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児童ポルノ製造・強要事件を弁護士に相談

2021-11-15

児童ポルノ製造・強要事件を弁護士に相談

児童ポルノ製造・強要事件を弁護士に相談するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、動画配信アプリを通じて京都府宮津市に住んでいるという女子高生Vさん(16歳)と知り合いました。
アプリ内のメッセージ機能を使ってやり取りするようになったAさんとVさんは、メッセージアプリでもアカウントを教え合い、やり取りをするようになりました。
その後、Aさんが「裸の写真が見たい」とVさんに伝え、Vさんに服を脱いだ写真を送ってもらう関係に発展しました。
しかし、Vさんが次第に写真を送ることを怖がり渋るようになると、AさんはVさんに対して「言うことを聞かないなら今まで送って来た写真を拡散するぞ」「晒されたくないなら写真を送れ」などと言うようになりました。
VさんはしばらくAさんの言う通りにしていましたが、恐怖に耐え切れず、両親に相談。
Vさんとその両親は京都府宮津警察署へ被害を申告し、Aさんは児童ポルノ製造による児童ポルノ禁止法違反強要罪の容疑で逮捕されてしまいました。
事件について知ったAさんの家族は、京都府の逮捕に対応している弁護士に相談し、Aさんのもとへ接見に行ってもらうことにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・写真を送らせる=児童ポルノ製造に

今回のAさんの逮捕容疑の1つである児童ポルノ製造行為とは、文字通り児童ポルノを作り出すことを指します。

児童ポルノ禁止法第7条第4項
前項に規定するもののほか、児童に第2条第3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第2項と同様とする。

「前項に規定するもの」とは、児童ポルノを提供する目的での児童ポルノの製造・所持・運搬・輸出入行為のことです。
児童ポルノを提供する、すなわち、他の人へ渡したり広めたりする目的以外で児童に児童ポルノ禁止法第2条第3項にある姿態を取らせて写真などを撮影して児童ポルノを作成した場合に、この条文に該当する児童ポルノ禁止法違反となります。
つまり、自分でその写真を見て楽しむといった目的のために児童ポルノ製造行為をしたような場合には、この条文に該当する児童ポルノ禁止法違反になるということです。

そして、「第2条第3項各号」とは、児童ポルノ禁止法の中で児童ポルノというものを定義している条文です。
例えば、児童相手の性交の様子や性交類似行為や、児童が一部又は全部服を脱いでいて性的部分を強調している様子などが当てはまります。

今回のAさんがVさんに写真を送らせた目的は定かではありませんが、自分で写真を見る目的であれば、先述の児童ポルノ禁止法の条文に当たることになります。
さらに、Aさんが送らせたVさんの写真はVさんの裸の写真であるため、「児童ポルノ」に定義されることになるでしょう。

そして、ここで、その児童ポルノを「製造した」という文言から、実際に児童ポルノにあたる写真を撮影したのはVさん自身ではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、今回の事例ではAさんから児童ポルノをVさんに作らせたという経緯ですから、AさんがVさんに写真を撮らせることで児童ポルノ製造をしたということになります。
こうしたことから、Aさんには児童ポルノ製造の罪に当たると考えられるのです。

・児童ポルノと強要罪

今回のAさんは、児童ポルノ製造による児童ポルノ禁止法違反だけでなく、強要罪の容疑もかけられています。

刑法第223条第1項(強要罪)
命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

強要罪は、脅迫や暴行を用いて人に義務のないことをさせることで成立する犯罪です。
似たような犯罪に脅迫罪がありますが、脅迫罪が脅迫するだけにとどまるのに対し、強要罪では加えて人に義務のないことを行わせる犯罪です。
人に義務のないことを強いるという分、強要罪の方が法定刑も重く設定されています。

参考:刑法第222条第1項(脅迫罪)
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

今回のAさんは、Vさんの裸の写真を拡散させると脅迫し、Vさんにさらなる写真の提供を要求しています。
裸の写真を拡散されるということはVさんの名誉が害される可能性のあることで、「名誉…に対し害を加える」旨の告知と言えるでしょう。
当然、VさんにAさんへ裸の写真を提供する義務はないですから、Aさんには強要罪が成立すると考えられるのです。

児童ポルノを児童から送らせていたという事件では、その児童ポルノ自体を材料に脅迫罪強要罪にあたる行為をしてしまったという被疑者・被告人の方もままいらっしゃいます。
児童ポルノ製造による児童ポルノ禁止法違反だけでなく、脅迫罪や強要罪も犯してしまっているとなれば、それぞれの犯罪にどのように対応していけばよいのか分からなくなってしまうかもしれません。
だからこそ、まずは専門家である弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、児童ポルノ禁止法違反事件強要事件などの刑事事件を専門に取扱っています。
0120-631-881ではお問い合わせを24時間いつでも受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。

飲み会からの帰り道で逮捕されてしまったら

2021-11-04

飲み会からの帰り道で逮捕されてしまったら

飲み会からの帰り道で逮捕されてしまったというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

会社員のAさんは、京都市山科区にある職場近くで飲み会をしました。
その飲み会からの帰り道、酔っていたAさんは、通行人であるVさんとトラブルになり、Vさんのことを殴ってけがをさせる傷害事件を起こしてしまいました。
通報を受けた京都府山科警察署の警察官が臨場し、Aさんは傷害罪を犯したとして現行犯逮捕されました。
しかし、Aさんは、飲み会から帰ろうとしたところまでは覚えているのですが、その後の記憶は酔っ払っていたこともあり、全く思い出せません。
逮捕されて警察官に話を聞かれたAさんでしたが、「覚えていない」ということしか言えず、不安に思っています。
その後、Aさんの家族が逮捕を知って弁護士をAさんのもとへ派遣。
Aさんは接見に来た弁護士に事件やその手続きについて相談しました。
(※この事例はフィクションです。)

