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お屠蘇を飲んで飲酒運転②

2020-01-05

お屠蘇を飲んで飲酒運転②

お屠蘇を飲んで飲酒運転をしてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府木津川市に住んでいるAさんは、元旦にあった親戚の集まりでお屠蘇を飲みました。
Aさんはその集まりに車で来ていたのですが、Aさんは酒に弱かったため、お屠蘇も少ししか飲んでいませんでした。
Aさんは、「お屠蘇を少し飲んだだけだし大丈夫だろう」と考え、親戚の集まりから家に帰る際にも乗ってきた自動車を自分で運転して帰りました。
しかしその道中、飲酒運転のための交通検問をしていた京都府木津警察署の警察官から車の停止を求められ、検査を求められました。
これに応じたAさんでしたが、呼気検査ではアルコール数値は基準値を下回っていたものの、まっすぐ歩けずよれつが回らないなどの状態であったため、飲酒運転をした容疑で京都府木津警察署で話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・飲酒運転をした人でなくとも犯罪に?

前回の記事では、飲酒運転が「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」に分かれ、さらに「酒酔い運転」の場合には、アルコール値が基準値を下回っていても飲酒運転とされるケースがあることを説明しました。
今回は、Aさんのケースにおいて、Aさん以外の人に犯罪が成立する可能性について触れていきます。

今回の事例のAさんは、お屠蘇を口にして酔っ払い飲酒運転をし、京都府木津警察署の警察官に酒酔い運転であると判断されたようです。
Aさんは実際に飲酒運転をしてしまっていますから、Aさんの状況によっては酒酔い運転として検挙されることは自然に思えるでしょう。
しかし、事例をよく見ると、実はAさん以外にも犯罪が成立する可能性があるのです。

道路交通法では、飲酒運転をした本人だけでなく、飲酒運転に関わった人も処罰する規定があります。

道路交通法65条
1項 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
2項 何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
3項 何人も、第1項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
4項 何人も、車両(トロリーバス及び旅客自動車運送事業の用に供する自動車で当該業務に従事中のものその他の政令で定める自動車を除く。以下この項、第117条の2の2第6号及び第117条の3の2第3号において同じ。)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第1項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。

道路交通法117条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
2号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第2項の規定に違反した者(当該違反により当該車両等の提供を受けた者が酒に酔つた状態で当該車両等を運転した場合に限る。)

道路交通法117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
4号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第2項の規定に違反した者(当該違反により当該車両等の提供を受けた者が身体に前号の政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態で当該車両等を運転した場合に限るものとし、前条第2号に該当する場合を除く。)
5号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第3項の規定に違反して酒類を提供した者(当該違反により当該酒類の提供を受けた者が酒に酔つた状態で車両等を運転した場合に限る。)
6号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第4項の規定に違反した者(その者が当該同乗した車両の運転者が酒に酔つた状態にあることを知りながら同項の規定に違反した場合であつて、当該運転者が酒に酔つた状態で当該車両を運転したときに限る。)

飲酒運転については、このように飲酒運転のおそれがあるにもかかわらず車を提供したり、運転を頼んで同乗したり、酒を勧めたりし、最終的にその人が飲酒運転をしてしまった場合には、飲酒運転をした本人でなくとも道路交通法違反となってしまうのです。
お正月となれば、新年会や親せきの集まりなどがある方も多く、その席で飲酒することもあるでしょう。
しかし、車を運転する人に安易にお酒を勧めたり、少しの飲酒だから大丈夫と飲酒運転を容認したりすれば、自分も道路交通法違反で検挙されてしまう可能性が出てきます。
おめでたい席だからこそ、刑事事件に巻き込まれないよう注意しましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、年末年始も弁護士による初回無料法律相談・初回接見サービスを受け付けています。
飲酒運転に関連した刑事事件にお困りの際は、遠慮なくご連絡ください(0120-631-881)。

お屠蘇を飲んで飲酒運転①

2020-01-03

お屠蘇を飲んで飲酒運転①

お屠蘇を飲んで飲酒運転をしてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府木津川市に住んでいるAさんは、元旦にあった親戚の集まりでお屠蘇を飲みました。
Aさんはその集まりに車で来ていたのですが、Aさんは酒に弱かったため、お屠蘇も少ししか飲んでいませんでした。
Aさんは、「お屠蘇を少し飲んだだけだし大丈夫だろう」と考え、親戚の集まりから家に帰る際にも乗ってきた自動車を自分で運転して帰りました。
しかしその道中、飲酒運転のための交通検問をしていた京都府木津警察署の警察官から車の停止を求められ、検査を求められました。
これに応じたAさんでしたが、呼気検査ではアルコール数値は基準値を下回っていたものの、まっすぐ歩けずよれつが回らないなどの状態であったため、飲酒運転をした容疑で京都府木津警察署で話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・飲酒運転とアルコール値

