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【事例解説】気分をスカッとさせるため竹やぶに放火して逮捕
【事例解説】気分をスカッとさせるため竹やぶに放火して逮捕
気分をスカッとさせるため竹やぶに放火した疑いで男が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事案
京都府警城陽署は11月9日、建造物等以外放火の疑いで、京都府城陽市、無職の男(25)=同放火の罪で起訴=を再逮捕した。
(11月9日 京都新聞 「竹やぶ放火の疑いで25歳男を再逮捕「気分スカッとさせたくて」」より引用)
再逮捕容疑は、9月24日午後7時~7時半に城陽市の竹やぶに火をつけ、117平方メートルを焼いた疑い。「気分をスカッとさせたかった」などと容疑を認めているという。
(後略)
放火の罪にはどんな種類がある?
刑法は、何を燃やそうとして放火したかに着目して、いくつかの放火の罪を規定しています。
これは、何が燃やされるかによって生命・身体・財産が脅かされる危険性が異なるためであり、例えば住居や人がいる建造物に放火した場合には現住建造物等放火罪が成立し、死刑又は無期もしくは5年以上の懲役となります(刑法108条)。
放火の罪は、燃やそうとしたものが建造物等かそれ以外によって大きく分類されます。
建造物等とは、家屋や小屋などの建物のほか、汽車、電車、艦船又は鉱鉱を言います。
前者は、さらに「現に人が住居に使用し又は現に人がいる」建造物等かそうでない建造物等かで異なる規定が用意されています。
前者の現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物等への放火は、現住建造物等放火罪が成立し、それ以外の建造物等への放火の場合には、非現住建造物等放火罪が成立します。
現住建造物等放火罪の法定刑は死刑又は無期若しくは5年以上の懲役です(刑法第108条)。
また、非現住建造物等放火罪の法定刑は2年以上の有期懲役(刑法第109条1項)であり、放火した建物が自己所有である場合には6月以上7年以下の懲役が科され、公共の危険を生じない場合には刑罰は科されません(刑法第109条2項)。
住居や人がいる建物に放火した場合には、生命や財産が脅かされる可能性が高く、現住建造物等放火罪は非現住建造物等放火罪よりもはるかに重い刑罰が規定されています。
また、刑法では、放火の罪として、現住建造物等放火罪や非現住建造物等放火罪以外に、建造物等以外放火罪を規定しています。
建造物等以外放火罪はその名の通り、建造物以外の放火を対象にしています。
現住建造物等放火罪や非現住建造物等放火罪が規定する物以外を焼損し、公共の危険を生じさせた場合には建造物等以外放火罪が成立し、1年以上10年以下の懲役が科されます(刑法第110条1項)。
また、焼損した物が自己の所有物だった場合には、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金が科されます(刑法第110条2項)。
建造物等以外放火罪
報道によると本件で男は、竹やぶに直接火をつけたとされています。
竹やぶに火をつける行為は「放火」したと評価できるでしょう。
次に竹やぶが「焼損」したことが必要ですが「焼損」とはどういう意味でしょうか?
判例によると「焼損」とは、火が媒介物を離れて目的物にうつり、目的物が独立に燃焼を継続する状態のことです(大判大正7年3月15日)。
報道によれば本件では、容疑者は媒介物を用いずに目的物である竹やぶに直接放火したとされており、その火が広がっていき117平方メートルが焼けるに至ったようですから、独立に燃焼を継続する状態に至っていたといえそうです。
最後に「公共の危険が生じさせ」たことも必要です。
公共の危険とは、一般人の印象からみて、不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険を感じさせる状態を言います。
本件では竹やぶにつけられた火が117平方メートル広がったとのことですので、その周囲に住む多数人からすると自分たちの生命・身体・財産に危険が及んでいると感じる状態となったといえそうです。
竹やぶは建造物にはあたりませんから、本件では建造物等以外放火罪が成立する可能性があります。
弁護士に相談を
本件の建造物等以外放火罪(自己所有を除く)も含め、放火の罪の多くは刑罰に罰金刑が含まれておらず起訴された場合には裁判となり、初犯であっても執行猶予がつかない可能性があります。
執行猶予がつけば、今まで通り大学への通学や会社への出勤ができるため退学や解雇を避けられる可能性があります。
執行猶予がつく可能性を少しでも上げる手段として、自主をするという選択があります。
自主は捜査機関に発覚する前でなければ成立しません。
発覚前とは、犯罪そのものの発覚前または犯人のだれであるかが判明する前をいいます。
ですので、捜査機関が犯罪行為が行われたと知る前か、犯人がだれであるか全くわからない状態で自主をしないと自主は成立しません。
自主が成立することで罪が減刑される可能性があることは大きなメリットになりますが、自主をしなければ犯人が特定されなかった可能性もあり、自主をすることで犯人が特定されてしまうことは大きなデメリットになります。
自主はメリットだけでなくデメリットもありますので、自主を検討している方は、一度弁護士に相談をしてみることをお勧めします。
また、放火の罪は重い刑罰を科される可能性のある犯罪であることから逮捕される可能性が高いです。
弁護士と出頭することで逮捕を回避できる可能性がありますので、自主や出頭をする際には、弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、放火事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