・飲み会帰りに逮捕されてしまった

今回のAさんは、その飲み会の帰りに傷害事件を起こして現行犯逮捕されるに至っています。
お酒が入ることによって気が大きくなるなどし、傷害事件などの暴力事件を起こしてしまったというご相談は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にもよく寄せられるご相談です。

そして、当事者に飲み会中や飲み会帰りでお酒が入っていたというケースでは、Aさんのように酔っ払っていた影響で事件当時の記憶がない、という方も多くいらっしゃいます。
自分の記憶がないにもかかわらず傷害事件の被疑者として警察官から取調べを受けるのですから、不安を感じて当然でしょう。
事件当時の記憶がなければ、傷害罪について自分がやったと認めることもできませんから、容疑を否認していると捉えられ、逮捕・勾留されて取調べを受けることになるケースも見られます。
その場合、「認めれば帰宅を許される」と誘導をほのめかされることもあるようですし、余計に不安が募ってしまうことでしょう。

だからこそ、こうしたケースの場合には、すぐに弁護士に相談して今後の対応を検討することが重要です。
Aさんのような飲み会帰りに起こった傷害事件では、現行犯逮捕されてしまい、訳の分からないまま警察署に留置されてしまう、というケースも多々見られます。
こうした場合、刑事手続きへの不安や自身の記憶がなかったり曖昧であったりすることから、取調べにおいて自身の認識と異なる供述へ誘導されてしまうリスクが考えられます。
そうしたリスクを軽減するために、弁護士から被疑者の権利や取調べでの注意点、刑事手続きの流れなどを詳しく聞いてアドバイスを受けることが有効なのです。
取調べは逮捕直後から開始されることになりますから、逮捕直後から弁護士への相談・依頼をすることが重要です。

・逮捕直後に弁護士に相談

先述したように、逮捕されてからすぐに弁護士と会って話を聞くことのメリットは大きいものです。
ですから、ご家族などが逮捕されたということを知ったすぐ後から、弁護士に相談・依頼することがおすすめされます。
例えば、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービスがあります。
初回接見サービスでは、お申込みいただいてから最短即日で弁護士が逮捕・勾留された被疑者・被告人のもとへ接見へ向かいます。

逮捕されてしまったご本人はもちろん、そのご家族なども刑事手続きに対する不安は大きいでしょうから、まずは1度弁護士の話をそれぞれ聞いてみることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が突然の逮捕にも対応しています。
まずはお気軽にご相談ください。

親子喧嘩をきっかけに逮捕されてしまった

2021-11-01

親子喧嘩をきっかけに逮捕されてしまった

親子喧嘩をきっかけに逮捕されてしまったというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府舞鶴市に住んでいるAさん(20代男性)と母親のVさん(50代女性)は、ある日、親子喧嘩をしました。
最初は言い合っていた2人ですが、ついついヒートアップし、取っ組み合いになってしまいました。
騒ぎに気付いた近所の人が京都府舞鶴警察署に通報。
警察官が駆け付けた際、AさんはVさんに馬乗りになって押さえつけている状態でした。
そのため、警察官はAさんを暴行罪の容疑で逮捕
AさんもVさんも、まさか親子喧嘩によって逮捕されてしまうとは思わず、困惑してしまいました。
そこで、父親であるBさんが、刑事事件を取り扱っている弁護士逮捕について相談し、今後どのようにすべきかアドバイスを求めてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・親子喧嘩から逮捕に発展?

この記事を読まれている方の中にも、親子喧嘩をしたことがあるという方はいらっしゃるでしょう。
そんな親子喧嘩から刑事事件に発展し、逮捕されるという事案は、実際のところ少なからず起きています。
上記事例のように、親子喧嘩がヒートアップしてつい手が出てしまったというようなケースで、他のご家族の方が不安に思って警察へ通報されたり、近所の方が騒ぎに気付いて通報されたりといった形で警察が臨場し、現行犯逮捕されることもあるようです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にも、そういった親子喧嘩をきっかけとして逮捕に至ったケースのご相談・ご依頼は寄せられています。

親子喧嘩となると、身内で起きた単なる喧嘩とあって、そう大事にならないだろうと考える方も少なくありません。
しかし、ただの親子喧嘩がヒートアップしただけであっても、暴力をふるってしまえば刑法における暴行罪や傷害罪が成立します。
たとえ加害者と被害者が血縁関係であっても、暴行罪や傷害罪の成立に影響はありませんから、親子喧嘩から暴行事件や傷害事件になってしまうことは十分考えられる話なのです。

刑法第204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法第208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

しかし、今回の事例のように、当事者同士が親子喧嘩の延長線上であるとしか認識していなかったような場合には、当事者同士はもちろん、他のご家族の方も、刑事事件となり逮捕された状況に大きく困惑してしまうことでしょう。
だからこそ、こうした時には早期に弁護士に相談することをおすすめいたします。

