Archive for the ‘刑事事件’ Category

職務質問で大麻所持発覚 大麻取締法違反で逮捕

2023-09-22

【事件概要】

京都市伏見区の路上を歩いていた大学生のAさんは、京都府伏見警察署の警察官に職務質問を受けることになりました。
職務質問でAさんが大麻を所持していることが発覚し、Aさんは大麻取締法違反の容疑で現行犯逮捕されることになりました。
(事例はフィクションです。)

【大麻所持するとどうなる?】

・大麻取締法 第3条 第1項
大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。

日本では、法律で認められた者を除いて、大麻を所持することは認められていません。
もし、大麻を所持すると、以下のような刑罰が科されます。

・大麻取締法 第24条の2 第1項
大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。

今回の事例では、Aさんは大麻を所持したしたとして大麻取締法違反の容疑で逮捕されています。
Aさんは大麻の所持を認められていないのであれば、Aさんに大麻取締法違反が成立する可能性が高いです。

【逮捕されるとどうなる?】

そもそも警察が逮捕という手段を取るのは、罪を犯した疑いのある人が証拠を隠滅したり、逃亡する恐れがある場合です。

今回のような大麻の所持などの薬物事件は、証拠となる大麻などを処分することが容易であることから、その性質上証拠の隠滅がされるおそれが高いと判断される可能性があります。

したがって、逮捕される場合が非常に多い上、逮捕に引き続く身柄拘束(勾留)も長期にわたることが一般的です。

このように、身柄拘束が長期化すると、その間、大学に通うことができない状態が続くことになり、単位が足りずに留年してしまうおそれや、長期間にわたって講義に出席できないことで大学に事件のことが発覚し、退学処分になってしまうおそれもあります。

【まずは弁護士への相談を】

弁護士に相談をすることで、早期釈放を実現できる可能性があります。
刑事事件では、逮捕後72時間以内に勾留の判断が行われます。
弁護士は勾留が決定される前であれば、検察官や裁判官に勾留請求に対する意見書を提出することができます。

また、勾留が決定した場合であっても、弁護士は勾留決定に対する準抗告の申し立てを行えますので、勾留満期を待たずに釈放を望める可能性があります。

先ほども述べたように、勾留期間中は大学に通うことができませんので、単位の取得が難しくなったり、大学に事件が発覚するリスクも高くなってしまいます。
早期釈放を実現することができれば、今まで通り大学に通うことができますので、留年や退学処分に付されることを回避できる可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、大麻取締法違反など薬物事件の豊富な弁護経験をもつ法律事務所です。
経験豊富な弁護士が意見書や準抗告の申し立てを行うことで、釈放が認められる場合がありますので、ご家族が逮捕された方はお早めに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

【事例紹介】特殊詐欺事件 成立するのは何罪?②~窃盗罪~

2023-09-20

前回に引き続き、京都府宇治市で起きた特殊詐欺事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警宇治署は13日、京都府宇治市の女性(81)がキャッシュカード2枚をだまし取られ、現金計223万円6千円を引き出されたと発表した。特殊詐欺事件として捜査している。
同署によると、(中略)女性宅に警察官を名乗る女から「名前がリストに載って(個人情報が外部に)漏れている」などと電話があった。通話中の約40分後に男が訪れ、キャッシュカード2枚が入った封筒を別の封筒にすり替えて持ち去った。
(中略)複数回にわたり同市内など京都府内のATMで現金が引き出されたという。

(9月13日 京都新聞 「【速報】キャッシュカード入り封筒をすり替え 81歳女性、ATMから現金引き出される」より引用)

窃盗罪

前回のコラムでは、今回の事例では詐欺罪が成立しないのではないかと解説しました。
では何罪が成立するのでしょうか。

今回の事例で成立する可能性があるのは窃盗罪です。

窃盗罪は刑法第235条で「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と規定されています。

窃盗罪は簡単に説明すると、人のものをその人の許可なく勝手に盗ると成立する罪です。

今回の事例では、キャッシュカードが入った封筒と別の封筒をすり替えることで、キャッシュカードを手に入れています。
被害女性は犯人がキャッシュカードを持っていくことを許可していないでしょうから、犯人は持ち主である被害女性に許可を得ずにキャッシュカードを持ち去ったことになります。
ですので、今回の事例では、窃盗罪が成立する可能性が高いです。

詐欺罪、窃盗罪の弁護活動

今回の事例では、詐欺罪ではなく窃盗罪が成立する可能性が高いです。

詐欺罪の法定刑は十年以下の懲役(刑法第246条1項)、窃盗罪の法定刑は十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金(刑法第235条)です。
詐欺罪には罰金刑の規定はありませんが、窃盗罪には罰金刑が規定されています。
上記のように詐欺罪窃盗罪では規定されている刑罰が違いますが、特殊詐欺事件の場合は、詐欺罪が成立する場合と窃盗罪が成立する場合とで大幅に科される刑罰が変わることはありません。

ですので、同じ被害額の特殊詐欺事件で、詐欺罪が成立する場合には懲役刑が科されるが、窃盗罪が成立する場合には罰金刑が科されるなどといったことは、ほとんどありません。
ということは、特殊詐欺事件窃盗罪が成立する場合は、懲役刑が科される可能性が高いということです。
実際に、初犯で前科がなくとも、特殊詐欺事件窃盗罪の罪に問われた場合に懲役刑が科されているケースが多くあります。

