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ごみの持ち去りで刑事事件③占有離脱物横領罪
ごみの持ち去りで刑事事件③占有離脱物横領罪
ごみの持ち去りから刑事事件に発展したケースで、特に占有離脱物横領罪の容疑をかけられた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府宇治市に住んでいる22歳の学生です。
ある日、Aさんは近所のごみ捨て場に自転車が捨てられているのを発見しました。
見たところ、それはまだ使えそうな自転車であったうえ、有名な自転車ブランドの物でした。
そこでAさんは、「拾って行って自分で使おう。捨てられている物なのだから問題ない」と考え、自転車を持ち帰ると使用していました。
しかし、Aさんが自転車を使っていたところ、巡回中の京都府宇治警察署の警察官に声をかけられました。
警察官曰く、Aさんの乗っていた自転車が盗難届の出ている自転車であるとのことです。
後日京都府宇治警察署で話を聞かれることとなったAさんでしたが、その前に弁護士に相談し、捨ててあった自転車を拾っただけなのに何か問題になるのか聞いてみることになりました。
(※この事例はフィクションです。)
・ごみを持ち去って占有離脱物横領罪に?
前回までの記事で、ごみの持ち去りで成立しうる犯罪について、各自治体の条例違反や窃盗罪などに触れましたが、もう1つ成立しうる犯罪があります。
それは、刑法に定めのある占有離脱物横領罪です。
刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
前回の記事で取り上げた通り、誰かがその物を事実上支配・管理している状態である「占有」のある他人の物を無断で自分の物としてしまえば、窃盗罪となってしまいます。
しかし、この世の全ての物が誰かの支配・管理下にあるわけではない、つまり、「占有」のない物があることはお分かりいただけるでしょう。
誰もその物を支配・管理していない=「占有」のない状態である他人の物=「占有離脱物」について自分の物としてしまった場合に成立するのが、この占有離脱物横領罪なのです。
以下で詳しく見ていきましょう。
まず、占有離脱物横領罪が対象としている物は、「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物」です。
「遺失物」とは、その物を占有(支配・管理)していた人の意思によらずにその物が占有していた人の支配・管理から離れてしまい、さらにまだ誰の支配・管理下にもない状態の物を指します。
「遺失物」の代表例としては、道端に落ちている落し物が挙げられます。
道端に落ちていた落とし物をいわゆる「ネコババ」したような場合には、この罪の成立が考えられます(この場合、罪名としては占有離脱物横領罪ではなく遺失物横領罪と呼ばれることが考えられます。)。
そして、「漂流物」とは、水中にある「遺失物」のことを指します。
さらに、「その他占有を離れた」とは、その物を支配・管理していた人の意思に基づかずにその人の支配・管理下から離れたということを指します。
ですから、占有離脱物横領罪の対象となる物は、簡単に言えば「支配・管理していた人のもとをその人の意思によらずに離れてしまった他人の物」ということになります。
占有離脱物横領罪は前述の対象となる物を、「不法領得の意思」に基づいて自分の支配・管理下に置く=「横領」することで成立するとされています。
「不法領得の意思」とは、大まかに説明すると、権限がないにもかかわらず自分の物でないとできないような処分をする意思のことを指します。
今回のAさんの事例を考えてみましょう。
Aさんが持ち帰った自転車は、盗難届のあった自転車でした。
盗難届を出しているということは、自転車の持ち主はまだ自転車は自分の物であると考えていると思われますから、自転車は持ち主の意思に反してその支配・管理下から離れてしまった持ち主の物=占有離脱物横領罪にいう「占有を離れた他人の物」でしょう。
Aさんはその自転車を自分の物としてしまったわけですから、占有離脱物横領罪の「横領」にあたる行為をしてしまったと考えられます。
これらのことから、Aさんは占有離脱物横領罪の容疑をかけられてしまったと考えられるのです。
なお、盗難届が出ていないごみ捨て場に捨ててあった単なるごみであっても、持ち帰れば占有離脱物横領罪が成立する可能性があることにも注意が必要です。
例えば家電や空き缶といった資源ごみ・リサイクルごみ等は、リサイクルなどの使い道があるものです。
自治体ではこういったごみを活用する事業等がある場合もあり、決められた場所に捨て、決められた業者が回収・活用することになっているところも多いです。
そうした場合には、それらのごみは決められたごみ捨て場に捨てられた時点で自治体の物=「他人の物」となることもあり、事実上の支配・管理がないからといってそれを勝手に自分の物としてしまえば、占有離脱物横領罪となる可能性が出てくるということなのです。
今まで見てきたように、ごみの持ち去りであっても刑事事件となってしまう可能性はあります。
軽く考えてしてしまった行動が思わぬ刑事事件のきっかけとなってしまうこともありますから、そうなった場合には遠慮なく専門家である弁護士のサポートを求めましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士によるサービスを土日祝日問わず受け付けていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
ごみの持ち去りで刑事事件②窃盗罪
ごみの持ち去りで刑事事件②窃盗罪
ごみの持ち去りから刑事事件に発展したケースで、特に窃盗罪の容疑をかけられた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市伏見区に住んでいるAさんは、ある日、近所のごみ捨て場に自転車が停められているのを発見しました。
Aさんが見てみたところ、その自転車はまだ使えそうであったため、Aさんはその自転車を持ち帰って使用していました。
するとある日、Aさんが自転車を使用して買い物に出ていた際、巡回していた京都府伏見警察署の警察官から職務質問を受けました。
そこで調べてみると、その自転車は盗難届が出されているものであったことが判明しました。
Aさんはごみ捨て場にあったから持ってきただけだと話しましたが、窃盗罪の容疑で京都府伏見警察署で話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・ごみを持ち帰って窃盗罪?
