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当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕?②
当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕?②
当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府京田辺市にあるショッピングモールに自動車を運転して買い物に来ていました。
Aさんが帰ろうと駐車場から車を発進させた際、運転を誤って、前に停まっていた自動車に追突させてしまいました。
Aさんが車内から様子を伺ったところ、その車には誰も乗っていないように見えたため、「高速で走っているところをぶつかったわけではないのだし、車も大きく壊れたわけではない。放置しても大丈夫だろう」と考えたAさんは、そのまま車を運転して帰宅しました。
すると後日、Aさん宅に京都府田辺警察署の警察官がやってきました。
Aさんは、先日駐車場で車をぶつけてしまったことを思い出し、当て逃げの犯人として取調べを受けるのだろうと思っていました。
しかし、警察官は「ひき逃げ事件の被疑者として逮捕する」という旨を伝え、Aさんはひき逃げ事件の被疑者として逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・当て逃げだと思ってもひき逃げに?
今回のAさんは、自分のした行為が当て逃げだと思っていたようですが、実際にかけられた容疑はひき逃げでした。
前回の記事で確認した通り、当て逃げもひき逃げも、交通事故を起こしながら道路交通法の義務に違反する道路交通法違反ということは共通しています。
そして、その交通事故で人が死傷しているのかどうか、それに対して救護等をしたのかどうかによって当て逃げかひき逃げかが代わってくることになります。
ですから、簡単に考えれば、交通事故が物損事故なのか人身事故なのかによって当て逃げかひき逃げか変わるということになります。
今回のAさんは、駐車場で自動車を動かした際に低速度で他の車にぶつかったようです。
その際、Aさんは相手の車に誰も乗っていないと思ってそのまま立ち去っていますが、その中に人がいて怪我をしていれば、それは人身事故となる可能性があります。
たとえ駐車場での低速度での交通事故であっても、捻挫やむちうちなどの怪我を負ってしまい診断書が出ることは考えられますし、その怪我が交通事故に由来するものであれば、人身事故として処理されることも考えられます。
今回のAさんの場合も、Aさんが見落としていたところに車の搭乗者がいて、Aさんの車との衝突によって怪我をしていたことが考えられます。
駐車場や渋滞中などに起こった低速度の交通事故でも、人身事故になる可能性があることに注意しましょう。
どちらにせよ、人身事故でも物損事故でも起こしてしまった場合には道路交通法上の義務がありますから、そのまま立ち去らないようにしましょう。
・ひき逃げをしてしまったら何罪?
前回の記事でも触れた通り、ひき逃げ行為自体は道路交通法に違反した道路交通法違反という罪になります。
これは当て逃げ行為の場合も同じですが、ひき逃げをしてしまった場合には、この道路交通法違反のほかにも犯罪が成立します。
人身事故を起こしてしまった場合には、自動車運転処罰法の中に規定のある、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪といった犯罪が成立します。
これはひき逃げや当て逃げといった行為ではなく、人身事故を起こしてしまったこと自体に成立する犯罪です。
今回のAさんのような不注意によって相手に怪我を負わせてしまった交通事故の場合、過失運転致傷罪が成立する可能性が高いでしょう。
自動車運転処罰法5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
まとめると、ひき逃げ事件の場合、ひき逃げ行為に成立する道路交通法違反と、人身事故を起こしたことに成立する過失運転致死傷罪などという、2つの犯罪が成立することになるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こうした当て逃げ・ひき逃げのような交通事故に関連した刑事事件のご相談も受け付けています。
当て逃げ・ひき逃げといった、現場から一度逃げているという事情のある刑事事件では、逃亡のおそれが高いとして逮捕されることも珍しくありません。
突然の逮捕は刑事事件に強い弁護士にぜひご相談ください。
当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕?①
当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕?①
当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府京田辺市にあるショッピングモールに自動車を運転して買い物に来ていました。
Aさんが帰ろうと駐車場から車を発進させた際、運転を誤って、前に停まっていた自動車に追突させてしまいました。
Aさんが車内から様子を伺ったところ、その車には誰も乗っていないように見えたため、「高速で走っているところをぶつかったわけではないのだし、車も大きく壊れたわけではない。放置しても大丈夫だろう」と考えたAさんは、そのまま車を運転して帰宅しました。
すると後日、Aさん宅に京都府田辺警察署の警察官がやってきました。
Aさんは、先日駐車場で車をぶつけてしまったことを思い出し、当て逃げの犯人として取調べを受けるのだろうと思っていました。
しかし、警察官は「ひき逃げ事件の被疑者として逮捕する」という旨を伝え、Aさんはひき逃げ事件の被疑者として逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・当て逃げとひき逃げの違い
今回のAさんは、自分では当て逃げをしてしまったと思っていたところ、ひき逃げの容疑で逮捕されてしまっています。