今回の事例のAさんは、呼気検査のアルコール値が基準値を下回ったにも関わらず、飲酒運転をした容疑で京都府木津警察署で話を聞かれることとなっています。
「アルコール値が基準値を下回っていれば飲酒運転にはならないのではないか」と不思議に思った方もいるかもしれません。
実は一般に言われている「飲酒運転」は、法律上2つの種類に分けられ、そのために今回のAさんのようなケースが起こりうるのです。

そもそも、道路交通法では以下のように飲酒運転が禁止されています。

道路交通法65条
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。

この条文からすれば、たとえ1滴でも酒を飲んでしまえば飲酒運転となり、道路交通法に違反することになります。
しかし、実際に処罰される飲酒運転は、道路交通法の以下の規定にあるものとなります。

道路交通法117条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
1号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあつたもの

道路交通法117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
3号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたもの

このうち、先にあげた道路交通法117条の2の1号に該当する飲酒運転を「酒酔い運転」、道路交通法117条の2の2の3号に該当する飲酒運転を「酒気帯び運転」と呼びます。
酒気帯び運転の条文にある「身体に政令で定める程度」が呼気検査などで確認されるアルコール値の基準値ということになります。
これは道路交通法施行令に詳しい数値が定められています。

道路交通法施行令44条の3
法第117条の2の2第3号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムとする。
※注:「法」とは道路交通法を指します。

この基準値を超えたアルコール値で運転した場合には、「酒気帯び運転」として飲酒運転となり、道交法違反として処罰されることになるのです。

さて、この「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」について、先ほど挙げた2つの条文をもう一度確認してみましょう。
酒気帯び運転」については今確認したようなアルコール値の基準値を超えるアルコール値が検出された場合に該当するものであると分かります。
対して、「酒酔い運転」については、条文内で特にアルコールの数値については触れられておらず、あくまで「その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)」としか定められていません。
つまり、「酒気帯び運転」が数値が引っかかれば飲酒運転として処罰されるのに対し、「酒酔い運転」はアルコール値に関係なく、「その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)」と認められるかどうかによって「酒酔い運転」の飲酒運転となるかどうかが判断されることになるのです。
そのため、Aさんのように酒に弱いような人の場合には、「酒気帯び運転」になるアルコール値に満たない程度の飲酒運転であっても、「酒酔い運転」と認められるケースが出てくるのです。
酒酔い運転」となるかどうかは、千鳥足になっていたりろれつがはっきりしなかったりといった部分を警察官が見て判断されるようです。

今回のAさんのように、少しの飲酒だから大丈夫といった考えで飲酒運転してしまうと、刑事事件として検挙され、被疑者として捜査されることにもなりかねません。
そもそも、飲酒運転によって事故を起こしてしまう可能性もあります。
飲酒運転は絶対にやめましょう。
それでも飲酒運転をしてしまった、刑事事件に発展してしまったという場合には、すぐに弁護士に相談し、飲酒運転事件への対応や再犯防止に取り組んでいきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、飲酒運転の絡む刑事事件にも対応しています。
お正月でも通常通り無料法律相談初回接見サービスのお問い合わせも受け付けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

京都府迷惑防止条例の改正~盗撮③

2019-12-20

京都府迷惑防止条例の改正~盗撮③

京都府迷惑防止条例の改正、特に盗撮行為に関する部分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都市左京区にある観光客が利用するホテルの従業員です。
Aさんは自身の働いているホテルの客室に盗撮用の小型カメラを仕掛け、ホテルの利用客の下着姿や裸姿を盗撮していました。
しかしある日、ホテルの利用客であるVさんがAさんの仕掛けた盗撮カメラの存在に気づき、ホテルに報告し、そこからAさんの盗撮行為が発覚しました。
ホテルやVさんが京都府川端警察署に通報したことにより、Aさんは盗撮事件の被疑者として取調べを受けることになりました。
(※この事例はフィクションです。)

・京都府迷惑防止条例の改正

前回までの記事で、京都府のホテルの客室での盗撮事件は、現在のところ京都府迷惑防止条例違反とはならないと考えられる、としていました。
しかし、つい先日、京都府迷惑防止条例の一部を改正する案が議会に提出されました。

参考として、現在の京都府迷惑防止条例盗撮に関する条文を挙げておきます。

京都府迷惑防止条例3条
1項 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
(略)
2項 何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、前項に規定する方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
1号 みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影すること。
2号 みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等をすること。
3号 みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を撮影すること。
3項 何人も、みだりに、公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある他人の姿態を撮影してはならない。

この改正は、近年悪質・巧妙化する盗撮事件に対応するための改正であるとされており、盗撮に関する改正内容は以下のようなものです(今回の改正案ではつきまといに関する物もありますが、それは省略します。)。

・「卑わいな言動」の規制の追加
スマートフォンによる卑わいな画像の送り付け行為など、現在規制されている行為態様以外の卑わいな言動を規制するために、「これらのほか卑わいな言動をすること」として規制するようです。