刑事事件では、示談を締結することで、執行猶予付き判決を獲得できる場合があります。
加害者が被害者と直接示談交渉をしてしまうと、被害者感情を逆撫でしてしまったり、処罰感情を苛烈にさせてしまう可能性があります。
そうなると、示談を締結することは難しくなってしまいますので、示談を考えている方は、一度弁護士に相談をしてみることをお勧めします。
弁護士を間に入れて示談交渉をすることで、トラブルなく示談を締結できる可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、詐欺罪窃盗罪の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
弁護士に相談をすることで、執行猶予付き判決を獲得できる可能性があります。
詐欺罪窃盗罪でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120―631―881までご連絡ください。

【事例紹介】特殊詐欺事件 成立するのは何罪?①~詐欺罪~

2023-09-17

京都府宇治市で起きた特殊詐欺事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警宇治署は13日、京都府宇治市の女性(81)がキャッシュカード2枚をだまし取られ、現金計223万円6千円を引き出されたと発表した。特殊詐欺事件として捜査している。
同署によると、(中略)女性宅に警察官を名乗る女から「名前がリストに載って(個人情報が外部に)漏れている」などと電話があった。通話中の約40分後に男が訪れ、キャッシュカード2枚が入った封筒を別の封筒にすり替えて持ち去った。
(中略)複数回にわたり同市内など京都府内のATMで現金が引き出されたという。

(9月13日 京都新聞 「【速報】キャッシュカード入り封筒をすり替え 81歳女性、ATMから現金引き出される」より引用)

特殊詐欺事件と成立する罪

今回の事例では、警察官を名乗る女性から電話があり、キャッシュカード2枚が入った封筒を別の封筒ですり替えられ、持ち去られたと報道されています。
今回の事例では、何罪が成立するのでしょうか。

詐欺罪

報道によると、今回の事例は特殊詐欺事件として捜査されているそうです。
特殊詐欺事件ということは、今回の事例では詐欺罪が成立するのでしょうか。

詐欺罪について考えていきましょう。

詐欺罪は刑法第246条1項で、「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」と規定されています。

詐欺罪は簡単に説明すると、人にうそをついて信じこませ、財物などを渡させると成立します。
また、うそをつけば何でもいいかと言うとそうでもなく、財物を渡すことを判断するうえで、重要な要素になる事柄でなくてはなりません。

詐欺罪が成立するためには、
①財物を渡す判断をするうえで重大なうそをつく
②相手がうそを信じる
③相手から財物を受け取る

以上の3つが必要になります。

では、今回の事例にあてはめて詐欺罪が成立するのかを考えていきましょう。

今回の事例では、警察官を名乗る女性が「名前がリストに載って(個人情報が外部に)漏れている」と電話しています。
おそらく電話をかけた女性は警察官ではないでしょうし、電話の内容も事実ではないでしょう。
警察官の身分を使われてしまうと話している内容なども信じてしまいますし、指示通りに動いてしまうことも多いでしょうから、警察官の身分を騙りうその内容の電話をすることは、財物を渡す判断をするうえで重大なうそにあたると考えられます。
ですので、上記の詐欺罪が成立するための要件の①は満たしていると考えられます。

報道によれば、電話の後に男が訪れてキャッシュカードが入った封筒を別の封筒と入れ替え持ち去ったと報道されています。
被害女性がキャッシュカードを封筒に入れて訪れた男性の応答をしていることから、被害者はうそを信じたのでしょう。
詐欺罪の成立要件②は満たしていると思われます。

では③の財物を受け取るはどうでしょうか。
今回の事例では、キャッシュカードが入った封筒を別の封筒と入れ替えています。
結果として、犯人はキャッシュカードを手に入れていますが、すり替えることで手に入れたのであって、被害者から受け取ったわけではありません。
ですので、③は満たしませんので、詐欺罪は成立しないと考えられます。

詐欺罪が成立しないとなると今回の事例では何罪が成立するのでしょうか。
次回のコラムでは、今回の事例で成立する可能性のある犯罪について解説します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件に精通した法律事務所です。
弁護士に相談をすることで、科される刑罰が軽くなることや不起訴処分などを獲得できる場合があります。
窃盗罪でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部無料法律相談をご利用ください。

窃盗罪と弁護活動:事例を通して見る効果的な対応策

2023-09-15

窃盗罪は一見単純な犯罪のように思えますが、実際には成立要件や罰則が非常に複雑です。
この記事では、窃盗罪で起訴された場合にどのような弁護活動が行われるのか、具体的な事例を交えて解説します。

窃盗罪の基本的な成立要件

窃盗罪とは、簡単に説明すると、他人の所有物を所有者に無断で盗むと成立します。

窃盗罪が成立するためには、いくつかの成立要件が必要です。
まず、物の不正な取得が必要です。
これは、所有者の許可なく物を手に入れる行為を指します。
また、加害者が物を盗む意図を持って取得していることが必要です。