刑事事件に詳しい弁護士に自主前に相談することで、自主をすべきか、するとして取り調べにどう対応すべきかといったアドバイスを受けることができます。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービス、無料法律相談のご予約は0120-631-881にて受け付けております。
京都市バスの運転手の胸ぐらを掴み、公務執行妨害罪の疑いで川端署の警官に逮捕された事件
京都市バスの運転手の胸ぐらを掴み、公務執行妨害罪の疑いで川端署の警官に逮捕された事件
京都市バスへの駆け込み乗車を拒まれ腹を立てた男が、運転手の胸ぐらを掴んだとして公務執行妨害罪の容疑で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事案
京都市バスの車体をたたき、運転手の胸ぐらをつかんで運転を妨害したとして、京都府警は19日、放射線技師の男(65)=京都市中京区=を公務執行妨害の疑いで逮捕し、発表した。「走って乗ろうとしていたのに発車したので腹が立った」と容疑を認めているという。
(2019年6月19日 朝日新聞デジタル「駆け込み乗車拒まれ「ぼけ」市バス追いかけ妨害容疑」より引用)
川端署によると、男は3月28日午後8時ごろ、女性運転手(40)の胸ぐらをつかみ、運転業務を妨害した疑いがある。男は熊野神社(京都市左京区)前の停留所を出発したバスを追いかけ、後部のドア付近をたたき停車させて乗り込んだ後、車内では「走っているのがわからんのか、ぼけ」と暴言も吐いたという。(後略)
公務執行妨害罪と職務
刑法95条1項は、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」として公務執行妨害罪を規定しています。
公務執行妨害罪は、公務員による公務の円滑な執行を守ることを目的として規定されています。
ですので、公務執行妨害罪が成立するためには、公務員の職務の執行に対して、暴行や脅迫が加えられる必要があります。
例えば、職務時間外に暴行や脅迫が加えられた場合、公務員による公務の円滑な執行が妨げられることはないので、公務執行妨害罪は成立しません。
では、本件の京都市バスの運転手がバスを運転する行為は公務員の職務にあたるのでしょうか。
判例では、公務員の職務について、「ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれる」としています(最判昭和35年3月1日)。
京都市バスの運転手は公務員にあたりますので、京都市バスの運転手の主な業務であるバスを運転する行為は、間違いなく公務員の職務に該当するでしょう。
公務執行妨害罪の暴行、脅迫
公務執行妨害罪における「暴行」とは、公務員に向けられた不法な有形力の行使をいいます(最判昭和37年1月23日)。
先ほども書きましたが、公務執行妨害罪の規定は、公務員による公務の円滑な執行を守ることを目的としており、公務員の身体の安全そのものを守ることを目的としているわけではありません。
したがって、暴行が公務員の「身体」に向けられていることまでは要求されていない点が特徴です。
ですので、警察官が押収した証拠品を壊す行為など、一見すると暴行にはあたらないような行為でも、公務執行妨害罪が規定する「暴行」に該当します。
また、公務執行妨害罪が規定する「脅迫」についても、脅迫罪が成立する行為よりも広く規定されています。
ですので、脅迫罪では脅迫にあたらないような害悪の告知であっても、公務の執行が妨害されるおそれがあるのであれば、公務執行妨害罪が規定する「脅迫」にあたります。
本件では、容疑者の男は公務員である京都市バスの運転手の胸ぐらを掴んだとされています。
胸ぐらを掴む行為は間違いなく暴行にあたりますので、実際に容疑者が京都市バスの運転手の胸ぐらを掴んだのであれば、公務員に向けられた不法な有形力の行使があったと評価できます。
したがって、報道されている容疑者の行為は公務執行妨害罪が規定する「暴行」にあたる可能性が非常に高く、容疑者に公務執行妨害罪が成立する可能性があります。
できるだけ早く弁護士への相談を
公務執行妨害罪では、被害者が警察官の場合は現行犯逮捕されることが多いですが、本件のように被害者が警察官以外の場合には現行犯逮捕はされずに後日逮捕されるケースもあります。
当然、逮捕されてしまうと、いつも通り仕事に行くことはできません。
逮捕はある日突然されますから、前もって職場に欠勤の連絡を入れることもできず、無断欠勤になってしまう可能性が非常に高いです。
逮捕後、勾留されてしまうと、勾留期間は最長で20日間にも及びますから、長い間、職場と連絡をとれない状況に陥ってしまうことも少なくありません。
長期間、職場に連絡を入れられないことで、上司に逮捕されたことを知られてしまうおそれがありますし、無断欠勤が続き連絡が取れないことで解雇されてしまうことも考えられます。
逮捕前に弁護士に相談をしておくことで、弁護士が警察官へ働きかけを行い、逮捕を回避できる可能性がありますし、逮捕された場合でも早期に身柄開放活動を行うことで、勾留されずに釈放を認めてもらえる可能性があります。
早い段階で動くことで、あなたやご家族様にとって有利に進むこともあるでしょうから、公務執行妨害罪などの刑事事件を起こしてしまった際は、なるべく早く弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、公務執行妨害事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
身柄開放活動に精通した弁護士に相談をすることで、早期釈放を実現できるかもしれません。
公務執行妨害罪でお困りの方は、できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービス、無料法律相談のご予約は0120ー631ー881にて受け付けております。
大麻は所持しただけで犯罪⁈所持していても犯罪にならない大麻製品があるってほんと?大麻は所持しただけで犯罪⁈
大麻は所持しただけで犯罪⁈所持していても犯罪にならない大麻製品があるってほんと?
大麻取締法とは何か?