ごみ捨て場に捨ててある物はごみとして捨てられたものであるから持ち帰っても問題ないだろうと考えている方もいるかもしれません。
まだ使えそうなものがごみ捨て場にあった場合、Aさんのように「もったいない」と考えてしまうかもしれません。
ですが、だからといってごみを持ち帰ってしまえば、刑事事件に発展してしまう可能性があるのです。
前回の記事で取り上げたように、地方自治体によっては条例によってごみの持ち去りを禁止しており、禁止命令に反した場合の刑罰まで定めているところもあります。
しかし、今回のAさんの事例で登場する京都市ではごみに関する条例に罰則は定められていません。
それでも刑事事件になってしまう可能性はあるのでしょうか。
まずは、今回のAさんが容疑をかけられている窃盗罪について検討してみましょう。
刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪のいう「他人の財物」とは、他人が「占有」している他人の財物のことを指すとされています。
「占有」とは、人がその財物を事実上支配・管理している状態のことを指します。
さらに、「占有」があるのかどうかは、人がその物を事実上支配している状態であるかどうかという客観的な要素と、人がその物に対して事実上支配する意欲や意思があるかどうかという主観的な要素を総合的に考慮して判断されます。
つまり、窃盗罪の客体となる物は、他人が事実上支配・管理している他人の物、ということになります。
そして、窃盗罪にいう「窃取」とは、先ほど触れた「占有」をしている人の意思に反して、その占有している人の財物に対する「占有」を排除し、財物を自分や第三者の「占有」下に置くことを指します。
すなわち、すでにその物を支配・管理している人の意思に反してその物を自分や他の人の支配・管理下にしてしまうことが窃盗罪の「窃取」なのです。
窃盗罪の典型例として挙げられる万引きで考えてみれば分かりやすいでしょう。
お店の商品はもちろん、お店の支配・管理下にあるといえます。
お店の中に陳列されていることからも、お店が事実上支配・管理していると考えられますし、お店側も商品はお店が支配・管理しているものであると認識しているはずですから、商品にはお店の「占有」があるといえるでしょう。
ここから、商品は窃盗罪のいう「他人の財物」であると考えられます。
しかし、万引きの場合はその商品を会計せずに持ち去って自分の物としてしまいます。
これは商品を「占有」しているお店の意思に反することであり、商品を自分の「占有」下に移していることですから、窃盗罪のいう「窃取」にあたると考えられ、窃盗罪が成立するということになるのです。
では、今回のAさんの事例を考えてみましょう。
そもそも、Aさんはごみ捨て場にあった自転車だからと自転車を持ち去っていますが、その自転車が本当に捨ててあったものなのかどうかということが問題となります。
事例では詳しく書かれていませんが、もしもたまたま自転車の持ち主がごみ捨て場近くに用事があり自転車を停めていただけであれば、自転車の「占有」は持ち主のもののままと考えることもできます。
そうなれば、その場から自転車を持ち去ってしまったAさんには窃盗罪が成立する可能性も出てくることになります。
なお、もしも捨ててあった自転車であったとしても、ごみ捨て場がその自治体等の管理する場所であり、そこに捨てられていたものが自治体等の支配・管理下にあると判断された場合には、持ち去ったものによっては窃盗罪となる可能性もあります。
ごみということは財産的価値がなく、窃盗罪のいう「財物」といえないのではないかとも考えられますが、窃盗罪の「財物」の財産的価値については判断が分かれています。
過去の事例ではメモ1枚やちり紙13枚といったものについて、財産的価値がわずかであるとして窃盗罪の「財物」とはいえないとした事例も見られますが、例えばAさんの持ち帰ったような自転車などは、まだそれ自体として使用できたり、リサイクルする物としての価値があったりと判断されれば、財産的価値がある=窃盗罪の「財物」にあたる、と判断される可能性もあります。
このように、ごみの持ち去りだと思っていても、窃盗罪となる可能性はあります。
では、自転車が捨てられていた場合で誰の占有にもなかった場合には、持って帰ってしまっても犯罪は成立せず、刑事事件化することはないのでしょうか。
こちらは次回の記事で取り上げていきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、ごみの持ち去りから窃盗事件に発展してしまったというご相談もお受けしています。
お困りの際は遠慮なく、弊所弁護士までご相談ください。
ごみの持ち去りで刑事事件①条例違反
ごみの持ち去りで刑事事件①条例違反
ごみの持ち去りから刑事事件に発展したケースで、特に条例違反の容疑をかけられた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府城陽市に住んでいるAさんは、近所のごみステーションにまだ使えそうなものが捨ててあった場合、もったいないから自分で再利用してしまおうと持ち帰っていました。
ある日、近所の住民がAさんのごみの持ち去りについて京都府城陽警察署に相談し、最終的にAさんは京都府城陽市で制定されている条例に基づき、市長からごみの持ち去りに対する禁止命令を出されました。
しかし、Aさんは禁止命令を出された後も、捨てられていた自転車等のごみをごみステーションから持ち去っていました。
近所の住民から京都府城陽警察署に苦情が寄せられ、Aさんは京都府城陽市の条例に違反した容疑で取調べを受けることとなってしまいました。
(※令和2年1月23日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・ごみの持ち去りで条例違反に?
