、示談交渉の相手が会社となることも多く、弁護士のような示談交渉のプロのサポートが必要です。
また、容疑を認めている場合だけでなく、「営業秘密」かどうかを争ったり「不正の利益を得る目的」を争ったりする否認の場合にも、専門的知識とそれを的確に主張することが求められますから、やはり弁護士の存在が必要となってくるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士不正競争防止法違反事件にお困りの方のご相談をお待ちしています。
まずはお気軽にお問い合わせください。
滋賀県高島警察署までの初回接見費用:3万9,200円)

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