たき火から燃え移って失火罪②

2019-11-22

たき火から燃え移って失火罪②

たき火から燃え移って失火罪となったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~前回からの流れ~

京都市中京区に住んでいるAさんは、自宅の裏に空地を所有していました。
Aさんは、落ち葉や枯葉を集めてその空地でたき火をし、簡単に水をかけ、火が見えなくなったために深く確認することもなく帰宅しました。
しかし、Aさんが消火できたと思っていたたき火の火が消え切っておらず、空地内に建っていたAさん所有の小屋に燃え移り、火事となってしまいました。
通報により消防車が駆け付け、他の家に火が燃え移る前に消し止められ、当時小屋には誰もいなかったためけが人もいなかったものの、Aさんは京都府中京警察署に呼ばれ、話を聞かれることになりました。
Aさんは、自分がどのような犯罪にあたる可能性があるのか、どういった処罰を受ける可能性があるか不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・失火罪と「公共の危険」

前回の記事では、失火罪という犯罪の概要と、刑法116条1項に規定されている失火罪について取り上げました。
今回の記事では、Aさんが刑法116条2項の失火罪にあたるかどうか検討していきます。

刑法116条(失火罪)
1項 失火により、第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。
2項 失火により、第109条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第110条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。

刑法116条2項の失火罪を確認してみましょう。
前回取り上げた刑法116条1項の失火罪の規定同様、「第109条に規定する物」は「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑」を指しています。
そして、「第110条に規定する物」は「前二条に規定する物以外の物」(=「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」と「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑」以外の物)を指します。
ここで、先ほど確認したように、Aさんの焼損させてしまった小屋はAさん自身の所有する「第109条に規定する物」であることから、失火によって「第109条に規定する物であって自己の所有に係るもの」を焼損させたAさんにはこの刑法116条2項の失火罪が成立するように思えます。
しかし、刑法116条2項の失火罪の規定では、先に取り上げた刑法116条1項の失火罪の規定にはない条件が加わっています。
それが「よって公共の危険を生じさせた」という条件です。

失火罪等の刑法の「放火及び失火の罪」の章に規定されている犯罪での「公共の危険」の発生とは、「一般不特定の多数人をして所定の目的物に延焼しその生命、身体、財産に対し危害を感ぜしめるにつき相当の理由がある状態」をいうとされています(大判明治44.4.24)。
そして、これは必ずしも「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」や「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑」に延焼する危険に限らず、「不特定または多数の人の生命、身体、または建造物等以外の財産に対する危険も含まれる」とされています(最決平成15.4.14)。
つまり「公共の危険を生じさせた」とは、大まかに言えば、不特定多数の人の生命、身体、財産等に対する危険を発生させることを指しているのです。
例えば、広範囲に及んで周囲に建物や物が全く何もないひらけた場所で何かを燃やしたとしても、その火が何かに燃え移って延焼するといった危険はないため、「公共の危険」が発生したとはいえないと考えられます。

今回のAさんについて考えてみましょう。
Aさんは、住宅地の中にある空地でたき火をし、結果として空地内にある小屋を焼損させてしまっています。
住宅地の中で家事を起こしてしまったわけですから、小屋の火がほかの住宅に燃え移り、延焼させてしまう危険が考えられます。
火事となってしまった小屋と他の住宅との距離や火の大きさなどを考慮し、他の住宅への延焼の危険が認められれば、住宅地に住んでいる人たちの生命、身体、財産に対する危険を発生させたとして「公共の危険を生じさせた」と判断されるでしょう。
そうなれば、Aさんは刑法116条2項の失火罪に該当することが考えられます。

では、Aさんに成立する可能性のある犯罪はこの失火罪だけなのでしょうか。
また、Aさんに対してはどのような弁護活動が考えられるでしょうか。
次回の記事で詳しく取り上げます。

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