データの書き換えで不正競争防止法違反に
データの書き換えで不正競争防止法違反に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
〜事例〜
Aさんは、京都府綾部市に本社のあるV社が発売しているゲームXについて、ゲーム中に登場するキャラクターの能力を客が求めている数値に書き換えてデータを渡して報酬を得るという行為を繰り返していました。
V社がデータを書き換えたキャラクターを使用しているユーザーが増えてきたことから調査を開始し、京都府綾部警察署に被害を相談したことをきっかけに、京都府綾部警察署で捜査が開始されました。
そして捜査の結果Aさんの行為が発覚し、Aさんは不正競争防止法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは聞き慣れない罪名に不安を感じ、家族の依頼によって接見に訪れた弁護士に今後の手続きや事件の見通し、可能な弁護活動について詳しく聞いてみることにしました。
(※令和3年2月4日朝日新聞DIGITAL配信記事を基にしたフィクションです。)
・データの書き換えと不正競争防止法違反
不正競争防止法は、その名前の通り、市場における不正な競争を防止するための法律です。
市場経済の正常な機能のためには、不正な行為によって企業同士の競争が行われることを防止し、公正な競争が行われるようにしなければならないということから、不正競争防止法が定められています。
この不正競争防止法では、いくつかの行為を「不正競争」として禁止しています。
今回のAさんはゲームデータの書き換えをしたことで不正競争防止法違反に問われているようですから、それに関連する部分を確認してみましょう。
不正競争防止法第2条第1項
この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
第17号 営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)に記録されたものに限る。以下この号、次号及び第8項において同じ。)の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)、当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)若しくは指令符号(電子計算機に対する指令であって、当該指令のみによって一の結果を得ることができるものをいう。次号において同じ。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくは当該機能を有するプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)又は影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務を提供する行為
第18号 他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)、当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)若しくは指令符号を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくは当該機能を有するプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)又は影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務を提供する行為
これらは技術的制限手段無効化役務提供行為の禁止などと呼ばれる不正競争行為です。
長くわかりづらい部分も多いですが、簡単に言えば、今回のゲームデータなど、デジタルコンテンツのコピー管理技術やアクセス管理技術といった技術を無効化する機器やプログラムを提供することが禁止されています。
昨今のゲームデータには、データを不正に書き換えられないようにするためのプログラムなどがあり、勝手に不正な変更をすることは禁止されていますが、Aさんのようなゲームデータの書き換え行為はこれをかいくぐってゲームデータを変更してしまうことから、アクセス管理技術などの技術を無効化してそれらを提供しているということになってしまうのです。
こうしたことから、Aさんの行為は不正競争防止法違反とされたのです。
不正競争防止法違反という犯罪はなかなか聞き馴染みがないかもしれませんが、今回のAさんが問われている不正競争行為による不正競争防止法違反に定められている刑罰は「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」とされており(不正競争防止法第21条第2項第4号)、非常に重い犯罪であることが分かります。
何件も同じ行為をしていたような場合には、余罪の追求やその分の被害弁償にも対応しなければならず、事件への対応が複雑化してしまうおそれもありますから、専門家である弁護士に対応を任せることがお勧めです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、不正競争防止法違反事件のご相談・ご依頼も受け付けていますから、まずはお気軽にご相談ください。