自転車のひき逃げで逮捕されたら①

自転車のひき逃げで逮捕されたら①

自転車ひき逃げ逮捕されてしまったケースで、特に自転車による人身事故について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

〜事例〜

京都府亀岡市に住んでいるAさんは、移動の際、スポーツタイプの電動アシスト付き自転車を利用していました。
ある日Aさんがその自転車に乗って移動している際、Aさんがよそ見運転をしていたことをきっかけに、通行人Vさんに衝突してしまいました。
Aさんは、「自転車に当たったくらい大丈夫だろう」と思い、「すみません」とだけ言ってその場を去りました。
しかし、Vさんは衝突によって骨折などの大怪我を負っており、後日、京都府亀岡警察署の捜査によってAさんは重過失傷害罪ひき逃げによる道路交通法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、自転車でもひき逃げになることに驚き、接見に訪れた弁護士に今後の対応や見通しについて相談することにしました。
(※令和3年1月25日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・自転車のひき逃げ事件〜重過失傷害罪

自動車によるひき逃げ事件は、たびたび報道などで目にすることも多いでしょう。
ですから、「ひき逃げと言えば自動車のことで自転車には関係ない」というイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、自転車であってもひき逃げ事件になり、犯罪行為になることに注意が必要です。
とはいえ、自動車とひき逃げ事件と自転車のひき逃げ事件では成立する犯罪が異なる部分もあります。
まずはその異なる部分について確認してみましょう。

自動車のひき逃げ事件の場合、まずは人身事故を起こしたこと自体に過失運転致傷罪(場合によっては危険運転致傷罪)が成立します。

自動車運転処罰法第5条(過失運転致死傷罪)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

しかし、条文を見て分かる通り、過失運転致死傷罪は「自動車」を運転している際の事故について定めているのであり、ここに自転車は含まれていません。
では自転車のひき逃げ事件の場合どうなるのかというと、刑法の過失傷害罪や重過失傷害罪が適用されると考えられます(被害者が亡くなっている場合には過失致死罪や重過失致死罪になります。)。

刑法第209条(過失傷害罪)
第1項 過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
第2項 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

刑法第210条(過失致死罪)
過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する。

刑法第211条(業務上過失致死傷罪、重過失致死傷罪)
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

過失とは、簡単にいえば故意ではなく不注意で、ということです。
例えば、今回のAさんのようなよそ見運転は、自転車を運転する上で注意を払って運転すべきところを注意を払わず運転してしまったということになりますから、Aさんの過失となるでしょう。
こうした過失によって人に怪我をさせてしまったり人を死なせてしまったりすれば過失傷害罪過失致死罪重過失傷害罪重過失致死罪となるため、自転車による人身事故の場合はこれらの犯罪が該当すると考えられているのです。

では、単なる「過失」=過失傷害罪と「重大な過失」=重過失傷害罪の違いは一体なんなのでしょうか。
重過失傷害罪にいう「重大な過失」とは、僅かでも注意を払えばその結果を簡単に予見・回避できたであろうことを指します。
つまり、過失よりも著しく大きな注意義務違反(注意すべきところでしなかったこと)がある場合に「重大な過失」があると判断されるのです。
とはいえ、「何をすれば/していなければ過失で、何をすれば/していなければ重過失」と具体的に決められているわけではありません。
あくまでその事件当時の状況や当事者の認識など、事件ごとの事情を総合的に考えなければ過失なのか重過失なのか=過失傷害罪なのか重過失傷害罪なのかの判断はできません。
今回のAさんは重過失傷害罪の容疑で逮捕されていることから、著しい注意義務違反があり、それによってVさんとの衝突事故を起こしたと考えられているのでしょう。

その自転車事故で成立するのが過失傷害罪なのか重過失傷害罪なのかということによって、刑罰の重さが大きく異なることはもちろん、親告罪(被害者等の告訴がなければ起訴できない犯罪)なのかどうかといったことも変わってきます。
正式裁判の可能性の有無など、罪名によっては弁護活動にも違いが出てきますから、専門家の弁護士に詳しい事情を聞いてもらった上で判断してもらい、サポートを受けることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、自転車ひき逃げ事件などによる重過失傷害事件にも対応しています。
まずはお気軽にご相談ください。

次回の記事ではひき逃げによる道路交通法違反部分について解説します。

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