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半グレに所属して傷害事件

2020-02-18

半グレに所属して傷害事件

半グレに所属して傷害事件を起こしてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府京丹後市に住む18歳のAさんは、自身の通う高校の卒業生であるBさんらが所属する、いわゆる「半グレ」の集団に所属していました。
Aさんは半グレの仲間たちとたびたび夜間に外出したり学校をさぼったりしていましたが、Aさんとしては悪ぶりたいだけであり、実際に犯罪に手を貸したり参加したりということはしていませんでした。
しかしある日、京都府京丹後市内の路上で、通行人のVさんと口論になると、半グレの仲間たちと一緒になってVさんを殴りました。
他の通行人が通報したことにより、Aさんは半グレの仲間たちと一緒に京都府京丹後警察署傷害罪の容疑で逮捕されることになりました。
Aさんは自身が逮捕されるほどの大事を起こしてしまったことに動揺し、両親が逮捕を知って悲しんでいることを知って、半グレから抜けて更生したいと思っているようです。
(※この事例はフィクションです。)

・半グレ

ニュースなどで「半グレ」「半グレ集団」といった言葉を耳にしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
半グレは、暴力団に所属せずに犯罪を繰り返す不良集団のことを指しているとされています。
半グレの「グレ」は、不良などになることを指す「グレる」という言葉や、暴力団に所属していないながらも犯罪を繰り返すことから「グレーゾーン」であることなどによるとされています。

さて、この半グレですが、暴力団とは異なりその構成は若者が中心となっているといわれています。
暴力団のように上下関係がはっきりしてピラミッドのように組織が作られているわけではなく、暴走族等からそのまま半グレに移行したり、年代でまとまったりして半グレになったりということもあるようです。
そのため、先輩後輩関係から10代で半グレ集団と関わってしまうこともあると考えられるのです。

・傷害事件

人に暴力をふるえば刑法の暴行罪が、それによって相手に怪我をさせてしまえば傷害罪が成立することはすでにご存じの方も多いでしょう。

刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

今回のAさんは18歳であるため基本的に刑罰を受けることにはならないと考えられますが、成人の刑事事件として考えれば、複数人で暴行をくわえた傷害事件は悪質性・危険性の高い犯行であると判断され、厳しい処分が下される可能性も考えられます。

なお、集団で暴行をしている場合や常習的に暴行・傷害行為をしている場合などには、暴力行為処罰法違反という犯罪になるかもしれないことにも注意が必要です。

・半グレと少年事件

先ほど触れたように、半グレの構成は若者が多いことから、10代の未成年者であっても半グレに所属してしまう可能性はあります。
Aさんも半グレに所属しており、そこで傷害事件を起こしてしまっているようです。

未成年者が犯罪をしてしまった場合には、少年事件として処理されていくことになりますが、そこで重要なポイントとなるのは、少年自身が更生するのに適切な環境が整えられるのか否かということです。
例えば、半グレに所属して少年事件を起こしてしまったのに、その半グレとの関係を断ち切れない、断ち切る気がないといった環境のままでは、少年を現在の環境に戻して更生させることは難しいと判断されてしまいやすいと考えられます。
今回のAさんのような少年事件では、Aさん自身がやってしまったことを反省し、被害者への謝罪の気持ちをもつことはもちろんですが、これからの生活でどのような点を改めて再犯を防止していくのかということも重要なのです。

そうした環境の調整やその調整活動の証拠化には、少年事件に強い弁護士のサポートが心強いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、少年事件も専門に扱う弁護士初回無料法律相談初回接見サービスも行っておりますので、まずはお問い合わせください(0120-631-881)。

覚せい剤所持事件で逮捕されたら

2020-02-16

覚せい剤所持事件で逮捕されたら

覚せい剤所持事件逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市下京区在住のAさんは、友人のBさんから「覚せい剤を預かってくれ。数日したら取りに来るから預かっておいてくれるだけでいい」と頼まれました。
Aさんは、「自分で覚せい剤を使うわけでもないし、人の物を預かって持っているだけなら大丈夫だろう」と考え、軽い気持ちで引き受けました。
しかし、覚せい剤を預かってすぐにBさんが京都府下京警察署逮捕されたことをきっかけに、Aさんにも捜査の手が伸び、Aさんは覚せい剤を所持していた容疑で京都府下京警察署逮捕されることとなってしまいました。
Aさんは、自分は覚せい剤を使っていたわけでもなく、Bさんの物を預かっていただけなのになぜ逮捕されてしまったのかと不思議に思い、家族の依頼で接見に来た弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・預かっただけでも覚せい剤取締法違反

覚せい剤という薬物が覚せい剤取締法で禁止されている違法薬物であることは、記事を読まれている皆さんもご存知でしょう。
覚せい剤取締法では、覚せい剤の使用だけでなく、その所持や、輸出入、製造等が禁止されています。

覚せい剤取締法41条の2
1項 覚せい剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第四十二条第五号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。
2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
3項 前二項の未遂罪は、罰する。

このように、覚せい剤取締法では覚せい剤の所持自体も禁止されているので、覚せい剤を持っているだけでも覚せい剤取締法違反となり、犯罪となるのです。
上記事例のAさんのように、たとえ使用していなくとも、たとえ他人の覚せい剤を預かっていただけであったとしても、覚せい剤を所持することは法律違反なのです。

覚せい剤取締法では、覚せい剤を所持していた場合、10年以下の懲役に処するとしています(覚せい剤取締法41条の2 1項)。
さらに、その覚せい剤の所持が、営利目的だった場合には、さらに重い、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処するとされています(覚せい剤取締法41条の2 2項)。
さらに、これらには未遂罪の規定もあります。