大麻取締法は、大麻の不正な使用を防止し、公衆の健康を守るために設けられた法律です。
この法律により、大麻の所持、栽培、輸入、輸出、そして譲渡が厳しく制限されており、違反すると刑事罰が科されます。
上記のように、大麻は所持するだけで大麻取締法違反になります。
しかし、現在、大麻の「使用」自体は制限されておらず、大麻使用に関しては現行法では罰せられません。
所持しても違法にならない大麻製品
大麻取締法では、大麻とは「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。」と規定されています。(大麻取締法第1条)
なぜ、大麻の成熟した茎や種子は違法にならないのでしょうか。
大麻草にはTHC(テトラヒドロカンナビノール)が含まれています。
このTHCは脳に作用し、幻覚症状や記憶力低下を引き起こします。
THCは主に、大麻草の花や葉などに含まれています。
一方で、成熟した大麻草の茎や種子にはTHCはほとんど含まれません。
ですので、大麻草の茎や種子が規制の対象外となっているのは、THCが含まれているかいないかの差だということがわかります。
このように、大麻取締法の下での大麻の範囲は限定的です。
大麻製品を所持していたとしても、その大麻製品が成熟した大麻草の茎や種子から作られたTHCを含まない製品であれば、大麻取締法違反が成立しないことになります。
大麻所持等で有罪になったら
大麻取締法に違反した場合の法定刑は、行為の性質に応じて異なります。
大麻の栽培や輸出入に関しては、7年以下の懲役が科されます。(大麻取締法第24条第1項)
営利目的でこれらの行為を行った場合、刑はさらに重く、10年以下の懲役が科されることになります。(大麻取締法第24条第2項)
私的使用を目的とした大麻の所持や譲受・譲渡に対しては、5年以下の懲役が科されることになります。(大麻取締法第24条の2第1項)
また、営利目的であれば、7年以下の懲役が科されます。(大麻取締法第24条の2第2項)
大麻の輸出入や所持、譲渡などは営利目的の場合は私的な目的の場合に比べて、科される量刑が重くなります。
これは、営利目的の場合の方が、私的な目的な場合に比べて大麻が広まる可能性が高く、社会に与える影響がより大きくなるからだと思われます。
友達に進められて大麻クッキーを食べた事例
京都府京田辺市に住むAさんは、友人から大麻クッキー(大麻入りのクッキー)を勧められました。
大麻が違法であることを知っていたAさんは断りました。
しかし、友人から「大麻で作ったクッキーは違法ではないから」と言われ、大麻クッキーへの興味が勝ったAさんは、友人の言葉を信じ、大麻クッキーを食べました。
一度、大麻クッキーを食べたことで、大麻を忘れられなくなったAさんは、以降も友人から大麻クッキーを譲ってもらうようになりました。
友人が大麻所持、譲渡の疑いで逮捕されたことにより、Aさんにも捜査の手が伸び、京都府田辺警察署の警察官に大麻所持の疑いで逮捕されることになりました。
(事例はフィクションです。)
大麻の葉などで作られた大麻クッキーは、違法です。
大麻取締法では、大麻そのものだけが違法になるわけではなく、違法な大麻で作成された製品についても違法になります。
ですので、大麻クッキーであっても、大麻を含む以上、所持や譲渡、譲受は規制の対象となります。
ですので、今回の事例ではAさんが大麻クッキーを所持していますので、大麻取締法違反が成立する可能性が高いです。
大麻取締法違反などの薬物事件で逮捕された場合、大麻などの薬物を処分することで証拠隠滅を簡単に行えることから、長期間にわたって身体拘束を受けることになる可能性が非常に高いです。
今回の事例では、Aさんは大学生ですので、逮捕されることで大学生活に悪影響を及ぼすおそれがあります。
例えば、試験直前や試験期間に逮捕された場合には、試験を受けられない可能性があります。
そうなってしまうと、単位の取得は難しいでしょうから、留年をしてしまうおそれがあります。
また、大学に大麻取締法違反で逮捕されたことが知られることで、退学処分など、何らかの処分が下される可能性もあります。
釈放に向けて
弁護士は検察官や裁判官に勾留に対して意見書を提出することができます。
この意見書は勾留が判断される前=逮捕後72時間以内に提出する必要があります。
弁護士が意見書を提出し、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを検察官や裁判官に主張することで、早期釈放を実現できる可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は薬物事件に強い法律事務所です。
事件の早期に弁護活動を始めることで、早期釈放や執行猶予付き判決の獲得を望める可能性があります。
大麻所持などの大麻取締法違反でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の初回接見サービス、無料法律相談をご利用ください。
物品を水増し請求させて勤務先の病院に損害を与えた事例
物品を水増し発注し、自身の勤務する病院に損害を与えた事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事件概要
京都府南警察署は、京都市中京区に住む医師の男(47)を背任罪の疑いで逮捕した。
男は、知人の経営する医療機器メーカーに、自身が勤務する京都市南区にあるK病院に対して水増し請求させて、病院におよそ2470万の損害を与えたとして背任罪の疑いで逮捕された。
男は常勤医師として、院内で必要な物品の購入及び管理を院長から任されていた。
男と知人は、水増し請求分を分配しギャンブルに使っていたとのこと。
(2022年11月16日中国新聞デジタル「背任の疑いで再逮捕 広署など」を参考にしたフィクションです)
背任罪とは?
刑法247条が規定する背任罪は、他人のためにその事務を処理する者(①)が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的(②)で、その任務に背く行為(③)をし、本人に財産上の損害を加える(④)犯罪です。
背任罪の主体は、「他人のためにその事務を処理する者(①)」です。
本件の男は、K病院の常勤医師として、院内で必要な物品の購入及び管理を院長から任されていたようです。
したがって、男は背任罪が規定する、「他人のためにその事務を処理する者」にあたる可能性があります。
また、背任罪が成立するためには、図利・加害目的すなわち「自己もしくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的(②)」が必要です。
ここでの「本人」とは背任行為の行為者に事務処理を委託した者を言います。
本件では、K病院の院長が男に物品購入及び管理を頼んでいたようなので、K病院が本人にあたります。
そして男は、「本人」である病院に支払わせた水増し請求分を、知人と分配していたようです。
したがって、自己と知人(第三者)の利益を図ったとして図利・加害目的があったと評価されそうです。
次に、背任行為すなわち「任務に背く行為(③)」が背任罪の成立に必要です。
背任行為について、判例は信任関係の違背による財産の損害と考えているようです。
実際に、大審院の判決では、質物の保管者が信任関係に違背し、質物を債務者に返還することで財産上の損害を与えた事例では、背任行為にあたると判断されました(大判明治44年10月13日、大判大正3年6月20日)。
そのほかにも、信任関係の違背の例としては、銀行員が回収見込みがないに相手に対して、本来得るべき十分な担保や保証なしに、金銭を貸し付ける不良貸付や、保管を任されていた物を壊す行為などが挙げられます。
