試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?②
~前回からの流れ~
Aさんは、京都府木津川市の宝飾店を訪れた際、そこで販売されている指輪を試着することができるということを知りました。
そこでAさんは、指輪を試着したまま店から出て、指輪を自分の物にしてしまうことを思いつきました。
Aさんは、宝飾店の店員に100万円する指輪を試着したい旨を伝え、指輪を試着した上で、電話がかかってきたフリをして、「少し離れます、すぐ戻ります」と言って店員から距離を取りました。
そしてAさんは店員が離れていることをいいことに、指輪をつけたまま店外へ逃走しました。
店員がすぐに京都府木津警察署に通報したことから、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることとなりました。
(※平成31年4月1日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・詐欺罪ってどんな犯罪?
前回の記事では、窃盗罪がどういった犯罪なのか詳しく確認しました。
では、次に詐欺罪がどういった場合に成立する犯罪なのか確認してみましょう。
刑法246条1項(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪は、①「人を欺」き、②それに基づいて相手が錯誤に陥り、③その錯誤に基づいて相手が処分行為をし、④それによって「財物」の占有が移転、⑤財産的損害が生じることによって成立します。
詐欺罪の条文と突き合わせると、①②部分が「人を欺いて」、③④部分が「財物を交付させた」という部分に対応することになるでしょう。
① 「人を欺」き
詐欺罪の言う「欺」くという行為は、一般人に財物を処分させるような錯誤(=勘違い、誤信)に陥らせることを指します。
また、「欺」く行為については、その財物の処分の判断に際して基礎となる重要な事項を偽ることであるとされています。
つまり、その事項が嘘であれば財物の交付をしなかっただろうという重要事項を偽れば、詐欺罪の言う「人を欺」く行為になることになります。
② ①に基づいて相手が錯誤に陥り
「錯誤」とは、事実と認識が一致しないことを言い、簡単に言えば勘違いや誤信をすることを言います。
詐欺罪においては、①の「欺」く行為によって騙され、嘘を信じて財物を交付する(処分する)ように動機づけられてしまった場合に錯誤に陥ったということができるでしょう。
③ ②の錯誤に基づいて相手が処分行為をし
ここでいう処分行為とは、対象となっているその財物を処分する意思をもって財物を処分することをいいます。
詐欺罪の条文にある「財物を交付させ」る、つまり、「財物を相手に引き渡す」という処分を、騙されたことによる勘違いに基づいて行ってしまうということが必要とされます。
反対に言えば、たとえ相手に財物を引き渡したとしても、それが②の錯誤に基づく行為でなかった場合には、この③の要件を満たさず、詐欺罪は成立せず、詐欺未遂罪が成立するにとどまるということになります(例えば、嘘には騙されなかったものの、詐欺をしようとする人を憐れんで騙されたフリをしてお金を渡すなど。)。
④ ③によって「財物」の占有が移転
前回の窃盗罪の記事で説明した通り、「占有」とは、その物を事実上支配していることを指します。
つまり、詐欺罪では、③の処分行為によって引き渡された財物の事実上の支配が、相手方から詐欺を行った人へ移らなければならないということになります。
⑤ 財産的損害が生じる
前回の記事でも取り上げた通り、詐欺罪は財産犯と呼ばれる、財産に対する犯罪の1つです。
そのため、詐欺罪の成立には財産的損害が発生したことが必要であるとされています。
詐欺罪の場合、騙されなければ渡さなかっただろう財物・財産を引き渡してしまっていることから財産的損害が発生するといえます。
前回の記事で取り上げた窃盗罪も細かい部分が多かったと思いますが、詐欺罪も条文は短いものの、成立にはこのような条件が必要となっているのです。
窃盗罪・詐欺罪に限らず、犯罪は条文だけ見てもどの成立するのか否かが分からないことも多いです。
そういった専門知識や経験が必要な判断は、専門家である弁護士に任せましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が窃盗事件・詐欺事件のご相談にも多く対応しております。
京都の窃盗事件・詐欺事件にお困りの際は、まずは弊所弁護士までご相談ください。
次回は窃盗罪と詐欺罪の具体的な違いについて触れていきます。
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