もしも窃盗罪の成立要件が満たされていない場合、無罪を勝ち取れる可能性があります。

弁護士の役割と重要性

窃盗罪で起訴された場合、窃盗罪の弁護活動に精通した弁護士に相談をすることが重要です。
弁護士は、成立要件や罰則に詳しい専門家ですので、その知識と経験を活かしてあなたの権利を守ります。
具体的には、あなたの有利になるような証拠を集め、少しでも裁判で有利な結果を得られるように目指します。

まず、弁護士は事前調査を行い、被告が実際に窃盗罪の成立要件を満たしているかどうかを確認します。
この段階で、成立要件が満たされていないと判断した場合には、無罪を主張するための証拠を集めます。

窃盗罪の弁護経験が豊富な弁護士による弁護活動で、あなたに科される刑罰が少しでも軽くなる可能性があります。
また、場合によっては無罪を獲得することも可能な場合があります。
そのため、窃盗罪に精通した弁護士に相談をすることが非常に重要になります。

事例1:成立要件が満たされていないケース
窃盗罪の成立要件が満たされていないケースも少なくありません。

例えば、Aさんはお店に設置してあるアンケート記入すベースでアンケートの記入をしました。
そのアンケートスペースではペンが誰でも自由に使えるように置かれあり、Aさんは置かれているペンはアンケート記入のお礼品として持ち帰れると思い、使用したペンを持ち帰りました。
実際は、アンケートのお礼品はなく、ペンを持ち帰ってもいいというのはAさんの誤解でした。
客観的に見ればAさんはお店の許可なく、お店の所有物であるペンを持ち帰っているため窃盗罪にあたるように思われます。
しかし、Aさんは持って帰ってもいいものだと誤解していたので、他人の物を盗る意識はなかったことになります。

このようなケースでは、窃盗罪の故意性が欠けていることから、窃盗罪が成立しない可能性があります。
弁護士が具体的な証拠を集め、Aさんには盗む意図がなかったことを主張することで、無罪を獲得できるかもしれません。

上記の事例のように成立要件が明確に満たされていないケースでは、弁護士による弁護活動によって無罪を獲得できる可能性があります。

事例2:被害者と示談を締結したケース

窃盗罪においては、被害者と示談を締結することで科される刑罰が軽くなる可能性があります。
加害者が被害者と直接示談交渉をすることは不可能ではありませんが、加害者と被害者が直接やり取りを行うことでトラブルを生む可能性があります。
弁護士が間に入ることで円滑に示談を締結できる場合がありますので、示談交渉をするときには弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
また、示談を締結することで、執行猶予付き判決を獲得できる可能性があります。

事例3:犯行が立証されないケース

窃盗罪で有罪になるためには、犯行が明確に立証される必要があります。
例として、Cさんが店内で商品を盗もうとしたが、その瞬間に店員に見つかり逮捕されました。
しかし、店内の防犯カメラは故障しており、Cさんが実際に商品を手に取った瞬間が映っていないとします。
このようなケースでは、犯行の立証が困難となります。

弁護士が証拠が不十分であること、目撃証言が曖昧であることなどを指摘することで無罪を目指せる場合があります。
他にも犯行を犯した可能性がある第三者がいる場合、その点を強調するなど、あなたに有利になる証拠を集めることで無罪を獲得できる可能性があります。

事例4:前科がある場合

窃盗罪の前科がある場合、その事実が量刑に大きな影響を与えることが考えられます。
例えば、Fさんが過去にも窃盗で有罪判決を受けている場合、再度窃盗を犯したとされた場合の刑罰は通常よりも重くなる可能性が高いです。

窃盗を繰り返してしまう場合には、クレプトマニア(窃盗症)である可能性があります。
カウンセリングや自助グループに参加し、クレプトマニア(窃盗症)の治療を行うことで、症状が緩和されることがあります。
弁護士がカウンセリングや自助グループに参加し、更生に向けた生活を送っていることを主張することで、科される刑が軽くなる可能性があります。

また、前科がある場合でも、その罪状や経緯、時間がどれだけ経過しているかなども考慮されます。
弁護士はこれらの要素を踏まえて、被告人の社会復帰が可能であると訴えることもあります。
ただし、前科がある場合の弁護は、裁判官や検察官を納得させるためには相当なスキルと戦術が要求されます。

まとめ

この記事では、窃盗罪における様々な事例とそれに対する弁護活動を解説しました。
窃盗罪は一見単純な犯罪に見えますが、成立要件や刑罰、弁護活動は多岐に渡ります。
例えば、盗んだ物の価値や犯行が立証されない場合、前科がある場合といった多くの要素が、最終的な判決に影響を与える可能性があります。

弁護士はこれらの特定の事情や証拠を精査し、それに基づいて少しでもいい結果を得られるように弁護をします。
各ケースにはそれぞれ独自の弁護活動が必要であり、高度な法律的知識と経験が求められます。
窃盗罪に関わる可能性がある場合、専門の弁護士に相談することが非常に重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、窃盗罪の弁護経験が豊富な法律事務所です。
窃盗罪でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部無料法律相談をご利用ください。