・盗撮行為に対する規制の拡充
現在の京都府迷惑防止条例では、盗撮行為を規制している場所が、大まかに言って「公共の場所・乗り物」若しくは「公衆が利用することができる場所」に限定されています。
しかし、「事務所、教室、タクシーその他不特定又は多数の者が出入りし、又は利用するような場所又は乗物」での下着等の盗撮行為を規制するほか、「住居、宿泊施設の客室、更衣室、便所、浴場その他人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」での裸体や下着姿の人に対する盗撮行為も規制する予定のようです。
つまり、今まで京都府迷惑防止条例違反となはらず、軽犯罪法違反や建造物侵入罪で対処されてきた盗撮行為も、この改正によって京都府迷惑防止条例違反として対処されることになりうるのです。

・盗撮の準備行為に対する規制の拡充
現在の京都府迷惑防止条例では、盗撮をしようとしてカメラ等を差し出したり置いたりする行為が規制されていますが(京都府迷惑防止条例3条2項2号)、これに加え、盗撮目的でカメラを人に向ける行為やカメラを設置する行為も規制されるようです。

・罰則の新設・強化
先ほど挙げた「卑わいな言動」や盗撮目的で人にカメラを向けるといった行為の規制は新しく追加されるものですから、これらの罰則を新設することになります。

現在も、東京都などの迷惑防止条例では、公共の場所・乗り物以外の場所での盗撮を規制している条文が見られますが、京都府の場合、特に特徴的なのは盗撮の規制場所に「宿泊施設の客室」を明記していることでしょう。
「宿泊施設の客室」がこういった盗撮の規制場所として明記されるのは、全国でも初めてとのことです。

この改正京都府迷惑防止条例が施行されれば、京都府内の盗撮行為によって成立する犯罪や罰則が、今までとは異なるものになることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
例えば、Aさんのケースでも、現在では建造物侵入罪や軽犯罪法違反に問われることが考えられるのは前回の記事で触れた通りですが、もしもこの改正京都府迷惑防止条例が施行された後の盗撮事件であれは、京都府迷惑防止条例違反として対処されることになるでしょう。

このように、迷惑防止条例といっても各都道府県で特色がみられ、さらに、近年盗撮行為の規制については改正が行われて規制が拡充される動きが多いです。
盗撮事件を起こして捜査される場合には、一度刑事事件に強い弁護士に相談し、自分がその都道府県の迷惑防止条例違反となるのかどうか、他の犯罪に当たるのかどうか、見通しや活動を聞いてみることがおすすめです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士がこうした刑事事件のお悩み・ご不安に対して丁寧にサポートを行います。
まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。

京都府迷惑防止条例の改正~盗撮②

2019-12-18

京都府迷惑防止条例の改正~盗撮②

京都府迷惑防止条例の改正、特に盗撮行為に関する部分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都市左京区にある観光客が利用するホテルの従業員です。
Aさんは自身の働いているホテルの客室に盗撮用の小型カメラを仕掛け、ホテルの利用客の下着姿や裸姿を盗撮していました。
しかしある日、ホテルの利用客であるVさんがAさんの仕掛けた盗撮カメラの存在に気づき、ホテルに報告し、そこからAさんの盗撮行為が発覚しました。
ホテルやVさんが京都府川端警察署に通報したことにより、Aさんは盗撮事件の被疑者として取調べを受けることになりました。
(※この事例はフィクションです。)

・ホテルの一室での盗撮行為は何罪?

前回の記事では、現在の京都府迷惑防止条例盗撮の規制を見ると、Aさんのような盗撮行為京都府迷惑防止条例違反とはならないと考えられるということに触れました。
では今回のAさんのような盗撮事件はどういった犯罪になるのかというと、刑法に規定されている建造物侵入罪や、軽犯罪法違反といった犯罪が考えられます。

刑法130条(建造物侵入罪)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

軽犯罪法1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
23号 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

建造物侵入罪は、簡単に言えばその建造物の管理者の意思に反して建造物に入ることで成立する犯罪です。
今回のAさんはホテルの従業員ではありますが、ホテルの利用客の盗撮をするためにホテルに立ち入り、その客室に盗撮カメラを仕掛けています。
Aさんがホテルの管理者からホテルへの立ち入りを認められているのは、あくまでホテルの従業員としての仕事をするためであり、盗撮をする目的であると分かっていればホテルへの立ち入りは認められていなかったでしょう。
こうしたことから、Aさんには建造物侵入罪が成立する可能性があるのです。

また、軽犯罪法では、正当な理由なく人の住居をひそかにのぞき見た者が軽犯罪法違反とされますが、ホテルの客室も、一時とはいえ利用客が起臥寝食に利用する場所ですから、人の住居といえます。
そこを盗撮することでのぞき見ていることから、Aさんには軽犯罪法違反の可能性も出てきます。

このように、Aさんのような京都府迷惑防止条例違反にならないような盗撮行為については、他の犯罪によってカバーされてきたのですが、Aさんの立場にある人がその盗撮行為がなされた建造物の管理者自身だった場合、「管理者の意思に反して建造物に立ち入っている」とはいえないことから建造物侵入罪の適用はできず、軽犯罪法違反の適用のみになることがありました。
もちろん、軽犯罪法違反とはいえ犯罪は犯罪ですし、前科もつきますが、他の盗撮行為に比べて軽い処罰となってしまうという批判もありました。