親子喧嘩をきっかけとした刑事事件の場合、加害者と被害者が同居しているケースも多いため、加害者と被害者の接触を避けるなどのために、逮捕などの身体拘束を伴った捜査となることもあります。
逮捕されてしまったら、すぐに弁護士に相談してみることをおすすめいたします。
今回の事例のAさんとVさんのように、当事者自身が処罰感情を抱いていないという場合には、第三者かつ専門家である弁護士がその旨を丁寧に聞き取って証拠化する、今後同じようなことの起きないよう再犯防止策を練るなどして、釈放や寛大な処分の獲得に向けて活動することになるでしょう。
特に釈放を求めるタイミングには限りがあるため、逮捕直後から弁護士に相談しておくことで、釈放を求めるタイミングをフルにいかすことが期待できるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、親子喧嘩をきっかけとした逮捕にも迅速に対応しています。
京都府刑事事件のご相談・ご依頼はお気軽にお問い合わせください。

監禁致傷罪の刑罰の重さは?

2021-10-21

監禁致傷罪の刑罰の重さは?

監禁致傷罪の刑罰の重さについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市左京区に住んでいる会社員の男性Aさんは、同じ会社で働いている同僚の女性Vさんを自宅に呼び、一緒に食事していました。
Aさんは、Vさんのことを好ましく思っていたこともあり、もっと長時間一緒に過ごしたいと考え、Vさんの飲み物に睡眠薬を入れ、Vさんの意識を失わせると、翌朝まで自宅から出られないようにしました。
Vさんは、意識を取り戻すと自力でAさん宅から出ると、近くにあった京都府下鴨警察署の交番に助けを求めました。
Aさんは、監禁致傷罪の容疑で京都府下鴨警察署に逮捕されることになり、Aさんの家族は逮捕の連絡を受け取ってすぐ、京都市の逮捕に対応している弁護士に相談することにしました。
(※令和3年10月12日YAHOO!JAPANニュース配信記事を基にしたフィクションです。)

・監禁致死傷罪の刑罰の重さは?

今回の事例のAさんは監禁致傷罪の容疑で逮捕されていますが、Aさんのように刑事事件を起こして逮捕されてしまった状況において、被疑者本人やその家族が心配する大きなことの1つとして挙げられるのが、有罪になった場合の刑罰の重さがどれほどになるのかということでしょう。
罰金を支払って終わりとなるのか、それとも正式裁判となって公開の法廷に立つことがあるのか、そこで有罪となったら執行猶予が付く可能性があるのか、それとも実刑となって刑務所に行くことになるのか、将来に大きく関わることだからこそ、関心も高く不安も大きいでしょう。

ここで、監禁罪監禁致死傷罪の刑罰について確認してみましょう。

刑法第220条(逮捕及び監禁罪)
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

刑法第221条(逮捕及び監禁致死傷罪)
前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

監禁罪の刑罰が「3月以上7年以下の懲役」と定められているのに対し、監禁致死傷罪の刑罰は、「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」と定められています。
監禁罪のように「3月以上7年以下の懲役」とされていれば、どれほどの重さの刑罰か想像しやすいですが、「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」と言われても、刑罰の重さがどのくらいの範囲でさだめられているのか分かりづらいという方も多いでしょう。
「傷害の罪と比較して」とは、監禁致傷罪監禁致死罪それぞれの場合について、刑法の傷害の罪、すなわち傷害罪と傷害致死罪それぞれと比較して重い刑罰である方で処断することを指しています。

例えば、監禁致傷罪の場合を検討してみましょう。
刑法の傷害罪は以下のように刑罰を定めています。

刑法第204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪の刑罰として定められているのは「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」となりますから、これと監禁罪の「3月以上7年以下の懲役」という刑罰を比較していくことになります。
これらを比較すると、刑罰の下限は監禁罪の「3月以上」「の懲役」の方が重く、上限は傷害罪の「15年以下の懲役」が重いことが分かります。
このことから、それぞれ重い部分を取り、監禁致傷罪の刑罰は「3月以上15年以下の懲役」ということになるのです。
なお、監禁致死罪の場合は、「3年以上の有期懲役」となります。

刑法では、執行猶予を付すことのできるのは言い渡された刑が3年以下の懲役であることが条件であるとされていますが(刑法第25条)、監禁致傷罪で有罪となった場合、先述の「3月以上15年以下の懲役」の範囲で刑罰が言い渡されることになりますから、言い渡される刑罰の重さ次第では執行猶予を付けることができるということになります。
ですから、早い段階から示談交渉などの被害者対応や、カウンセリングの受診などの再犯防止策の構築など、執行猶予獲得のための準備をしていくことが重要と言えるでしょう。

刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、逮捕直後から被疑者やその家族のサポートを開始することができます。
監禁致傷事件などの刑事事件にお悩みの際は、お早めに弊所弁護士までご相談ください。

睡眠薬を飲ませて監禁致傷事件に

2021-10-18

睡眠薬を飲ませて監禁致傷事件に

睡眠薬を飲ませて監禁致傷事件に発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市左京区に住んでいる会社員の男性Aさんは、同じ会社で働いている同僚の女性Vさんを自宅に呼び、一緒に食事していました。
Aさんは、Vさんのことを好ましく思っていたこともあり、もっと長時間一緒に過ごしたいと考え、Vさんの飲み物に睡眠薬を入れ、Vさんの意識を失わせると、翌朝まで自宅から出られないようにしました。
Vさんは、意識を取り戻すと自力でAさん宅から出ると、近くにあった京都府下鴨警察署の交番に助けを求めました。
Aさんは、監禁致傷罪の容疑で京都府下鴨警察署に逮捕されることになり、Aさんの家族は逮捕の連絡を受け取ってすぐ、京都市の逮捕に対応している弁護士に相談することにしました。
(※令和3年10月12日YAHOO!JAPANニュース配信記事を基にしたフィクションです。)

・監禁罪・監禁致傷罪とはどんな犯罪なのか?