当て逃げもひき逃げも、交通事故を起こしてしまったところから義務を果たさずに逃げてしまった場合に成立しますが、実は「当て逃げ」「ひき逃げ」という犯罪があるわけではありません。
当て逃げやひき逃げは、道路交通法の条文に違反する、道路交通法違反という犯罪の通称なのです。
まず、道路交通法には、交通事故を起こしてしまった際の義務として、以下の義務が定められています。
道路交通法72条1項
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
簡単に言えば、交通事故を起こしたときにはすぐに運転をやめ、負傷者を救護する義務や道路上の危険を防止する義務、警察官等に交通事故について報告する義務を果たさなければならないということになっているのです。
これに違反するのが当て逃げや引き逃げ、ということになります。
道路交通法117条
1項 車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があつた場合において、第72条(交通事故の場合の措置)第1項前段の規定に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2項 前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
道路交通法119条
次の各号のいずれかに該当する者は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
10号 第72条(交通事故の場合の措置)第1項後段に規定する報告をしなかつた者
道路交通法117条1項・2項が定めているのが、いわゆる救護義務違反または危険防止措置義務違反、つまり、交通事故によって死傷者が出た場合に救護をしたり道路上の危険を防止する措置をしたりする義務を果たさなかったという道路交通法違反です。
多くの場合、これが一般に言われる「ひき逃げ」の罪です。
そして、道路交通法119条10号では、いわゆる報告義務違反、交通事故を起こしたときに警察等に事故を報告しなかったという道路交通法違反です。
交通事故による死傷者がいない物損事故を起こし逃げた場合=当て逃げの場合、この道路交通法違反となることが多いでしょう。
さて、こうした当て逃げとひき逃げですが、実際にAさんのように、当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕されることはありえるのでしょうか。
次回の記事で詳しく触れていきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、交通事故に絡んだ刑事事件のご相談・ご依頼も受け付けています。
当て逃げ事件・ひき逃げ事件の逮捕にお困りの際は、遠慮なく弊所弁護士までご相談下さい。
免停中の無免許運転で逮捕
免停中の無免許運転で逮捕
免停中の無免許運転で逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都市山科区にある会社に勤務する会社員です。
Aさんは通勤に自動車を使用しており、毎日運転していましたが、運転態度が悪く、度々京都府山科警察署の検問やパトロールで通行禁止違反や一時不停止等の交通違反を指摘され、反則金を支払う等していました。
ある日、Aさんはパトロールをしていた京都府山科警察署の警察官から信号無視を見とがめられ、ついに90日間の免許停止処分を受けることになりました。
しかし、Aさんは通勤に車を使っていたため、「運転できなくなるのは困る。免停と言っても運転したのがばれなければ問題ないだろう」などと考え、免停となった後も運転を続けていました。
そうして免停期間も運転をしていたAさんでしたが、職場からの帰宅途中、交通検問をしていた京都府山科警察署の警察官により免停期間中の運転であることが分かり、無免許運転の容疑で逮捕されることとなってしまいました。
(※令和2年1月31日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・免停中は無免許運転に
無免許運転という言葉からは運転免許自体を持っていない人が自動車の運転をするというイメージがわきやすいですが、今回のAさんのように、たとえ運転免許を取得していたとしても、その免許が免停となっている最中に運転してしまえば、それも無免許運転ということになります。
免停期間中は道路交通法の以下の条文にもある通り、免許の効力が停止されているわけですから、その期間内については運転免許を持っていない無免許の状態と同じということになるのです。
道路交通法103条1項(免許の取り消し、停止等)
免許(仮免許を除く。以下第106条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。
ただし、第5号に該当する者が前条の規定の適用を受ける者であるときは、当該処分は、その者が同条に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後でなければ、することができない。
(略)
5号 自動車等の運転に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反したとき(次項第1号から第4号までのいずれかに該当する場合を除く。)。
今回のAさんのように、交通違反をしてしまって免停となった場合には、この道路交通法103条1項5号等に該当するとして免停となっていることが考えられるでしょう。
この免停という処分は、あくまで運転免許に関する行政上の処分であり、刑事罰というわけではないため、免停になったからといって前科がつくわけではありません。
交通違反による道路交通法違反では、交通違反の種類にはよるものの反則金制度という制度があり、反則金を支払うことで刑事手続に移行せずに交通違反を処理する制度があるため、反則金を支払って免停となった、というだけでは刑事事件となって前科が付くということに必ずしも結びつかないのです。
・無免許運転で逮捕?