本件では、男は、院内の物品の発注担当者として、必要な物品を然るべき金額で購入することを病院に任されているにもかかわらず、それに反して知人に水増し請求させ過大な代金を病院に支払わせているので、背任行為があったと言えそうです。
最後に、「本人に財産上の損害を加えたこと(④)」も必要となります。
本件では、本人すなわち病院は、水増し請求により本来払う必要のない2470万円の金額の支払いをすることとなりましたので、男は本人に財産上の損害を与えたと言えそうです。
以上より、本件では背任罪が成立する可能性が高いと言えそうです。
なるべく早く弁護士に相談を
背任罪は被害者のいる犯罪です。
早い段階で被害者との間で示談を成立させ、真摯な謝罪と背任行為により与えてしまった損害を弁償することができれば、不起訴処分になる可能性があります。
仮に不起訴処分にならなかったとしても、判決前に被害者との間で示談を成立させることができれば、量刑が軽くなったり執行猶予付判決が得られるかもしれません。
もっとも、加害者が自力で被害者とスムーズに示談交渉を進められるとは限りません。
逮捕など身柄拘束された場合には、被害者含む外部の人とコンタクトを取ることは困難です。
逮捕されなかった場合にも、被害者は、信任関係を壊した加害者に対して強い処罰感情を有している可能性がありますから、示談交渉に応じてくれないこともあります。
そこで、なるべく早い段階で交渉のプロである弁護士に示談交渉を一任されることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、背任事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分の獲得のほか、量刑を軽くしたり執行猶予付判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
神社で休憩中の会社員が被害にあった恐喝事件
神社で休憩中の会社員が被害にあった恐喝事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事件概要
京都府下京警察署は、恐喝罪の疑いで京都市下京区に住む大学生3人を逮捕した。
事件現場は平安時代の歌人を祭る由緒ある神社。
容疑者の大学生等は、遊ぶ金を手にいれるため、お昼休憩で散歩していた会社員の男性(49)を取り囲んで胸ぐらを掴むなど暴行し、恐怖を覚えた男性に現金24万9000円と時計を差し出させた疑いが持たれている。
逮捕された大学生等は容疑を認めているという。
(11月2日 京都新聞「専門学校生を暴行、43歳会社員に金品要求 恐喝や強要など疑い、少年5人逮捕・送検」を参考にしたフィクションです。)
恐喝罪とは
刑法249条1項は、「人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する」としています。
まず、恐喝罪の行為である「恐喝」とは、①財産を交付させる手段として行われる暴行又は脅迫であって、②相手方の反抗を抑圧するに至らない程度のもの(相手方を畏怖させる程度で足りる)を言います。
本件では、大学生等は被害男性から金品を巻き上げるための手段として、暴行を加えたとされています(①)。
また、悪意を持った複数人の男性に取り囲まれて胸ぐらを掴まれるなどの暴行を受ければ、抵抗できない状態にまではならなくとも、恐怖を感じるでしょう(②)。
したがって、本件での大学生等の行為は「恐喝」に該当する可能性があります。
続いて、恐喝罪における財物を「交付させた」とは、恐喝行為を受けて怖がった被害者に、本意でなく財物を加害者(またはその仲間)に差し出させることを言います。
本件では、被害男性は、恐喝により恐怖を覚えて金品を差し出したようなのですから、恐喝罪の「交付」があったと評価される可能性があります。
以上より、本件では恐喝罪が成立する可能性があります。
なるだけ早く弁護士に相談を
恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役です。
執行猶予がつくためには、量刑が3年以下であることが条件の1つです。
執行猶予がつかず実刑判決が下った場合、刑務所に拘束されるため大学に通ったり会社に出勤したりすることはできず、解雇や退学処分となることが珍しくありません。
したがって、刑務所での拘束を避けるためには、科される量刑を3年以内に抑えたうえで執行猶予付判決を獲得する必要があります。
執行猶予付判決を獲得するにあたって、被害者との間に示談が成立していることが大きな意味を持ちます。
ただし、金品を巻き上げた当の加害者が、直接被害者と示談交渉を進めることは通常困難です。
被害者は強い処罰感情を有していることは珍しくありませんから示談交渉のテーブルにつくことすらできないかもしれません。
そこで、交渉のプロである弁護士に第三者的立場から示談交渉をしてもらうことをおすすめします。
加えて、検察官に起訴される前に示談を締結できた場合には不起訴処分となる可能性も存在しますから、できる限り早い段階で弁護士に相談することが極めて重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、恐喝事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成功させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、量刑を軽くしたり執行猶予付判決や不起訴処分を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
清水寺で開催されたイベントの協賛金を横領した疑いで逮捕
清水寺で開催された「日本国際観光映画祭」で協賛金を横領した疑いで、一般社団法人の代表理事が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します
事件概要
映像祭の協賛金を横領したとして、京都府警東山署は25日、業務上横領の疑いで、千葉県、一般社団法人の代表理事の男(51)を逮捕した。
(10月25日 「京都・清水寺での催しに絡み協賛金横領、一般社団法人の代表理事を容疑で逮捕」より引用)
逮捕容疑は、清水寺で開催された(中略)に絡み、協賛金40万円を横領した疑い。
「横領した気持ちはありません」と容疑を否認しているという。
東山署によると、代表理事の男は映像祭で会計管理業務を担当。
協賛金は計550万円がいったん法人名義の口座に振り込まれた後、うち40万円が親族名義の口座に移されていた。(後略)
業務上横領罪とは
刑法は、横領罪として単純横領罪(刑法252条)、業務上横領罪(刑法253条)、占有離脱物横領罪(刑法254条)を規定しています。
単純横領罪とは、「自己の占有する他人の物を横領」する罪であり、
業務上横領罪とは、「『業務上』自己の占有する他人の物を横領」する罪です。
両罪は、横領した他人の物が『業務上』自己が占有する物であったかどうかで区別されます。
業務上横領罪の「業務」とは、金銭その他の財物を委託を受けて占有・保管することを内容とする職業もしくは職務をいうと解されています。
東山警察署によると、逮捕された代表理事の男は映画祭の会計管理業務の担当者として、企業から集まった協賛金を上記イベントの実行委員会の代表から依頼を受けて管理保管する職務についていたようです。
これが事実なら、本件は業務上横領罪で規定している業務に当たる可能性があります。
なお、占有離脱物横領罪とは、誰の占有にも属していない財物や、他人の委託に基づかずにたまたま占有するに至った他人の財物を領得する罪を言います。
例えば、電車に置き忘れられた財布や、誤って配達された郵便物(大判大正6年10月15日)などを対象とする横領罪です。
「自己の占有する他人の物」の意義
ところで、本件報道の事実関係のもとで、男は「他人の物を占有」していたと言えるのでしょうか?