そこで、多様な盗撮事件に対応するために、各都道府県で迷惑防止条例を改正する動きが出てきました。
京都府もつい先日、その動きがあったのです。
次回の記事では京都府迷惑防止条例改正について詳しく触れていきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、盗撮事件についてのご相談もお受けしています。
都道府県ごとに規定の違う迷惑防止条例だからこそ、なかなかわかりづらい部分もあります。
ぜひ一度、刑事事件専門の弁護士にご相談ください。

京都府迷惑防止条例の改正~盗撮①

2019-12-16

京都府迷惑防止条例の改正~盗撮①

京都府迷惑防止条例の改正、特に盗撮行為に関する部分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都市左京区にある観光客が利用するホテルの従業員です。
Aさんは自身の働いているホテルの客室に盗撮用の小型カメラを仕掛け、ホテルの利用客の下着姿や裸姿を盗撮していました。
しかしある日、ホテルの利用客であるVさんがAさんの仕掛けた盗撮カメラの存在に気づき、ホテルに報告し、そこからAさんの盗撮行為が発覚しました。
ホテルやVさんが京都府川端警察署に通報したことにより、Aさんは盗撮事件の被疑者として取調べを受けることになりました。
(※この事例はフィクションです。)

・盗撮と現在の京都府迷惑防止条例

痴漢行為と同様、盗撮行為盗撮行為自体が「盗撮罪」として犯罪となっているわけではありません。
盗撮事件ごとの事情により、成立する犯罪が異なるのです。
そして盗撮事件が起きた際、よく適用される犯罪の1つが各都道府県の迷惑防止条例違反です。
京都府では、京都府迷惑行為等防止条例(以下「京都府迷惑防止条例」)という迷惑防止条例が規定されています。

現在の京都府迷惑防止条例での盗撮の規定は以下のようなものになっています。

京都府迷惑防止条例3条
1項 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
(略)
2項 何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、前項に規定する方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
1号 みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影すること。
2号 みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等をすること。
3号 みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を撮影すること。
3項 何人も、みだりに、公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある他人の姿態を撮影してはならない。

つまり、かいつまんで言うと、現在の京都府迷惑防止条例で規制されている盗撮行為は以下のようになります。

①公共の場所・乗り物での盗撮行為と、その盗撮行為のための機器の差出し・設置(京都府迷惑防止条例3条2項1~3号)
②公衆便所・公衆浴場などの講習が利用できる場所で通常衣服の一部または全部を身に着けない場所での、そこにいる一部または全部衣服を身に着けていない人に対する盗撮行為(京都府迷惑防止条例3条3項)

このような規定の仕方からすると、電車や駅での盗撮行為や、銭湯などでの盗撮行為京都府迷惑防止条例違反となりえますが、今回の事例のAさんのような観光客向けホテルの一室で起きた盗撮行為については、「公共の場所」でもなく「公衆が利用できる」場所でもないため、京都府迷惑防止条例違反とはならないと考えられるのです。

では、Aさんのような京都府のホテルの一室での盗撮事件は、現在どのように対処されているのでしょうか。
次回の記事で詳しく触れていきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士盗撮事件を含む刑事事件ご相談に初回無料で対応しています。
Aさんの事例のように、盗撮事件ではどこでどのように盗撮が行われたかによって、その場所の迷惑防止条例違反が適用されるのかどうかが異なります。
その判断を行うためには、迷惑防止条例を詳しく知っていることはもちろん、盗撮事件自体の経験・知識も必要です。
まずは一度、刑事事件に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。

京都市上京区内飲食店での食い逃げ

2019-12-12

京都市上京区内飲食店での食い逃げ

京都市上京区内の飲食店での食い逃げについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~ケース~

Aさんは京都市上京区のレストランにてランチセットを注文し、その提供を受けました。
食事後に代金を支払いたくないと翻意したAさんは、会計時に従業員に対して「財布を忘れたので、車に取りに戻る」と言い、店を後にして逃走してしまいました。
その後、飲食店がAさんの食い逃げに気づいて京都府上京警察署に被害届を出した結果、Aさんは詐欺罪の容疑で逮捕され、京都府上京警察署に連行されました。
(事例はフィクションです。)

~食い逃げは何罪か?~

食い逃げ」を行った場合どの罪に当たるのかという点については、

①注文時から代金を支払う意思が無かった場合
②料理の提供を受けた後に、代金を支払う意思が無くなった場合
イ)店員に対して暴行・脅迫を用いて、支払いを免れた場合
ロ)店員を欺いて、支払いを免れた場合
ハ)店員の隙を見て逃走した場合