刑事事件で条例違反と聞くと、痴漢や盗撮等に適用されることの多い、各都道府県ごとに定められている迷惑防止条例違反が思い浮かべられやすいかもしれません。
しかし、条例は地方公共団体が定めることのできるものであるため、都道府県単位だけではなく各市町村単位でも定めることができ、その中には迷惑防止条例のように刑事罰を定めているものも存在します。
今回のAさんが容疑をかけられているのは、京都府城陽市が制定している「城陽市一般廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例」という条例に違反した罪でしょう。
この条例は、京都府城陽市が制定しているものですから、その効力の及ぶ範囲は京都府城陽市内に限定されます。
具体的にこの条例を見てみましょう。
まず、Aさんはごみの持ち去りについて市長から禁止命令を出されているようです。
この禁止命令について、条例では以下のように定められています。
城陽市一般廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例13条
1項 市(市から収集又は運搬の委託を受けた者を含む。次条及び第15条において同じ。)以外の者は、ごみステーション又は回収拠点に排出された家庭系一般廃棄物のうち、空き缶、空き瓶その他の再生利用が可能な家庭系一般廃棄物として規則で定めるものを収集し、又は運搬してはならない。
ただし、第7条第3項の規定により市民が清潔の保持のために一般廃棄物を収集し、又は運搬する場合及び地域団体が行う再生利用が可能な家庭系一般廃棄物(空き缶に限る。)の回収に際し、地域団体と契約をした者が当該空き缶を収集し、又は運搬する場合は、この限りでない。
2項 市長は、前項の規定に違反する行為をした者に対し、当該行為を行わないよう命ずることができる。
ここで、条文に出てくる「家庭系一般廃棄物」とは、同条例内で以下のように定義されています。
城陽市一般廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例2条
この条例で使用する用語の意義は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「法」という。)及び循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号)で使用する用語の例によるもののほか、次に定めるところによる。
1号 家庭系一般廃棄物 家庭の日常生活に伴って生じた一般廃棄物をいう。
「一般廃棄物」とは、廃棄物処理法2条2項によると、「産業廃棄物以外の廃棄物」とされています。
つまり、事業活動で生じた廃棄物や輸入された廃棄物以外で、日常生活で生じた廃棄物はこの条例の「家庭系一般廃棄物」となるのです。
京都府城陽市の条例によると、この「家庭系一般廃棄物」のうち、「再生利用が可能な家庭系一般廃棄物として規則で定めるもの」の収集・運搬が原則として禁止されており(条例13条1項)、市町はその行為をした者に対して禁止命令が出せる(条例13条2項)ということになっています。
「再生利用が可能な家庭系一般廃棄物として規則で定めるもの」については、「城陽市一般廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例施行規則」という規則に詳細が定められています。
城陽市一般廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例施行規則5条
条例第13条第1項の再生利用が可能な家庭系一般廃棄物として規則で定める物は、空き缶、空き瓶、ペットボトル、紙パック、プラスチック製容器包装、使用済小型家電、廃食用油、廃蛍光管若しくは廃乾電池又は金属を含む物とする。
すなわち、条例ではこれらに当てはまるものの持ち去り等が禁止されており、Aさんはその対象となるごみの持ち去りをしてしまったために、禁止命令を受けていたということなのです。
Aさんは、禁止命令を受けた後さらにごみの持ち去りをしてしまい、刑事事件の被疑者として取調べを受ける事態にまで発展していますが、実は京都府城陽市の条例では、この禁止命令に違反してさらにごみの持ち去り等をした場合の刑罰が定められています。
城陽市一般廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例32条
第13条第2項の規定による命令に違反して収集し、又は運搬した者は、20万円以下の罰金に処する。
こうしたごみの持ち去り等に関して条例で刑罰まで定めている自治体は珍しく、京都府内では今回の京都府城陽市のほか、京都府木津川市が該当します。
ですから、京都府城陽市・京都府木津川市で同様の行為をしてしまった場合には、条例違反として刑事事件化する可能性があるのです。
では、これらの自治体以外でごみの持ち去り等をしてしまった場合には刑事事件とはならないのでしょうか。
次回の記事で取り上げます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、京都府内の条例違反についてのご相談もお受けしています。
条例は各自治体ごとに定められているものであるため、なかなか分かりづらかったり特殊であったりすることも多いです。
刑事事件専門だからこそ、そういった特殊なケースでも安心してご相談いただけます。
まずはお気軽にお問い合わせください。
免停中の無免許運転で逮捕
免停中の無免許運転で逮捕
免停中の無免許運転で逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都市山科区にある会社に勤務する会社員です。
Aさんは通勤に自動車を使用しており、毎日運転していましたが、運転態度が悪く、度々京都府山科警察署の検問やパトロールで通行禁止違反や一時不停止等の交通違反を指摘され、反則金を支払う等していました。
ある日、Aさんはパトロールをしていた京都府山科警察署の警察官から信号無視を見とがめられ、ついに90日間の免許停止処分を受けることになりました。
しかし、Aさんは通勤に車を使っていたため、「運転できなくなるのは困る。免停と言っても運転したのがばれなければ問題ないだろう」などと考え、免停となった後も運転を続けていました。
そうして免停期間も運転をしていたAさんでしたが、職場からの帰宅途中、交通検問をしていた京都府山科警察署の警察官により免停期間中の運転であることが分かり、無免許運転の容疑で逮捕されることとなってしまいました。
(※令和2年1月31日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・免停中は無免許運転に
無免許運転という言葉からは運転免許自体を持っていない人が自動車の運転をするというイメージがわきやすいですが、今回のAさんのように、たとえ運転免許を取得していたとしても、その免許が免停となっている最中に運転してしまえば、それも無免許運転ということになります。
免停期間中は道路交通法の以下の条文にもある通り、免許の効力が停止されているわけですから、その期間内については運転免許を持っていない無免許の状態と同じということになるのです。
道路交通法103条1項(免許の取り消し、停止等)
免許(仮免許を除く。以下第106条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。
ただし、第5号に該当する者が前条の規定の適用を受ける者であるときは、当該処分は、その者が同条に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後でなければ、することができない。
(略)
5号 自動車等の運転に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反したとき(次項第1号から第4号までのいずれかに該当する場合を除く。)。
今回のAさんのように、交通違反をしてしまって免停となった場合には、この道路交通法103条1項5号等に該当するとして免停となっていることが考えられるでしょう。
この免停という処分は、あくまで運転免許に関する行政上の処分であり、刑事罰というわけではないため、免停になったからといって前科がつくわけではありません。
交通違反による道路交通法違反では、交通違反の種類にはよるものの反則金制度という制度があり、反則金を支払うことで刑事手続に移行せずに交通違反を処理する制度があるため、反則金を支払って免停となった、というだけでは刑事事件となって前科が付くということに必ずしも結びつかないのです。
・無免許運転で逮捕?