しかし、今回のAさんは無免許運転をしたとして逮捕されてしまっています。
実は、無免許運転は前述の反則金制度の対象外となる交通違反で、無免許運転をして検挙されるということは、免停や免許取り消しといった行政上の処分だけでなく、刑事罰を受けるかどうかという刑事事件としての手続きと処分を受けなければならないということになります。
道路交通法117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1号 法令の規定による運転の免許を受けている者(第107条の2の規定により国際運転免許証等で自動車等を運転することができることとされている者を含む。)でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は国際運転免許証等を所持しないで(第88条第1項第2号から第4号までのいずれかに該当している場合又は本邦に上陸をした日から起算して滞在期間が1年を超えている場合を含む。)運転した者
この条文にも、無免許運転について「法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。」と書いてあることからも、今回のAさんの免停中の運転が無免許運転として処罰されることがわかります。
たかが無免許運転、ばれなければ大丈夫と考える人もいるかもしれませんが、無免許運転の刑事罰はこれほど重いものとなっていることもあり、態様によってはその場で逮捕されてしまう可能性もありますから、無免許運転とならないよう注意が必要です。
それでも無免許運転をしてしまって逮捕されてしまった、刑事事件の被疑者となってしまったという場合には、今後の対応について弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の弁護士は、こうした交通違反に関連する刑事事件のご相談も承っています。
まずはお気軽に、0120-631-881までお問い合わせください。
偽造大型免許で刑事事件④複数の犯罪
偽造大型免許で刑事事件④複数の犯罪
偽造大型免許から刑事事件に発展したケースで特に複数の犯罪が成立する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府京田辺市にある運送会社で働いています。
ある日、Aさんは上司から、「Aさんが大型トラックを運転できるようになると任せられる業務も増えて助かる。給料もアップするし大型免許を取得してみたらどうだ」と話されました。
Aさんの会社では、大型免許を取得すると給料が上がる給与体系になっていました。
Aさんは普通運転免許しかもっていなかったため、その話を聞いて大型免許を取得することに決め、上司にもその旨を伝えました。
しかし、教習所に通って試験を受けたものの、Aさんは大型免許の取得試験に落ちてしまいました。
それでも給料が上がることなどをあきらめきれなかったAさんは、インターネットで偽造運転免許を購入できることを知り、自分の名義の偽の大型免許を購入し、上司に大型免許を取得したとして報告し、偽造大型免許を提示しました。
その後、Aさんは大型免許取得者として給料を上げてもらい、いわゆる大型トラックを使用する業務をこなしていました。
すると後日、Aさんは京都府京田辺市の道路で行われていた京都府田辺警察署の交通検問で運転免許証の提示を求められ、偽造大型免許を提示しました。
そこで警察官に偽造大型免許が偽物であることを見破られ、Aさんは無免許運転による道路交通法違反と偽造有印公文書行使罪の容疑で逮捕されてしまいました。
その後、Aさんが家族の依頼によって接見に訪れた弁護士に相談したところ、Aさんには詐欺罪の成立も考えられると伝えられました。
(※令和2年1月8日福井新聞ONLINE配信記事を基にしたフィクションです。)
・複数の犯罪が成立する刑事事件
刑事事件と一口に言っても、それぞれ成立する犯罪の種類はもちろん、数も異なります。
例えば、今回のAさんは、複数の種類・数の犯罪を犯してしまっています。
前回までの記事をまとめると、Aさんには以下の犯罪が成立すると考えられます。
①会社の上司へ偽造大型免許を提示したことによる有印公文書行使罪
②警察官に偽造大型免許を提示したことによる有印公文書行使罪
③大型免許を持たずに大型自動車を運転した無免許運転(道路交通法違反)
④大型免許を取得したと見せかけて給料を受け取った詐欺罪
これらの関係を見ていくと、①の会社の上司へ偽造大型免許を提示した行為は、④の大型免許取得者用の給料を受け取るための行為であるといえます。
つまり、④という目的を達成するために①という手段を使ったということです。
このように、複数の犯罪が成立する場合にそれぞれが手段と目的の関係にあるケースを「牽連犯」と呼びます。
牽連犯の関係にある場合、刑罰の重さは以下のような形で判断されます。
刑法54条1項
(略)…犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
つまり、①と④については、その法律で定められている刑罰の範囲のうち、最も重い刑罰の範囲で判断されるということです。
①の有印公文書行使罪の法定刑は1年以上10年以下の懲役であり、④の詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。
「1年以上」という下限が定められていることから、①の有印公文書行使罪の方が重い刑といえるため、①と④の関係では、「1年以上10年以下の懲役」の範囲で刑罰が判断されることになります。
しかし、②・③の犯罪や、それらと①・④の犯罪はそれぞれがばらばらの関係であり、目的・手段の関係になっているわけでも、同じ1個の行為で別の犯罪に当たっている(この場合「観念的競合」という考え方になります。)わけでもありません。
こうした場合を「併合罪」と呼びます。
刑法45条
確定裁判を経ていない2個以上の罪を併合罪とする。(以下略)
併合罪のケースでは、以下のように刑罰の重さを判断します。
刑法47条
併合罪のうちの2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。
ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
併合罪という言葉からは、全ての犯罪の刑罰を単純に足して刑罰の重さを判断するというイメージがあるかもしれませんが、そうではありません。
併合罪の場合は、最も重い刑について定めた刑の長期の1.5倍が長期となる範囲で判断されるのです(ただし、但し書きにあるようにそれがそれぞれの犯罪の刑の長期の合計を超えることはできませんから、合計を超えるような場合は刑の長期の合計が長期となる範囲で判断されることになるでしょう。)。
例えば、Aさんの場合、有印公文書行使罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」、無免許運転(道路交通法違反)の法定刑は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」、詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。
となると、最も重い刑について定めた刑の長期は「(1年以上)10年以下の懲役」ということになりますから、「15年以下の懲役」の範囲でAさんに下される刑罰が判断されることになるでしょう。
複数の犯罪が成立している刑事事件では、このように刑罰の範囲だけでも非常に複雑で、刑事事件の知識がなければ見通しを立てることも大変です。
複数の犯罪の相互関係等を専門的立場から考えることのできる弁護士に相談し、見通しや弁護活動について詳しく聞くことをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士がご相談者様のニーズに合わせたサービスをご用意しています。
逮捕されてしまっている方、在宅捜査を受けている方、刑事事件化が心配な方など、状況を問わず、遠慮なくお問い合わせください。
偽造大型免許で刑事事件③詐欺罪
偽造大型免許で刑事事件③詐欺罪
偽造大型免許から刑事事件に発展したケースで特に詐欺罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府京田辺市にある運送会社で働いています。
ある日、Aさんは上司から、「Aさんが大型トラックを運転できるようになると任せられる業務も増えて助かる。給料もアップするし大型免許を取得してみたらどうだ」と話されました。
Aさんの会社では、大型免許を取得すると給料が上がる給与体系になっていました。
Aさんは普通運転免許しかもっていなかったため、その話を聞いて大型免許を取得することに決め、上司にもその旨を伝えました。
しかし、教習所に通って試験を受けたものの、Aさんは大型免許の取得試験に落ちてしまいました。
それでも給料が上がることなどをあきらめきれなかったAさんは、インターネットで偽造運転免許を購入できることを知り、自分の名義の偽の大型免許を購入し、上司に大型免許を取得したとして報告し、偽造大型免許を提示しました。
その後、Aさんは大型免許取得者として給料を上げてもらい、いわゆる大型トラックを使用する業務をこなしていました。
すると後日、Aさんは京都府京田辺市の道路で行われていた京都府田辺警察署の交通検問で運転免許証の提示を求められ、偽造大型免許を提示しました。
そこで警察官に偽造大型免許が偽物であることを見破られ、Aさんは無免許運転による道路交通法違反と偽造有印公文書行使罪の容疑で逮捕されてしまいました。
その後、Aさんが家族の依頼によって接見に訪れた弁護士に相談したところ、Aさんには詐欺罪の成立も考えられると伝えられました。
(※令和2年1月8日福井新聞ONLINE配信記事を基にしたフィクションです。)
・詐欺罪
前回までの記事では、Aさんが偽造大型免許を警察官に提示したり上司に提示したりする行為が偽造有印公文書行使罪にあたること、さらに普通免許しかもっていないのに大型自動車を運転したことが無免許運転(道路交通法違反)にあたることに触れました。
しかし、今回の事例では、Aさんは弁護士から、さらに詐欺罪の成立も考えられると言われています。
Aさんの行為のどの部分が詐欺罪に当たりえるのでしょうか。
まず、詐欺罪は刑法246条に規定されている犯罪です。
刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪の典型的な例としては、いわゆるオレオレ詐欺に代表される特殊詐欺や、還付金詐欺といったものが挙げられるでしょう。
詐欺罪の「人を欺いて」という行為は、「欺罔行為」とも呼ばれ、その物を引き渡すかどうかの判断をする際に重要な事項を偽ることであるとされています。
つまり、財物を引き渡させるために、その事実が嘘であると分かっていればその財物を引き渡さなかっただろうという事実について嘘をつくことで詐欺罪の「人を欺」く行為となるのです。
その欺罔行為によって相手が騙され、財物を引き渡すことで詐欺罪が成立します。
今回のAさんの行為を考えてみましょう。
Aさんの勤める会社では、大型免許を取得している人は給料を上げてもらうことができることになるという明確な基準があります。
そしてAさんは、実際には大型免許を取得していないにも関わらず、偽造大型免許を示すことで大型免許を受けたかのように見せかけ、給料を上げてもらっています。
もちろん、会社としては大型免許を取得しているという事実があるからこそ、Aさんの給料を大型免許取得者として上げているわけですから、その資格が嘘であるなら給料を上げることはしないでしょう。
すなわち、上司等会社の人間をだますことによって、Aさんは上がった給料の分だけお金=財物を引き渡させていると考えられるのです。
ですから、Aさんには詐欺罪の成立も考えられるということになるのです。
ちなみに、詐欺罪には未遂罪も規定されており、財物の交付に向けた「人を欺」く行為を開始した時点で詐欺未遂罪が成立するとされています。
今回のケースで言えば、例えば偽造大型免許を見せられた上司が偽造大型免許であることを見抜いたとしても、Aさんには詐欺未遂罪が成立する可能性が出てくるということになります。
