窃盗事件と略式罰金

窃盗事件と略式罰金

窃盗事件略式罰金について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

〜事例〜

京都府宮津市に住んでいるAさんは、近所のスーパーで万引きをしたことによる窃盗事件により、京都府宮津警察署で捜査を受けていました。
Aさんは以前にも万引きをしたことがあり、その時は不起訴処分となったものの、「今回は不起訴では終わらないぞ」と警察官に言われてしまいました。
Aさんは、自分がどういった処分を受けるのか不安になり、弁護士に相談したところ、予想される処分に略式罰金という処分があると言われました。
そこでAさんは、略式罰金がどういった処分なのか弁護士に詳しく聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・刑事事件の流れと略式罰金

窃盗事件を含む刑事事件では、まず警察が事件を発見して捜査することが多いでしょう。
そして警察が捜査を完了したところで、事件は警察から検察へ移される(送られる)ことになります。
ニュースなどでもよく耳にする「送検」とは、その刑事事件を警察から検察に移すことをいいます。
事件が送検されたら、今度はその刑事事件の担当となった検察官が、被疑者を起訴するかどうかを判断することとなります。

刑事事件で被疑者となり、起訴されると裁判となります。
よく言われることではありますが、日本では起訴された刑事事件の99%は有罪となっています。
ですから、前科を回避したいと考える方などは、被疑者となってしまったら第一に起訴を回避する=不起訴処分を獲得するために弁護士に弁護活動をしてもらうなどすることになります。

ここで今回のポイントとなる「略式罰金」に関わることですが、通常、検察官は地方裁判所に公訴提起=起訴をすることになるのですが、一部の比較的軽微な犯罪については簡易裁判所に公訴提起=起訴をすることができます。
一部の比較的軽微な罪とは、裁判所法第33条第1項第2号に規定されている以下の犯罪です。

裁判所法第33条第1項
簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
第2号 罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪又は刑法第186条、第252条若しくは第256条の罪に係る訴訟

まとめると、罰金以下の刑に当たる犯罪や、選択刑として罰金が定められている犯罪がこの対象とされていることになります。

例えば、今回の事例のAさんは、万引きによる窃盗罪(刑法第235条)の被疑者となっています。
窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」となっていますので、窃盗罪は「選択刑として罰金が定められている犯罪」に当たります。
つまり、Aさんの事例では、Aさんの窃盗事件は簡易裁判所に起訴される可能性があるといえます。

検察官が簡易裁判所に起訴する場合には、検察官は略式命令請求書を提出して書面審査のみによる簡便な手続を請求することができます。
この手続を略式手続といいます。
略式手続による起訴が略式起訴と呼ばれるもので、よくドラマなどで見る公開の法廷で行われる正式な裁判に対して簡単な手続きであることから略式起訴、略式手続きなどと呼ばれてい流のです。
この略式手続では、後述のように罰金刑しか科せないことから、略式手続を経て罰金刑となることを略式罰金と呼んだりもします。
今回のAさんも、略式手続を経て罰金刑となる可能性があるため、弁護士から略式罰金の可能性があると言われたのでしょう。

この略式罰金の手続きでは、正式起訴されて行われる裁判と異なり、公開の法廷で行われることもなく、何日も裁判所に行く必要がないことから、正式裁判を避けて略式罰金にしてほしいと考える方もいらっしゃいます。
しかし、略式罰金の手続きをするにも希望すればできるというわけではなく、いくつかの条件があります。

①簡易裁判所が管轄する事件であること
先ほど挙げたように、容疑をかけられている犯罪が上記の裁判所法第33条第1項第2号に当てはまらなければなりません。

②100万円以下の罰金・科料に当たる事件であること
①に該当する犯罪であっても、事件の重大さなどから罰金刑以下の刑では不適当と判断される場合があります。
略式罰金を行うためには、相当であると考えられる刑が100万円以下の罰金または科料でなければいけません(それ以上の金額は簡易裁判所が取り扱いできないため。)。

③被疑者が容疑を認めていること
検察官は略式罰金の手続を行う前に被疑者に略式手続について説明し、略式罰金の手続によることに異議がない場合に限って略式命令を請求できることとなっています。
略式罰金の手続きでは、公開の裁判は開かれず、書面のみで審理が行われます。
迅速で行われる上、被告人として公開の法廷に立つ必要がないことはメリットでもありますが、同時に裁判の場で反論することができないため、デメリットでもあるのです。
ですから、容疑を認めているいわゆる「認め」の事件にしか略式罰金の手続きは適用できないのです。

そして、罰金刑であっても有罪となり刑罰を受けることに変わりはありませんから、略式罰金を受けるということは前科がつくことになります。
略式罰金によるメリット・デメリットを弁護士とよく相談しながらどのような処分を目指していくのか、どういった処分を受け入れるのか決めていくことが良いでしょう。

刑事事件の処分や手続きはさまざまで、一般に浸透していないことも多いです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、略式罰金の手続きなど、刑事手続きについてのご相談も多く承っています。
窃盗事件などの刑事事件にお悩みの際は、お気軽に弊所弁護士までご相談ください。

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