前回のコラムに引き続き、京阪神宮丸太町駅のホームで女性のスカート内を盗撮しようとしたとして、性的姿態等撮影未遂罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
京都府警川端署は29日、性的姿態撮影処罰法違反未遂(撮影)などの疑いで、(中略)会社員の男(24)を逮捕した。
(8月29日 京都新聞 「スマホでスカート内撮影しようとした疑い 性的姿態撮影処罰法で京都府内初の逮捕者」より引用)
逮捕容疑は29日正午ごろ、京都市左京区の京阪神宮丸太町駅ホームで伏見区の女性(32)の背後からスマートフォンを差し出し、スカート内を撮影しようとした疑い。
同署によると、(中略)同法を適用した府内での逮捕は初めて。
性的姿態等撮影罪と京都府迷惑行為等防止条例違反
前回のコラムでも書きましたが、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(以下、「性的姿態撮影処罰法」といいます。)の施行前は、盗撮をした場合に各都道府県の迷惑行為防止条例が成立していました。
7月13日に施行された性的姿態撮影処罰法は京都府迷惑行為等防止条例とどのような部分が異なるのでしょうか。
盗撮と法定刑
性的姿態撮影処罰法と京都府迷惑行為等防止条例の大きな違いとして、盗撮を行った場合の刑罰の重さが挙げられます。
盗撮を行った場合に、性的姿態撮影処罰法の法定刑は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(性的姿態撮影処罰法第2条)である一方で、京都府迷惑行為等防止条例の場合は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(京都府迷惑行為等防止条例第10条1項)です。
京都府迷惑行為等防止条例では、常習盗撮の場合には刑罰を重く定めていますが、それでも法定刑は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(京都府迷惑行為等防止条例第19条3項)であり、性的姿態撮影処罰法の3年以下の拘禁又は300万円以下の罰金と比較すると、性的姿態撮影処罰法が施行されたことにより、盗撮で有罪になった際に科される刑罰がかなり重くなったことが伺えます。
盗撮と写真、動画の提供
次に異なる点として挙げられるのは、盗撮画像や動画などの提供について規定されたことです。
性的姿態撮影処罰法第3条
1項 性的影像記録(前条第1項各号に掲げる行為若しくは第6条第1項の行為により生成された電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)その他の記録又は当該記録の全部若しくは一部(対象性的姿態等(前条第1項第4号に掲げる行為により生成された電磁的記録その他の記録又は第5条第1項第4号に掲げる行為により同項第1号に規定する影像送信をされた影像を記録する行為により生成された電磁的記録その他の記録にあっては、性的姿態等)の影像が記録された部分に限る。)を複写したものをいう。以下同じ。)を提供した者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処する。
2項 性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
京都府迷惑行為等防止条例では、盗撮した写真や動画の提供について定めはありませんでしたが、性的姿態撮影処罰法では盗撮した写真や動画を提供することを禁止しています。
ですので、盗撮した写真などを誰かに渡した場合には、性的姿態撮影処罰法違反が成立するおそれがあります。
また、特定の人や少数の人に提供した場合と、不特定の人や多数の人に提供した場合とでは、科される刑罰の重さが異なってきます。
盗撮と写真、動画の送信
性的姿態撮影処罰法では、盗撮写真等の提供と同様に、送信についても禁止されています。
ですので、京都府迷惑行為等防止条例には規定されていませんでしたが、盗撮した写真や動画などをインターネット上に投稿した場合には、性的姿態撮影処罰違反が成立するおそれがあります。
第5条 不特定又は多数の者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1項 正当な理由がないのに、送信されることの情を知らない者の対象性的姿態等の影像(性的影像記録に係るものを除く。次号及び第3号において同じ。)の影像送信(電気通信回線を通じて、影像を送ることをいう。以下同じ。)をする行為
(以降省略)
性的姿態撮影処罰法と京都府迷惑行為等防止条例
今回の事例では、京阪神宮丸太町駅のホームで女性のスカート内を盗撮しようとしたとして、性的姿態等撮影未遂罪(性的姿態撮影処罰法違反未遂)の容疑で逮捕されています。
京都府では性的姿態撮影処罰法違反が適用されている事件での逮捕は今回の事例で初めてだと報道されており、今後、性的姿態撮影処罰法違反が適用される事例が増えていくことが予測されます。
今回の事例では盗撮をしようとしたとして、性的姿態撮影処罰法が適用されています。
性的姿態撮影処罰法と京都府迷惑行為等防止条例では、盗撮を行った場合に科される量刑がことなり、新しく施行された性的姿態撮影処罰法では、科される刑罰がかなり重くなっています。
ですので、今後は、以前に比べて盗撮を行った際に科される刑罰が重くなることが予想されます。
弁護士に相談をすることで、科される刑罰を軽くできる場合がありますので、盗撮でお困りの方は弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。
また、京都府迷惑行為等防止条例では違反行為にならなかった、盗撮した写真や動画などの提供、送信行為が、性的姿態撮影処罰法では違法行為として規定されています。
加えて、提供などの目的による盗撮写真等の保管なども性的姿態撮影処罰法では違反行為となります。(性的姿態撮影処罰法第4条)
以上のように、性的姿態撮影処罰法では、京都府迷惑行為等防止条例では違反行為に当たらない行為であっても違反行為に該当する可能性があります。
性的姿態撮影処罰法違反に該当する行為かどうかについては、事案によって異なります。
事件の見通しなども個々の事案によって異なりますので、盗撮等でご不安な方は、弁護士に相談をしてみることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
盗撮でお困りの方、ご不安な方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
次回のコラムでは、盗撮で捜査を受けた場合の弁護活動についてご紹介します。