のそれぞれの場合で何罪が成立するのか分かれることになります。

①注文時から代金を支払う意思が無かった場合

注文時から代金を支払う意思が無かった場合、詐欺罪が成立する可能性があります。

刑法第246条(詐欺罪)
1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

支払う意思がないにも関わらずあるかのように装って店員を騙し、飲食物(財物)の提供を受けているので、刑法第246条第1項の詐欺罪に当たるということになるのです。

②料理の提供を受けた後に、代金を支払う意思が無くなった場合

料理の提供を受けた後に代金を支払う意思が無くなった場合については、さらにイ・ロ・ハの場合に分けられます。

イ)店員に対して暴行・脅迫を用いて、支払いを免れた場合
料理の提供を受けた後に代金を支払う意思が無くなった場合で、さらに店員に対して暴行・脅迫を用いて、支払いを免れた場合には、強盗罪や恐喝罪が成立する可能性が出てきます。

刑法第236条(強盗罪) 
1.暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法第249条(恐喝罪) 
1.人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

②の場合、飲食物の提供を受けた人はその代金を支払う債務が発生しています。
そしてイ)では、暴行又は脅迫を用いた結果、かかる債務を免れており、かかる債務免除は「財産上」の「利益」といえます。
したがって、刑法第236条第2項の強盗利得罪又は第249条第2項の恐喝利得罪に当たります。
この2条のいずれかになるのかは、相手に加えた暴行・脅迫が「反抗を抑圧する程度」であれば強盗、至らなければ脅迫という区別になります。

ロ)店員を欺いて、支払いを免れた場合
料理の提供を受けた後に代金を支払う意思が無くなった場合で、さらに店員を欺いて支払いを免れた場合には、①同様に詐欺罪が成立する可能性が出てきます。

本件のケースもこのパターンとなるでしょう。
本件では、Aには代金支払債務があるにも関わらず、「車に財布を取りに行ってくる」と嘘を言い、Aの言葉を信じた店員がそれを承諾しています。
店員の承諾はAの支払債務の一時的に猶予すると言う旨の黙示の意思表示であると考えられ、Aにとってかかる債務の猶予を受けることは利益といえます。

ハ)店員の隙を見て逃走した場合
では、料理の提供を受けた後に代金を支払う意思が無くなった場合で、さらに店員の隙を見て逃走した場合にはどうなるのでしょうか。
食い逃げであるのだから窃盗罪が成立するのではないか、と考える方が多いのではないでしょうか。

刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

店員の隙を見て逃走したという行為は、Aに騙された店員がその(瑕疵ある)意思表示を以て支払債務を免除している訳ではなく、あくまで店員の意思に反して支払債務の免除という利益を得ているに過ぎません。
いわゆる利益窃盗という行為に当たりますが、刑法第235条は利益窃盗を処罰していません。
したがって、ハ)のケースは刑事事件としては不処罰となります。
もちろん、刑事事件にならないからといって民事上の責任が問われないわけではありませんし、今まで見てきた他の犯罪に当たるケースだと疑われてしまう場合もあります。
何より食い逃げはいけないことですから、絶対にやめましょう。

~食い逃げ事件を起こしてしまったら~

本件の場合のように被害届が出されてしまう前に弁護士に相談し、早い段階で謝罪や示談をすることができれば、刑事事件化することなく事態を解決することができる場合もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、詐欺罪窃盗事件に関わる弁護の経験豊富な弁護士が多数在籍しております。
また、逮捕・勾留された方に対しての初回接見サービスの予約も24時間受け付けております。
事件化前であってもご自身がした行為について不安な方や、既にご家族が逮捕・勾留され会うことができない方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部へご連絡下さい。

罰則強化のながら運転で刑事事件②

2019-12-08

罰則強化のながら運転で刑事事件②

罰則が強化されたながら運転について刑事事件化したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例①~

Aさんは、京都市東山区にある友人の家に向かう際、スマートフォンをカーナビ代わりにして運転していました。
しかし、友人宅への道がわかりづらかったため、Aさんはカーナビ画面を映していたスマートフォンを注視しながら運転していました。
すると、パトロールしていた京都府東山警察署の警察官がAさんのその様子を発見。
Aさんは、ながら運転をしていたとして、後日京都府東山警察署に呼び出されることになってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

~事例②~

Bさんは、京都市東山区内の道路で自動車を運転している際、スマートフォンでゲームアプリを起動し、ゲームをしながら運転する、いわゆるながら運転をしていました。
すると、赤信号に気づくのが遅れ、Aさんは横断歩道前で急ブレーキを踏みました。
交通違反を警戒していた京都府東山警察署の警察官にそれを見とがめられ、Aさんはながら運転で交通の危険を発生させたとして、道路交通法違反の容疑で話を聞かれることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)

・どのながら運転がどの罰則になるか

前回の記事で触れた通り、今年の12月1日に道路交通法が改正され、ながら運転の罰則が強化されました。
該当条文は以下の通りです。

道路交通法71条5号の5
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第118条第1項第3号の2において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第41条第16号若しくは第17号又は第44条第11号に規定する装置であるものを除く。第118条第1項第3号の2において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。

道路交通法117条の4
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
1号の2 第71条(運転者の遵守事項)第5号の5の規定に違反し、よつて道路における交通の危険を生じさせた者

道路交通法118条
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
4号 第75条(自動車の使用者の義務等)第1項第2号又は第5号の規定に違反した者