今回の事例のAさんは、Vさんに睡眠薬を飲ませて意識を失わせ、それによってAさんの自宅からVさんを出られないようにしたという行為によって監禁致傷罪の容疑をかけられ逮捕されています。
Aさんの逮捕容疑である監禁致傷罪は、刑法で以下のように定められている犯罪です。

刑法第220条(逮捕及び監禁罪)
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

刑法第221条(逮捕及び監禁致死傷罪)
前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

刑法第221条の「前条の罪」は、刑法第220条に定められている逮捕罪及び監禁罪のことを指します。
つまり、監禁罪を犯し、そのことによって人を傷害した場合に、今回問題となっている監禁致傷罪が成立するということになります。

では、そもそも監禁罪における「監禁」とはどういった行為を指すのでしょうか。
監禁罪における「監禁」とは、一定の場所から脱出できないように相手の移動の自由を奪うことを指すと考えられています。
なお、手足を縛るといった直接的な強制力を使って相手の移動の自由を奪った場合は、同じ刑法第220条に定められている「逮捕」の方に当たると考えられています。

ですから、「監禁」の具体例としては、部屋に閉じ込める、自動車の中に閉じ込めるといったケースが考えられます。
そして、その「監禁」が行われる方法としては、部屋に鍵をかけるといったケースが思いつきやすいですが、それ以外にも、相手を乗せた自動車やバイクを高速で走行させる、脅迫によって恐怖心をあおり心理的に動けなくする、睡眠薬を飲ませて意識を失わせることで移動を不可能にするといった方法が挙げられます。

こうした「監禁」を「不法に」行うことで監禁罪が成立します。
「不法に」とは、正当な理由がなく行われることを指します。
例えば、警察官が被疑者を逮捕するという行為は、確かに「逮捕」に当たる行為ですが、刑法・刑事訴訟法に基づいた正当な行為であるため、「不法に」行われたものではない=逮捕罪には当たらないということになります。

今回のAさんについては、睡眠薬によってVさんの意識を失わせてAさんの自宅から出られないようにしている上、その行為は正当な理由があって行われたものではないため、「不法に」人を「監禁」しているものと考えられ、まずは監禁罪が成立すると考えられます。

・睡眠薬で眠らせる=「傷害」に?

先ほど、「監禁致傷罪監禁罪を犯したことによって人を傷害したときに成立する」ということを確認し、今回の事例のAさんにはひとまず監禁罪は成立しそうだというところまで検討しました。
今回の事例のAさんは監禁致傷罪の容疑で逮捕されていますから、監禁罪を犯したことでVさんを傷害したと疑われていることになります。
ここで、「Vさんに怪我を負わせているわけでもないのに傷害したことになるのか?」と疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、「傷害」や「致傷」といった言葉からは、流血を伴う切り傷や擦り傷、骨折などの物理的で分かりやすい怪我を思い浮かべやすいです。
しかし、刑法でいわれる「傷害」とは、人の生理的機能に障害を与えることであると解されています。
つまり、先ほど例として挙げた切り傷や擦り傷、骨折などの物理的に分かりやすい怪我だけでなく、意識障害なども「障害」に当てはまるのです。

今回のAさんは、Vさんを監禁するにあたって、Vさんに睡眠薬を飲ませることでVさんの意識を失わせるという意識障害を引き起こしています。
そのため、Aさんの行為は監禁罪を犯したことによってVさんを傷害した=監禁致傷罪にあたると考えられるのです。

刑事事件では、言葉のイメージから実際に成立する犯罪と想像していた犯罪が異なってしまうことがあります。
自分にかけられた容疑をきちんと把握しながら刑事手続きに対応していくことも重要なことですから、早い段階から専門家である弁護士に相談し、自分にかけられた容疑が何であるのか、なぜその容疑をかけられているのかを把握しておきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が逮捕直後から相談者様をサポートします。
まずはお気軽にご相談ください。

少年によるDV事件

2021-09-20

少年によるDV事件

少年によるDV事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

〜事例〜

Aさんは、京都市上京区に住んでいる17歳の男子高校生です。
Aさんは、母親と兄弟と一緒に生活していましたが、気にくわないことがあると日常的に母親に対して暴力をふるっていました。
ある日、Aさん宅から激しい物音を聞いて不審に思った隣人が通報したことで、Aさんは暴行罪の容疑で京都府上京警察署逮捕されてしまいました。
Aさん逮捕の連絡を聞いたAさんの祖父母は、家庭内のトラブルが警察沙汰になったことに驚くと同時に、今後どのように対応すべきなのか分からず、困ってしまいました。
そこでAさんの祖父母は、京都府少年事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・DVと少年事件