覚せい剤を所持することは、これだけ重い犯罪なのです。
たとえ他人の覚せい剤を預かるだけでもこういった重い刑罰を受けることになってしまいますから、もしも覚せい剤所持の容疑で逮捕されてしまったら、なるべく早期に弁護士に相談することが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、24時間いつでも、初回接見サービスの受付を行っております(0120-631-881)。
初回接見サービスでは、弊所の刑事事件専門の弁護士が、逮捕されてしまったご本人に直接会って話をしてきます。
刑事事件では逮捕されてしまってから早期に取調べへのアドバイスを受けたり、釈放を求める活動などを開始してもらったりすることが重要です。
ご家族が覚せい剤事件で逮捕されてお困りの方は、まずは弊所の弁護士まで、ご相談ください。

未成年者の連れ回しで刑事事件②未成年者誘拐罪

2020-02-14

未成年者の連れ回しで刑事事件②未成年者誘拐罪

未成年者の連れ回しで刑事事件となってしまったケースで、特に未成年者誘拐罪の容疑をかけられているケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府外に住む会社員のAさん(24歳)は、SNSを通じて知り合った京都府向日市在住のVさん(15歳)と仲良くなりました。
Vさんとやり取りをするうち、AさんはVさんから「家にいても親と喧嘩をすることが増えてきて不満だ。家出をしたい」という話を聞くようになりました。
そこでAさんは、「Vさんさえよければ春休みの間うちに来てもいいよ」とVさんに伝えました。
すると、Vさんは喜んでAさんの家に行くと返答し、Vさんは春休み中Aさんの家に遊びに来ることになりました。
しかしVさんがAさん宅に来て数日後、Aさんの自宅に京都府向日町警察署の警察官がやってきて、Aさんは未成年者誘拐罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、家族の依頼を受けてやってきた弁護士に「Vさんが来たいといったからうちに呼んだのに誘拐とは納得できない」と相談しました。
(※この事例はフィクションです。)

・相手の同意があっても未成年者誘拐罪に?

今回の事例では、Aさんは未成年者誘拐罪の容疑で逮捕されてしまっています。
未成年者誘拐罪とは、刑法に定められている犯罪の1つです。

刑法224条
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

この刑法224条は、未成年者を「略取」した場合には未成年者略取罪、未成年者を「誘拐」した場合には未成年者誘拐罪と呼ばれます。
「略取」とは、略取される人(今回でいえば未成年者)の意思に反して、その人を自己又は第三者の支配下に置くことを指しており、この際、暴行や脅迫を手段とするものを指すとされています。
一方、今回のAさんの逮捕容疑にもなっている「誘拐」は、誘拐される人(今回でいえば未成年者)の意思に反しない態様でその人を自己又は第三者の支配下に置くことを指し、さらに欺罔・誘惑を手段とする場合を指します。
例えば、未成年者を無理矢理連れ去ったり、脅してついてこさせたような場合には未成年者略取罪となり、物で釣ったりだましたりして未成年者を連れ去ったりした場合には未成年者誘拐罪となると考えられるのです。
今回のAさんの場合、Aさんは家出をしたいというVさんに自宅へ来ることを提案してVさんをその生活している環境から離れさせ、自分の支配下に置いているため、未成年者誘拐罪の「誘拐」にあたると考えられたのでしょう。

しかし、今回のAさんの事例では、そもそもVさんが家出をしたいと言っていることがきっかけであり、Vさん自身が望んでAさんの家に来ています。
こうした場合でもAさんに未成年者誘拐罪の容疑がかかり、逮捕されているのはなぜなのでしょうか。
実は、未成年者誘拐罪が保護しているのは、誘拐される未成年者自身の自由だけではなく、その未成年者の親権者等がもつ、未成年者に対して保護監督する権利も保護しているとされています。
つまり、未成年者誘拐罪の被害者は、未成年者だけでなく、その親権者等の保護者も当てはまると考えられているのです。
ですから、たとえ未成年者自身が同意していたとしても、その保護者の同意がない状態で未成年者をその生活環境から連れ出して自分の監督下に置いてしまえば、未成年者誘拐罪が成立しうるのです。
今回のAさんも、未成年者であるVさん自身の同意は得ているようですが、その保護者までは話が通っていなかったために、未成年者誘拐罪の容疑で逮捕されるに至ったのでしょう。

・未成年者誘拐罪と逮捕

未成年者誘拐罪は前掲した条文の通り、その刑罰も非常に重い犯罪です。
また、未成年者を誘拐したという事件の内容としても、被害者への接触等の証拠隠滅のおそれがあると考えられ、逮捕され身体拘束されたうえで捜査が進められることも珍しくありません。
さらに、Aさんの事例のように、被害者である未成年者やその保護者が住んでいる地域を管轄する警察署に被害届等が出され、その警察署が捜査をしていることも多く、その場合は被疑者自身と縁もゆかりもない場所の警察署に逮捕・留置されてしまうこともあります。

こうした場合には、迅速に弁護士を派遣し、取調べへの対応やその後の弁護活動について、被疑者自身はもちろん被疑者の周りの人も把握するようにすることが望ましいでしょう。
逮捕されてしまえば周りの人に相談しながら取調べを受けるようなことはもちろんできませんし、現在の状況を自由に共有するといったことも難しいためです。
Aさんの事例のように、Aさんの住所地ではない警察署で逮捕されてしまったような場合には、ご家族が会いに行くにも一苦労となることが多いですから、その地域に対応が可能な弁護士のサポートを受けることで負担を軽減できます。

