バスで公務執行妨害事件?
Aさんは、通勤に京都府京田辺市内を走る市営バスを利用していました。
ある日、Aさんがバス停に向かうと、ちょうどバスがバス停に停まっていました。
Aさんはバスに乗り込もうと走りましたが、バスが発車する様子を見せたので、バスを追いかけ、その後部を手で叩いて停車させました。
そしてバスに乗り込んだAさんは、運転手に向かって暴言を吐きながら胸倉をつかむなどしました。
その場は運転手や乗客に諫められたAさんでしたが、後日、バスの運転手が京都府田辺警察署に相談し、被害届を出したことがきっかけとなり、Aさんは公務執行妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和元年6月19日朝日新聞DIGITAL配信記事を基にしたフィクションです。)
・公務執行妨害罪
今回の事例でAさんの逮捕容疑となっている公務執行妨害罪は、刑法95条に規定されている犯罪です。
刑法95条(公務執行妨害罪)
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
公務執行妨害事件として多く見られるのが、警察官に対する公務執行妨害事件です。
警察官が職務質問をしたり、証拠品を押収しようとしたりといった場面で、その警察官に抵抗をして暴行を加えたり、脅迫を行ったりして公務執行妨害罪が成立してしまう、というケースが多く見られます。
映画やドラマでも、警察官に対して暴行を行った人が公務執行妨害罪で逮捕される、という場面を見たことのある人も多いのではないでしょうか。
・バスで公務執行妨害罪?
先ほど触れたように、警察官への暴行・脅迫により成立するイメージの強い公務執行妨害罪ですが、条文を見ても分かる通り、公務執行妨害罪の成立には「公務員が職務を執行するに当たり」、暴行や脅迫を加えることが求められています。
ですから、公務執行妨害罪の成立において、暴行・脅迫の対象は警察官だけに限定されるわけではありません。
では、今回の事例を見てみましょう。
市営バスは、市が運営しているものですから、そこに勤務している人は市に雇われた公務員となるでしょう。
その市営バスの運転手が市営バスを運転することは、「その職務を執行する」ことと言えるでしょう。
今回のAさんは、その際に運転手に対し、胸倉をつかむなどの行為をしています。
公務執行妨害罪にいう「暴行」とは、人に対する不法な有形力の行使であるといわれていますから、胸倉をつかむ行為も「暴行」を加える行為と見ることができるでしょう。
したがって、今回のAさんには、市営バスの運転手に暴行を加えたことで運転業務を妨害したとして、公務執行妨害罪が成立しうるということになるのです。
公務執行妨害罪が保護しているのは、公務員の職務です。
そのため、公務執行妨害事件では、被害者は公務を妨害された国や地方公共団体となります。
こうしたことから、公務執行妨害事件での示談交渉相手は国や地方公共団体となることが多く、示談締結が難しいといわれています。
ですが、反省の気持ちを謝罪文としてあらわしそれを受け取っていただくなど、交渉次第では何かしらお詫びの気持ちをお伝えすることができる場合もあります。
公務執行妨害事件だから何もできない、することがないとあきらめず、まずは刑事事件に強い弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。
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