熱中症の看病で強制わいせつ罪を疑われた?

2019-08-14

熱中症の看病で強制わいせつ罪を疑われた?

ある日、Aさんが京都市南区を歩いていると、通行人の女性Vさんがふらふらと歩いており、道端にうずくまってしまったのを目にしました。
Aさんは大変だと思い、Vさんに近づいて様子を見ると、どうやらVさんは熱中症になってしまったようでした。
Vさんの意識がぼんやりしていることから、すぐに看病をしなければならないと考えたAさんは、救急車を呼んだうえでVさんを日陰に誘導し、飲み物を渡し、Vさんの胸元のボタンを外したりベルトを緩めたり、濡れタオルをあてるなどして体を冷やしたりしていました。
すると、別の通行人Wさんが通りかかり、その様子を見て「男性が意識のない女性の服を無理矢理脱がせて体を触っている」と勘違いし、京都府南警察署に通報してしまいました。
Aさんは駆け付けた警察官に、熱中症の看病をしていただけだと説明しましたが、強制わいせつ罪の容疑で話を聞かれることになってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・熱中症の看病で強制わいせつ罪?

最近は気温も高く、最高気温が38度や39度となる日もあります。
全国的に暑い日が続いており、報道などでも繰り返し言われているように熱中症に注意が必要な時期となっています。
今回のAさんは、その熱中症になってしまったVさんの看病をしていたところ、強制わいせつ罪の容疑をかけられてしまったようです。
もちろん、こうした状況であった場合に事情を話して分かってもらえることも多いでしょうが、犯罪を疑われてしまうこともあるのでは、と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
もし強制わいせつ罪そうなってしまった場合、どうなるのでしょうか。

まず、Aさんが容疑をかけられている強制わいせつ罪は、刑法176条に規定されています。

刑法176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

強制わいせつ罪においては、「暴行」が「わいせつな行為」と一体となっている場合でも成立が認められます。
例えば、別途殴ったりする分かりやすい「暴行」がなくとも、抱き着いたり胸やお尻をもんだりといった行為が「暴行」であり「わいせつな行為」であるとされ、強制わいせつ罪となることがあるのです。
今回のAさんは特にVさんに個別に暴行をふるっているわけではありませんから、看病のためにVさんの体に触れた(もしくは触れたように見えた)ことがこうしたとらえ方をされてしまった可能性もあります。

また、相手に意識がないような場合には、刑法178条の準強制わいせつ罪を疑われる可能性もあります。

刑法178条(準強制わいせつ罪)
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。

「人の心神喪失若しくは抗拒不能」とは、簡単に言えば人が意識を失うなどして抵抗できない状態になっていることを指します。
そうした状況に相手を陥らせたり、相手がそうした状態になっていることを利用してわいせつ行為をした場合に成立するのが準強制わいせつ罪です。

しかし、Aさんはあくまで熱中症の看病のためにVさんに触れていたのであり、わいせつな行為をしようとしていたわけではありません。
そもそもAさんの行為はあくまで看病であり、その行為にわいせつ性があったとは考えにくいです。
さらに、Aさん自身も熱中症の看病をしようと動いていたわけですから、強制わいせつ罪準強制わいせつ罪の故意もなかったと考えられます。
ですから、強制わいせつ罪準強制わいせつ罪を疑われてしまったら、そうしたことを具体的な事情に基づいて主張して、Aさんの行為が強制わいせつ罪準強制わいせつ罪に当たらないと主張していくことが重要でしょう。
例えば、今回の場合、Aさんは熱中症の看病に必要なこと以外でVさんの体には触れていないようですし、救急車も呼んでいます。
そうしたことから、Aさんの行為にはわいせつ性がなく、Aさん自身もそうした認識はしていなかったと主張していくことになるでしょう。

ただし、「看病にかこつけて体を触ってしまおう」などと考えていたような場合には、行為のわいせつ性や故意が認められ、強制わいせつ罪準強制わいせつ罪が成立する可能性があることにも注意が必要です。
そうでないかどうかは、看病に必要なこと以上に過剰な行為をしていないか、周囲の状況はどうだったか、といった詳しい事情を考慮して判断されることになるでしょう。

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