窃盗罪や強盗罪、詐欺罪などにいう占有とは、物に対する事実上の支配を言います。
具体的には、金銭を鞄やポケットに入れている状態など、客観的に見てその金銭を所有しているとわかるような状態であれば占有があるとみなされます。
例えば、Aさんがポケットに千円札を入れている場合、誰が見てもAさんのポケットに入っている千円札はAさんのものだとわかるでしょう。
では、本件の場合のように銀行口座に預けられているお金はどうでしょうか。
例えば、Aさんが自身の口座に千円を預けた場合、この千円は預金先の銀行がAさんの代わりに保管することになります。
銀行はAさんが預けたお金以外にもたくさんのお金を保管しています。
このような状態では、Aさんが預けた千円について誰から見てもAさんのものだとわかるような状態だとはいえないでしょう。
ということは、Aさんが銀行に千円を預けた時点で、この千円の占有はAさんから移転しているといえます。
この考えで行くと、本件は企業から集まった協賛金をイベントの実行委員から預かり法人名義の口座で保管していたようなので、この法人名義の口座のお金には、本件の男はもちろんのこと名義人である法人ですら占有が認められないことになります。
そうなると、男には占有が認められないわけですから、法人名義の預金口座のお金は、業務上横領罪の成立要件の一つである「自己の占有する他人の物」に該当しないように思います。
しかし、この点について判例は、横領罪における「占有」とは、物に対する事実上の支配だけでなく法律上の支配も含むと解釈しています(大判大正4年4月9日)。
法律上の支配とは、法律上自己が容易に他人のものを処分しうる状態のことを言います。
実際に大審院の判決では、自分の口座に保管している金銭は、いつでも引き出して自由に処分できる状態にあるので、法律上の支配が認められると解釈しています(大判大正元年10月8日)。
したがって、自分名義の口座に保管している他人の金銭は、「自己の占有する他人の物」にあたり、これをを勝手に引き出して費消した場合には横領罪が成立する可能性があります。
本件では、協賛金を法人名義の口座に入金させ、この口座を逮捕された男が管理しているようですので、この法人名義の口座は「自己の占有する他人の物」にあたりそうです。
「横領」とは
最後に、横領とは具体的にどのような行為をすることを指すのでしょうか?
横領とは不法領得の意思を発現する一切の行為を意味します。
判例によると、横領罪における不法領得の意思とは、「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思」のことであるとしています(最判昭和24年3月8日)。
本件報道によると、男は、自らが代表を務める法人名義の口座に振り込まれた協賛金を、親族名義の口座に入金したとされています。
これが事実なら、男は本来イベントに使用するために預かっていた金銭を、その任務に背いて、あたかも自分の金銭であるかのように親族名義の口座に入金したということになるので、横領したと評価される可能性があります。
ですので、本件では、業務上横領罪が成立する可能性が高そうです。
示談交渉は弁護士にお任せください
横領罪は被害者のいる犯罪であり、被害者が被害届を出すことで警察の捜査が始まることが多い犯罪です。
業務上横領罪が疑われる事件では、警察に被害を相談する前に、会社側が本人との話し合いの機会を設ける場合が多く、被害弁償がされれば被害届を出さないと考える被害者もいらっしゃいます。
したがって、真摯な謝罪と被害弁償をした上で被害届を出さないでもらえるよう示談交渉することが重要となります。
仮に被害届が提出され捜査機関の介入が生じた場合でも、真摯な謝罪と被害弁償をしていれば、不起訴処分の獲得や罪の減軽、執行猶予付き判決の獲得につながる可能性があります。
もっとも、加害者自らが、被害者に弁償額や示談条件を直接交渉した場合、かえって被害者の神経を逆撫でする可能性があり大変危険です。
そこで、示談交渉は、交渉のプロである弁護士に一任されることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、横領事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分や罪の減軽、執行猶予付き判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
万引きすると何罪?将来に影響は?
身近な犯罪の一つとして、万引きがあります。
万引きを行った場合、どのような罪が成立するのでしょうか。
今回のコラムでは、万引きについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
Aさんは、京都市東山区にあるコンビニでお菓子を万引きしました。
店を出た直後、Aさんはコンビニの店員に呼び止められ、店長と話しをすることになりました。
その後、店長は京都府東山警察署に万引きがあったことを通報し、Aさんは京都府東山警察署の警察官に話を聞かれることになりました。
(事例はフィクションです。)
窃盗罪とは何か?