また、未成年者誘拐事件では、先ほど触れたように被害者が存在するため、被害者に対する謝罪・弁償や示談交渉も活動の1つとして考えられるところです。
当事者同士で謝罪・賠償などの示談交渉をすることは非常に難しいですし、そもそも被疑者に被害者の個人情報を捜査機関が教えることは非常にまれなことです。
こちらも弁護士を介して活動をしてもらうことで、示談交渉のできる可能性を上げることができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士未成年者誘拐事件などの重大な刑事事件にも対応しています。
京都支部を含め、全国13都市に支部展開していますから、遠方の警察署に逮捕されてしまったという場合にも対応可能です。
まずはお気軽にお問い合わせください(0120-631-881)。

未成年者の連れ回しで刑事事件①青少年健全育成条例違反

2020-02-12

未成年者の連れ回しで刑事事件①青少年健全育成条例違反

未成年者の連れ回し刑事事件となってしまったケースで、特に青少年健全育成条例違反の容疑をかけられているケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都市左京区に住んでいる30歳の会社員です。
ある時、AさんはSNSを通じて知り合ったVさん(16歳)と親しくなりました。
やり取りの中で、AさんはVさんがAさんと同じく京都市左京区内に住んでいること、年齢が16歳であることを聞きました。
ある日、AさんとVさんがやり取りをしている最中、実際の地図と連動しているスマホゲームのアイテムを一緒に集めようという話になりました。
そこで、AさんとVさんはお互いの仕事やバイトの終わった夜23時頃に落ち合うと、京都市左京区内を2人で歩きながらゲームをしていました。
すると、深夜1時頃、巡回していた京都府下鴨警察署の警察官がAさんとVさんに職務質問をしたことがきっかけとなり、Vさんが16歳未満であることが発覚しました。
その後、Aさんは京都府青少年健全育成条例違反の容疑で話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・青少年健全育成条例

今回のAさんが違反したと容疑をかけられている青少年健全育成条例とは、各都道府県ごとに定められている条例の1つです。
京都府では、「青少年の健全な育成に関する条例」という条例が定められています。
この青少年健全育成条例が対象としている「青少年」とは、「18歳未満の者(婚姻により成年に達したとみなされる者を除く。)」とされています(京都府青少年健全育成条例12条1号)。
つまり、今回のVさんも16歳=18歳未満のため、この青少年健全育成条例の対象となる「青少年」であることになります。

青少年健全育成条例違反事件でよく報道で見かけるのは、青少年とみだらな行為をしたことによる、いわゆる「淫行事件」です。
京都府青少年健全育成条例にも青少年との淫行を禁止する規定があります。

京都府青少年健全育成条例21条
何人も、青少年に対し、金品その他財産上の利益若しくは職務を供与し、若しくはそれらの供与を約束することにより、又は精神的、知的未熟若しくは情緒的不安定に乗じて、淫行又はわいせつ行為をしてはならない。

しかし、青少年健全育成条例はこうした青少年に対する淫行を規制しているだけでなく、他のことに対する規制もあるのです。

・青少年の連れ回しと青少年健全育成条例

京都府青少年健全育成条例では、以下のようにして青少年の深夜の連れ回しを禁止しています。

京都府青少年健全育成条例18条の2
1項 保護者は、通勤、通学その他の特別な理由がある場合を除き、深夜に青少年を外出させないよう努めなければならない。
2項 何人も、保護者の委託を受け、若しくは同意を得た場合又は深夜における勤務、緊急を要する特別な事情その他の正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を、その居所から連れ出し、その居所以外の場所において同伴し、又はその居所以外の場所にとどめてはならない。
3項 深夜に営業を営む者は、深夜に当該営業に係る施設内又は敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すよう自主的に努めなければならない。

京都府青少年健全育成条例18条の2の2項にあるように、京都府では、保護者から頼まれたり同意を得たりした場合や、深夜の勤務・緊急性のある場合等を除き、深夜に18歳未満の青少年を住んでいる家から連れ出したり、それ以外の場所にとどめたりしてはいけないとされています。
ここで、では「深夜」とはいつを指すのか疑問に思われる方もいるでしょう。
しかし、京都府青少年健全育成条例ではこちらについても以下のように定義しています。

京都府青少年健全育成条例12条
この章以下において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
8号 深夜 午後11時から翌日の午前4時までの時間をいう。

つまり、夜11時から翌日朝4時までは、青少年の親の同意なしに青少年を外出させてそれに同伴することは禁止されているのです。
これに違反し、青少年健全育成条例違反となった場合には、以下の刑罰を科せられる可能性があります。

京都府青少年健全育成条例31条5項
次の各号のいずれかに該当する者は、20万円以下の罰金に処する。
7号 第18条の2第2項の規定に違反した者

青少年の深夜連れ回しの青少年健全育成条例違反の場合、罰金のみの規定となっていることから、比較的軽い犯罪であるといえるでしょう。
しかし、刑務所に行くことがなくとも罰金刑を受ければ前科が付くことにもなりますし、深夜連れ回しだけでなく淫行などほかの犯罪の容疑をかけられてしまう可能性もあります。
刑事事件化してしまったら、まずは弁護士に相談し、見通しや対応の仕方を十分に聞いてから対応に臨むことが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回無料法律相談のご予約が24時間いつでも可能です(0120-631-881)。
青少年健全育成条例違反事件でお困りの際は、まずはお気軽にご相談ください。