【事例紹介】スタンガンを突き付け強盗罪で逮捕①~釈放と弁護活動~

2023-09-10

前回のコラムに引き続き、元交際相手の女性にスタンガンを突き付けてスマートフォンや現金を奪ったとして、強盗罪逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警福知山署は1日、住居侵入と強盗の疑いで、京都府綾部市の職業不詳の男(34)を逮捕した。
逮捕容疑は(中略)、福知山市内の元交際相手の女性(33)宅に掃き出し窓から侵入。スタンガンを女性に突き付け、スマートフォン1台と現金9千円を奪った疑い。
(後略)

(9月1日 京都新聞 「元交際相手の女性宅に侵入、スタンガン突き付け現金奪う 強盗容疑で33歳男を逮捕」より引用)

逮捕と釈放

刑事事件では、逮捕されると逮捕後72時間以内勾留を請求するかの判断が検察官によって行われます。
勾留が請求されれば、裁判官が勾留を決定するかを判断します。
検察官が勾留を請求しなかったり、裁判官が勾留を決定しなかった場合には、釈放されることになります。

刑事訴訟法第60条1項では勾留について、①定まった住所を有しないとき②証拠隠滅をすると疑うのに相当な理由がるとき③逃亡すると疑うのに相当な理由があるときのいずれかに該当するときには、勾留することができると定めています。
ですので、上記の①~③のどれか一つに当てはまる場合には、勾留が決定してしまうおそれがあります。

今回の事例では、被害者が容疑者の元交際相手であり、犯行現場が被害者宅であることから、容疑者は被害者の住居を知っている状態です。
証拠隠滅と聞くと、犯行で使ったスタンガンなどの物的証拠を思い浮かべる方が多いとおもいます。
実は、刑事事件で証拠として扱われるものは、犯行で使われるような凶器などの物的証拠だけではなく、被害者や目撃者などの供述なども証拠として扱われます。
ですので、勾留の条件の一つである証拠隠滅の疑いは物的証拠だけでなく、供述証拠も対象となることになります。

先ほど書いたように、容疑者は被害者の知り合いですし、被害者の住居も知っています。
ですので、容疑者は被害者に会おうと思えば簡単に会うことができる状態だと考えられます。
たとえ容疑者自身には被害者に会ったり、被害者の供述内容を変更させるつもりはなくとも、裁判官に証拠隠滅のおそれがあると判断され、勾留が決定してしまう可能性が高いです。

では、加害者が被害者の知り合いであったり、住居を知っている場合には、必ず勾留が決定してしまうのでしょうか。

弁護士は勾留が決定する前(逮捕後72時間以内)であれば、検察官、裁判官それぞれに勾留請求に対する意見書を提出することができます。
意見書では主に、勾留されることでの不利益、証拠隠滅逃亡のおそれがないことを主張します。
例えば、勾留されてしまうことで会社を解雇されてしまうなどの不利益や、家族が一緒にいることで事件現場や遠い所に行けないようにする、被害者に会うことはもちろん連絡も足らせないようにすることなどを意見書に書き、検察官や裁判官に釈放を求めます。
弁護士が意見書を提出することで、今回の事例のような容疑者と被害者が知り合いであり、住居を知っている場合であっても、釈放が認められる可能性があります。

では、勾留が決定してしまうと釈放は望めないのでしょうか。

実はそんなことはありません。
勾留が決定してしまった後でも、釈放が認められる場合があります。

弁護士は勾留が決定してしまった場合でも、勾留決定に対する準抗告の申し立てを行うことで、裁判所に釈放を求めることができます。
一度勾留が決定してしまっていても、準抗告では勾留の決定を判断した裁判官とは別の裁判官が判断を行いますので、準抗告の申し立てにより、釈放が認められる可能性があります。
ですので、ご家族の釈放を望んでいらっしゃる方は、弁護士に相談をしてみることをお勧めします。

繰り返しになりますが、勾留請求に対する意見書の提出は勾留が決定するまでに行わなければなりません。
ですので、逮捕後72時間以内に提出を終える必要があります。
当然、意見書の作成などの書類の準備にも時間が必要ですので、早期釈放を目指す場合には、できるだけ早く釈放に向けた活動をスタートさせる必要があります。

今回の事例のような、容疑者と被害者が知り合いであり、住居を知っている場合には、釈放を認めてもらうことが相当厳しくなることが予想されます。
弁護士が釈放に向けた活動を行うことで、釈放を実現できる場合があります。
早期釈放を実現させるためには、できる限り早い段階で弁護活動を始める必要があります。
ですので、ご家族が強盗罪などの刑事事件で逮捕された方は、お早めに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービスのご予約は、0120―631―88124時間受け付けております。

【事例紹介】スタンガンを突き付け強盗罪で逮捕①~強盗罪と示談締結~

2023-09-08

元交際相手の女性にスタンガンを突き付けてスマートフォンや現金を奪ったとして、強盗罪で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警福知山署は1日、住居侵入と強盗の疑いで、京都府綾部市の職業不詳の男(34)を逮捕した。
逮捕容疑は(中略)、福知山市内の元交際相手の女性(33)宅に掃き出し窓から侵入。スタンガンを女性に突き付け、スマートフォン1台と現金9千円を奪った疑い。
(後略)

(9月1日 京都新聞 「元交際相手の女性宅に侵入、スタンガン突き付け現金奪う 強盗容疑で33歳男を逮捕」より引用)