窃盗罪は、刑法第235条によって定義されています。
この法律には、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。
簡単に言えば、他人の財物を無断で取る行為が窃盗罪とされています。
万引きと窃盗罪の関係
一般的には店舗で商品を買わずに無断で持ち出すこ行為を万引きといいます。
しかし、法的にはこの万引き行為は「窃盗罪」に該当します。
つまり、万引きを行った場合、独立した「万引き罪」というものは存在せず、窃盗罪が成立するのです。
今回の事例のAさんは、コンビニで万引きをしていますので、窃盗罪が成立することになります。
この点が一般的な認識と異なる場合が多く、万引きを軽い犯罪と考えがちですが、実際には窃盗罪として法的に厳しく取り扱われます。
窃盗罪の罰則は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
万引きの場合であっても窃盗罪として裁かれる以上、上記のような刑罰が科される可能性があります。
このように、万引きによって窃盗罪が成立した場合、その罰則は決して軽くはありません。
また、万引きをした状況や背景によっては、さらに厳しい罰が科される場合もあります。
例えば、高額な商品を狙った万引きや、転売目的での万引きは、一般的な万引きよりも罰が重くなる可能性があります。
このように、万引きと窃盗罪は密接な関係にあり、万引き行為がどのような目的状況で行われたかによって、その後の法的処分が大きく変わることがあります。
万引きと悪影響
会社員が万引きをした場合に、万引きをしたことを会社に知られると、解雇されてしまう可能性があります。
万引きは軽い犯罪だと捉えられがちですが、被害額が高額だったり、世間の目を引くような物珍しい犯罪内容である場合には、万引きであっても報道される可能性が高いです。
報道されると会社に事件のことを知られるリスクがありますし、逮捕された場合には長期間会社に出勤できないことで万引きをしたことや逮捕されたことを会社に知られてしまうおそれがあります。
また、学生が万引きをした場合にも、学校に万引きしたことを知られることによって、退学や停学になってしまうおそれがあります。
万引きをすることで、窃盗罪で有罪になった場合には、前科が付くことになりますから、就職や転職活動にも悪影響を及ぼす可能性があります。
窃盗罪と罰則
窃盗罪に対する罰則は、刑法第235条に明確に規定されています。
具体的には、「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされています。
懲役刑と罰金刑どちらが科されるのかは、前科前歴、余罪、被害額などから総合的に判断されます。
例えば、万引きしたものが高額な財物であった場合や、転売目的で万引きした場合、万引きの前科がある場合には、科される罰則がより重くなる可能性があります。
また、被害者との示談が成立した場合や、初犯である場合などは、罰則が軽減される可能性も考えられます。
さらに、窃盗罪で有罪となった場合、その後の社会復帰も困難になることが多いです。
具体的には、前科があることが、就職や転職の際に悪く評価される可能性が高いです。
企業は前科がある人を進んで取りたがらないでしょうから、就職や転職活動が難航するおそれが非常に高く、希望する職種に就けない可能性があります。
事例のAさんはコンビニでお菓子を万引きしていますが、万引きしたものがお菓子であろうと、窃盗罪で有罪になる可能性がありますので、前科が付いてしまうおそれは十分にあります。
被害額が数百円だからといって窃盗罪が成立しなくなるわけではありませんので、上記のように会社の解雇や学校の退学処分、その後の就職、転職活動に悪影響を及ぼす可能性は非常に高いです。
たった一度の万引きで将来を棒に振ってしまうおそれがありますので、万引きを軽い犯罪だと捉えるのは極めて危険だといえます。
被害弁償と示談の可能性
万引きなどの窃盗罪の場合は、被害者と示談を締結することで、不起訴処分の獲得を目指せる可能性があります。
万引きの場合、被害者は万引きをした店舗になるので、その店の責任者と示談を締結することになります。
店相手の示談交渉の場合、断られてしまうケースが多いです。
ですが、弁護士が連絡を取り、被害者がしっかりと反省をしていることを伝えることで、示談を締結してもらえる場合があります。
ですので、万引きで示談を考えている場合は、弁護士に相談をすることをお勧めします。
転売目的の万引きとその重罪性
万引きが単なる衝動的な行動でなく、転売目的で行われた場合、その罪の重さは一層増します。
転売目的での万引きは、通常の万引きに比べて悪質性が高いと判断される可能性が高く、そのために法的な処分も厳しくなる傾向にあります。
具体的には、転売目的での万引きは、一般的な万引きよりも罰則が重くなる可能性が高いです。
これは、転売によって得られる利益が犯罪を助長すると考えられるため、より厳しい罰が科されるのです。
また、転売目的の万引きは、しばしば犯罪組織との関連が指摘されることもあります。
そのような場合、窃盗罪だけでなく、組織犯罪に関する法律に抵触する可能性も出てきます。
これによって、さらに罰則が重くなるケースも考えられます。
このように、転売目的での万引きは、多くのリスクと重大な法的影響を持っています。
そのため、この種の万引きが疑われる場合は、専門の弁護士のアドバイスが不可欠です。
窃盗罪に強い弁護士の重要性
窃盗罪、特に万引きなどの犯罪に関与した場合、専門の弁護士の支援が非常に重要です。
なぜなら、窃盗罪は一見単純に見えても、多くの法的要素が絡む複雑な犯罪であり、その対応には専門的な知識が必要だからです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、万引きなどの窃盗事件に精通した法律事務所です。
万引きや窃盗罪に強い弁護士に相談をすることで、不起訴処分の獲得など、よりよい結果を得られるかもしれません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、無料法律相談を行っています。
万引きで捜査を受けた方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
いたずら電話が犯罪に⁈ 偽計業務妨害罪はどんな罪?
いたずら電話をかけた場合にどのような犯罪が成立するのか、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
偽計業務妨害罪とは?
偽計業務妨害罪は、刑法第233条に規定されています。
刑法第233条では、偽計業務妨害罪は「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。
「業務」と「偽計」の意味
業務: この文脈での「業務」とは、職業や社会生活上反復、継続して行う作業を指します。
例えば、病院の受付や、商店の販売活動などが該当します。
偽計: 「偽計」とは、人を欺く行為や、誤解を利用する行為を指します。
これには、虚偽の情報を提供する、誤った印象を与えるなどが含まれます。
大まかに説明すると、偽計業務妨害罪は、人を欺くことで業務を妨害するおそれがある場合に成立します。
いたずら電話で犯罪に⁈
事例
Aさんは京都市上京区にあるV店に100回以上のいたずら電話をかけました。
後日、Aさんは偽計業務妨害罪の疑いがあるとして、京都府上京警察署の警察官に話を聞かれることになりました。
(事例はフィクションです。)
この事例では偽計業務妨害罪が成立するのでしょうか。
通常、店に電話がかかってくれば、その店の従業員は店に用事があるのだと思い対応するでしょう。
当然、Aさんからのいたずら電話も電話にでるまでは内容がわからないため、店に何らかの用事があってかけてきた電話だと思って電話にでるはずです。
ですので、Aさんがいたずら電話をかける行為は、実際には店に対して用事があるわけではないのに、店側に用事があるかの装い、誤解させていることになります。
かかってくる電話がAさんからのいたずら電話だけとは限りませんから、すべての電話を無視するわけにはいかないでしょう。
100回以上かかってくるいたずら電話にでて、対応をするのにも時間がかかりますし、今後いたずら電話がかかってこないようにするための対策を練るなどの今後の対応も必要になるでしょう。