ながら運転の罰則は、ながら運転をして交通の危険を発生させたかどうかによって異なることも前回の記事で取り上げた通りです。
では、事例①②のAさんとBさんは、このうちどちらに当てはまるのでしょうか。

~Aさんの場合~
Aさんは、カーナビ代わりにしていたスマートフォンの画面を注視してしまっています。
これは、道路交通法71条5号の5でいう「当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(略)に表示された画像を注視」することにあたるながら運転です。
ですから、Aさんはながら運転をしてしまっていますが、具体的に交通の危険を発生させたわけではなさそうです。
そのため、Aさんは道路交通法118条4号の、ながら運転禁止の規定に違反したという道路交通法違反になりそうです。
こちらの道路交通法違反は、反則金制度(反則金を納付することで刑事手続にならない制度)の対象となっているため、例えばAさんがその容疑を否認している、何度も交通違反を繰り返しており前科前歴がある等の事情がなければ、反則金を納付することで刑事事件化を免れることができると考えられます。

~Bさんの場合~
Bさんは、スマートフォンのゲームをしながら運転しています。
ゲームをしていることから、スマートフォンの画面を注視しながら運転していたと考えられ、先ほどのAさんと同様、ながら運転禁止の規定に違反していることになります。
こうした態様は、典型的なながら運転といえるでしょう。

ここでBさんはながら運転をしたことで赤信号に気づくのが遅れ、急ブレーキを踏んでいることに注意が必要です。
これは一歩間違えば交通事故ともなりかねない行為であることから、道路交通法117条の4の1号の2にいうような「交通の危険を生じさせた」と判断される可能性があります。
実際に今回の事例②では、Bさんはながら運転により交通の危険を生じさせた道路交通法違反として話を聞かれることとなっています。
Aさんのながら運転の場合とは異なり、ながら運転で交通の危険を生じさせた場合には反則金制度の利用はできず、刑事事件となりますから、Bさんは被疑者として取調べられることになるでしょう。
こうした場合には、まずは刑事事件に強い弁護士へ相談することが望ましいでしょう。

刑事事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、弁護士初回無料法律相談を行っています。
ながら運転は刑罰も強化され、世間からの注目も集まっている犯罪です。
ながら運転刑事事件となってしまった際には、一度弁護士までご相談下さい。

罰則強化のながら運転で刑事事件①

2019-12-06

罰則強化のながら運転で刑事事件①

罰則が強化されたながら運転について刑事事件化したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例①~

Aさんは、京都市東山区にある友人の家に向かう際、スマートフォンをカーナビ代わりにして運転していました。
しかし、友人宅への道がわかりづらかったため、Aさんはカーナビ画面を映していたスマートフォンを注視しながら運転していました。
すると、パトロールしていた京都府東山警察署の警察官がAさんのその様子を発見。
Aさんは、ながら運転をしていたとして、後日京都府東山警察署に呼び出されることになってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

~事例②~

Bさんは、京都市東山区内の道路で自動車を運転している際、スマートフォンでゲームアプリを起動し、ゲームをしながら運転する、いわゆるながら運転をしていました。
すると、赤信号に気づくのが遅れ、Aさんは横断歩道前で急ブレーキを踏みました。
交通違反を警戒していた京都府東山警察署の警察官にそれを見とがめられ、Aさんはながら運転で交通の危険を発生させたとして、道路交通法違反の容疑で話を聞かれることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)

・ながら運転の罰則強化

つい先日のことですが、今年の12月1日、改正道路交通法が施行されました。
今回の道路交通法の改正では、スマートフォンなどを操作しながら自動車等を運転するいわゆる「ながら運転」の罰則が強化されました。
上記事例①②を見ながらその内容を見ていきましょう。

今回罰則が強化された道路交通法の条文は以下の条文です。

道路交通法71条5号の5
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第118条第1項第3号の2において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第41条第16号若しくは第17号又は第44条第11号に規定する装置であるものを除く。第118条第1項第3号の2において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。

つまり、スマートフォンや携帯電話で通話をしたり、それらの操作をしたり、注視(その物をじっと見ていること)したりしながらの「ながら運転」を禁止しているのがこの条文であるということになります。
では、この条文に違反し、ながら運転をしてしまった時の罰則についての条文を確認してみましょう。

道路交通法117条の4
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
1号の2 第71条(運転者の遵守事項)第5号の5の規定に違反し、よつて道路における交通の危険を生じさせた者

道路交通法118条
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
4号 第75条(自動車の使用者の義務等)第1項第2号又は第5号の規定に違反した者

どちらも先ほど挙げた道路交通法に違反しながら運転をしてしまった時の罰則ですが、「交通の危険を生じさせた」かどうかによってその区別がなされています。
その刑罰の重さももちろんのこと、ながら運転をして交通の危険を発生させてしまった場合、反則金を支払うことで刑事事件化を免れることができる「反則金制度」の対象外となっていることにも注意が必要です。
つまり、ながら運転によって交通の危険を発生させてしまったら、すぐに刑事事件の手続きに乗ることになるということなのです。