しかし、今回のAさんは無免許運転をしたとして逮捕されてしまっています。
実は、無免許運転は前述の反則金制度の対象外となる交通違反で、無免許運転をして検挙されるということは、免停や免許取り消しといった行政上の処分だけでなく、刑事罰を受けるかどうかという刑事事件としての手続きと処分を受けなければならないということになります。
道路交通法117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1号 法令の規定による運転の免許を受けている者(第107条の2の規定により国際運転免許証等で自動車等を運転することができることとされている者を含む。)でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は国際運転免許証等を所持しないで(第88条第1項第2号から第4号までのいずれかに該当している場合又は本邦に上陸をした日から起算して滞在期間が1年を超えている場合を含む。)運転した者
この条文にも、無免許運転について「法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。」と書いてあることからも、今回のAさんの免停中の運転が無免許運転として処罰されることがわかります。
たかが無免許運転、ばれなければ大丈夫と考える人もいるかもしれませんが、無免許運転の刑事罰はこれほど重いものとなっていることもあり、態様によってはその場で逮捕されてしまう可能性もありますから、無免許運転とならないよう注意が必要です。
それでも無免許運転をしてしまって逮捕されてしまった、刑事事件の被疑者となってしまったという場合には、今後の対応について弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の弁護士は、こうした交通違反に関連する刑事事件のご相談も承っています。
まずはお気軽に、0120-631-881までお問い合わせください。
ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕②偽計業務妨害罪
ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕②偽計業務妨害罪
ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕されたケースで、特に偽計業務妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、旅行をするとき、Xというサイトを利用し、利用するホテルの予約をしていました。
というのも、Xを利用してホテルの予約をしてホテルの利用をすれば、ホテルの利用料金の一部がAさんがよく使っているYというカードのポイントで還元されるサービスがあったからでした。
ある日Aさんは、このサービスは、ホテルの予約をキャンセルしても、ホテル側が手続きをしなければ予約者へのポイント付与はそのまま行われるシステムであることに気が付きました。
そこでAさんは、京都市右京区にあるVという高級なホテルに偽名と偽の連絡先で予約を入れては予約日当日に無断でキャンセルすることを繰り返し、Yカードのポイントをもらっていました。
するとある日、京都府右京警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんは私電磁的記録不正作出・同供用罪と偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和2年1月22日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・偽計業務妨害罪
前回の記事では、Aさんに私電磁的記録不正作出罪・同供用罪が成立する可能性があることに触れましたが、今回の記事ではAさんのもう1つの逮捕容疑である偽計業務妨害罪という犯罪について触れていきます。
刑法233条(偽計業務妨害罪)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
偽計業務妨害罪は刑法233条の「偽計を用いて」「その業務を妨害した者」に該当した場合に成立する犯罪です。
まず、偽計業務妨害罪の客体となる「業務」とは、自然人または法人、その他の団体が社会生活上の地位において、あるいはこれと関連しておこなう職業その他の継続して従事することを必要とする事務を指すとされています。
この事務は、経済的に収入を得る目的の事務でなくともよいと解されており、つまり、いわゆる「仕事」でなくとも偽計業務妨害罪の「業務」に当たり得るということになっています。
例えば、今回のAさんの事例のようなサイトやホテルの営業・運営は、サイト運営会社やホテルを経営する会社がその社会的地位に基づいて行う職業であり、継続して従事することを必要としている仕事ですから、問題なく偽計業務妨害罪の「業務」にあたるといえるでしょう。
ただし、偽計業務妨害罪の「業務」には娯楽目的のものは含まれないため、注意が必要です。
そして、偽計業務妨害罪の成立にはその「業務」を「偽計を用いて」「妨害」することが必要です。
「妨害」に用いられる「偽計」とは、人を欺罔・誘惑し、または他人の無知・錯誤を利用することを言うとされています。
すなわち、人を騙したり誘惑したり、人が知らないことや勘違いしていることにつけこんだりして「業務」を「妨害」すれば、偽計業務妨害罪が成立するということです。
今回のAさんの事例で考えてみましょう。
Aさんは、無断キャンセルを前提として偽の予約情報を登録しています。
Aさんはサイトやホテルをその偽の予約情報で騙す形になりますから、偽計業務妨害罪のいう「偽計を用いて」いることになるといえるでしょう。
最後に、「妨害した」という言葉の意味についてですが、これは文字通り、実際に業務を妨げたということ以外にも、業務を妨げる危険を生じさせたということも含んでいるとされています。
ですから、実際に「業務」が妨害された事実がなくとも、妨害の危険が生じていれば偽計業務妨害罪の「妨害した」に当てはまると判断されるのです。
今回のAさんは、無断キャンセル前提の偽の予約情報をサイトXを通じて登録しています。
当然、予約が入ればサイトもホテルもその予約への対応のために人員や時間、費用を割き、業務を行います。
しかし、その予約が無断キャンセル前提の偽の予約であれば、偽の予約への対応に割かれた人員や時間、費用は無駄なものであり、通常他の業務に回せたはずのものですから、業務に支障が出ていると考えられます。
無断キャンセルがあれば、ホテルはその対応もしなければならず、余計な業務を増やしたことで通常の業務を妨げているとも言えるでしょう。
以上のことから、今回のAさんの行為は偽計業務妨害罪にも当てはまると考えられるのです。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こういった無断キャンセルに関連した偽計業務妨害事件のご相談も受け付けています。
