[事例紹介]京都府宇治市の死体遺棄事件で逮捕された事例

京都府宇治市で起きた死体遺棄事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警宇治署は4日、夫とみられる遺体を自宅に放置したとして、死体遺棄の疑いで京都府宇治市槇島町、無職の女(57)を逮捕した。

逮捕容疑は昨年12月ごろ、宇治市内の自宅で男性が死亡しているのを確認したにもかかわらず、放置して遺棄した疑い。

宇治署によると、女は60代の夫と2人暮らしとみられる。遺体は腐敗が進んでおり、外傷の有無などは不明という。今後、身元の特定とともに死因や経緯を調べる。

生活支援の手続きに訪れた宇治市職員が3日午後1時50分ごろ、2階居室の布団の上で遺体を見つけて119番した。女は「職員が家に来るまで夫が亡くなったことは知らなかった」と否認しているという。

(3月4日 京都新聞  「夫とみられる遺体を自宅に放置 死体遺棄疑いで57歳の女を逮捕」

死体遺棄罪

死体遺棄罪は刑法第190条で「死体、遺骨、遺髪または棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、または領得した者は、3年以下の懲役に処する。」と定められています。

死体遺棄罪の「遺棄」という文字から、「死体を捨てると死体遺棄罪になる」というイメージが強く浮かぶ方も多いでしょう。
しかし、今回取り上げた報道の事例では、逮捕された女性は、女性の夫の遺体をどこかへ捨てたわけではありません。
報道によれば、女性の夫の遺体は自宅の布団の上に放置されていたということですから、一般にイメージされる「遺棄」とは事情が異なるように思えます。

ここで、死体遺棄罪の「遺棄」の定義を確認してみましょう。
死体遺棄罪の「遺棄」とは、先ほどイメージとして挙げた「捨てる」という行為だけでなく、社会風俗上、埋葬と認められないような方法で死体を放棄することであると考えられています。
つまり、本来であれば手続に則って火葬などの「埋葬」の行為をしなければならないところ、死体を放置しているという行為も、死体遺棄罪の「遺棄」に当たるのです。

今回の報道では、女性は夫が亡くなっていることに気が付かなかったと容疑を否認していますが、もしも夫が亡くなっていることを知りながら遺体を放置したのであれば、社会風俗上の埋葬をしなかった=「遺棄」したということで死体遺棄罪が成立することになります。
もちろん、女性の主張通りに夫の死の認識がなかったのであれば、「遺棄」行為に故意がないということになりますから、死体遺棄罪は成立しません。

死体遺棄罪の裁判例

ここで、実際に死体遺棄罪に問われた裁判例を2つ紹介します。

裁判例①
この裁判例の被告人は、出産したえい児2名の死体を段ボール箱に入れ、遺棄しました。
裁判の結果、被告人が死体遺棄に至った経緯には同情の余地があるとして、懲役8月執行猶予3年の判決が被告人に言い渡されました。
(令和3年7月20日 熊本地方裁判所)

裁判例②
被告人は、別の人から衣装ケースの処分を頼まれ、死体が入っていることを認識しながらもその衣装ケースの入った段ボールを湖中に投げ入れて死体を遺棄しました。
被告人は衣装ケースの中身が死体であるという確たる認識はなく、主体的な動機もなかったため、懲役1年6月執行猶予3年の判決が下されました。
(令和元年6月25日 神戸地方裁判所)

今回取り上げた報道の事例や裁判例を見ても分かる通り、死体遺棄事件といっても様々なケースが想定されます。
どのような事件なのか、当事者の認識がどういったものだったのかなどの事情で、最終的な処分は大きく変わっていきますから、まずは弁護士に事件の詳細を話した上でサポートを受けることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件少年事件を中心とした弁護活動を行なっています。
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