恐喝罪と組織犯罪処罰法違反①
Aさんは、京都府八幡市に住んでいる17歳で、いわゆる不良仲間とよくつるんでいました。
ある日Aさんは、不良仲間のBさん(19歳)から、「何人かでグループになってこの辺りで金を巻き上げよう。年下や女ならちょっと脅せばすぐ金を出すだろう」と話を持ち掛けられました。
そこでAさんは、Bさんら数人とグループになって、Bさんの指揮のもと役割分担をして、京都府八幡市周辺で年下の者や女性を対象として恐喝をし、巻き上げた金品を仲間内で分け合っていました。
こうした恐喝行為をしばらくの間続けていたAさんらでしたが、Aさんらの恐喝行為によって金品を巻き上げられたとして被害者の1人であるVさんが京都府八幡警察署に相談したことから、Aさんらは組織犯罪処罰法違反の容疑で逮捕されることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)
・恐喝罪
Aさんらは、自分たちより年下の者や女性をターゲットに恐喝を繰り返していたようです。
ここで思い浮かばれるのは、刑法に規定されている恐喝罪でしょう。
刑法249条(恐喝罪)
人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
恐喝罪は、財物奪取に向けられた暴行・脅迫を行い、それに畏怖した相手から金品を交付させることで成立します(なお、この暴行・脅迫の程度が相手の反抗を抑圧する=相手が犯行できないほどのものである場合には、恐喝罪ではなく強盗罪が成立します。)。
Aさんらはこの恐喝行為をおこなって金品を巻き上げていたのですから、単純に考えれば恐喝罪の容疑で逮捕されるのではないでしょうか。
しかし、今回のAさんらは組織犯罪処罰法違反の容疑で逮捕されています。
これはどういった犯罪なのでしょうか。
・組織犯罪処罰法違反
組織犯罪処罰法は、正式名称を「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」と言います。
組織犯罪処罰法は、反社会的組織による犯罪や会社等にカムフラージュされた団体による犯罪など組織による犯罪についての加重規定を定めたり、いわゆるマネーロンダリングと呼ばれる資金洗浄行為を規制したりしている法律です。
最近では、オレオレ詐欺に代表される特殊詐欺をグループとして行っている組織的詐欺に適用され報道されることも多いため、組織的詐欺が組織犯罪処罰法によって取り締まられているイメージのある方も多いのではないでしょうか。
しかし、組織犯罪処罰法が取り締まっている犯罪は、組織的詐欺だけではありません。
組織犯罪処罰法は、先ほど触れたように組織的に行われた犯罪についての加重規定を定めています。
つまり、組織的に行われた犯罪を、単に個人でその犯罪をしたときよりも重く処罰しようということです。
ですが、全ての犯罪がこの組織犯罪処罰法の対象となっているわけではなく、組織犯罪処罰法3条以降にその対象の犯罪や態様が挙げられています。
例えば、今回のAさんは恐喝行為を行って組織犯罪処罰法違反の容疑で逮捕されていますが、それは以下の条文に当てはまると判断されたからだと考えられます。
組織犯罪処罰法3条1項
次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。以下同じ。)として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、当該各号に定める刑に処する。
14号 刑法第249条(恐喝)の罪 1年以上の有期懲役
組織犯罪処罰法のいう「団体」とは、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるもの」とされています(組織犯罪処罰法2条1項)。
今回の事例のAさんは、恐喝行為をするためにグループを結成し、Bさんの指示のもと役割分担をしながら恐喝行為を繰り返し、恐喝行為によって得た金品をグループ内で分け合っていました。
こうしたことから、単純な恐喝罪ではなく、組織犯罪処罰法違反であると判断されたのでしょう。
今回の事例のAさんは20歳未満の少年であることから、この組織犯罪処罰法違反事件は少年事件として扱われます。
Aさんに考えられる処分や弁護活動については、次回の記事で取り上げます。
組織犯罪処罰法違反はなかなかなじみのない犯罪であり、成立の可否や見通し等、分かりづらいことも多い犯罪です。
こうした犯罪の容疑をかけられてしまった時、それによって逮捕されてしまった時こそ、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士までご相談ください。
お問い合わせは0120-631-881でいつでも受け付けております。
(京都府八幡警察署までの初回接見費用:3万8,200円)