DVとは、「domestic violence」の略であり、いわゆる家庭内暴力のことを指します。
DVというと、親が子どもに対して暴力を振るうなどするケースが思い浮かびやすいですが、あくまで「家庭内」の暴力であることから、大人が子どもに対して行うものと限定されているわけではありません。
今回の事例のAさんのように、子どもから親への暴力、子どもから大人に対して行うDVも存在します。

令和2年版犯罪白書によると、少年によるDVの認知件数は、平成24年から毎年増加しており、令和元年に認知された少年によるDVは3,596件だったそうです。
令和元年に認知されたDVを就学・就労別に見ると、一番多いのは中学生によるDV(1,525件)であり、その次に高校生(1,082件)、小学生(631件)となります。
特に近年は小学生によるDVが大きく増加しており、前年度に比較して40%も増加しているという数値が出ています。
そして、家庭内暴力の対象としては(同居の家族に限る)、母親が2,187件と最も多く、次いで父親が403件、兄弟姉妹が329件となっています。
さらに、家財道具等に暴力を振るうケースも465件認知されています。
こうした数値を見ると、子どもによるDVは少ないものではないということが分かりますし、近年では小学生という低年齢の子どもによるDV事案も少なくない数があるということが分かります。

DV事件、特に子どもによるDV事件では、「家庭内のトラブルだから大事にはならない」「子どもが反抗しているだけで大したことではない」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、人に暴力を振るう行為は刑法の暴行罪(刑法第208条)に、暴力によって人に怪我をさせれば傷害罪(刑法第204条)となります。
その他にも、DVの態様によっては、器物損壊罪や侮辱罪、名誉毀損罪など、様々な犯罪に触れる可能性があります。
家庭内で起こったこととはいえ、犯罪になることであれば刑事事件少年事件となりうることであり、警察などの捜査機関や裁判所が絡む話になってくるのです。

今回のAさんのような未成年者の起こした少年事件では、少年のその後、更正できる環境を整えることが重要です。
DV事件のように生活の拠点である家庭で起きた少年事件では、特にその環境調整活動に力を入れる必要がありますが、家族が当事者となるため、なかなか当事者だけで今までの問題を解決し環境を改善することは難しいことも多いです。
だからこそ、少年事件を取り扱う専門家の弁護士のフォローを受けながら手続きに臨んでいくことが望ましいと考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、子どもによるDV事件についてもご相談・ご依頼を承っています。
京都府少年事件にお困りの際は、お気軽にご相談ください。

半グレ同士の喧嘩で傷害事件

2021-09-13

半グレ同士の喧嘩で傷害事件

半グレ同士の喧嘩で傷害事件を起こしてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府木津川市に住む18歳のAさんは、自身の通う高校の卒業生であり、素行のよくないBさんらが組織する、いわゆる半グレ集団に所属していました。
Aさんは半グレの仲間たちとたびたび夜間に外出したり学校をさぼったりしていました。
ある日、京都府木津川市内で、Aさんが所属している半グレグループとは異なる半グレグループXと喧嘩になってしまい、AさんはBさんらと一緒になって半グレグループXに所属している人たちを殴ったり蹴ったりして暴行し、怪我を負わせてしまいました。
喧嘩を目撃した人が通報したことにより、Aさんは半グレの仲間たちと一緒に京都府木津警察署に傷害罪の容疑で逮捕されることになりました。
Aさんは自身が逮捕されるほどの大事を起こしてしまったことに動揺し、両親が逮捕を知って悲しんでいることを知って、半グレから抜けて更生したいと思っているようです。
(※この事例はフィクションです。)

・「半グレ」とは?

ニュースなどで「半グレ」「半グレ集団」といった言葉を耳にしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
半グレは、暴力団に所属せずに犯罪を繰り返す不良集団のことを指しているとされています。
半グレの「グレ」は、不良などになることを指す「グレる」という言葉や、暴力団に所属していないながらも犯罪を繰り返すことから「グレーゾーン」であることなどによるとされています。

この半グレは、暴力団とは異なりその構成は若者が中心となっているといわれています。
暴力団のように上下関係がはっきりしてピラミッドのように組織が作られているわけではなく、暴走族等からそのまま半グレに移行したり、年代でまとまったりして半グレになったりということもあるようです。
そのため、先輩後輩関係から10代で半グレ集団と関わってしまうこともあると考えられるのです。

・喧嘩による傷害事件

多くの場合、人に暴力をふるえば刑法の暴行罪が、それによって相手に怪我をさせてしまえば傷害罪が成立します。
殴る蹴るの喧嘩となった場合、これらの犯罪の成立が考えられます。

刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

今回のAさんは18歳であるため、少年事件として扱われ、基本的に刑罰を受けることにはならないと考えられます。
しかし、成人の刑事事件として考えれば、集団で暴行をはたらいたことによる傷害事件は悪質性・危険性の高い犯行であると判断され、厳しい処分が下される可能性も考えられます。

・半グレと少年事件

先ほど触れたように、半グレの構成は若者が多いことから、10代の未成年者であっても半グレに所属してしまう可能性はあります。
Aさんも半グレに所属しており、そこで傷害事件を起こしてしまっているようです。

先述したように、未成年者が犯罪をしてしまった場合には、少年事件として処理されていくことになります。
少年事件で重視されるのは、少年自身が更生するのに適切な環境が整えられるのか否かということです。
例えば、半グレに所属して少年事件を起こしてしまったのに、その半グレとの関係を断ち切れない、断ち切る気がないといった環境のままでは、少年を現在の環境に戻して更生させることは難しいと判断されてしまいやすいと考えられます。

