ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕①私電磁的記録不正作出・同供用罪

2020-01-29

ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕①私電磁的記録不正作出・同供用罪

ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕されたケースで、特に電磁的記録不正作出・同供用罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、旅行をするとき、Xというサイトを利用し、利用するホテルの予約をしていました。
というのも、Xを利用してホテルの予約をしてホテルの利用をすれば、ホテルの利用料金の一部がAさんがよく使っているYというカードのポイントで還元されるサービスがあったからでした。
ある日Aさんは、このサービスは、ホテルの予約をキャンセルしても、ホテル側が手続きをしなければ予約者へのポイント付与はそのまま行われるシステムであることに気が付きました。
そこでAさんは、京都市右京区にあるVという高級なホテルに偽名と偽の連絡先で予約を入れては予約日当日に無断でキャンセルすることを繰り返し、Yカードのポイントをもらっていました。
するとある日、京都府右京警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんは私電磁的記録不正作出・同供用罪と偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和2年1月22日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・私電磁的記録不正作出・同供用罪

私電磁的記録不正作出・同供用罪という犯罪はなかなか聞きなじみのない犯罪かもしれません。
私電磁的記録不正作出・同供用罪は刑法に定められている犯罪です。

刑法161条の2
1項 人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2項 前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
3項 不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。

この刑法161条の2のうち、それぞれ1項が私電磁的記録不正作出罪、2項が公電磁的記録不正作出罪、3項が不正作出電磁的記録供用罪という犯罪となります。
今回のAさんは、刑法161条の2の1項と3項の疑いをかけられていることから、逮捕容疑が私電磁的記録不正作出・同供用罪というまとめ方であったのでしょう。

さて、この私電磁的記録不正作出・同供用罪ですが、どういった場合に成立する犯罪で、Aさんの事例ではなぜこの犯罪の容疑がAさんにかかることになったのでしょうか。
まずは私電磁的記録不正作出罪について見ていきましょう。
私電磁的記録不正作出罪が成立する条件は、その条文から、
①「人の事務処理を誤らせる目的で」
②「その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を」
③「不正に作った」
というものです。
これらに当てはまった場合、私電磁的記録不正作出罪の成立が考えられることになります。

①の「人の事務処理を誤らせる目的で」とは、他人が行うはずの正しい事務処理を誤らせ、本来正しくあるべき内容とは異なるものとすることを目的として、という意味です。
事務処理とは、財産上身分上その他人の生活に影響を及ぼし得る全ての仕事を指すとされています。
今回のAさんについて当てはめてみましょう。
サイトX・ホテルVでは、サイトを通じて予約・利用したホテルの料金の一部をポイント還元していますが、Aさんは利用してもいないホテルの利用料金のポイント還元を受けようと偽の予約情報を登録していることになります。
すなわち、Aさんはサイト・ホテル側に、本来とは異なった、誤った予約情報を基にポイント還元等の事務処理をさせることを目的として今回の行為をしているわけですから、私電磁的記録不正作出罪の「人の事務処理を誤らせる目的で」に該当すると考えられるのです。

次に、私電磁的記録不正作出罪のいう②「その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を」とは、財産上身分上その他人の生活に影響を及ぼし得る全ての仕事に使う権利・義務・事実証明に関係するデータのことを、ということを指します。
今回のAさんの事例では、Aさんはサイトやホテルがポイント還元等に利用する予約情報というデータを作っているわけですから、これにも当てはまりそうです。

最後に、私電磁的記録不正作出罪の条文にある「不正に作った」という言葉ですが、これは事務処理を行おうとする者の意思に反して、権限がないのに、もしくは権限を濫用して、電磁的記録を作ることを指すとされています。
今回のAさんの事例で考えてみましょう。
Aさんは偽の予約情報というデータを作っているのですが、当然サイトやホテルは偽の予約情報登録されることは望んでいないと考えられますので、事務処理を行おうとする者の意思に反していると考えられます。
そして、Aさんには偽の予約情報を登録する権限があるわけではないため、Aさんには私電磁的記録不正作出罪の「不正に作った」という部分も該当することが考えられるのです。
これらのことから、Aさんには私電磁的記録不正作出罪が成立する可能性があると考えられます。

さらに、刑法161条の2の3項にある不正作出電磁記録供用罪は、先述した「人の事務処理を誤らせる目的で」その不正作出した電磁的記録を事務処理に使用されるコンピュータ等で処理しうる状況に置くことで成立しますが、Aさんは予約情報を登録=事務処理に使用されるコンピュータ等で処理しうる状況に置いているといえるため、不正作出電磁記録供用罪の成立も考えられるということになるのです。

私電磁的記録不正作出・同供用罪など、刑法の中でも聞きなじみのない犯罪は多く存在します。
そういった犯罪にかかわる刑事事件にお困りの際は、刑事事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご相談ください。
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