たとえ特殊詐欺のような組織的犯行が行われていない詐欺事件であったとしても、偽造有印公文書行使罪などほかの犯罪が絡むことによってより複雑になってしまうこともあります。
刑事事件専門の弁護士が所属する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こうした刑事事件のご相談も受け付けていますので、お気軽にご相談ください。
偽造大型免許で刑事事件②無免許運転
偽造大型免許で刑事事件②無免許運転
偽造大型免許から刑事事件に発展したケースで特に無免許運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府京田辺市にある運送会社で働いています。
ある日、Aさんは上司から、「Aさんが大型トラックを運転できるようになると任せられる業務も増えて助かる。給料もアップするし大型免許を取得してみたらどうだ」と話されました。
Aさんの会社では、大型免許を取得すると給料が上がる給与体系になっていました。
Aさんは普通運転免許しかもっていなかったため、その話を聞いて大型免許を取得することに決め、上司にもその旨を伝えました。
しかし、教習所に通って試験を受けたものの、Aさんは大型免許の取得試験に落ちてしまいました。
それでも給料が上がることなどをあきらめきれなかったAさんは、インターネットで偽造運転免許を購入できることを知り、自分の名義の偽の大型免許を購入し、上司に大型免許を取得したとして報告し、偽造大型免許を提示しました。
その後、Aさんは大型免許取得者として給料を上げてもらい、いわゆる大型トラックを使用する業務をこなしていました。
すると後日、Aさんは京都府京田辺市の道路で行われていた京都府田辺警察署の交通検問で運転免許証の提示を求められ、偽造大型免許を提示しました。
そこで警察官に偽造大型免許が偽物であることを見破られ、Aさんは無免許運転による道路交通法違反と偽造有印公文書行使罪の容疑で逮捕されてしまいました。
その後、Aさんが家族の依頼によって接見に訪れた弁護士に相談したところ、Aさんには詐欺罪の成立も考えられると伝えられました。
(※令和2年1月8日福井新聞ONLINE配信記事を基にしたフィクションです。)
・無免許運転
無免許運転と聞くと、そもそも運転免許証を受けずに全く免許を持っていない状態で自動車を運転するケースを思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、今回のAさんは普通運転免許証は持っているようです。
こうしたケースでも、実は無免許運転になりうることに注意が必要です。
道路交通法では、運転免許について、以下のように定めています。
道路交通法84条
1項 自動車及び原動機付自転車(以下「自動車等」という。)を運転しようとする者は、公安委員会の運転免許(以下「免許」という。)を受けなければならない。
2項 免許は、第一種運転免許(以下「第一種免許」という。)、第二種運転免許(以下「第二種免許」という。)及び仮運転免許(以下「仮免許」という。)に区分する。
3項 第一種免許を分けて、大型自動車免許(以下「大型免許」という。)、中型自動車免許(以下「中型免許」という。)、準中型自動車免許(以下「準中型免許」という。)、普通自動車免許(以下「普通免許」という。)、大型特殊自動車免許(以下「大型特殊免許」という。)、大型自動二輪車免許(以下「大型二輪免許」という。)、普通自動二輪車免許(以下「普通二輪免許」という。)、小型特殊自動車免許(以下「小型特殊免許」という。)、原動機付自転車免許(以下「原付免許」という。)及び牽けん引免許の十種類とする。
そして、道路交通法85条1項の表において、「大型自動車」を運転しようとする場合には、第一種免許の「大型免許」を受けなければならないとしています。
この「大型自動車」とは、道路交通法施行規則2条によると、「大型特殊自動車、大型自動二輪車、普通自動二輪車及び小型特殊自動車以外の自動車で、車両総重量が一一、〇〇〇キログラム以上のもの、最大積載量が六、五〇〇キログラム以上のもの又は乗車定員が三〇人以上のもの」とされており、いわゆる「大型トラック」と呼ばれているものはこの大型自動車に分類されるトラックなのでしょう。
そして、道路交通法では無免許運転を以下のように禁止しています。
道路交通法64条
1項 何人も、第84条第1項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第90条第5項、第103条第1項若しくは第4項、第103条の2第1項、第104条の2の3第1項若しくは第3項又は同条第5項において準用する第103条第4項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。
道路交通法117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1号 法令の規定による運転の免許を受けている者(第107条の2の規定により国際運転免許証等で自動車等を運転することができることとされている者を含む。)でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は国際運転免許証等を所持しないで(第88条第1項第2号から第4号までのいずれかに該当している場合又は本邦に上陸をした日から起算して滞在期間が1年を超えている場合を含む。)運転した者
つまり、たとえ普通運転免許を持っていたとしても、道路交通法の定める「大型自動車」を運転しようというときにはそれだけでは足りず、「大型免許」を受けていなければそれは運転免許の効力のある範囲外の許されていない範囲での運転をしていることになりますから、無免許運転ということになってしまうのです。
このように、無免許運転は全く運転免許を持っていないというケース以外にも成立しうることに注意が必要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、無免許運転事件などの交通違反に関わる刑事事件のご相談も受け付けています。