今回のAさんのような少年事件では、Aさん自身がやってしまったことを反省し、被害者への謝罪の気持ちをもつことはもちろんですが、これからの生活でどのような点を改めて再犯を防止していくのかということも重要なのです。

そうした環境の調整やその調整活動の証拠化には、少年事件に強い弁護士のサポートが心強いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、少年事件も専門に扱う弁護士が初回無料法律相談や初回接見サービスも行っておりますので、まずはお問い合わせください(0120-631-881)。

触法少年と児童相談所

2021-08-26

触法少年と児童相談所

触法少年児童相談所について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府八幡市の中学校に通う12歳のAさんは、ある日、近所に住んでいる女性Vさんに注意されたことをきっかけにVさんと口論になりました。
そして、AさんはVさんに対して暴行を加え、Vさんに全治1ヶ月の大けがを負わせてしまいました。
その様子を目撃した通行人が京都府八幡警察署に通報たことで、京都府八幡警察署の警察官が現場へ駆け付け、Aさんを要保護児童として一時保護し、児童相談所に通告することにしました。
京都府八幡警察署からの連絡でAさんが児童相談所に保護されたことを知ったAさんの家族は、少年事件を取り扱っている弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・触法少年事件と一時保護

14歳未満の少年が犯罪に該当する行為を行った場合、触法少年事件と呼ばれ、その少年のことは触法少年と呼ばれます。
刑法では、14歳未満の者について刑事責任能力をないものとし、罰しないとしています。

刑法第41条
14歳に満たない者の行為は、罰しない。

そのため、14歳未満の少年が犯罪に該当する行為をした場合、つまり、触法少年事件の場合、触法少年が逮捕されることはありません。
つまり、14歳未満の少年が犯罪に該当する行為をしたとしても、刑法上14歳未満は刑事責任能力がないとされてることからそもそも犯罪が成立しないため、逮捕できないのです。

では、触法少年少年事件を起こしても全く身体拘束を受けることがないのかというと、そうではありません。
児童福祉法では、児童相談所長が必要と認める時には「一時保護」を行う、または行わせることができるとされています。

児童福祉法第33条第1項
児童相談所長は、必要があると認めるときは、第26条第1項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。

このうち、「第26条第1項の措置」とは、児童やその保護者を福祉施設へ送致する等の措置を指します。

上記事例のAさんも、要保護児童(保護の必要がある児童)として一時保護されています。
一時保護は原則として保護者や子ども自身の同意が必要ですが、子どもを放置することでその子どもの福祉を害すると判断された場合はその限りでないとされています(児童相談所運営指針より)。

・児童相談所への通告

先ほど挙げたように、刑法第41条の規定により、14歳未満の者が犯罪に該当する行為をしても犯罪は成立しない(罰せられない)ということになります。
しかし、刑法上犯罪が成立しない(罰せられない)からといって、少年事件を起こした触法少年に対して何の手続きも処分もなく少年事件が終わるということではありません。

少年法では、触法少年について、警察官の調査の結果、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」、「死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪」に触れると考えられるときや、「家庭裁判所の審判に付することが適当であると思料するとき」に、児童相談所長に事件を送致しなければならないとされています。

少年法第6条の6第1項
警察官は、調査の結果、次の各号のいずれかに該当するときは、当該調査に係る書類とともに事件を児童相談所長に送致しなければならない。
第1号 第3条第1項第2号に掲げる少年に係る事件について、その少年の行為が次に掲げる罪に係る刑罰法令に触れるものであると思料するとき。
イ 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪
ロ イに掲げるもののほか、死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪
二 前号に掲げるもののほか、第3条第1項第2号に掲げる少年に係る事件について、家庭裁判所の審判に付することが適当であると思料するとき。

さらに、児童福祉法では、要保護児童を発見した者は、児童相談所へ通告しなければならないとされています。

児童福祉法第25条第1項
要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
ただし、罪を犯した満14歳以上の児童については、この限りでない。
この場合においては、これを家庭裁判所に通告しなければならない。

この児童相談所への通告を要する要保護児童とは、「保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童」(児童福祉法第6条の2第8項)とされています。
この要保護児童の定義には、不良行為や犯罪行為をしたり、そういった行為をするおそれのある児童を含みますから、触法少年も要保護児童に該当するケースが多いのです。

そして、この児童相談所への通告や送致がなされると、そこから、触法少年に対してどのような処遇がなされるのか決定されます。
具体的には、訓戒を与えたり、児童自立支援施設等に入所させたり、家庭裁判所に送致して審判を受けたりという処遇が挙げられます。
このうち、家庭裁判所へ送致されて審判を受けるということになれば、それまでの期間に家庭裁判所調査官からの調査を受け、少年事件を起こしてしまった原因や今後少年が再犯をせずに更生するために必要なことを専門的に探っていくことになります。
その後、少年の更生に適切であると考えられる処分、例えば少年院や児童自立支援施設への送致や保護観察処分などが下されることになります。

