【事例紹介】京都市左京区の借家への放火で男性逮捕

京都市左京区で起きた放火事件を基に、非現住建造物等放火罪について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警下鴨署は30日、非現住建造物等放火の疑いで、京都市左京区の無職の男(55)を逮捕した。
逮捕容疑は、30日午前1時25分ごろ、借家の木造2階建て(約140平方メートル)に火を付け、半焼させた疑い。
容疑者は1人暮らしで逃げて無事だったといい、(中略)容疑を認めているという。

(8月30日 京都新聞 「借家に放火疑い、55歳男を逮捕「人生どうなってもいいと思った」」より引用)

非現住建造物等放火罪

建造物に放火した場合、現住建造物等放火罪と非現住建造物等放火罪のどちらかの罪に問われることになります。

刑法第108条
放火して、現に人が住居に使用しまたは現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船または鉱坑を焼損した者は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役に処する。

刑法第109条
1、放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船または鉱坑を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処する。
2、前項の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

刑法第108条が現住建造物等放火罪、第109条が非現住建造物等放火罪の条文になります。

現住建造物について大まかに説明すると、人が日常生活を行う建物や現に人がいる建物のことをいいます。
今回の事例では現住建造物等放火罪非現住建造物等放火罪どちらが適用されるのでしょうか。
事例に照らし合わせて考えてみましょう。

今回の事例の男性が火を付けたのは、借家である木造2階建ての家屋でした。
記事の中に「容疑者は1人暮らしで逃げて無事だった」と記載されていることから、おそらく事例の木造2階建て家屋には容疑者の男性が住んでいたのでしょう。
先ほど解説したように、人が日常生活を行う建物は現住建造物にあたります。
そうすると、今回の事例では現住建造物等放火罪が適用されるように考えられます。

しかし、現住建造物に当たるかどうかという判断には例外があり、現住建造物等放火罪が規定している「人」には、放火を行った犯人は含まれません。
つまり、放火をした犯人以外の人がその建造物に住んでいるか、その建造物内にいるかしなければ、現住建造物とはならないということになります。
事例の男性は1人暮らしであり、なおかつ放火した本人であることから現住建造物等放火罪が定める「人」には含まれないので、今回の事例では非現住建造物等放火罪が適用されたということでしょう。

次に、刑法第109条第2項について考えていきましょう。

原則として、非現住建造物等放火罪で有罪になった場合には、2年以上の有期懲役になります。(刑法第109条第1項)
しかし、非現住建造物等放火罪で有罪になった場合でも、放火し損傷した建物が自己の所有物だったときは、6月以上7年以下の懲役になります。(刑法第109条第2項)

今回の事例では非現住建造物等放火罪が適用されますので、木造2階建て家屋が男性の所有物だと認められる場合には刑法第109条第2項により、減軽されることになります。

では、今回の事例では自己の所有物だと認められるのでしょうか。
実は、建造物が自己の所有物だったとしても、賃貸だった場合などでは自己の所有物だとみなされません。(刑法第115条)
今回男性が放火した木造2階建ての家屋は借家ですので、刑法第109条第2項は適用されないことになります。

~自己所有以外の建造物への放火~

実際に自己所有ではない建造物に放火し、非現住建造物等放火罪で有罪になった場合、どれくらいの量刑が科されるのでしょうか。
非現住建造物等放火罪で裁判となった裁判例をご紹介します。
※事例と裁判例は事件内容が異なります。

その裁判の被告人A、Bさんは、とある家屋に住んでいました。
この家屋は競売によりCさんに落札されており、被告人はこの家屋を700万円で購入する契約をCさんと結びました。
その後、生きていくことに絶望した被告人は2人で焼身自殺をするために家屋への放火を企てました。
被告人Bさんが丸めた新聞紙等に灯油を散布した後、被告人Aさんがライターで点火してCさん所有の家屋を全焼させました。

裁判では被告人両名の刑事責任は重いと判断されましたが、自殺を目的とした犯行であることや被告人の事情などが考慮され、被告人A、Bさんは非現住建造物等放火罪で有罪となり、懲役2年6月が言い渡されました。
(平成16年8月31日 神戸地方裁判所)

非現住建造物等放火罪は、有罪になれば2年以上の懲役が科されることになります。
実際に今回ご紹介した裁判例でも、懲役2年6月が言い渡されています。
これだけ重い刑罰が想定される事件ですから、刑罰の減軽などを求めるためにも、早い段階で弁護士のサポートを受けることが望ましいといえるでしょう。
京都府非現住建造物等放火事件や借家への放火事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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