このように、改正された法律違反の犯罪では、刑罰が重くなる以外にもそれまでと大きく違う点が出てきます。
刑事事件に詳しい弁護士に相談し、細かな変更点も一緒に確認していくことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、交通違反から刑事事件に発展してしまったケースについてもご相談をいただいています。
まずはお気軽に弊所弁護士までご相談ください。

次回の記事では事例①②に照らし合わせて検討を行います。

覚せい剤使用事件で違法捜査を主張⑤

2019-12-04

覚せい剤使用事件で違法捜査を主張⑤

覚せい剤使用事件違法捜査を主張するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~前回からの流れ~

Aさんは、京都府福知山市に住んでいます。
ある日、Aさんは京都府福知山市内の路上で京都府福知山警察署の警察官に職務質問され、帰路につきながらそれにこたえていると警察官が複数人そのまま自宅まで訪ねてきました。
Aさんが玄関を閉めようとすると、警察官がそれを手で押さえ、Aさん宅内に無断で立ち入り、Aさんに「腕を見せてください」などと言ってAさん宅内でAさんの腕の写真を撮影しました。
この際、Aさんには令状等が見せられることはなく、何の容疑で捜査されたかも伝えられませんでした。
さらにAさんは警察署同行するように求められ、そこで尿を提出するよう言われましたが、これを拒んだところ、先ほど自宅に立ち入って撮影された写真を基に取得した令状を基に、強制採尿されることになってしまいました。
その後、Aさんは覚せい剤を使用したという覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕されてしまったのですが、違法捜査を受けたのではないかと不満に思っています。
そこでAさんは、家族の依頼によって接見にやってきた弁護士に、自分が違法捜査を受けたのではないかと相談してみることにしました。
(※令和元年10月29日毎日新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・Aさんの場合~強制採尿

前回の記事では、Aさんの部屋への立ち入りについて、違法捜査となる可能性があることに触れました。
では、その部屋の立ち入りで得られた写真等を利用して行われた強制採尿についてはどうでしょうか。

今回のAさんは、強制採尿されてしまっています。
強制採尿は、言わずもがな強制処分にあたる捜査です。
よって、強制採尿をするには令状が必要となります。
強制採尿は、尿道にカテーテルを挿入して強制的に採尿する捜査手法であるため、令状を得たとしても人格権を侵害して許されないのではないかという論争があるほどです。
そのため、強制採尿をするにはより厳格な審査が必要になると考えられています。
判例では、強制採尿について、「…犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合に、最終週的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、その実施にあたっては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべきもの」であるとしています(最決昭和55.10.23)。
つまり、強制採尿は強制捜査の中でも特に慎重に判断すべきものであるといえるのです。

今回のAさんも、部屋への立ち入りをされた際に写真を撮られ、その写真を疎明資料として強制採尿の令状を取られ、強制採尿されてしまっているようですが、強制採尿の手続きが本当に適切であったのかが問題となります。
もしAさんの受けた部屋への立ち入りや写真撮影が違法捜査だったとすれば、違法捜査によって得られた証拠によって令状が発行されているのであれば、その令状は大きくゆがめられた判断で発行されたことになります。
ですから、こうした場合、違法捜査によって得られた証拠によって発行された令状に基づいて行われた強制採尿についても、適切な手続きで行われたとはいえず、違法捜査であるといえるのです。
そして強制採尿が違法性の大きい違法捜査であるということになった場合、強制採尿の結果である鑑定書も違法捜査によって得られた証拠ということになり、違法収集証拠排除法則によって証拠として使うことができなくなります。
このように、元々違法捜査によって得られた証拠がありそれによってほかの強制捜査も行われていた場合、連鎖的に違法捜査となってしまう可能性が出てくるのです。

刑事事件では、強制捜査により権利を侵害されることが仕方のないこともありますが、それが違法捜査ではなく適法な捜査であることが求められます。
さらに、前回までの記事でも見てきたように、違法捜査が行われたとしてもその違法捜査で集められた証拠が排除されるかどうかはケースによりけりであり、排除されるべき証拠は排除されるように主張していかなければなりません。
しかし、当事者自身やその周囲の方のみで、こうした違法捜査に当たるのかどうか、違法捜査に当たる捜査を受けたとしてどのように主張していくべきなのかといったことは分からないことの方が多いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門弁護士がそうした違法捜査に関するご相談も受け付けています。
まずはお気軽に弁護士までご相談ください(ご相談のご予約・お申込み:0120-631-881)。