いたずら電話の対応に割いた時間があれば、客への対応や在庫の管理、新商品の開発などの業務が行えた可能性がありますから、Aさんのいたずら電話は業務を妨害するおそれがある行為だといえます。
偽計業務妨害罪は、偽計行為によって業務が妨害されるおそれがある場合に成立しますから、今回の事例のAさんに偽計業務妨害罪が成立する可能性が高いといえます。
偽計業務妨害罪と刑罰
偽計業務妨害罪は、有罪になると、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
懲役刑が科されるか、罰金刑が科されるのかは、被害の程度や犯罪の重大性、犯人の過去の犯罪歴などによって判断されます。
軽い気持ちでいたずら電話をかけた場合であっても、懲役刑が科される可能性があり、注意が必要です。
示談と弁護活動
偽計業務妨害罪などの刑事事件では、示談交渉などの弁護活動も重要な選択肢となる場合があります。
示談の可能性、その手続き、そして弁護士の役割について解説します。
示談の可能性
偽計業務妨害罪においては、被害者と加害者のあいだで示談を締結することで、不起訴処分を獲得できる場合があります。
示談は双方が納得する内容で締結するため、双方が納得できる条件を探るために示談交渉を重ねる必要があります。
示談手続き
示談を行う場合、加害者と被害者が直接示談交渉をすることもありますが、そのような場合にはトラブルが生じる可能性も考慮する必要があります。
特に、被害者が加害者に連絡先を知られることや直接なやりとりを避けたい場合、加害者が直接示談交渉を行っても示談を断られる可能性が高く、そもそも示談交渉すら行えない可能性があります。
弁護士を入れることで、そういった事態を避けられる可能性がありますので、弁護士を通して示談交渉を行うことが推奨されます。
弁護士の役割
弁護士は、示談交渉を円滑に進めるための専門的な知識と経験を持っています。
また、弁護士は検察官に対して処分交渉を行うことができ、示談を締結できなかった場合でも、不起訴処分の獲得など、より良い結果を得る可能性があります。
注意点と対策
偽計業務妨害罪は、犯罪になるとは知らなかった場合や軽い気持ちでやったとしても成立してしまうおそれがあります。
偽計業務妨害罪に問われないようにするためにも、以下の注意点について常日頃から注意し、対応していくことが重要になります。
注意点
誤解を招く情報の拡散: SNSや口コミでの情報共有は慎重に行いましょう。誤情報が拡散されると、偽計業務妨害罪の成立要件に該当する可能性があります。
業務妨害の可能性: いたずら電話や無用なクレームなど、他人の業務を妨害するおそれのある行為は避けましょう。
意図の確認: 何らかの行為をする前に、その行為が他人の業務にどのような影響を与えるかを考慮することが重要です。
対策
情報の確認: 情報を共有する前に、その情報が正確であるかを確認しましょう。
コミュニケーション: 業務に関わる人々とのコミュニケーションをしっかりと取ることで、誤解やトラブルを防げる可能性があります。
法的な相談: 何か問題が起きた場合は、早めに法的な相談を行い、適切な対応を取ることが推奨されます。
偽計業務妨害罪に強い弁護士
一見些細な行為でも、偽計業務妨害罪が成立してしまうおそれがあります。
犯罪にあたると知らなかったという言い訳は効きませんので、犯罪だと知らずに行った場合でも懲役刑や罰金刑が科される可能性があります。
懲役刑や罰金刑が科されれば前科が付きますので、軽はずみな行動が将来に悪影響を及ぼす可能性は十分にあります。
偽計業務妨害罪にあたるような行為をしてしまったとしても、示談交渉や処分交渉などの弁護活動により不起訴処分を獲得できる可能性がありますから、弁護士に相談をすることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、偽計業務妨害罪など、刑事事件に強い法律事務所です。
初回接見サービスや無料法律相談も行っていますので、偽計業務妨害罪などの刑事事件でお困りの方は、ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
覆面男によるスタンガンを使ったコンビニ強盗事件
覆面男によるスタンガンを使ったコンビニ強盗事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事件概要
京都市北区の閑静な住宅街にある深夜のコンビニで、覆面を被った男が店員に対しスタンガンを突きつけてレジを開けろと脅して、現金10万円とタバコを奪って逃走した。
事件のタイミングで、店内にいた店員と客に怪我はなかった。
(10月18日 伊勢新聞「鈴鹿でコンビニ強盗 覆面包丁男 現金奪い逃走」を参考にしたフィクションです)
強盗罪とは
本件の現金・タバコのように、他人の財物を奪う行為について、刑法236条1項は、「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する」と規定しています。
本件では強盗罪が成立するのでしょうか。
手段としての「暴行又は脅迫」
強盗罪が成立するかどうかを考えるうえで、強盗罪の手段とされる「暴行又は脅迫」の程度が問題となります。
というのは、刑法上、強盗罪の他にも恐喝罪や公務執行妨害罪などで「暴行又は脅迫」という要件が課される犯罪類型が存在しています。
それぞれの罪が必要としている「暴行又は脅迫」の程度はそれぞれの罪によって異なります。
強盗罪は、被害者の財産を守る法律である一方で、被害者の生命・身体・自由を守る側面も持っています。
強盗罪における「暴行又は脅迫」は、被害者の反抗を抑圧するほどの強度の「暴行又は脅迫」であると解されています。
したがって、本罪の暴行は、反抗を抑圧するに足りる程度の不法な有形力の行使を意味し、本罪の脅迫は、反抗を抑圧するに足りる程度の害悪の告知を意味します。
問題となった加害者の行為が、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行又は脅迫であるか否かは、「社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものかどうか」という客観的基準によって決せられます(最判昭和24年2月8日)。
この判断は、暴行又は脅迫の態様、行為者及び被害者の状況、日時や場所などを総合考慮して判断されます。
その中でもとりわけ重視されることが多いのが暴行又は脅迫の態様であり、加害者が殺傷能力の高い凶器を使用した場合には、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行又は脅迫と判断される可能性が高くなります。
なお、暴行又は脅迫が反抗を抑圧する程度に至らない場合については、恐喝罪の成否が問題となります。
本件では、男はスタンガンを突きつけてレジを開けるように要求しています。
スタンガンは、海外では死亡事例も多数報告されている非常に危険な凶器です。
これを突きつけた状態でレジを開けることを要求する行為は、要求に従わなければスタンガンを体に当てるつもりであることを示していると言えます。
スタンガンは命を脅かすおそれがあるわけですから、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の害悪の告知、つまり強盗罪が規定する脅迫にあたると推測されます。
「強取」の意味
強取とは、被害者などの反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫を手段として財物を奪取することを言います。
本件では、男はスタンガンを突きつけるという、反抗を抑圧するに足りる程度だと思われる脅迫を行った上で、10万円とタバコを奪い取っていますから、「強取」にあたると考えられます。
ですので、本件では強盗罪が成立する可能性が高いと言えます。
ところで、本件では、社会通念上反抗を抑圧するに足りる程度の脅迫がされたと推測されますが、実際に被害者の反抗が抑圧されたのかは不明です。
例えば、被害者が柔道の有段者で、反抗が抑圧されるまでには至らなかったが、怖いとは思って財物を提供した場合、強盗罪は成立するのでしょうか?