ごみの持ち去りで刑事事件③占有離脱物横領罪

2020-02-10

ごみの持ち去りで刑事事件③占有離脱物横領罪

ごみの持ち去りから刑事事件に発展したケースで、特に占有離脱物横領罪の容疑をかけられた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府宇治市に住んでいる22歳の学生です。
ある日、Aさんは近所のごみ捨て場に自転車が捨てられているのを発見しました。
見たところ、それはまだ使えそうな自転車であったうえ、有名な自転車ブランドの物でした。
そこでAさんは、「拾って行って自分で使おう。捨てられている物なのだから問題ない」と考え、自転車を持ち帰ると使用していました。
しかし、Aさんが自転車を使っていたところ、巡回中の京都府宇治警察署の警察官に声をかけられました。
警察官曰く、Aさんの乗っていた自転車が盗難届の出ている自転車であるとのことです。
後日京都府宇治警察署で話を聞かれることとなったAさんでしたが、その前に弁護士に相談し、捨ててあった自転車を拾っただけなのに何か問題になるのか聞いてみることになりました。
(※この事例はフィクションです。)

・ごみを持ち去って占有離脱物横領罪に?

前回までの記事で、ごみの持ち去りで成立しうる犯罪について、各自治体の条例違反や窃盗罪などに触れましたが、もう1つ成立しうる犯罪があります。
それは、刑法に定めのある占有離脱物横領罪です。

刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

前回の記事で取り上げた通り、誰かがその物を事実上支配・管理している状態である「占有」のある他人の物を無断で自分の物としてしまえば、窃盗罪となってしまいます。
しかし、この世の全ての物が誰かの支配・管理下にあるわけではない、つまり、「占有」のない物があることはお分かりいただけるでしょう。
誰もその物を支配・管理していない=「占有」のない状態である他人の物=「占有離脱物」について自分の物としてしまった場合に成立するのが、この占有離脱物横領罪なのです。
以下で詳しく見ていきましょう。

まず、占有離脱物横領罪が対象としている物は、「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物」です。
「遺失物」とは、その物を占有(支配・管理)していた人の意思によらずにその物が占有していた人の支配・管理から離れてしまい、さらにまだ誰の支配・管理下にもない状態の物を指します。
「遺失物」の代表例としては、道端に落ちている落し物が挙げられます。
道端に落ちていた落とし物をいわゆる「ネコババ」したような場合には、この罪の成立が考えられます(この場合、罪名としては占有離脱物横領罪ではなく遺失物横領罪と呼ばれることが考えられます。)。
そして、「漂流物」とは、水中にある「遺失物」のことを指します。
さらに、「その他占有を離れた」とは、その物を支配・管理していた人の意思に基づかずにその人の支配・管理下から離れたということを指します。
ですから、占有離脱物横領罪の対象となる物は、簡単に言えば「支配・管理していた人のもとをその人の意思によらずに離れてしまった他人の物」ということになります。

占有離脱物横領罪は前述の対象となる物を、「不法領得の意思」に基づいて自分の支配・管理下に置く=「横領」することで成立するとされています。
「不法領得の意思」とは、大まかに説明すると、権限がないにもかかわらず自分の物でないとできないような処分をする意思のことを指します。

今回のAさんの事例を考えてみましょう。
Aさんが持ち帰った自転車は、盗難届のあった自転車でした。
盗難届を出しているということは、自転車の持ち主はまだ自転車は自分の物であると考えていると思われますから、自転車は持ち主の意思に反してその支配・管理下から離れてしまった持ち主の物=占有離脱物横領罪にいう「占有を離れた他人の物」でしょう。
Aさんはその自転車を自分の物としてしまったわけですから、占有離脱物横領罪の「横領」にあたる行為をしてしまったと考えられます。
これらのことから、Aさんは占有離脱物横領罪の容疑をかけられてしまったと考えられるのです。

なお、盗難届が出ていないごみ捨て場に捨ててあった単なるごみであっても、持ち帰れば占有離脱物横領罪が成立する可能性があることにも注意が必要です。
例えば家電や空き缶といった資源ごみ・リサイクルごみ等は、リサイクルなどの使い道があるものです。
自治体ではこういったごみを活用する事業等がある場合もあり、決められた場所に捨て、決められた業者が回収・活用することになっているところも多いです。
そうした場合には、それらのごみは決められたごみ捨て場に捨てられた時点で自治体の物=「他人の物」となることもあり、事実上の支配・管理がないからといってそれを勝手に自分の物としてしまえば、占有離脱物横領罪となる可能性が出てくるということなのです。

今まで見てきたように、ごみの持ち去りであっても刑事事件となってしまう可能性はあります。
軽く考えてしてしまった行動が思わぬ刑事事件のきっかけとなってしまうこともありますから、そうなった場合には遠慮なく専門家である弁護士のサポートを求めましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士によるサービスを土日祝日問わず受け付けていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

ごみの持ち去りで刑事事件②窃盗罪

2020-02-08

ごみの持ち去りで刑事事件②窃盗罪

ごみの持ち去りから刑事事件に発展したケースで、特に窃盗罪の容疑をかけられた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市伏見区に住んでいるAさんは、ある日、近所のごみ捨て場に自転車が停められているのを発見しました。
Aさんが見てみたところ、その自転車はまだ使えそうであったため、Aさんはその自転車を持ち帰って使用していました。
するとある日、Aさんが自転車を使用して買い物に出ていた際、巡回していた京都府伏見警察署の警察官から職務質問を受けました。
そこで調べてみると、その自転車は盗難届が出されているものであったことが判明しました。
Aさんはごみ捨て場にあったから持ってきただけだと話しましたが、窃盗罪の容疑で京都府伏見警察署で話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・ごみを持ち帰って窃盗罪?