京都府の刑事事件にお困りの際は弊所弁護士までご相談ください。
ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕①私電磁的記録不正作出・同供用罪
ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕①私電磁的記録不正作出・同供用罪
ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕されたケースで、特に電磁的記録不正作出・同供用罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、旅行をするとき、Xというサイトを利用し、利用するホテルの予約をしていました。
というのも、Xを利用してホテルの予約をしてホテルの利用をすれば、ホテルの利用料金の一部がAさんがよく使っているYというカードのポイントで還元されるサービスがあったからでした。
ある日Aさんは、このサービスは、ホテルの予約をキャンセルしても、ホテル側が手続きをしなければ予約者へのポイント付与はそのまま行われるシステムであることに気が付きました。
そこでAさんは、京都市右京区にあるVという高級なホテルに偽名と偽の連絡先で予約を入れては予約日当日に無断でキャンセルすることを繰り返し、Yカードのポイントをもらっていました。
するとある日、京都府右京警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんは私電磁的記録不正作出・同供用罪と偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和2年1月22日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・私電磁的記録不正作出・同供用罪
私電磁的記録不正作出・同供用罪という犯罪はなかなか聞きなじみのない犯罪かもしれません。
私電磁的記録不正作出・同供用罪は刑法に定められている犯罪です。
刑法161条の2
1項 人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2項 前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
3項 不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。
この刑法161条の2のうち、それぞれ1項が私電磁的記録不正作出罪、2項が公電磁的記録不正作出罪、3項が不正作出電磁的記録供用罪という犯罪となります。
今回のAさんは、刑法161条の2の1項と3項の疑いをかけられていることから、逮捕容疑が私電磁的記録不正作出・同供用罪というまとめ方であったのでしょう。
さて、この私電磁的記録不正作出・同供用罪ですが、どういった場合に成立する犯罪で、Aさんの事例ではなぜこの犯罪の容疑がAさんにかかることになったのでしょうか。
まずは私電磁的記録不正作出罪について見ていきましょう。
私電磁的記録不正作出罪が成立する条件は、その条文から、
①「人の事務処理を誤らせる目的で」
②「その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を」
③「不正に作った」
というものです。
これらに当てはまった場合、私電磁的記録不正作出罪の成立が考えられることになります。
①の「人の事務処理を誤らせる目的で」とは、他人が行うはずの正しい事務処理を誤らせ、本来正しくあるべき内容とは異なるものとすることを目的として、という意味です。
事務処理とは、財産上身分上その他人の生活に影響を及ぼし得る全ての仕事を指すとされています。
今回のAさんについて当てはめてみましょう。
サイトX・ホテルVでは、サイトを通じて予約・利用したホテルの料金の一部をポイント還元していますが、Aさんは利用してもいないホテルの利用料金のポイント還元を受けようと偽の予約情報を登録していることになります。
すなわち、Aさんはサイト・ホテル側に、本来とは異なった、誤った予約情報を基にポイント還元等の事務処理をさせることを目的として今回の行為をしているわけですから、私電磁的記録不正作出罪の「人の事務処理を誤らせる目的で」に該当すると考えられるのです。
次に、私電磁的記録不正作出罪のいう②「その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を」とは、財産上身分上その他人の生活に影響を及ぼし得る全ての仕事に使う権利・義務・事実証明に関係するデータのことを、ということを指します。
今回のAさんの事例では、Aさんはサイトやホテルがポイント還元等に利用する予約情報というデータを作っているわけですから、これにも当てはまりそうです。
最後に、私電磁的記録不正作出罪の条文にある「不正に作った」という言葉ですが、これは事務処理を行おうとする者の意思に反して、権限がないのに、もしくは権限を濫用して、電磁的記録を作ることを指すとされています。
今回のAさんの事例で考えてみましょう。
Aさんは偽の予約情報というデータを作っているのですが、当然サイトやホテルは偽の予約情報登録されることは望んでいないと考えられますので、事務処理を行おうとする者の意思に反していると考えられます。
そして、Aさんには偽の予約情報を登録する権限があるわけではないため、Aさんには私電磁的記録不正作出罪の「不正に作った」という部分も該当することが考えられるのです。
これらのことから、Aさんには私電磁的記録不正作出罪が成立する可能性があると考えられます。
さらに、刑法161条の2の3項にある不正作出電磁記録供用罪は、先述した「人の事務処理を誤らせる目的で」その不正作出した電磁的記録を事務処理に使用されるコンピュータ等で処理しうる状況に置くことで成立しますが、Aさんは予約情報を登録=事務処理に使用されるコンピュータ等で処理しうる状況に置いているといえるため、不正作出電磁記録供用罪の成立も考えられるということになるのです。
私電磁的記録不正作出・同供用罪など、刑法の中でも聞きなじみのない犯罪は多く存在します。
そういった犯罪にかかわる刑事事件にお困りの際は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご相談ください。
弊所では、弁護士による初回無料法律相談・初回接見サービスのご予約を24時間いつでも受け付けております。
エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件④
エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件④
エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府八幡市で個人経営のエステ店を経営しています。
ある日、Aさんは、自身のエステに来店した客Vさんに対し、10万円で半年間エステに20回通える長期コースを勧めました。
