おふざけがエスカレートして強制わいせつ事件に?
おふざけがエスカレートして強制わいせつ事件に至ったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市南区に住むAさんは、自宅で友人の女性Vさんと酒を飲んでいました。
お酒が回ってきたAさんは、おふざけのつもりでVさんの太ももを触りはじめました。
Vさんが嫌がるそぶりを見せないことからAさんの行為はエスカレートし、Vさんのお尻や胸を揉むなどした上、無理矢理キスしようとしたところで突如Vさんが激怒し、そのまま京都府南警察署に通報されてしまいました。
Aさんは、警察官から簡単に話を聞かれた後、強制わいせつ事件の被疑者として京都府南警察署で取調べを受けることになりました。
おふざけの延長線上の行為だったつもりなのに強制わいせつ罪という犯罪の容疑をかけられてしまったと不安になったAさんは、刑事事件を取り扱う弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・強制わいせつ罪
今回のAさんは、Vさんの太ももを触るのに加え、Vさんのお尻や胸を揉み無理矢理キスしようとしています。
この行為は、Aさんに容疑をかけられている強制わいせつ罪(刑法第176条)という犯罪になる可能性のある行為です。
刑法第176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
強制わいせつ罪における「わいせつな行為」とは、被害者の意思に反して他人から触れられたり見られたくない身体の一部に触れたりするなどして被害者の性的羞恥心を害し、かつ一般通常人でも性的羞恥心を害されるであろう行為のことをいいます。
つまり、性的に恥ずかしいと思わせるような行為を相手の意思に反して行うことが強制わいせつ罪の「わいせつな行為」となるのです。
具体的には、陰部や胸、お尻や太ももなどに触れる行為や、裸にして写真を撮る行為、無理矢理キスしようとする行為などが挙げられます。
強制わいせつ罪が成立するためには、この「わいせつな行為」を行う手段として暴行・脅迫が用いられることが必要です。
この暴行・脅迫は被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度のものでなければなりません。
すなわち、相手の抵抗を押さえつける程度に強い暴行・脅迫が用いられることが求められるのです。
ここで注意したいのは、実際に反抗されたとしても、客観的に反抗することが著しく困難であったと認められる限り強制わいせつ罪の成立は妨げられないということです。
ですから、相手が反抗してきたからといって必ずしも強制わいせつ罪の暴行・脅迫に当たらない(強制わいせつ罪が成立しない)とは限らず、加害者と被害者の体格や年齢、関係性、事件の起こった現場の状況など、様々な事情を総合的に考慮して強制わいせつ罪にあたるか判断されることになります。
また、強制わいせつ罪を含む性犯罪ではわいせつな行為と手段としての暴行・脅迫が必ずしも別個に存在しません。
例えば、陰部をもてあそぶという「わいせつな行為」に当たる行為が、手段としての「暴行」としての性格ももつとして、強制わいせつ罪が成立するということもあります。
今回の事例についても、AさんがVさんに行った太ももを触る行為に始まる一連の行為は、その強度などによっては、強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」に当たるおそれがあると同時に、Vさんへの「暴行」でもあると判断される可能性があります。
・おふざけから刑事事件に発展?
ここまでの検討で、Aさんの行為は強制わいせつ罪にあたり得る行為であるということが確認できました。
しかし、強制わいせつ罪は故意犯=故意がなければ成立しない犯罪なので、Aさんに強制わいせつ罪が成立するとなると、Aさんに強制わいせつ罪の故意がなければならないことになります。
AさんはおふざけのつもりでVさんに触れる等の行為をしていますが、こうした場合に「故意」があると判断できるのかと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
刑事事件で「故意がある」というためには、悪いことをしているという意識までは必要ではありませんが、その行為が構成要件(条文に定められているその犯罪が成立するために必要な条件のこと)に該当する行為であることの認識とその行為によって生じる結果の予見が必要です。
したがって、たとえ本人がおふざけのつもりでやった行為だったとしても、必ずしも故意が否定されるわけではありません。
ですから、今回のAさんがおふざけのつもりでVさんの身体を触ったり無理矢理キスしようとしたりしていたのだとしても、事件の状況によっては強制わいせつ罪の故意が認められる可能性もあるということになります。
しかし、今回の事例でいえば、Aさんの行為を嫌がらなかったのだからVさんがわいせつな行為を行われることに同意していたとAさんが考えていた可能性があります。
もしも被害者が行われる行為に同意していたのであれば、それは犯罪とはなりません。
このときに問題となるのは錯誤(=勘違い)です。
勘違いをしていたからといって必ずしも犯罪とならないわけではありませんが、例えば、Aさんがどの程度酒に酔っていたのか、AさんとVさんの関係性はどのような関係性だったのか、事件に至る経緯はどのようなものだったのかといった細かい事情によっては、AさんがVさんの同意があるものだと錯誤をしてしまったことに相当性があるとして、強制わいせつ罪に問われることを避けられる可能性もあります。
ですが、こうした検討は細かい事情全てを専門的に調べていかなければできないものです。
一般の方のみで検討を行うことは困難でしょうから、早い段階で専門家である弁護士に相談し、検討してもらうことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、おふざけからエスカレートして刑事事件に発展してしまったとお困りの方のご相談も受け付けています。
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