少年事件では、少年の更生により適切な環境・処分となるよう、少年自身だけでなく少年の周りの環境も整えていく必要があります。
この環境調整活動は、当事者のみで行うよりも専門家のサポートを受けて行っていくことでより効果的なものになると考えられます。
さらに、今回のAさんの事例のように、被害者が存在する少年事件では被害者対応も必要となってくるでしょうから、まずは少年事件を取り扱っている弁護士に相談してみることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、触法少年事件を含む少年事件・刑事事件を取り扱っています
少年事件は成人の刑事事件とは異なる手続きや処分があることでイメージしづらい部分も多いですが、触法少年事件となるとより一般の方に分かりづらくなってしまうおそれもあります。
まずは弁護士の話を聞くだけでも少年事件の全体像を把握しながら手続きに臨むことが期待できますから、お気軽にご相談ください。

夫婦喧嘩で逮捕されたら

2021-08-12

夫婦喧嘩で逮捕されたら

夫婦喧嘩逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

~事例~

京都府宇治市に住んでいるAさんは、妻であるVさんと2歳娘であるBちゃんとともに暮らしていました。
Bちゃんの世話はVさんが主になって行っていましたが、Aさんも平日の家事や食事の支度を積極的に行うなして生活していました。
しかしある日、酒を飲んだAさんとVさんはBちゃんの教育方針について言い争いになり、夫婦喧嘩に発展してしまいました。
そして、カッとなったAさんは、勢いにまかせてVさんの首をしめてしまいました。
Vさんは痛みを感じ、大声で助けを呼びました。
Vさんの悲鳴を聞いた近所の人が110番したことで、京都府宇治警察署の警察官が駆け付けました。
Vさんの首には爪のひっかき跡ができたのみで他に怪我は残りませんでしたが、VさんがAさんから首を狙われたと言っていたことから、Aさんは殺人未遂罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、Aさんが殺人未遂罪逮捕されたと聞いて驚き、急いで刑事事件に対応している弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・夫婦喧嘩から殺人未遂事件に?

今回のAさんは、殺人未遂罪の容疑で逮捕されてしまっています。

刑法第199条
人を殺した者は、死刑又は無期もしくは7年以上の懲役に処する。

殺人罪で問題とされる行為のことを、殺人の実行行為といいます。
この殺人の実行行為は、死亡結果を生じさせる現実的危険性を有する行為をいいます。
この行為に当たるかは、その行為の態様、創傷した部位や程度などを考慮して判断されます。
典型的には、人の腹の中心をナイフで刺すような行為は、人を死亡させる危険性の高い行為といえますから、殺人の実行行為と認められます。

今回のAさんの事例で考えてみましょう。
体の生命維持の中でも最も大事な器官の一つである首を力のある男性=Aさんが絞めたとなれば、被害者=Vさんが死んでしまう可能性は否定できないと思われます。
そうなると、AさんがVさんの首を絞めた力や時間などにもよりますが、Aさんの行為が殺人罪の実行行為であると捉えられる可能性もあるということになります。

ここで、未遂犯について確認しておきましょう。
未遂犯は、その犯罪の実行行為をしたものの、その犯罪の構成要件的結果が発生しなかった場合に成立します。

刑法第43条
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。

未遂犯は全ての犯罪に成立するわけではなく、個別に定められます。
つまり、未遂犯の規定がない犯罪では、未遂犯は成立しないということです(例えば、暴行罪に未遂犯は規定されていませんから、暴行未遂罪はありません。)。
殺人罪については、以下のように未遂犯が規定されています。

刑法第203条
第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。

今回のAさんの逮捕容疑である殺人罪では、犯罪の結果となるのは被害者の死亡事実です。
Aさんの行為が殺人罪の実行行為に当たると仮定しても、今回の事例でVさんは軽傷を負ったのみで死亡していません。
つまり、被害者の死亡という殺人罪の結果が発生していませんので、条文の条件だけ見れば、Aさんには殺人未遂罪が成立する可能性があるということになります。

しかし、今回の事例では、AさんとVさんのトラブルはあくまで夫婦喧嘩であり、Aさんには殺意がない=殺人罪の故意がなかったと考えられます。
殺人罪殺人未遂罪も、成立するには故意が必要ですから、Aさんに殺人罪の故意がないのであれば殺人未遂罪は成立しないことになります。

ですが、Aさんの逮捕容疑は殺人未遂罪ですから、捜査機関としてはひとまずAさんに殺人未遂罪が成立するとして事件を捜査することになるでしょう。
ですから、Aさんに殺人罪の故意がなかったことなどからAさんには殺人未遂罪が成立しないことや、成立するにしてもVさんに怪我を負わせたことによる傷害罪にとどまることなどをきちんと主張し対応していく必要があると考えられます。
そのためには、逮捕直後から始まると予想される取調べへの対応や、再犯防止策の構築などに早期から取り組んでいくことが必要です。
だからこそ、事件が起こってからなるべく早い段階で弁護士に相談・依頼することが重要なのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、夫婦喧嘩から刑事事件に発展したケースについてのご相談・ご依頼も承っています。
夫婦喧嘩が発端とはいえ、事件態様によっては今回のAさんのケースのように殺人未遂罪という重大犯罪の容疑がかかってしまうこともあります。
そういった時こそ専門家のサポートを受けることが大切ですから、まずはお気軽にお問い合わせください。