ごみ捨て場に捨ててある物はごみとして捨てられたものであるから持ち帰っても問題ないだろうと考えている方もいるかもしれません。
まだ使えそうなものがごみ捨て場にあった場合、Aさんのように「もったいない」と考えてしまうかもしれません。
ですが、だからといってごみを持ち帰ってしまえば、刑事事件に発展してしまう可能性があるのです。
前回の記事で取り上げたように、地方自治体によっては条例によってごみの持ち去りを禁止しており、禁止命令に反した場合の刑罰まで定めているところもあります。
しかし、今回のAさんの事例で登場する京都市ではごみに関する条例に罰則は定められていません。
それでも刑事事件になってしまう可能性はあるのでしょうか。

まずは、今回のAさんが容疑をかけられている窃盗罪について検討してみましょう。

刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

窃盗罪のいう「他人の財物」とは、他人が「占有」している他人の財物のことを指すとされています。
「占有」とは、人がその財物を事実上支配・管理している状態のことを指します。
さらに、「占有」があるのかどうかは、人がその物を事実上支配している状態であるかどうかという客観的な要素と、人がその物に対して事実上支配する意欲や意思があるかどうかという主観的な要素を総合的に考慮して判断されます。
つまり、窃盗罪の客体となる物は、他人が事実上支配・管理している他人の物、ということになります。

そして、窃盗罪にいう「窃取」とは、先ほど触れた「占有」をしている人の意思に反して、その占有している人の財物に対する「占有」を排除し、財物を自分や第三者の「占有」下に置くことを指します。
すなわち、すでにその物を支配・管理している人の意思に反してその物を自分や他の人の支配・管理下にしてしまうことが窃盗罪の「窃取」なのです。

窃盗罪の典型例として挙げられる万引きで考えてみれば分かりやすいでしょう。
お店の商品はもちろん、お店の支配・管理下にあるといえます。
お店の中に陳列されていることからも、お店が事実上支配・管理していると考えられますし、お店側も商品はお店が支配・管理しているものであると認識しているはずですから、商品にはお店の「占有」があるといえるでしょう。
ここから、商品は窃盗罪のいう「他人の財物」であると考えられます。
しかし、万引きの場合はその商品を会計せずに持ち去って自分の物としてしまいます。
これは商品を「占有」しているお店の意思に反することであり、商品を自分の「占有」下に移していることですから、窃盗罪のいう「窃取」にあたると考えられ、窃盗罪が成立するということになるのです。

では、今回のAさんの事例を考えてみましょう。
そもそも、Aさんはごみ捨て場にあった自転車だからと自転車を持ち去っていますが、その自転車が本当に捨ててあったものなのかどうかということが問題となります。
事例では詳しく書かれていませんが、もしもたまたま自転車の持ち主がごみ捨て場近くに用事があり自転車を停めていただけであれば、自転車の「占有」は持ち主のもののままと考えることもできます。
そうなれば、その場から自転車を持ち去ってしまったAさんには窃盗罪が成立する可能性も出てくることになります。

なお、もしも捨ててあった自転車であったとしても、ごみ捨て場がその自治体等の管理する場所であり、そこに捨てられていたものが自治体等の支配・管理下にあると判断された場合には、持ち去ったものによっては窃盗罪となる可能性もあります。
ごみということは財産的価値がなく、窃盗罪のいう「財物」といえないのではないかとも考えられますが、窃盗罪の「財物」の財産的価値については判断が分かれています。
過去の事例ではメモ1枚やちり紙13枚といったものについて、財産的価値がわずかであるとして窃盗罪の「財物」とはいえないとした事例も見られますが、例えばAさんの持ち帰ったような自転車などは、まだそれ自体として使用できたり、リサイクルする物としての価値があったりと判断されれば、財産的価値がある=窃盗罪の「財物」にあたる、と判断される可能性もあります。

このように、ごみの持ち去りだと思っていても、窃盗罪となる可能性はあります。
では、自転車が捨てられていた場合で誰の占有にもなかった場合には、持って帰ってしまっても犯罪は成立せず、刑事事件化することはないのでしょうか。
こちらは次回の記事で取り上げていきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、ごみの持ち去りから窃盗事件に発展してしまったというご相談もお受けしています。
お困りの際は遠慮なく、弊所弁護士までご相談ください。

ごみの持ち去りで刑事事件①条例違反

2020-02-06

ごみの持ち去りで刑事事件①条例違反

ごみの持ち去りから刑事事件に発展したケースで、特に条例違反の容疑をかけられた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府城陽市に住んでいるAさんは、近所のごみステーションにまだ使えそうなものが捨ててあった場合、もったいないから自分で再利用してしまおうと持ち帰っていました。
ある日、近所の住民がAさんのごみの持ち去りについて京都府城陽警察署に相談し、最終的にAさんは京都府城陽市で制定されている条例に基づき、市長からごみの持ち去りに対する禁止命令を出されました。
しかし、Aさんは禁止命令を出された後も、捨てられていた自転車等のごみをごみステーションから持ち去っていました。
近所の住民から京都府城陽警察署に苦情が寄せられ、Aさんは京都府城陽市の条例に違反した容疑で取調べを受けることとなってしまいました。
(※令和2年1月23日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・ごみの持ち去りで条例違反に?