強盗罪

刑法第236条1項
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。

強盗罪は刑法第236条で規定されており、簡単に説明すると、一般の人が抵抗することが難しいような暴行や脅迫を行い、金品などを奪うと成立します。
一般の人が抵抗するのに難しくない程度の暴行や脅迫の場合には、恐喝罪などが成立し、強盗罪は成立しません。

今回の事例では、容疑者が被害者宅に侵入し、スタンガンを突き付けてスマートフォンと現金を奪ったと報道されています。
スタンガンを突き付けてスマートフォンと現金を奪う行為は、強盗罪にあたるのでしょうか。

今回の事例では、被害者の女性に男である容疑者がスタンガンを突き付けたと報道されています。
強盗罪が成立するかどうかは、容疑者と被害者の性別犯行を行った場所なども考慮されます。
今回の事例では、被害者が女性で容疑者が男性だとされています。
女性が男性相手に抵抗をするのは、体格や力の差などがあり、難しいでしょう。
また、今回の事例の犯行現場は被害者宅だとされていますので、助けも呼びにくい状態だと推測されます。
そのような状態で、スタンガンを突き付けられれば、普通の人は抵抗することは難しいかもしれません。

繰り返しになりますが、強盗罪は一般の人が抵抗が難しいような暴行や脅迫を行って金品などを奪うと成立します。
ですので、今回の事例のような状況では、一般の人が抵抗することは難しいと判断されれば、強盗罪が成立する可能性があります。

強盗罪と示談

強盗罪の法定刑は、5年以上の有期懲役とかなり重い刑罰が規定されています。
刑事事件では、示談を締結することで罪が軽くなると聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
それは強盗罪でも同様で、被害者と示談を締結することで、科される罪が軽くなる可能性があります。

示談を締結するためには、被害者と示談交渉を行う必要があります。
また、示談交渉を行うには被害者と連絡を取る必要がありますので、大抵の場合は被害者の連絡先を教えてもらうところから始めることになります。

今回の事例では、被害者は容疑者の元交際相手だとされていますので、容疑者が被害者の連絡先を知っていると推測されます。
被害者の連絡先を知っている場合には、加害者が被害者に連絡をして示談交渉を行ってもいいのでしょうか。

実は、加害者が被害者に連絡を取ることで証拠隠滅を疑われる可能性があります。
また、加害者と被害者が直接やり取りを行うことで思わぬトラブルに発展する可能性もあります。
刑事事件では、被害者が加害者に対して恐怖を抱いていることも少なくはなく、そういった状況では、示談を締結するどころか連絡を取ることも難しくなってしまいます。

示談の締結を目指す場合には、弁護士を代理人として示談交渉を行うことが望ましいです。
被害者が加害者に対して恐怖を抱いている場合でも、弁護士が代理人として連絡を取ることで示談交渉に応じてもらえる可能性があります。
弁護士が示談交渉を行うことでトラブルを避けられる場合もありますので、示談を考えている方は、弁護士に相談をしてみることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
強盗罪示談のことでお悩みの方、ご家族が逮捕された方は、土日祝日即日対応可能弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

次回のコラムでは、逮捕と釈放について解説します。

【事例紹介】京都初 性的姿態等撮影未遂罪で逮捕③~弁護活動~

2023-09-06

引き続き、京阪神宮丸太町駅のホームで女性のスカート内を盗撮しようとしたとして、性的姿態等撮影未遂罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警川端署は29日、性的姿態撮影処罰法違反未遂(撮影)などの疑いで、(中略)会社員の男(24)を逮捕した。
逮捕容疑は29日正午ごろ、京都市左京区の京阪神宮丸太町駅ホームで伏見区の女性(32)の背後からスマートフォンを差し出し、スカート内を撮影しようとした疑い。
(後略)

(8月29日 京都新聞 「スマホでスカート内撮影しようとした疑い 性的姿態撮影処罰法で京都府内初の逮捕者」より引用)

盗撮と不起訴処分

前々回のコラムでは、今回の事例で性的姿態等撮影未遂罪(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下「性的姿態撮影処罰法」といいます。)違反未遂)が適用される可能性があると解説しました。
盗撮を行ったことにより、性的姿態等撮影罪(性的姿態撮影処罰法違反)で有罪になると、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金が科されることになり、刑務所に行かなければならなくなる可能性があります。

不起訴処分という言葉をニュースで目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
不起訴処分とは、検察官が起訴をしないと判断した際に付される処分のことをいいます。
不起訴処分になれば、起訴されませんので、刑罰を受けることはありません。
ですので、不起訴処分を獲得できれば、前科が付くことなく日常生活に戻ることができます。

盗撮を行った場合であっても、不起訴処分を獲得することはできるのでしょうか。

不起訴処分と弁護活動

結論から言うと、盗撮であっても、不起訴処分を獲得できる場合があります。

刑事事件では、示談の締結不起訴処分の獲得などに有利な事情にはたらくことがあります。

示談を締結するためには、示談交渉を行う必要があります。
ですが、今回の事例のような盗撮事件では、被害者と知り合いである可能性は低いでしょうから、示談交渉を行うには相手の連絡先を手に入れることから始める必要があります。
加害者が警察官などに被害者の連絡先を教えてほしいと頼んだ場合、証拠隠滅や被害者保護の観点から、教えてもらえない可能性が高いです。
警察官から被害者の連絡先を教えてもらえたとしても、当事者間での示談交渉はトラブルに発展しやすいため、示談交渉を加害者本人が行うことは、あまりお勧めできません。

