ストーカーで迷惑行為防止条例違反に?
ストーカーで迷惑行為防止条例違反に問われた事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
〜事例〜
京都府亀岡市に住んでいるAさんは、近所に住んでいる隣人Vさんのことを気にくわないと思っており、ことあるごとに対立していました。
Vさんへの嫌悪感を抑えきれなかったAさんは、嫌がらせ目的でVさんにつきまとったり、Vさんの自宅のポストへ「お前のことを監視している」「いつも見ているぞ」という内容の手紙を何度も投函したりしました。
Vさんが「ストーカー被害に遭っている」と京都府亀岡警察署に相談した結果、京都府亀岡警察署が捜査を開始。
その後、Aさんは京都府亀岡警察署に、京都府迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、警察から「つきまといなどの嫌がらせの件」で逮捕されたと聞いていたため、てっきりストーカー規制法違反で逮捕されていると思ったため、京都府迷惑防止条例違反という罪名を聞いて驚き、弁護士にこれがどういった犯罪なのか詳しく聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・ストーカーで迷惑防止条例違反に
今回の事例でAさんがしていたつきまとうなどの行為から、ストーカーという単語を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
ストーカーとは、元々英語の「stalk」という単語からきている言葉で、「stalk」には忍び寄る、追跡するといった意味があります。
ですから、「ストーカー」という場合には、人のことをこっそりついていく=つきまといなどをする人というイメージが強いでしょう。
では、ストーカー行為によって成立する犯罪として、どんな犯罪を思い浮かべるでしょうか。
多くの方は、いわゆるストーカー規制法をイメージするのではないでしょうか。
文字通り、ストーカー規制法ではストーカー行為を規制しているのですが、今回のAさんは、Vさんへのつきまとい行為等をした結果、京都府迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されています。
Aさんのつきまとい行為等はストーカー行為ではないのでしょうか。
ここで、京都府迷惑防止条例(正式名称:京都府迷惑行為等防止条例)を確認してみましょう。
京都府迷惑行為防止条例第6条
何人も、特定の者に対する職場、学校、地域社会、商取引、金銭貸借、係争又は調停の関係に起因する妬み、恨みその他悪意の感情(これらの感情のうち、ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号)第2条第1項に規定する怨恨の感情を除く。)を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次に掲げる行為(第1号から第4号までに掲げる行為については、身体の安全若しくは住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復して行ってはならない。
第1号 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ち塞がり、住居等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
第2号 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
第3号 面会その他の義務のないことを行うことを要求すること。
第4号 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
第5号 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、若しくはファクシミリ装置その他電気通信の手段を用いて送信すること。
第6号 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
第7号 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
第8号 その性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置くこと。
第1号〜第8号で挙げられている行為は、確かに一般的に「ストーカー」と呼ばれる行為でしょう。
しかし、ストーカー規制法が規制しているストーカー行為は「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」(ストーカー規制法第2条)で行われるものであると定義されています。
つまり、恋愛感情やそれが満たされなかったことによる怨恨での「ストーカー」でないかぎり、ストーカー規制法違反とはならないのです。
一方で、迷惑防止条例で規制しているストーカー行為は、このストーカー規制法が規制している目的でのストーカー行為以外であるため、今回のAさんのように嫌がらせ目的でつきまとい等をした場合、一般に呼ばれる「ストーカー」であったとしても、ストーカー規制法違反ではなく迷惑防止条例違反となるということになります。
刑事事件では、このように、一般に知られている単語と実際に成立する犯罪の間にギャップがあるケースもあります。
だからこそ、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の弁護士がお力になります。
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