今回のAさんのような、偽造大型免許に関わる無免許運転事件では、無免許運転以外の部分の容疑も絡み合い、複雑な刑事事件となることが考えられますから、こうしたケースでは早期に弁護士までご相談ください。
偽造大型免許で刑事事件①偽造有印公文書行使罪
偽造大型免許で刑事事件①偽造有印公文書行使罪
偽造大型免許から刑事事件に発展したケースで特に偽造有印公文書行使罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府京田辺市にある運送会社で働いています。
ある日、Aさんは上司から、「Aさんが大型トラックを運転できるようになると任せられる業務も増えて助かる。給料もアップするし大型免許を取得してみたらどうだ」と話されました。
Aさんの会社では、大型免許を取得すると給料が上がる給与体系になっていました。
Aさんは普通運転免許しかもっていなかったため、その話を聞いて大型免許を取得することに決め、上司にもその旨を伝えました。
しかし、教習所に通って試験を受けたものの、Aさんは大型免許の取得試験に落ちてしまいました。
それでも給料が上がることなどをあきらめきれなかったAさんは、インターネットで偽造運転免許を購入できることを知り、自分の名義の偽の大型免許を購入し、上司に大型免許を取得したとして報告し、偽造大型免許を提示しました。
その後、Aさんは大型免許取得者として給料を上げてもらい、いわゆる大型トラックを使用する業務をこなしていました。
すると後日、Aさんは京都府京田辺市の道路で行われていた京都府田辺警察署の交通検問で運転免許証の提示を求められ、偽造大型免許を提示しました。
そこで警察官に偽造大型免許が偽物であることを見破られ、Aさんは無免許運転による道路交通法違反と偽造有印公文書行使罪の容疑で逮捕されてしまいました。
その後、Aさんが家族の依頼によって接見に訪れた弁護士に相談したところ、Aさんには詐欺罪の成立も考えられると伝えられました。
(※令和2年1月8日福井新聞ONLINE配信記事を基にしたフィクションです。)
・偽造有印公文書行使罪
今回のAさんについて、まず成立が考えられる犯罪として、偽造有印公文書行使罪という犯罪が挙げられます。
刑法158条(偽造公文書行使等)
第154条から前条までの文書若しくは図画を行使し、又は前条第1項の電磁的記録を公正証書の原本としての用に供した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は不実の記載若しくは記録をさせた者と同一の刑に処する。
参考:刑法155条1項(有印公文書偽造罪)
行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
Aさんがインターネットで購入したのは、偽造されたAさん名義の大型免許です。
そもそも、大型免許などの運転免許証は各都道府県の公安委員会によって発行されるものです。
Aさんが手に入れた偽造大型免許は、本来であれば公安委員会=公務所もしくは公務員が作成するべき文書であり、さらに公安委員会の印章(簡単に言えばハンコ)が用いられている文書です。
それを公安委員会ではない、運転免許証を作成する権限のない第三者が作成したものですから、Aさんの手にした偽造大型免許は、刑法155条1項のいう「公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造」した物であるといえます。
つまり、Aさんの購入した偽造大型免許は刑法158条の「第154条から前条までの文書若しくは図画」であるといえます。
Aさんは、その偽造大型免許を利用して大型トラックを運転し、京都府田辺警察署の交通検問で提示しています。
さらに、Aさんは会社の上司にも偽造大型免許を大型免許を取得したとして提示しています。
これらの行為はこの偽造大型免許を使っていることにほかならず、「行使」しているといえるでしょう。
そのため、Aさんはこれらの偽造大型免許の使用それぞれについて、偽造有印公文書行使罪に問われていると考えられるのです。
今回のAさんはすでに偽造された大型免許を購入しているようですが、自分で大型免許を偽造してしまったような場合は、さらに有印公文書偽造罪も成立することになります。
運転免許証の偽造や偽造された運転免許証の利用だけでも、これだけの犯罪が成立してしまうのです。
どちらも非常に重い刑罰が設定されていますから、これらの刑事事件の当事者となってしまったらすぐに弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、偽造有印公文書行使罪や有印公文書偽造罪のご相談も刑事事件専門の弁護士がお受けいたします。
まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
ご相談者様の状況に応じ、専門スタッフが弊所弁護士によるサービスをご案内いたします。
お屠蘇を飲んで飲酒運転②
お屠蘇を飲んで飲酒運転②
お屠蘇を飲んで飲酒運転をしてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府木津川市に住んでいるAさんは、元旦にあった親戚の集まりでお屠蘇を飲みました。
Aさんはその集まりに車で来ていたのですが、Aさんは酒に弱かったため、お屠蘇も少ししか飲んでいませんでした。
Aさんは、「お屠蘇を少し飲んだだけだし大丈夫だろう」と考え、親戚の集まりから家に帰る際にも乗ってきた自動車を自分で運転して帰りました。
しかしその道中、飲酒運転のための交通検問をしていた京都府木津警察署の警察官から車の停止を求められ、検査を求められました。
これに応じたAさんでしたが、呼気検査ではアルコール数値は基準値を下回っていたものの、まっすぐ歩けずよれつが回らないなどの状態であったため、飲酒運転をした容疑で京都府木津警察署で話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・飲酒運転をした人でなくとも犯罪に?