被害者の連絡先を教えてもらえなかった場合であっても、再度、弁護士がお願いすることで、被害者と示談交渉を行える場合があります。
弁護士が代理人となって示談交渉を行うことで、円滑に示談を締結できる可能性がありますので、示談を考えている方は、弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

また、不起訴処分の獲得を目指すうえで、取調べ対応も重要になってきます。

刑事事件では、容疑をかけられると、警察官や検察官から取調べを受けることになります。
警察官や検察官はあなたの味方ではありませんので、事実ではないことを供述調書に記載される可能性や警察官などに都合の良いような内容の供述を誘導される可能性があります。
取調べの際に作成される供述調書は、裁判で証拠として使用されますし、検察官が不起訴処分などを判断する際の判断材料にもなります。
ですので、取調べで不利な証拠が作成されないように、取調べ前に対策を練っておく必要があります。

しかし、事前に取調べ対策を行うといっても、どういった対策を行えばいいのかわからない方がほとんどだと思います。
ですので、取調べ対策を行う際は、刑事事件に精通した弁護士と共に行うことが望ましいでしょう。
今回の事例では、京阪神宮丸太町駅盗撮をしようとしたと報道されていますので、どのような目的で京阪神宮丸太町駅を利用したのか、なぜ被害者を盗撮しようと思ったのかなどを聴かれることが予想されます。
弁護士であれば、聴かれる内容をある程度予測することができますし、供述すべき内容やそうでない内容をアドバイスすることが可能です。
弁護士と取調べ対策を行うことで、不利な証拠の作成を防げる可能性がありますので、取調べを受ける際は、事前に弁護士に相談をするといいでしょう。

加えて、弁護士は検察官に処分交渉を行うことができます。
弁護士が検察官に示談を締結しているなどの有利な事情や、起訴されてしまうと会社を解雇されてしまうおそれがあるなどの不利な事情を主張し、不起訴処分を求めることで、不起訴処分を獲得できるかもしれません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
盗撮逮捕された方、捜査を受けている方は、ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

【事例紹介】京都初 性的姿態等撮影未遂罪で逮捕②~条例との違い~

2023-09-03

前回のコラムに引き続き、京阪神宮丸太町駅のホームで女性のスカート内を盗撮しようとしたとして、性的姿態等撮影未遂罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警川端署は29日、性的姿態撮影処罰法違反未遂(撮影)などの疑いで、(中略)会社員の男(24)を逮捕した。
逮捕容疑は29日正午ごろ、京都市左京区の京阪神宮丸太町駅ホームで伏見区の女性(32)の背後からスマートフォンを差し出し、スカート内を撮影しようとした疑い。
同署によると、(中略)同法を適用した府内での逮捕は初めて。

(8月29日 京都新聞 「スマホでスカート内撮影しようとした疑い 性的姿態撮影処罰法で京都府内初の逮捕者」より引用)

性的姿態等撮影罪と京都府迷惑行為等防止条例違反

前回のコラムでも書きましたが、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下、「性的姿態撮影処罰法」といいます。)の施行前は、盗撮をした場合に各都道府県の迷惑行為防止条例が成立していました。
7月13日に施行された性的姿態撮影処罰法京都府迷惑行為等防止条例とどのような部分が異なるのでしょうか。

盗撮と法定刑

性的姿態撮影処罰法京都府迷惑行為等防止条例の大きな違いとして、盗撮を行った場合の刑罰の重さが挙げられます。

盗撮を行った場合に、性的姿態撮影処罰法の法定刑は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(性的姿態撮影処罰法第2条)である一方で、京都府迷惑行為等防止条例の場合は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(京都府迷惑行為等防止条例第10条1項)です。
京都府迷惑行為等防止条例では、常習盗撮の場合には刑罰を重く定めていますが、それでも法定刑は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(京都府迷惑行為等防止条例第19条3項)であり、性的姿態撮影処罰法3年以下の拘禁又は300万円以下の罰金と比較すると、性的姿態撮影処罰法が施行されたことにより、盗撮で有罪になった際に科される刑罰がかなり重くなったことが伺えます。

盗撮と写真、動画の提供

次に異なる点として挙げられるのは、盗撮画像や動画などの提供について規定されたことです。

性的姿態撮影処罰法第3条 
1項 性的影像記録(前条第1項各号に掲げる行為若しくは第6条第1項の行為により生成された電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)その他の記録又は当該記録の全部若しくは一部(対象性的姿態等(前条第1項第4号に掲げる行為により生成された電磁的記録その他の記録又は第5条第1項第4号に掲げる行為により同項第1号に規定する影像送信をされた影像を記録する行為により生成された電磁的記録その他の記録にあっては、性的姿態等)の影像が記録された部分に限る。)を複写したものをいう。以下同じ。)を提供した者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
2項 性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

京都府迷惑行為等防止条例では、盗撮した写真や動画の提供について定めはありませんでしたが、性的姿態撮影処罰法では盗撮した写真や動画を提供することを禁止しています。
ですので、盗撮した写真などを誰かに渡した場合には、性的姿態撮影処罰法違反が成立するおそれがあります。

