実子なのに未成年者略取罪・未成年者誘拐罪に?

実子なのに未成年者略取罪・未成年者誘拐罪に?

実子なのに未成年者略取罪未成年者誘拐罪に問われてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんには、京都府宇治市に住む妻のBさんと実子のVさん(3歳)がいますが、現在は別居中です。
Aさん夫婦は離婚係争中であり、AさんとBさんの実子であるVさんの親権者がどちらになるかについても争っていました。
Aさんは、BさんとVさんが京都府宇治市の自宅へ帰宅している途中に、Bさんの隙をついてVさんを抱きかかえ、付近に停めていた自身の車に同乗させ、Bさんの制止を振り切り連れ去ってしまいました。
するとしばらくして、Aさんの自宅に京都府宇治警察署の警察官が来て、Aさんに「未成年者略取事件の被疑者として話を聞きたい」とAさんを逮捕してしまいました。
Aさんは、Vさんは自分の実子であるのに自分が誘拐や略取をしたと言われるのはおかしいのではないかと感じ、Aさんの両親の依頼を受けて接見にやってきた弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・未成年者略取罪・未成年者誘拐罪

未成年者略取罪未成年者誘拐罪は、刑法第224条に定められている犯罪です。

刑法第224条(未成年者略取及び誘拐)
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

条文を見てみると、未成年者略取罪未成年者誘拐罪の主体に制限はありません。
そのため、たとえ実の親であっても未成年者略取罪未成年者誘拐罪の主体となり得ます。

未成年者略取罪未成年者誘拐罪の客体としては、「未成年者」、つまり20歳未満の者に限定されています。

そして、未成年者略取罪未成年者誘拐罪の「略取」とは暴行又は脅迫を手段とする場合のことであり、「誘拐」とは欺罔(嘘をついて騙すこと。)又は誘惑を手段とする場合のことをいいます(両方を合わせて「拐取」と表現することもあります。)。
ここでの暴行には、嬰児をこっそり連れ去るような行為(「窃取」)も略取に含まれます。
具体的には、子供を無理矢理車に引き込み連れていく行為を「略取」、親が入院したから連れて行ってあげると言ったり、お菓子で気を惹いて連れて行ってしまう行為は「誘拐」となります。

・実子の連れ去りと未成年者略取罪・未成年者誘拐罪

今回の事例を考えてみましょう。
まず、AさんとBさんは別居中であり離婚係争中の夫婦です。
まだ離婚係争中であり親権についても争っていることから、2人の実子Vさんの親権は現状AさんとBさんの2人が共同で持っているという状態と考えられます。
ですから、Aさんが実子であるVさんの親権を持っている状態なのにもかかわらず、未成年者略取罪が成立するのかという問題が出てきます。

こういった問題について、過去の判例では、「離婚係争中の他方親権者」の下から実子を奪取して自分の手元に置こうとした行為について、その実子の「監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情は認められないから、その行為は、親権者によるものであるとしても、正当なものということはできない。」としています(最決平成17年12月6日)。
そして、「本件の行為態様が粗暴で強引なものであること」、連れ去られた実子が「自分の生活環境についての判断・選択の能力が備わっていない2歳の幼児であること」、実子の「年齢上、常時監護養育が必要とされるのに、略取後の監護養育について確たる見通しがあったとも認め難いことなどに徴すると、家族間における行為として社会通念上許容され得る枠内にとどまるものと評することもできない。」として、実子の連れ去りについて共同親権者であることは違法性阻却自由にならず、未成年者略取罪が成立するとしました。

この判例を基に考えてみると、今回の事例のAさんの行為も、Aさんと同じくVさんの親権者であるBさんの下から無理矢理Vさんを連れ去るという行為ですから、Aさんが共同親権者であるからといって必ずしも未成年者略取罪が成立しないということにはならないといえるでしょう。
もちろん個々の事件によって細かい事情は変わりますから、自分の事例がどのような判断をされえるのかということは弁護士に事件の詳細を話したうえで聞いてみることがおすすめです。

家族間トラブルの末、刑事事件に発展してしまうケースは多々あります。
そのような場合、当事者同士で解決しようとしても却って紛糾してしまうことも珍しくはありません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、実子の連れ去りによる未成年者略取事件未成年者誘拐事件を含む刑事事件を専門に扱っています。
専門的な知識を持った第三者を間に介在させることで、事態の解決を迅速に図ることが期待できます。
まずはお気軽にご相談ください。

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