前回の記事では、飲酒運転が「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」に分かれ、さらに「酒酔い運転」の場合には、アルコール値が基準値を下回っていても飲酒運転とされるケースがあることを説明しました。
今回は、Aさんのケースにおいて、Aさん以外の人に犯罪が成立する可能性について触れていきます。
今回の事例のAさんは、お屠蘇を口にして酔っ払い飲酒運転をし、京都府木津警察署の警察官に酒酔い運転であると判断されたようです。
Aさんは実際に飲酒運転をしてしまっていますから、Aさんの状況によっては酒酔い運転として検挙されることは自然に思えるでしょう。
しかし、事例をよく見ると、実はAさん以外にも犯罪が成立する可能性があるのです。
道路交通法では、飲酒運転をした本人だけでなく、飲酒運転に関わった人も処罰する規定があります。
道路交通法65条
1項 何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
2項 何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるものに対し、車両等を提供してはならない。
3項 何人も、第1項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。
4項 何人も、車両(トロリーバス及び旅客自動車運送事業の用に供する自動車で当該業務に従事中のものその他の政令で定める自動車を除く。以下この項、第117条の2の2第6号及び第117条の3の2第3号において同じ。)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第1項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。
道路交通法117条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
2号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第2項の規定に違反した者(当該違反により当該車両等の提供を受けた者が酒に酔つた状態で当該車両等を運転した場合に限る。)
道路交通法117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
4号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第2項の規定に違反した者(当該違反により当該車両等の提供を受けた者が身体に前号の政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態で当該車両等を運転した場合に限るものとし、前条第2号に該当する場合を除く。)
5号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第3項の規定に違反して酒類を提供した者(当該違反により当該酒類の提供を受けた者が酒に酔つた状態で車両等を運転した場合に限る。)
6号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第4項の規定に違反した者(その者が当該同乗した車両の運転者が酒に酔つた状態にあることを知りながら同項の規定に違反した場合であつて、当該運転者が酒に酔つた状態で当該車両を運転したときに限る。)
飲酒運転については、このように飲酒運転のおそれがあるにもかかわらず車を提供したり、運転を頼んで同乗したり、酒を勧めたりし、最終的にその人が飲酒運転をしてしまった場合には、飲酒運転をした本人でなくとも道路交通法違反となってしまうのです。
お正月となれば、新年会や親せきの集まりなどがある方も多く、その席で飲酒することもあるでしょう。
しかし、車を運転する人に安易にお酒を勧めたり、少しの飲酒だから大丈夫と飲酒運転を容認したりすれば、自分も道路交通法違反で検挙されてしまう可能性が出てきます。
おめでたい席だからこそ、刑事事件に巻き込まれないよう注意しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、年末年始も弁護士による初回無料法律相談・初回接見サービスを受け付けています。
飲酒運転に関連した刑事事件にお困りの際は、遠慮なくご連絡ください(0120-631-881)。
お屠蘇を飲んで飲酒運転①
お屠蘇を飲んで飲酒運転①
お屠蘇を飲んで飲酒運転をしてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府木津川市に住んでいるAさんは、元旦にあった親戚の集まりでお屠蘇を飲みました。
Aさんはその集まりに車で来ていたのですが、Aさんは酒に弱かったため、お屠蘇も少ししか飲んでいませんでした。
Aさんは、「お屠蘇を少し飲んだだけだし大丈夫だろう」と考え、親戚の集まりから家に帰る際にも乗ってきた自動車を自分で運転して帰りました。
しかしその道中、飲酒運転のための交通検問をしていた京都府木津警察署の警察官から車の停止を求められ、検査を求められました。
これに応じたAさんでしたが、呼気検査ではアルコール数値は基準値を下回っていたものの、まっすぐ歩けずよれつが回らないなどの状態であったため、飲酒運転をした容疑で京都府木津警察署で話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・飲酒運転とアルコール値
今回の事例のAさんは、呼気検査のアルコール値が基準値を下回ったにも関わらず、飲酒運転をした容疑で京都府木津警察署で話を聞かれることとなっています。
「アルコール値が基準値を下回っていれば飲酒運転にはならないのではないか」と不思議に思った方もいるかもしれません。
実は一般に言われている「飲酒運転」は、法律上2つの種類に分けられ、そのために今回のAさんのようなケースが起こりうるのです。
そもそも、道路交通法では以下のように飲酒運転が禁止されています。
道路交通法65条
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
この条文からすれば、たとえ1滴でも酒を飲んでしまえば飲酒運転となり、道路交通法に違反することになります。
しかし、実際に処罰される飲酒運転は、道路交通法の以下の規定にあるものとなります。
道路交通法117条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
1号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあつたもの
道路交通法117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
3号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあつたもの
このうち、先にあげた道路交通法117条の2の1号に該当する飲酒運転を「酒酔い運転」、道路交通法117条の2の2の3号に該当する飲酒運転を「酒気帯び運転」と呼びます。
酒気帯び運転の条文にある「身体に政令で定める程度」が呼気検査などで確認されるアルコール値の基準値ということになります。
これは道路交通法施行令に詳しい数値が定められています。
道路交通法施行令44条の3
法第117条の2の2第3号の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は、血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.15ミリグラムとする。