また、特定の人や少数の人に提供した場合と、不特定の人や多数の人に提供した場合とでは、科される刑罰の重さが異なってきます。

盗撮と写真、動画の送信

性的姿態撮影処罰法では、盗撮写真等の提供と同様に、送信についても禁止されています。
ですので、京都府迷惑行為等防止条例には規定されていませんでしたが、盗撮した写真や動画などをインターネット上に投稿した場合には、性的姿態撮影処罰違反が成立するおそれがあります。

第5条 不特定又は多数の者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1項 正当な理由がないのに、送信されることの情を知らない者の対象性的姿態等の影像(性的影像記録に係るものを除く。次号及び第3号において同じ。)の影像送信(電気通信回線を通じて、影像を送ることをいう。以下同じ。)をする行為
(以降省略)

性的姿態撮影処罰法と京都府迷惑行為等防止条例

今回の事例では、京阪神宮丸太町駅のホームで女性のスカート内を盗撮しようとしたとして、性的姿態等撮影未遂罪(性的姿態撮影処罰法違反未遂)の容疑で逮捕されています。
京都府では性的姿態撮影処罰法違反が適用されている事件での逮捕は今回の事例で初めてだと報道されており、今後、性的姿態撮影処罰法違反が適用される事例が増えていくことが予測されます。

今回の事例では盗撮をしようとしたとして、性的姿態撮影処罰法が適用されています。
性的姿態撮影処罰法京都府迷惑行為等防止条例では、盗撮を行った場合に科される量刑がことなり、新しく施行された性的姿態撮影処罰法では、科される刑罰がかなり重くなっています。
ですので、今後は、以前に比べて盗撮を行った際に科される刑罰が重くなることが予想されます。
弁護士に相談をすることで、科される刑罰を軽くできる場合がありますので、盗撮でお困りの方は弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

また、京都府迷惑行為等防止条例では違反行為にならなかった、盗撮した写真や動画などの提供送信行為が、性的姿態撮影処罰法では違法行為として規定されています。
加えて、提供などの目的による盗撮写真等の保管なども性的姿態撮影処罰法では違反行為となります。(性的姿態撮影処罰法第4条)

以上のように、性的姿態撮影処罰法では、京都府迷惑行為等防止条例では違反行為に当たらない行為であっても違反行為に該当する可能性があります。
性的姿態撮影処罰法違反に該当する行為かどうかについては、事案によって異なります。
事件の見通しなども個々の事案によって異なりますので、盗撮等でご不安な方は、弁護士に相談をしてみることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
盗撮でお困りの方、ご不安な方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

次回のコラムでは、盗撮で捜査を受けた場合の弁護活動についてご紹介します。

【事例紹介】京都初 性的姿態等撮影未遂罪で逮捕①

2023-09-01

京阪神宮丸太町駅のホームで女性のスカート内を盗撮しようとしたとして、性的姿態等撮影未遂罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警川端署は29日、性的姿態撮影処罰法違反未遂(撮影)などの疑いで、(中略)会社員の男(24)を逮捕した。
逮捕容疑は29日正午ごろ、京都市左京区の京阪神宮丸太町駅ホームで伏見区の女性(32)の背後からスマートフォンを差し出し、スカート内を撮影しようとした疑い。
同署によると、(中略)同法を適用した府内での逮捕は初めて。

(8月29日 京都新聞 「スマホでスカート内撮影しようとした疑い 性的姿態撮影処罰法で京都府内初の逮捕者」より引用)

盗撮と犯罪

7月13日に性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下、「性的姿態撮影処罰法」といいます。)が施行されました。
以前は盗撮を行った場合に各都道府県の迷惑行為防止条例が成立していましたが、性的姿態撮影処罰法が施行されたことで、盗撮を行った場合に迷惑行為防止条例ではなく、性的姿態等撮影罪が成立する可能性があります。

性的姿態等撮影罪と盗撮

性的姿態撮影処罰法第2条
1項 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
1号 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治40年法律第四十五号)第177条第1項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態
2号 刑法第176条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
3号 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為
4号 正当な理由がないのに、13歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は13歳以上16歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為
2項 前項の罪の未遂は、罰する。
3項 前二項の規定は、刑法第176条及び第179条第1項の規定の適用を妨げない。

上記の条文が性的姿態等撮影罪の条文になります。

性的姿態撮影処罰法では、相手に気付かれないようにスカートなどの服で隠れている下着や性行為中の姿、性的部位などを撮る行為はもちろんのこと、撮影に同意できないような状態にさせて撮影する行為や性的な行為ではないなどと誤信させて撮影する行為などを禁止しています。

今回の事例では、容疑者が京阪神宮丸太町駅のホームで女性のスカート内を盗撮しようとしたと報道されています。
ひそかに下着などを盗撮する行為は、性的姿態撮影処罰法で禁止されていますし、未遂だったとしても刑罰を科されます。
今回の事例で、実際に容疑者が女性の下着を盗撮しようとしたのであれば、性的姿態等撮影未遂罪が成立する可能性があります。