その際、AさんはVさんに対し、あえてクーリングオフの説明をせず、案内をしていました。
その後、VさんはAさんに勧められたエステの長期コースを契約し、帰宅しました。
しかし、帰宅したVさんが家族にエステのことを話したところ、クーリングオフの話題となりました。
Vさんがクーリングオフの話をされていないことを話すと、Vさんの家族がおかしいと気づき、京都府八幡警察署に相談。
その結果、Aさんは特商法違反の容疑で京都府八幡警察署に話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・クーリングオフ可能なことをあえて知らせないと…
前回の記事で取り上げた通り、Aさんの事例のようなエステの長期コースは、特商法でクーリングオフを使うことができると決められています。
しかし今回のAさんは、先述のようにクーリングオフが利用できるはずのエステの長期コースの勧誘・契約の際に、Vさんにクーリングオフについてあえて知らせずに案内しています。
このことに何か問題はないのでしょうか。
実は今回のAさんが捜査を受けているのは、このクーリングオフをあえてVさんに教えずに案内をしていることが原因であると考えられます。
特商法では、今回のAさんのエステの長期コースのような「特定継続的役務提供契約」に際して、以下のような禁止行為を定めています。
特商法44条
1項 役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供等契約の締結について勧誘をするに際し、又は特定継続的役務提供等契約の解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。
1号 役務又は役務の提供を受ける権利の種類及びこれらの内容又は効果(権利の場合にあつては、当該権利に係る役務の効果)その他これらに類するものとして主務省令で定める事項
2号 役務の提供又は権利の行使による役務の提供に際し当該役務の提供を受ける者又は当該権利の購入者が購入する必要のある商品がある場合には、その商品の種類及びその性能又は品質その他これらに類するものとして主務省令で定める事項
3号 役務の対価又は権利の販売価格その他の役務の提供を受ける者又は役務の提供を受ける権利の購入者が支払わなければならない金銭の額
4号 前号に掲げる金銭の支払の時期及び方法
5号 役務の提供期間又は権利の行使により受けることができる役務の提供期間
6号 当該特定継続的役務提供等契約の解除に関する事項(第48条第1項から第7項まで及び第49条第1項から第6項までの規定に関する事項を含む。)
7号 顧客が当該特定継続的役務提供等契約の締結を必要とする事情に関する事項
8号 前各号に掲げるもののほか、当該特定継続的役務提供等契約に関する事項であつて、顧客又は特定継続的役務の提供を受ける者若しくは特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの
2項 役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供等契約の締結について勧誘をするに際し、前項第1号から第6号までに掲げる事項につき、故意に事実を告げない行為をしてはならない。
3項 役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供等契約を締結させ、又は特定継続的役務提供等契約の解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。
この特商法44条2項では、「前項第1号から第6号までに掲げる事項」について故意に事実を告げない行為を禁止しています。
この「前項第1号から第6号までに掲げる事項」には、特商法44条1項6号「当該特定継続的役務提供等契約の解除に関する事項(第48条第1項から第7項まで及び第49条第1項から第6項までの規定に関する事項を含む。)」という事項も含まれています。
この中には、前回までの記事で取り上げてきた「特定継続的役務提供等契約」のクーリングオフに関する事項(特商法48条1項以降)が入っているのです。
つまり、特商法では、今回のAさんのエステの長期コースが該当したような「特定継続的役務提供等契約」について、クーリングオフについて故意に伝えないことは違反になるのです。
なお、特商法では「特定継続的役務提供等契約」締結時にその契約のクーリングオフについて明らかにした書面を交付しなければならないことになっています(特商法42条2項5号)。
故意にクーリングオフについて告げない行為をして特商法違反となった場合には、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」するという刑罰を受けることになります(特商法70条1項)。
このように、クーリングオフに関する規定は法律の様々な部分に定められており、クーリングオフに関する刑事事件を理解するだけでも苦労することでしょう。
もしも自分やご家族がこういった刑事事件に関与してしまったら、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご相談ください。
ご相談者様の状況に合わせて、専門スタッフが丁寧に弊所弁護士によるサービスをご案内いたします(0120-631-881)。
エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件③
エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件③
エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府八幡市で個人経営のエステ店を経営しています。
ある日、Aさんは、自身のエステに来店した客Vさんに対し、10万円で半年間エステに20回通える長期コースを勧めました。
その際、AさんはVさんに対し、あえてクーリングオフの説明をせず、案内をしていました。
その後、VさんはAさんに勧められたエステの長期コースを契約し、帰宅しました。
しかし、帰宅したVさんが家族にエステのことを話したところ、クーリングオフの話題となりました。
Vさんがクーリングオフの話をされていないことを話すと、Vさんの家族がおかしいと気づき、京都府八幡警察署に相談。
その結果、Aさんは特商法違反の容疑で京都府八幡警察署に話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・エステの長期コースとクーリングオフ
前回までの記事では、Aさんのエステの長期コースは特商法の対象となる「特定継続的役務提供に係る商取引」に当てはまることがわかりました。
では、この「特定継続的役務提供に係る商取引」のクーリングオフについて、特商法ではどのように定めているのでしょうか。
クーリングオフ自体を定めている特商法の条文は、以下のものです。
特商法48条1項
