未成年とデートをしたら誘拐事件に発展してしまった!
未成年とデートをしたら誘拐事件に発展してしまったというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、SNSを通じて、京都府宇治市に住んでいる16歳のVさんと知り合いました。
Aさんは、Vさんと親しくなるうちに、Vさんから「クリスマスを家族と過ごしたくない」「一緒にデートしてほしい」と言われるようになりました。
Aさんは、「デートするくらいなら問題ないだろう」と考え、Vさんに「それならクリスマスはデートしよう」「うちに来るといいよ」といった話をすると、Vさんをデートに誘いました。
そして、AさんはVさんとデートすることになり、Vさんを指定の日時に呼び出しました。
AさんとVさんは食事などをして過ごしましたが、Vさんが終電を逃したというので、Aさんはそのまま自宅に泊まらせることとし、翌朝Vさんを帰宅させました。
するとその後、京都府宇治警察署の警察官がAさんの自宅を訪れ、Aさんは未成年者誘拐罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの逮捕を知った家族は、弁護士に相談し、接見に行ってもらうことにしました。
弁護士との接見で、Aさんは「誘拐のつもりではなかった」と話し、弁護士に未成年者誘拐罪について詳しい説明をしてもらうことにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・デートをしたら未成年者誘拐罪に…
今回の事例では、Aさんは未成年者誘拐罪の容疑で逮捕されてしまっています。
刑法第224条
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
この刑法第224条に定められている犯罪は、未成年者を「略取」した場合には未成年者略取罪、未成年者を「誘拐」した場合には未成年者誘拐罪と呼ばれます。
「略取」とは、略取される人(この場合は「未成年者」)の意思に反して、その人を自己又は第三者の支配下に置くことを指しており、この際、暴行や脅迫を手段とするものを指すとされています。
例えば、未成年者を力づくで無理矢理連れ去ったり、脅してあとをついてこさせたりした場合には、未成年者略取罪となります。
対して、「誘拐」とは、誘拐される人(この場合は「未成年者」)の意思に反しない態様でその人を自己又は第三者の支配下に置くことを指し、さらに欺罔・誘惑を手段とする場合を指します。
例えば、物で釣ったりだましたりして未成年者を連れ去ったりした場合には未成年者誘拐罪となります。
よく「誘拐」でイメージされる、「おもちゃをあげるからついておいで」と言って子供を連れ去るという手口は、まさに「誘拐」の典型例と言えるでしょう。
では、今回のAさんの事例を考えてみましょう。
今回のAさんの事例では、AさんはVさんをデートに誘い、最終的に自宅へ泊まらせることを提案して、そのようにしています。
AさんはVさんのことをだましているわけではありませんが、デートやAさんの自宅への宿泊によってAさんを誘い出し、Vさんの生活している環境から離れさせている状況となります。
そして、VさんはAさんと行動を共にしており、Aさんの自宅にも泊まることになっていることから、AさんはVさんを自分の支配下に置いていると考えられます。
そうしたことから、Aさんの行為は未成年者誘拐罪の「誘拐」にあたると判断されたのでしょう。
ここで、今回のAさんの事例では、そもそもVさんがデートに行きたいといったことを望んでおり、Vさん自身が望んでAさんとデートをしてAさんの家に来ています。
こうした場合でもAさんに未成年者誘拐罪の容疑がかかり、逮捕されていることに疑問を持つ方がいるかもしれません。
注意しなければならないのは、未成年者誘拐罪が保護しているものは、誘拐される当事者である未成年者自身の自由だけではなく、その未成年者の親権者等がもつ、未成年者に対して保護監督する権利も保護していると考えられていることです。
つまり、未成年者誘拐罪の被害者は、当事者である未成年者だけでなく、その親権者等の保護者も当てはまると考えられているのです。
ですから、たとえ未成年者自身がその生活環境から離れるということに同意していたとしても、その保護者の同意がない状態で未成年者をその生活環境から連れ出して自分の監督下に置いてしまえば、未成年者誘拐罪が成立しうるのです。
今回の事例のAさんも、未成年者であるVさん自身の同意は得ているようですが、その保護者までは話が通っていなかったために、未成年者誘拐罪の容疑で逮捕されるに至ったのでしょう。
・未成年者誘拐事件と弁護活動
未成年者誘拐罪は前掲した条文の通り、その刑罰も非常に重い犯罪です。
また、未成年者を誘拐したという事件の内容としても、被害者への接触等の証拠隠滅のおそれがあると考えられ、逮捕され身体拘束されたうえで捜査が進められることも珍しくありません。
こうした場合には、迅速に弁護士を派遣し、取調べへの対応やその後の弁護活動について、被疑者自身はもちろん被疑者の周りの人も把握するようにすることが望ましいでしょう。
逮捕されてしまえば周りの人に相談しながら取調べを受けるようなことはもちろんできませんし、現在の状況を自由に共有するといったことも難しいためです。
また、未成年者誘拐事件では、先ほど触れたように被害者が存在するため、被害者に対する謝罪・弁償や示談交渉も活動の1つとして考えられるところです。
当事者同士で謝罪・賠償などの示談交渉をすることは非常に難しいですし、そもそも被疑者に被害者の個人情報を捜査機関が教えることは非常にまれなことです。
こちらも弁護士を介して活動をしてもらうことで、示談交渉のできる可能性を上げることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が未成年者誘拐事件などの重大な刑事事件にも対応しています。
初回接見サービスなど、逮捕された方向けのサービスもご用意していますから、刑事事件にお困りの際は、お気軽にご相談ください。