性的姿態等撮影罪と逮捕

逮捕されると、逮捕後72時間以内の間に勾留釈放かが判断されます。
勾留になってしまうと、最長で20日間留置場で過ごすことになり、その間は仕事に行くことはもちろん、家に帰ることもできません。
逮捕されてしまうと会社に本人が直接連絡をすることはできませんから、身体拘束期間が長ければ長いほど、会社に逮捕を知られてしまうリスクが高く、最悪の場合には解雇されてしまうおそれもあります。

ですが、早期釈放を実現することで、会社に事件のことを知られずに、解雇を避けられる場合があります。
弁護士は勾留の判断が行われる前であれば、検察官や裁判官に意見書を提出することができます。
検察官や裁判官に意見書を提出して、会社に連絡をしなければならないことや解雇のおそれがあることなどを訴えることで、勾留されずに釈放が認められる可能性があります。

また、勾留後であっても、弁護士は準抗告の申し立てを裁判所に行うことができますので、弁護士が準抗告を行うことで、勾留満期を待たずに釈放される場合もあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件に精通した法律事務所です。
刑事事件の豊富な弁護経験を持つ弁護士による身柄解放活動によって、早期釈放を実現できるかもしれません。
意見書の提出は逮捕後72時間以内に行わなければなりませんので、ご家族が逮捕された場合は、お早めに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービスのご予約は、0120―631―881までご連絡ください。

次回のコラムでは、性的姿態等撮影罪と京都府迷惑行為等防止条例の違いについて解説します。

【事例紹介】14歳の少女のわいせつ行為を撮影した事例

2023-08-30

14歳の少女のわいせつ行為を撮影したとして、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反で再逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警少年課と西京署は28日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の疑いで、京都府久御山町教育委員会生涯学習応援課の非常勤職員の男(29)=八幡市、同法違反の罪(買春)で起訴=を再逮捕した。
再逮捕容疑は(中略)女子生徒2人=ともに(14)=が18歳未満と知りながら、中京区のカラオケ店の個室でわいせつな行為をさせ、その様子をスマートフォンで十数分間撮影し保存した疑い。「間違いありません」と容疑を認めているという。

(8月28日 京都新聞 「14歳少女2人とわいせつ行為、撮影疑い 京都の教育委員会職員の男を再逮捕」より引用)

児童ポルノ製造

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ禁止法」といいます。)第7条
1項 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者も、同様とする。
2項 児童ポルノを提供した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3項 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4項 前項に規定するもののほか、児童に第2条第3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第2項と同様とする。
(以降省略)

児童ポルノ禁止法第7条で規定されているように、日本では、児童ポルノの所持や製造が禁止されています。
児童ポルノとはどういったものを指すのでしょうか。

児童ポルノ禁止法第2条3項
この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
1号 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
2号 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
3号 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

児童ポルノ禁止法では、18歳未満の者を「児童」と規定しています。(児童ポルノ禁止法第2条1項)
ですので、18歳未満の者の性行為の写真や動画、性器等を触っている姿や性器などの性的な部分が強調されていて性的興奮を促すような写真や動画などを撮影すると、児童ポルノ製造に該当するおそれがあり、児童ポルノ禁止法違反が成立する可能性があります。

今回の事例では、14歳の女子中学生2人にわいせつな行為をさせて、その様子をスマートフォンで撮影したと報道されています。
報道の内容だけでは、どういった内容の動画や写真を撮影したのか明らかではありませんが、容疑者がすでに児童買春の疑いで起訴されていることから、性行為中の動画や写真を撮影したのではないかと推測されます。
18歳未満の者の性行為中の写真や動画を撮影する行為は児童ポルノ製造にあたりますので、容疑者が性行為中の動画などを撮影していたのであれば、児童ポルノ禁止法違反が成立する可能性があります。

また、容疑者が撮影したとされている動画などが児童ポルノ禁止法第2条3項1号~3号に該当するような内容であれば、児童ポルノ製造に該当しますので、性行為中の動画などでなくとも児童ポルノ禁止法違反が成立してしまうおそれがあります。

児童ポルノ製造と刑罰

提供や輸出などの目的ではない児童ポルノ製造により児童ポルノ禁止法違反で有罪になった場合には、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科されます。
児童ポルノ製造は、懲役刑が科される可能性もあり、決して罪の軽い犯罪ではありません。

刑事事件と聞くと示談を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。
児童ポルノ製造による児童ポルノ禁止法違反では、示談を締結することで、不起訴処分の獲得など、あなたにとって良い結果を得られる可能性があります。
ですが、児童ポルノ禁止法違反の場合、被害者は未成年ですので、示談交渉は被害者の親権者に対して行うことになります。
ですので、子どもを思う気持ちから処罰感情が苛烈になりやすいため、示談交渉が難航してしまう可能性がかなり高く、連絡すら取れない場合も多々あります。
しかし、加害者本人ではなく、弁護士であれば話を聴いてもいいと思われる親御さんもいらっしゃいますので、児童ポルノ禁止法違反などの被害者が未成年の事件の場合は、弁護士を代理人として示談交渉を行うことをお勧めします。

性犯罪に精通した弁護士に相談をすることで、不起訴処分や略式命令による罰金刑、執行猶予付き判決を狙える可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
児童ポルノ製造などの児童ポルノ禁止法違反でお困りの方は、性犯罪に精通した、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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