役務提供事業者又は販売業者が特定継続的役務提供等契約を締結した場合におけるその特定継続的役務提供受領者等は、第42条第2項又は第3項の書面を受領した日から起算して8日を経過したとき(特定継続的役務提供受領者等が、役務提供事業者若しくは販売業者が第44条第1項の規定に違反してこの項の規定による特定継続的役務提供等契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は役務提供事業者若しくは販売業者が同条第3項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによつて当該期間を経過するまでにこの項の規定による特定継続的役務提供等契約の解除を行わなかつた場合には、当該特定継続的役務提供受領者等が、当該役務提供事業者又は当該販売業者が主務省令で定めるところによりこの項の規定による当該特定継続的役務提供等契約の解除を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して8日を経過したとき)を除き、書面によりその特定継続的役務提供等契約の解除を行うことができる。
(以下略)
この特商法48条1項は、今回のAさんのエステの長期コースの事例のような「特定継続的役務提供に係る商取引」にあたる特定商取引でクーリングオフが可能であることを定めています。
特商法48条2項から8項は、クーリングオフのさらに細かい決まりが定められています。
この特商法にあるクーリングオフの決まりを簡単にまとめると、エステの長期コースのような特商法上の「特定継続的役務提供に係る商取引」である契約については、特商法で定められている契約内容を明らかにする書面を受け取った時から8日間以内(事業者側がクーリングオフに関して不実告知をした場合等についてはクーリングオフにについて記載した書面を受け取ってから8日間以内)であれば、クーリングオフが可能ということになります。
つまり、Aさんのエステの長期コースの事例のように、クーリングオフについてあえてVさんに知らせなかったような場合には、たとえ契約から8日間が経っていたとしても、クーリングオフは可能となるのです。
クーリングオフというと何か物を買った時に利用する制度というイメージのある方もいるかもしれませんが、このように、エステの長期コースのようなサービスを受ける契約についてもクーリングオフが使えるケースがあるのです。
なお、クーリングオフの適用される契約等については、特商法だけでなく様々な法律に規定があります。
あらかじめどういった契約や販売方法にクーリングオフが適用できるのか調べておくとよいでしょう。
こうしたクーリングオフに関わる刑事事件についても、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では刑事事件専門の弁護士にご相談いただけます。
見ていただいて分かるように、クーリングオフについての規定は長く・細かく・難しいことも多いです。
そもそもその契約・販売方法等が該当するクーリングオフがどの法律によって定められているのか、それがどういった法律なのかがわからないという方もいるかもしれません。
自分や家族がクーリングオフに関わる刑事事件の被疑者となってしまったら、法律の専門家である弁護士に解説してもらうことをおすすめいたします。
エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件②
エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件②
エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府八幡市で個人経営のエステ店を経営しています。
ある日、Aさんは、自身のエステに来店した客Vさんに対し、10万円で半年間エステに20回通える長期コースを勧めました。
その際、AさんはVさんに対し、あえてクーリングオフの説明をせず、案内をしていました。
その後、VさんはAさんに勧められたエステの長期コースを契約し、帰宅しました。
しかし、帰宅したVさんが家族にエステのことを話したところ、クーリングオフの話題となりました。
Vさんがクーリングオフの話をされていないことを話すと、Vさんの家族がおかしいと気づき、京都府八幡警察署に相談。
その結果、Aさんは特商法違反の容疑で京都府八幡警察署に話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・エステの長期コースは特商法の対象?
前回の記事では、特商法の対象となる「特定商取引」の1つ「特定継続的役務提供に係る商取引」は、サービスの提供をしている事業者が「政令」で決められた基準より長い期間にわたって「特定継続的役務」にあたるサービスを提供する内容であり消費者がその内容に応じて「政令」で決められた基準よりも多い料金を支払う契約(1項)や、サービスの販売業者が「政令」で決められた基準より長い期間にわたって「特定継続的役務」にあたるサービスを受けられる内容のものを消費者に「政令」で決められた基準よりも多い料金によって販売する契約(2項)であるということを取り上げました。
では、その「特定継続的役務」にあたるサービスはどういったサービスなのかというと、前回取り上げた特商法の条文の次の項に規定があります。
特商法41条2項
この章並びに第58条の22第1項第1号及び第67条第1項において「特定継続的役務」とは、国民の日常生活に係る取引において有償で継続的に提供される役務であつて、次の各号のいずれにも該当するものとして、政令で定めるものをいう。
1号 役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもつて誘引が行われるもの
2号 役務の性質上、前号に規定する目的が実現するかどうかが確実でないもの
「各号のいずれにも該当するもの」とされていることから、この特商法の条文の1号にも2号にも該当するとして「政令」で定められているものが特商法のいう「特定継続的役務」というサービスになるのです。
今回の事例のようなエステの長期コースはこの「特定継続的役務」に当てはまるサービスなのでしょうか。
ここで、今まで見てきた特商法の条文の中に出てくる「政令」とは、特商法施行令のことを指しています。
その特商法施行令を確認してみると、「特定継続的役務」とされるサービスの中には、「1 人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと(2の項に掲げるものを除く。)。」や「2 人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、体重を減じ、又は歯牙を漂白するための医学的処置、手術及びその他の治療を行うこと(美容を目的とするものであつて、主務省令で定める方法によるものに限る。)。」が含まれています(特商法施行令12条、別表第4)。
これらは、まさにエステのサービスの内容と言えるでしょう。