この点について、判例は、社会通念上、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫がなされたが、実際には被害者は反抗が抑圧されなかった場合であっても、その暴行又は脅迫が原因で被害者が怖がって財物を提供した場合に関しても強盗罪が成立するとしています(最判昭和23年11月18日)。
したがって、上記の場合にも、強盗罪が成立する可能性があります。
執行猶予を付けてもらうためには
強盗罪の法定刑は、5年以上の有期懲役であり、非常に重い罪と言えます。
執行猶予がつくためには、裁判で下された刑が3年以下の懲役である必要がありますから、強盗罪の場合、刑の減軽がされない限り実刑判決は避けられません。
それでは、どのような場合に刑が減軽されるうるのでしょうか?
刑が減軽される場合として、被害者との示談が成立しているケースがあげられます。
したがって、強盗罪を犯してしまった場合には、被害者に被害弁償をして反省していることを伝えることで示談を成立させられるかどうかが重要になります。
弁護士に相談を
もっとも、加害者が独力で示談を成立させることは非常に困難です。
強盗罪のような重い刑罰が課される事件では、逃亡の恐れありとして身柄を拘束される可能性が高く、身体拘束を受けている状態では自ら示談交渉をすることはできません。
仮に自由に動けたとしても、被害者が知り合いでない場合には連絡先を知ることは困難ですし、入手できたとしても被害者が自分を攻撃してきた加害者と直接話し合いに応じてくれるでしょうか。
しかし、弁護士に依頼をすることで示談交渉を着実に進められる可能性があります。
また、加害者本人ではなく弁護士に対してであれば、被害者が連絡先を教えて話し合いの応じてくれることは少なくありません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、強盗事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、執行猶予付判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
嘘の自白をして冤罪になりかけた事例
冤罪事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
京都市中京区の家電量販店でパソコン周辺機器を盗んだとして、窃盗罪の疑いで京都市内の大学に通う大学生の男を逮捕、起訴された事件で、京都地方裁判所は無罪判決を言い渡した。
男は、取り調べの際に犯人は自分だとする供述をしているものの、法廷では無罪を主張したためその自白の信用性が争点となっていた。
男は、法廷で「逮捕されたショックから、早く解放されたいと思い嘘の自白をしてしまった。私はやってない」と主張。
弁護人は、男が犯行時刻に別の場所にいたとするアリバイ証拠を提出していた。
(京都新聞 9月8日「Tシャツ窃盗で無罪判決」の記事を参考にしたフィクションです)
証拠としての自白の重要性
刑事事件では、犯罪を証明する責任は検察官にあります。
したがって、検察官や警察官は、犯罪を証明するため全力で証拠を手に入れようとします。
その中でも、検察官や警察官が特に入手したいと思うのが、自白すなわち犯人が自らのした犯罪を認める供述です。
発生した犯罪について、その詳細を知る犯人の供述は証拠としての価値が非常に高いため、検察官や警察官は、自白を得るために時として違法な取り調べが行われることさえあります。
なお、検察官や警察官は、自白の内容を調書として文書にした後、被疑者にその読み聞かせるなどした上で、署名押印を求めてきます。
これに応じると、裁判で証拠として使用さる可能性があり、もし証拠として使用された場合には覆すのは非常に困難ですから、安易に署名押印しないことが重要です。
本事案では、男子大学生は取り調べの際に、パソコン周辺機器を盗んだのは自分だと嘘の自白をしてしまった上、調書に署名押印した結果、裁判で証拠として使用されたようです。
なぜ嘘の自白をしてしまうのか
そもそもなぜ嘘の自白をしてしまうのでしょうか?
本事案の男子大学生のように、逮捕されると冷静さを失い、「早くこの状況から解放されたい」と思ったり、「認めることで求刑が軽くしてもらえるのではないか」と考えて、やってもいないことをやったと嘘の自白をしまうことがあります。
繰り返しになりますが、自白の内容が嘘であったとしても、調書が作成されてしまいますと裁判で証拠として扱われますし、覆すことは容易ではありません。
ですので、嘘の自白をすることがないように、落ち着いた状態で取り調べに挑むことが重要になります。
なるべく早く経験豊富な弁護士に相談を
嘘の自白をしないためには、可能な限り取り調べ前の段階で弁護士に相談することが望ましいでしょう。
今後待ち受ける手続の見通しや、どのように取り調べに対処すれば良いのかを知っていれば、冷静さを欠いて嘘の自白をすることを防げる場合があるからです。
また、自白獲得のために違法な取り調べを行われる場合には、弁護士から捜査機関に対し直ちにやめるように抗議し阻止する必要があります。
仮に、嘘の自白をしてしまった場合、自白を覆さなければ冤罪で犯罪者となってしまう可能性がかなり高くなります。
それを阻止するためには、自白が真実でないことを証明する証拠を集める必要があります。
有用な証拠を集めるためにも、経験豊富な弁護士に任せた方が良いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、冤罪事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
経験豊富な弁護士が取り調べ段階からサポートする行うことで、嘘の自白を未然に防いだり、法廷で自白が真実でないことを証明できる可能性があります。
可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。