殺人未遂事件の逮捕も弁護士へ

2021-08-05

殺人未遂事件の逮捕も弁護士へ

殺人未遂事件逮捕弁護士に相談するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府向日市に住んでいるVさんのことをひどく恨んでいました。
ある日、AさんはついにVさんを殺してやろうと思い立ち、毒物を混入したワインをVさん宛に発送しました。
宅配業者が預かったワインは、配達当日にVさんが不在のため宅配業者の事業所で保管されていましたが、後日、Vさんのもとに届けられました。
受け取ったワインを飲んだVさんは、混入していた毒物のせいで病院に入院する事態に陥りましたが、命に別状はありませんでした。
後の警察の捜査では、ワインに混入された毒は致死量の9割しかありませんでした。
その後、捜査の結果、Aさんがワインに毒物を入れたことが発覚し、Aさんは殺人未遂罪の容疑で京都府向日町警察署逮捕されました。
(※この事例はフィクションです)

・隔離犯

今回のAさんの事例では、Aさんがワインに毒物を仕込み、それを宅配業者に配達させ、後日そのワインを受け取って飲んだVさんを殺そうとしています。
こうしたケースを隔離犯と呼ぶこともあります。
離隔犯とは、行為と結果発生との間に時間的・場所的な間隔が存在する場合のことをいいます。

離隔犯に関わる刑事事件では、行為者が意図しない客体を巻き込んでしまったり、結果の発生時期が前後することなどが考えられます。

・不能犯

不能犯とは、およそ結果が発生する可能性のない行為を行うことで犯罪を実現しようとする場合のことをいいます。
例えば、塩を劇薬であると勘違いして毒殺を図るような場合が不能犯のケースに当たります。
行為者が構成要件に該当する行為を行ったつもりでも、もし不能犯であると認められれば未遂も成立せず処罰されることはありません。

今回のケースでは、Aさんは毒物を混入したワインをVさんに飲ませることで殺害しようとしています。
しかし、ワインに混入された毒の量は致死量の9割にとどまるものでした。
AさんはVさんを殺害しようと考えていますので、殺人未遂罪(刑法第199条、同法第203条)の適用が考えられます。
殺人未遂罪の量刑は殺人罪の法定刑である死刑または無期もしくは5年以上の懲役のうち、刑法第43条によって減軽されたものが言い渡されます。
もっとも、未遂犯だからといって刑法第43条によって必ず減免されるわけではありません。

繰り返しになるかもしれませんが、不能犯に当たるかどうかは、基本的にはある行為が構成要件的結果を発生させる具体的な危険を有するかどうかによって判断されます。
今回のケースでも、毒が致死量の9割にすぎないとはいえ、実際にVさんが入院する事態にまで至っていることから、Vさんの体調などの状況によって死亡するリスクも考えられるというような場合には、特にAさんがVさんに毒入りのワインを飲ませた行為が殺人罪の実行行為に当たるとして殺人未遂罪の成立が肯定される可能性は十分にあります。

・「実行の着手」

先ほど「AさんがVさんに毒入りのワインを飲ませた行為が殺人罪の実行行為に当たる可能性がある」と触れましたが、刑法上、具体的にどの行為が実行行為の始まり=「実行の着手」に当たるかが重要になります。

犯罪は行為について成立するものなので、まだ構成要件該当行為がなされていない実行の着手以前の段階では、未遂犯を含めて犯罪が成立し処罰されることはありません。
ただし、殺人罪や強盗罪といった一部の犯罪については実行の着手前であっても準備行為を処罰するものとして予備罪が設けられています。
殺人予備罪(刑法第201条)の法定刑は2年以下の懲役で、但し書きにより刑を免除することができるとされています。

実行の着手時期については学説上様々な見解があり、大きく主観説と客観説の2つに分類されます。
主観説は、客観的事情によって犯意の存在を確定的に認定できる行為が行われた時点を実行の着手時期とする考えです。
客観説は、さらに形式的客観説と実質的客観説に分けられます。
形式的客観説は、実行行為そのものに先行しこれと密接不可分な行為の開始時点を実行の着手時期とします。
例えば、物を盗むためにその物に手を伸ばす行為が行われた時点などが実行の着手時期となります。
対して、実質的客観説は、構成要件の実現や法益侵害の現実的危険性が認められるときに実行の着手があるものとする考えです。

従来の判例の考え方は形式的客観説の立場に立ったものでしたが、実質的客観説に従ったものと考えられるような判例も存在します(最決昭和40.3.9)。

今回のケースについて客観説をベースに検討すると、Aさんが毒入りワインを発送し宅配業者の下で保管されている段階では、まだVさんが死亡する現実的危険性がなく、Vさんを死亡させるに密接な行為とも言い難いため、殺人罪の「実行の着手」は認められないでしょう。
殺人罪の「実行の着手」が認められるのは、Vさんがワインを受け取りいつでも飲める状態になった段階あるいは実際に飲もうとしている段階に求められることになります。
いずれにせよ、Vさんはワインを飲んでしまっているので殺人未遂罪が成立するものと考えられます。

不能犯として不可罰となるか可罰的未遂となるのか、あるいは実行の着手前であるとして不可罰となるのか実行の着手ありとして可罰的となるのかは大きな違いです。
これらの判断は法律の専門家でも難しい場合が多く、事件の解決や処罰を回避できる可能性を高めるためには刑事事件を数多く扱った経験のある弁護士の知識や分析の提供を受けることが必要になります。

殺人未遂罪の被疑者となってしまった方、京都府向日町警察署で取調べを受けることになってしまった方は、お早めに、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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