覚せい剤使用事件で違法捜査を主張④

2019-12-02

覚せい剤使用事件で違法捜査を主張④

覚せい剤使用事件違法捜査を主張するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~前回からの流れ~

Aさんは、京都府福知山市に住んでいます。
ある日、Aさんは京都府福知山市内の路上で京都府福知山警察署の警察官に職務質問され、帰路につきながらそれにこたえていると警察官が複数人そのまま自宅まで訪ねてきました。
Aさんが玄関を閉めようとすると、警察官がそれを手で押さえ、Aさん宅内に無断で立ち入り、Aさんに「腕を見せてください」などと言ってAさん宅内でAさんの腕の写真を撮影しました。
この際、Aさんには令状等が見せられることはなく、何の容疑で捜査されたかも伝えられませんでした。
さらにAさんは警察署同行するように求められ、そこで尿を提出するよう言われましたが、これを拒んだところ、先ほど自宅に立ち入って撮影された写真を基に取得した令状を基に、強制採尿されることになってしまいました。
その後、Aさんは覚せい剤を使用したという覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕されてしまったのですが、違法捜査を受けたのではないかと不満に思っています。
そこでAさんは、家族の依頼によって接見にやってきた弁護士に、自分が違法捜査を受けたのではないかと相談してみることにしました。
(※令和元年10月29日毎日新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・任意捜査と強制捜査

これまでで、強制捜査の際には令状が必要であるということ、令状なしの強制捜査は違法捜査となり、その違法捜査によって得られた証拠は違法収集証拠排除法則によって証拠として使えなくなる可能性があるということがおわかりいただけたと思います。
では、そもそも任意捜査と強制捜査はどういった区別がされているのでしょうか。

第1回目の記事で取り上げた通り、任意捜査は被疑者・被告人の任意によって行われる捜査であり、強制捜査は強制的に行うことのできる捜査です。
捜査は任意捜査によって行われるべきであり、強制捜査は特別必要のある時にだけ行われるべきであるという任意捜査の原則という原則があり、さらに強制捜査は令状主義のほかにも、法律に決められている場合にのみ強制捜査が許されるという原則(強制処分法定主義)があるため、強制捜査以外の捜査が任意捜査とされています。

では、強制捜査がどういった捜査であるとされているかというと、「個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段」であるとされています(最決昭和51.3.16)。
ですから、この手段にあたる処分で捜査をした場合、強制捜査であるということになり、それが行われるには令状が必要であるということになるのです。

・Aさんの場合~部屋への立ち入り

まずは今回のAさんの事例の、警察官の部屋の立ち入りについて考えてみましょう。

今回のきっかけとなった職務質問自体は、警察官が何か犯罪をしている若しくはしようとしていると疑う合理的な理由があればすることのできる行為です。
そして、この職務質問はあくまで任意捜査、つまりはAさんの同意に基づいて行われるものですから、警察官がAさんについて何か犯罪をしている若しくはしそうと疑う合理的な理由があり、かつAさんが同意して警察官へ対応していたのであれば、問題にはなりません。

では、Aさん宅への立ち入りやAさんを撮影したことについて、検討してみましょう。
今回の事例の基となったケースでは、警察官らは女性である被告人が閉めようとした玄関のドアを押さえ、靴脱ぎ場までとはいえ断りもなく被告人の部屋に立ち入り、さらにドアを複数人で押さえて開いた状態にしたうえ、被告人が出ていくよう求めてもそれに応じずにとどまり続け、部屋内にいる被告人を撮影するという行為をしたようです。
これに対し、裁判所は、被告人の部屋への立ち入りやそこにとどまり続けた警察官らの行為は被告人の承諾を得て行ったものとは考えられず、被告人の意思を抑圧するものであったとしています。
そして、この行為は被告人のプライバシーや住居の平穏など個人的法益を害する強制処分(強制捜査)であるとしました。
前回の記事から触れているように、令状なしの強制処分(強制捜査)は違法捜査ですから、事例の基となったケースでは、部屋への立ち入りやそこに居座ったこと、撮影をしたことが違法捜査であるとされたのです。

今回のAさんの事例では、具体的に警察官らがどういった態様でAさんに嫌疑をかけたのか、そしてAさん宅にどれほどとどまりどのように立ち入っていたのかは詳しく書かれていませんが、事例の基となったケースのように、Aさんの意思を制圧するような形でAさんの権利を侵害する形で捜査をしていたのであれば、違法捜査であると判断されることも考えられます。

さらに、このケースの基となった事例では、被告人宅への立ち入りについて、嫌疑の具体性が乏しかったことに加え必要性・緊急性が低かった若しくはなかったとして、無令状で強制捜査をしたことは違法捜査の違法性が重大であるとし、この違法捜査によって得られた証拠=被告人の写真等は違法収集証拠であるとしました。

今回のAさんの事例でも、Aさん宅への立ち入りが違法捜査であると判断された場合、その違法性の大きさにより、Aさんの写真等が違法収集証拠排除法則により証拠として使えないと判断される可能性もあります。

こういった違法性の度合いについては、専門家の意見や考察を聞きながら判断し、適切に主張していくことが求められます。
違法捜査や違法収集証拠が絡んだ刑事事件では、刑事事件に詳しい弁護士に逐一状況を相談することが望ましいといえるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門弁護士がこういった複雑な刑事手続きについても丁寧にご説明いたします。
まずはお気軽に0120-631-881までご連絡ください。

次回の記事では、Aさんの強制採尿やそれによって得られた鑑定書について検討していきます。

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