刑事事件条例違反と聞くと、痴漢や盗撮等に適用されることの多い、各都道府県ごとに定められている迷惑防止条例違反が思い浮かべられやすいかもしれません。
しかし、条例は地方公共団体が定めることのできるものであるため、都道府県単位だけではなく各市町村単位でも定めることができ、その中には迷惑防止条例のように刑事罰を定めているものも存在します。

今回のAさんが容疑をかけられているのは、京都府城陽市が制定している「城陽市一般廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例」という条例に違反した罪でしょう。
この条例は、京都府城陽市が制定しているものですから、その効力の及ぶ範囲は京都府城陽市内に限定されます。
具体的にこの条例を見てみましょう。
まず、Aさんはごみの持ち去りについて市長から禁止命令を出されているようです。
この禁止命令について、条例では以下のように定められています。

城陽市一般廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例13条
1項 市(市から収集又は運搬の委託を受けた者を含む。次条及び第15条において同じ。)以外の者は、ごみステーション又は回収拠点に排出された家庭系一般廃棄物のうち、空き缶、空き瓶その他の再生利用が可能な家庭系一般廃棄物として規則で定めるものを収集し、又は運搬してはならない。
ただし、第7条第3項の規定により市民が清潔の保持のために一般廃棄物を収集し、又は運搬する場合及び地域団体が行う再生利用が可能な家庭系一般廃棄物(空き缶に限る。)の回収に際し、地域団体と契約をした者が当該空き缶を収集し、又は運搬する場合は、この限りでない。

2項 市長は、前項の規定に違反する行為をした者に対し、当該行為を行わないよう命ずることができる。

ここで、条文に出てくる「家庭系一般廃棄物」とは、同条例内で以下のように定義されています。

城陽市一般廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例2条
この条例で使用する用語の意義は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「法」という。)及び循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号)で使用する用語の例によるもののほか、次に定めるところによる。
1号 家庭系一般廃棄物 家庭の日常生活に伴って生じた一般廃棄物をいう。

一般廃棄物」とは、廃棄物処理法2条2項によると、「産業廃棄物以外の廃棄物」とされています。
つまり、事業活動で生じた廃棄物や輸入された廃棄物以外で、日常生活で生じた廃棄物はこの条例の「家庭系一般廃棄物」となるのです。
京都府城陽市の条例によると、この「家庭系一般廃棄物」のうち、「再生利用が可能な家庭系一般廃棄物として規則で定めるもの」の収集・運搬が原則として禁止されており(条例13条1項)、市町はその行為をした者に対して禁止命令が出せる(条例13条2項)ということになっています。
再生利用が可能な家庭系一般廃棄物として規則で定めるもの」については、「城陽市一般廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例施行規則」という規則に詳細が定められています。

城陽市一般廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例施行規則5条
条例第13条第1項の再生利用が可能な家庭系一般廃棄物として規則で定める物は、空き缶、空き瓶、ペットボトル、紙パック、プラスチック製容器包装、使用済小型家電、廃食用油、廃蛍光管若しくは廃乾電池又は金属を含む物とする。

すなわち、条例ではこれらに当てはまるものの持ち去り等が禁止されており、Aさんはその対象となるごみの持ち去りをしてしまったために、禁止命令を受けていたということなのです。
Aさんは、禁止命令を受けた後さらにごみの持ち去りをしてしまい、刑事事件の被疑者として取調べを受ける事態にまで発展していますが、実は京都府城陽市の条例では、この禁止命令に違反してさらにごみの持ち去り等をした場合の刑罰が定められています。

城陽市一般廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例32条
第13条第2項の規定による命令に違反して収集し、又は運搬した者は、20万円以下の罰金に処する。

こうしたごみの持ち去り等に関して条例で刑罰まで定めている自治体は珍しく、京都府内では今回の京都府城陽市のほか、京都府木津川市が該当します。
ですから、京都府城陽市京都府木津川市で同様の行為をしてしまった場合には、条例違反として刑事事件化する可能性があるのです。
では、これらの自治体以外でごみの持ち去り等をしてしまった場合には刑事事件とはならないのでしょうか。
次回の記事で取り上げます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、京都府内の条例違反についてのご相談もお受けしています。
条例は各自治体ごとに定められているものであるため、なかなか分かりづらかったり特殊であったりすることも多いです。
刑事事件専門だからこそ、そういった特殊なケースでも安心してご相談いただけます。
まずはお気軽にお問い合わせください。

免停中の無免許運転で逮捕

2020-02-04

免停中の無免許運転で逮捕

免停中の無免許運転逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都市山科区にある会社に勤務する会社員です。
Aさんは通勤に自動車を使用しており、毎日運転していましたが、運転態度が悪く、度々京都府山科警察署の検問やパトロールで通行禁止違反や一時不停止等の交通違反を指摘され、反則金を支払う等していました。
ある日、Aさんはパトロールをしていた京都府山科警察署の警察官から信号無視を見とがめられ、ついに90日間の免許停止処分を受けることになりました。
しかし、Aさんは通勤に車を使っていたため、「運転できなくなるのは困る。免停と言っても運転したのがばれなければ問題ないだろう」などと考え、免停となった後も運転を続けていました。
そうして免停期間も運転をしていたAさんでしたが、職場からの帰宅途中、交通検問をしていた京都府山科警察署の警察官により免停期間中の運転であることが分かり、無免許運転の容疑で逮捕されることとなってしまいました。
(※令和2年1月31日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・免停中は無免許運転に

無免許運転という言葉からは運転免許自体を持っていない人が自動車の運転をするというイメージがわきやすいですが、今回のAさんのように、たとえ運転免許を取得していたとしても、その免許が免停となっている最中に運転してしまえば、それも無免許運転ということになります。
免停期間中は道路交通法の以下の条文にもある通り、免許の効力が停止されているわけですから、その期間内については運転免許を持っていない無免許の状態と同じということになるのです。

道路交通法103条1項(免許の取り消し、停止等)
免許(仮免許を除く。以下第106条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。
ただし、第5号に該当する者が前条の規定の適用を受ける者であるときは、当該処分は、その者が同条に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後でなければ、することができない。
(略)
5号 自動車等の運転に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反したとき(次項第1号から第4号までのいずれかに該当する場合を除く。)。

今回のAさんのように、交通違反をしてしまって免停となった場合には、この道路交通法103条1項5号等に該当するとして免停となっていることが考えられるでしょう。
この免停という処分は、あくまで運転免許に関する行政上の処分であり、刑事罰というわけではないため、免停になったからといって前科がつくわけではありません。
交通違反による道路交通法違反では、交通違反の種類にはよるものの反則金制度という制度があり、反則金を支払うことで刑事手続に移行せずに交通違反を処理する制度があるため、反則金を支払って免停となった、というだけでは刑事事件となって前科が付くということに必ずしも結びつかないのです。

・無免許運転で逮捕?

