事案
営業ノルマを達成できなかった部下に対して、「どつき殺すぞ」、「明日があると思うな」などと暴言を吐いたとして、京都府城陽市に営業所をもつ大手飲料メーカーの男性社員が脅迫罪で起訴された。
男性社員は、「確かに暴言は吐いたが、応援のつもりでやった。」「本気で殺すつもりではなかったし、そのことは部下もわかっているはず」と説明している。
(2022年10月28日 京都新聞 「取り調べ中に『どつき殺すぞ』」の記事を参考にしたフィクションです)
脅迫罪とは?
刑法221条1項によると、脅迫罪は、「人の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫」する犯罪です。
脅迫罪を犯してしまうと、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます(刑法221条1項)。
脅迫とは、人を畏怖させる程度の害悪を告知することを指します。
本ケースのように、「どつき殺すぞ」と言われれば、普通は恐怖心を起こ(畏怖する)します。
また、「どつき殺すぞ」は人の生命に対する害悪の告知にあたります。
したがって、本ケースでは脅迫罪が成立する可能性があります。
なお、被告人は「本気で殺すつもりではなかったし、そのことは部下もわかっているはず」と言っています。
実際に被害に遭った部下が畏怖していなかった場合には脅迫罪は成立しないのでしょうか?
この点、大審院判決(明治43年11月15日)によれば、害悪の告知により相手が現実に畏怖したかどうかは問わないとしています。
ですので、男性社員の行為が脅迫にあたるのであれば、部下が畏怖していなかった場合であっても脅迫罪が成立します。
また、本ケースでは、「確かに暴言は吐いたが、応援のつもりでやった。」「本気で殺すつもりではなかったし、そのことは部下もわかっているはず」と男性社員は説明しています。
実際に激励の意を込めて発言したのだとわかるような態度で「どつき殺すぞ」などと言っていた場合にも脅迫罪は成立するのでしょうか。
結論から言うと、脅迫罪が成立しない可能性があります。
脅迫罪が成立するためには、世間一般の人が恐怖を感じる内容を告知された場合に成立します。
ですので、恐怖を感じるに至らない程度であれば脅迫にあたらず、脅迫罪は成立しません。
例えば、上司である男性社員が部下とかなり親密で、普段から冗談を言い合うような関係だったとします。
和やかな雰囲気のなか、冗談のように「どつき殺すぞ」と言えば、部下に冗談だと伝わる可能性が高く、一般の人が部下のような状況に陥った場合にも冗談で発言したのだと伝わる可能性が高いでしょう。
告知した内容が脅迫にあたるのかどうかは、加害者と被害者の関係性や状況、その場の雰囲気などによっても異なります。
ですので、本ケースでも、男性社員の応援したいという気持ちが部下に伝わるような発言の仕方や状況であったのであれば、脅迫罪が成立しない可能性があります。
示談交渉は弁護士におまかせ
脅迫行為をしてしまった場合、相手方との間で示談を成立させることができるかどうかが重要になります。
示談が成立すれば、それを踏まえて量刑が軽くなったり、起訴猶予による不起訴処分となるかもしれません。
不起訴処分になれば前科もつきません。
もっとも、脅迫行為をした当の本人が示談交渉をしようとしても、さらなる加害行為を恐れて被害者が示談交渉のテーブルにつくこと自体を拒否しないとは限りません。
その場合には、弁護士を通じて示談交渉を行うことにより、加害者と直接やりとりをしなくてもよくすることで、示談交渉に応じてもらえる可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、脅迫罪の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
弁護士が示談交渉をすることで、少しでも科される刑罰を軽くできるかもしれません。
脅迫事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。