エステのサービスは、先ほど確認した特商法41条2項の「役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもつて誘引が行われるもの」でもあり、「役務の性質上、前号に規定する目的が実現するかどうかが確実でないもの」でもありますから、これを継続的に行う有償サービスであるエステの長期コースは「特定継続的役務」であると考えられるのです。
ということは、今回のAさんのエステの長期コースが特商法の適用対象である「特定継続的役務提供に係る取引」かどうかは、あとは「政令」の定めた基準より長い期間・高い料金かどうかによるということになります。
特商法施行令では、先ほど挙げた「1 人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと(2の項に掲げるものを除く。)。」や「2 人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、体重を減じ、又は歯牙を漂白するための医学的処置、手術及びその他の治療を行うこと(美容を目的とするものであつて、主務省令で定める方法によるものに限る。)。」とするサービスについて、基準の期間を「1月」、基準の料金を「5万円」としています(特商法施行令11条1項・2項、別表第4)。
つまり、半年間の契約=1月より長い期間で、10万円=5万円より高い料金のAさんのエステの長期コースは、特商法の対象となる「特定継続的役務提供に係る取引」であるといえるのです。
では、特商法で「特定継続的役務提供に係る取引」のクーリングオフはどのように規定されているのでしょうか。
次回の記事で詳しく取り上げていきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、逮捕された方向けの初回接見サービスだけでなく、逮捕や勾留といった身体拘束を受けずに捜査されている方向けの初回無料法律相談も受け付けています。
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エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件①
エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件①
エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府八幡市で個人経営のエステ店を経営しています。
ある日、Aさんは、自身のエステに来店した客Vさんに対し、10万円で半年間エステに20回通える長期コースを勧めました。
その際、AさんはVさんに対し、あえてクーリングオフの説明をせず、案内をしていました。
その後、VさんはAさんに勧められたエステの長期コースを契約し、帰宅しました。
しかし、帰宅したVさんが家族にエステのことを話したところ、クーリングオフの話題となりました。
Vさんがクーリングオフの話をされていないことを話すと、Vさんの家族がおかしいと気づき、京都府八幡警察署に相談。
その結果、Aさんは特商法違反の容疑で京都府八幡警察署に話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・クーリングオフとは?
そもそも、クーリングオフとは、特定の契約に限って、契約してから一定期間内であれば無条件で消費者側から一方的にその申込みや契約を撤回・解除できる制度のことを指します。
クーリングオフは、消費者が頭を冷やしてもう一度契約等について考え直すための制度なのです。
このクーリングオフは、法律に「クーリングオフ制度」という言葉や法律でまとめて決められているわけではなく、クーリングオフの対象となる販売方法や契約等について定めているそれぞれの法律に個別の形でクーリングオフに該当する条文が特別に定められています。
先述したように、クーリングオフは、全ての販売方法や契約等に適用されるわけではなく、特定の販売方法や契約等に適用される制度なのです。
・特商法と「特定継続的役務提供に係る取引」
Aさんが違反したという容疑をかけられている特商法(正式名称:特定商取引に関する法律)を確認してみましょう。
まず、特商法の規制の対象となるのは、「特定商取引」と呼ばれる商取引であり、「特定商取引」は「訪問販売」、「通信販売及び電話勧誘販売に係る取引」、「連鎖販売取引」、「特定継続的役務提供に係る取引」、「業務提供誘引販売取引並びに訪問購入に係る取引」であるとされています(特商法2条)。
このうち、「特定継続的役務提供に係る取引」について、特商法では以下のように定義しています。
特商法41条1項
この章及び第58条の22第1項第1号において「特定継続的役務提供」とは、次に掲げるものをいう。
1号 役務提供事業者が、特定継続的役務をそれぞれの特定継続的役務ごとに政令で定める期間を超える期間にわたり提供することを約し、相手方がこれに応じて政令で定める金額を超える金銭を支払うことを約する契約(以下この章において「特定継続的役務提供契約」という。)を締結して行う特定継続的役務の提供
2号 販売業者が、特定継続的役務の提供(前号の政令で定める期間を超える期間にわたり提供するものに限る。)を受ける権利を同号の政令で定める金額を超える金銭を受け取つて販売する契約(以下この章において「特定権利販売契約」という。)を締結して行う特定継続的役務の提供を受ける権利の販売
つまり、サービスの提供をしている事業者が「政令」で決められた基準より長い期間にわたって「特定継続的役務」にあたるサービスを提供する内容であり消費者がその内容に応じて「政令」で決められた基準よりも多い料金を支払う契約(1項)や、サービスの販売業者が「政令」で決められた基準より長い期間にわたって「特定継続的役務」にあたるサービスを受けられる内容のものを消費者に「政令」で決められた基準よりも多い料金によって販売する契約(2項)が「特定継続的役務提供に係る取引」=特商法の対象となる特定商取引の1つであるとされているのです。
特商法のように、適用される範囲が限定されている法律を特別法と呼びます(特商法の場合は先述したように適用対象が「特定商取引」のみに限定されています。)。
特別法は、その適用範囲が非常に細かく分類されているがために分かりづらいこともあれば、範囲の定義が専門用語や解釈の必要な言葉によってなされているために分かりづらいということも多くあります。
だからこそ、特商法違反事件のような特別法に関わる刑事事件では、刑事事件に強い弁護士に早めに相談し、自分にかかっている容疑をきちんと理解し、見通しを把握することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が丁寧に相談対応をさせていただきます。
お困りの際はお気軽にお問い合わせください。
次回以降の記事では、エステの長期コースが特商法の対象となるのか、クーリングオフの対象となるのか、詳しく触れていきます。
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