しかし、今回のAさんは無免許運転をしたとして逮捕されてしまっています。
実は、無免許運転は前述の反則金制度の対象外となる交通違反で、無免許運転をして検挙されるということは、免停や免許取り消しといった行政上の処分だけでなく、刑事罰を受けるかどうかという刑事事件としての手続きと処分を受けなければならないということになります。

道路交通法117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1号 法令の規定による運転の免許を受けている者(第107条の2の規定により国際運転免許証等で自動車等を運転することができることとされている者を含む。)でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は国際運転免許証等を所持しないで(第88条第1項第2号から第4号までのいずれかに該当している場合又は本邦に上陸をした日から起算して滞在期間が1年を超えている場合を含む。)運転した者

この条文にも、無免許運転について「法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。」と書いてあることからも、今回のAさんの免停中の運転が無免許運転として処罰されることがわかります。
たかが無免許運転、ばれなければ大丈夫と考える人もいるかもしれませんが、無免許運転の刑事罰はこれほど重いものとなっていることもあり、態様によってはその場で逮捕されてしまう可能性もありますから、無免許運転とならないよう注意が必要です。

それでも無免許運転をしてしまって逮捕されてしまった、刑事事件の被疑者となってしまったという場合には、今後の対応について弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部弁護士は、こうした交通違反に関連する刑事事件のご相談も承っています。
まずはお気軽に、0120-631-881までお問い合わせください。

ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕②偽計業務妨害罪

2020-01-31

ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕②偽計業務妨害罪

ポイント獲得のためのホテルキャンセル逮捕されたケースで、特に偽計業務妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、旅行をするとき、Xというサイトを利用し、利用するホテルの予約をしていました。
というのも、Xを利用してホテルの予約をしてホテルの利用をすれば、ホテルの利用料金の一部がAさんがよく使っているYというカードのポイントで還元されるサービスがあったからでした。
ある日Aさんは、このサービスは、ホテルの予約をキャンセルしても、ホテル側が手続きをしなければ予約者へのポイント付与はそのまま行われるシステムであることに気が付きました。
そこでAさんは、京都市右京区にあるVという高級なホテルに偽名と偽の連絡先で予約を入れては予約日当日に無断でキャンセルすることを繰り返し、Yカードのポイントをもらっていました。
するとある日、京都府右京警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんは私電磁的記録不正作出・同供用罪と偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和2年1月22日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・偽計業務妨害罪

前回の記事では、Aさんに私電磁的記録不正作出罪・同供用罪が成立する可能性があることに触れましたが、今回の記事ではAさんのもう1つの逮捕容疑である偽計業務妨害罪という犯罪について触れていきます。

刑法233条(偽計業務妨害罪)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

偽計業務妨害罪は刑法233条の「偽計を用いて」「その業務を妨害した者」に該当した場合に成立する犯罪です。
まず、偽計業務妨害罪の客体となる「業務」とは、自然人または法人、その他の団体が社会生活上の地位において、あるいはこれと関連しておこなう職業その他の継続して従事することを必要とする事務を指すとされています。
この事務は、経済的に収入を得る目的の事務でなくともよいと解されており、つまり、いわゆる「仕事」でなくとも偽計業務妨害罪の「業務」に当たり得るということになっています。
例えば、今回のAさんの事例のようなサイトやホテルの営業・運営は、サイト運営会社やホテルを経営する会社がその社会的地位に基づいて行う職業であり、継続して従事することを必要としている仕事ですから、問題なく偽計業務妨害罪の「業務」にあたるといえるでしょう。
ただし、偽計業務妨害罪の「業務」には娯楽目的のものは含まれないため、注意が必要です。

そして、偽計業務妨害罪の成立にはその「業務」を「偽計を用いて」「妨害」することが必要です。
「妨害」に用いられる「偽計」とは、人を欺罔・誘惑し、または他人の無知・錯誤を利用することを言うとされています。
すなわち、人を騙したり誘惑したり、人が知らないことや勘違いしていることにつけこんだりして「業務」を「妨害」すれば、偽計業務妨害罪が成立するということです。
今回のAさんの事例で考えてみましょう。
Aさんは、無断キャンセルを前提として偽の予約情報を登録しています。
Aさんはサイトやホテルをその偽の予約情報で騙す形になりますから、偽計業務妨害罪のいう「偽計を用いて」いることになるといえるでしょう。