※注:「法」とは道路交通法を指します。
この基準値を超えたアルコール値で運転した場合には、「酒気帯び運転」として飲酒運転となり、道交法違反として処罰されることになるのです。
さて、この「酒酔い運転」と「酒気帯び運転」について、先ほど挙げた2つの条文をもう一度確認してみましょう。
「酒気帯び運転」については今確認したようなアルコール値の基準値を超えるアルコール値が検出された場合に該当するものであると分かります。
対して、「酒酔い運転」については、条文内で特にアルコールの数値については触れられておらず、あくまで「その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)」としか定められていません。
つまり、「酒気帯び運転」が数値が引っかかれば飲酒運転として処罰されるのに対し、「酒酔い運転」はアルコール値に関係なく、「その運転をした場合において酒に酔つた状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)」と認められるかどうかによって「酒酔い運転」の飲酒運転となるかどうかが判断されることになるのです。
そのため、Aさんのように酒に弱いような人の場合には、「酒気帯び運転」になるアルコール値に満たない程度の飲酒運転であっても、「酒酔い運転」と認められるケースが出てくるのです。
「酒酔い運転」となるかどうかは、千鳥足になっていたりろれつがはっきりしなかったりといった部分を警察官が見て判断されるようです。
今回のAさんのように、少しの飲酒だから大丈夫といった考えで飲酒運転してしまうと、刑事事件として検挙され、被疑者として捜査されることにもなりかねません。
そもそも、飲酒運転によって事故を起こしてしまう可能性もあります。
飲酒運転は絶対にやめましょう。
それでも飲酒運転をしてしまった、刑事事件に発展してしまったという場合には、すぐに弁護士に相談し、飲酒運転事件への対応や再犯防止に取り組んでいきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、飲酒運転の絡む刑事事件にも対応しています。
お正月でも通常通り無料法律相談や初回接見サービスのお問い合わせも受け付けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
罰則強化のながら運転で刑事事件②
罰則強化のながら運転で刑事事件②
罰則が強化されたながら運転について刑事事件化したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例①~
Aさんは、京都市東山区にある友人の家に向かう際、スマートフォンをカーナビ代わりにして運転していました。
しかし、友人宅への道がわかりづらかったため、Aさんはカーナビ画面を映していたスマートフォンを注視しながら運転していました。
すると、パトロールしていた京都府東山警察署の警察官がAさんのその様子を発見。
Aさんは、ながら運転をしていたとして、後日京都府東山警察署に呼び出されることになってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
~事例②~
Bさんは、京都市東山区内の道路で自動車を運転している際、スマートフォンでゲームアプリを起動し、ゲームをしながら運転する、いわゆるながら運転をしていました。
すると、赤信号に気づくのが遅れ、Aさんは横断歩道前で急ブレーキを踏みました。
交通違反を警戒していた京都府東山警察署の警察官にそれを見とがめられ、Aさんはながら運転で交通の危険を発生させたとして、道路交通法違反の容疑で話を聞かれることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)
・どのながら運転がどの罰則になるか
前回の記事で触れた通り、今年の12月1日に道路交通法が改正され、ながら運転の罰則が強化されました。
該当条文は以下の通りです。
道路交通法71条5号の5
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第118条第1項第3号の2において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第41条第16号若しくは第17号又は第44条第11号に規定する装置であるものを除く。第118条第1項第3号の2において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。
道路交通法117条の4
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
1号の2 第71条(運転者の遵守事項)第5号の5の規定に違反し、よつて道路における交通の危険を生じさせた者
道路交通法118条
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
4号 第75条(自動車の使用者の義務等)第1項第2号又は第5号の規定に違反した者
ながら運転の罰則は、ながら運転をして交通の危険を発生させたかどうかによって異なることも前回の記事で取り上げた通りです。
では、事例①②のAさんとBさんは、このうちどちらに当てはまるのでしょうか。
~Aさんの場合~
Aさんは、カーナビ代わりにしていたスマートフォンの画面を注視してしまっています。
これは、道路交通法71条5号の5でいう「当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(略)に表示された画像を注視」することにあたるながら運転です。
ですから、Aさんはながら運転をしてしまっていますが、具体的に交通の危険を発生させたわけではなさそうです。
そのため、Aさんは道路交通法118条4号の、ながら運転禁止の規定に違反したという道路交通法違反になりそうです。
こちらの道路交通法違反は、反則金制度(反則金を納付することで刑事手続にならない制度)の対象となっているため、例えばAさんがその容疑を否認している、何度も交通違反を繰り返しており前科前歴がある等の事情がなければ、反則金を納付することで刑事事件化を免れることができると考えられます。
~Bさんの場合~
Bさんは、スマートフォンのゲームをしながら運転しています。
ゲームをしていることから、スマートフォンの画面を注視しながら運転していたと考えられ、先ほどのAさんと同様、ながら運転禁止の規定に違反していることになります。
こうした態様は、典型的なながら運転といえるでしょう。
ここでBさんはながら運転をしたことで赤信号に気づくのが遅れ、急ブレーキを踏んでいることに注意が必要です。
これは一歩間違えば交通事故ともなりかねない行為であることから、道路交通法117条の4の1号の2にいうような「交通の危険を生じさせた」と判断される可能性があります。
実際に今回の事例②では、Bさんはながら運転により交通の危険を生じさせた道路交通法違反として話を聞かれることとなっています。
Aさんのながら運転の場合とは異なり、ながら運転で交通の危険を生じさせた場合には反則金制度の利用はできず、刑事事件となりますから、Bさんは被疑者として取調べられることになるでしょう。
こうした場合には、まずは刑事事件に強い弁護士へ相談することが望ましいでしょう。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、弁護士が初回無料法律相談を行っています。
ながら運転は刑罰も強化され、世間からの注目も集まっている犯罪です。
ながら運転で刑事事件となってしまった際には、一度弁護士までご相談下さい。