最後に、「妨害した」という言葉の意味についてですが、これは文字通り、実際に業務を妨げたということ以外にも、業務を妨げる危険を生じさせたということも含んでいるとされています。
ですから、実際に「業務」が妨害された事実がなくとも、妨害の危険が生じていれば偽計業務妨害罪の「妨害した」に当てはまると判断されるのです。
今回のAさんは、無断キャンセル前提の偽の予約情報をサイトXを通じて登録しています。
当然、予約が入ればサイトもホテルもその予約への対応のために人員や時間、費用を割き、業務を行います。
しかし、その予約が無断キャンセル前提の偽の予約であれば、偽の予約への対応に割かれた人員や時間、費用は無駄なものであり、通常他の業務に回せたはずのものですから、業務に支障が出ていると考えられます。
無断キャンセルがあれば、ホテルはその対応もしなければならず、余計な業務を増やしたことで通常の業務を妨げているとも言えるでしょう。
以上のことから、今回のAさんの行為は偽計業務妨害罪にも当てはまると考えられるのです。

刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こういった無断キャンセルに関連した偽計業務妨害事件のご相談も受け付けています。
京都府刑事事件にお困りの際は弊所弁護士までご相談ください。

ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕①私電磁的記録不正作出・同供用罪

2020-01-29

ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕①私電磁的記録不正作出・同供用罪

ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕されたケースで、特に電磁的記録不正作出・同供用罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、旅行をするとき、Xというサイトを利用し、利用するホテルの予約をしていました。
というのも、Xを利用してホテルの予約をしてホテルの利用をすれば、ホテルの利用料金の一部がAさんがよく使っているYというカードのポイントで還元されるサービスがあったからでした。
ある日Aさんは、このサービスは、ホテルの予約をキャンセルしても、ホテル側が手続きをしなければ予約者へのポイント付与はそのまま行われるシステムであることに気が付きました。
そこでAさんは、京都市右京区にあるVという高級なホテルに偽名と偽の連絡先で予約を入れては予約日当日に無断でキャンセルすることを繰り返し、Yカードのポイントをもらっていました。
するとある日、京都府右京警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんは私電磁的記録不正作出・同供用罪と偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和2年1月22日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・私電磁的記録不正作出・同供用罪

私電磁的記録不正作出・同供用罪という犯罪はなかなか聞きなじみのない犯罪かもしれません。
私電磁的記録不正作出・同供用罪は刑法に定められている犯罪です。

刑法161条の2
1項 人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2項 前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
3項 不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。

この刑法161条の2のうち、それぞれ1項が私電磁的記録不正作出罪、2項が公電磁的記録不正作出罪、3項が不正作出電磁的記録供用罪という犯罪となります。
今回のAさんは、刑法161条の2の1項と3項の疑いをかけられていることから、逮捕容疑が私電磁的記録不正作出・同供用罪というまとめ方であったのでしょう。

さて、この私電磁的記録不正作出・同供用罪ですが、どういった場合に成立する犯罪で、Aさんの事例ではなぜこの犯罪の容疑がAさんにかかることになったのでしょうか。
まずは私電磁的記録不正作出罪について見ていきましょう。
私電磁的記録不正作出罪が成立する条件は、その条文から、
①「人の事務処理を誤らせる目的で」
②「その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を」
③「不正に作った」
というものです。
これらに当てはまった場合、私電磁的記録不正作出罪の成立が考えられることになります。

①の「人の事務処理を誤らせる目的で」とは、他人が行うはずの正しい事務処理を誤らせ、本来正しくあるべき内容とは異なるものとすることを目的として、という意味です。
事務処理とは、財産上身分上その他人の生活に影響を及ぼし得る全ての仕事を指すとされています。
今回のAさんについて当てはめてみましょう。
サイトX・ホテルVでは、サイトを通じて予約・利用したホテルの料金の一部をポイント還元していますが、Aさんは利用してもいないホテルの利用料金のポイント還元を受けようと偽の予約情報を登録していることになります。
すなわち、Aさんはサイト・ホテル側に、本来とは異なった、誤った予約情報を基にポイント還元等の事務処理をさせることを目的として今回の行為をしているわけですから、私電磁的記録不正作出罪の「人の事務処理を誤らせる目的で」に該当すると考えられるのです。

次に、私電磁的記録不正作出罪のいう②「その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を」とは、財産上身分上その他人の生活に影響を及ぼし得る全ての仕事に使う権利・義務・事実証明に関係するデータのことを、ということを指します。
今回のAさんの事例では、Aさんはサイトやホテルがポイント還元等に利用する予約情報というデータを作っているわけですから、これにも当てはまりそうです。

最後に、私電磁的記録不正作出罪の条文にある「不正に作った」という言葉ですが、これは事務処理を行おうとする者の意思に反して、権限がないのに、もしくは権限を濫用して、電磁的記録を作ることを指すとされています。
今回のAさんの事例で考えてみましょう。
Aさんは偽の予約情報というデータを作っているのですが、当然サイトやホテルは偽の予約情報登録されることは望んでいないと考えられますので、事務処理を行おうとする者の意思に反していると考えられます。
そして、Aさんには偽の予約情報を登録する権限があるわけではないため、Aさんには私電磁的記録不正作出罪の「不正に作った」という部分も該当することが考えられるのです。
これらのことから、Aさんには私電磁的記録不正作出罪が成立する可能性があると考えられます。

さらに、刑法161条の2の3項にある不正作出電磁記録供用罪は、先述した「人の事務処理を誤らせる目的で」その不正作出した電磁的記録を事務処理に使用されるコンピュータ等で処理しうる状況に置くことで成立しますが、Aさんは予約情報を登録=事務処理に使用されるコンピュータ等で処理しうる状況に置いているといえるため、不正作出電磁記録供用罪の成立も考えられるということになるのです。

私電磁的記録不正作出・同供用罪など、刑法の中でも聞きなじみのない犯罪は多く存在します。
そういった犯罪にかかわる刑事事件にお困りの際は、刑事事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご相談ください。
弊所では、弁護士による初回無料法律相談・初回接見サービスのご予約を24時間いつでも受け付けております。

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