チラシを貼って条例違反
チラシを貼って条例違反となったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市東山区に住んでいるAさんは、報道で話題になっている感染症について、感染者数の多い国の人や感染者である人から自分が住んでいる地域にも感染が広まるのではないかと心配していました。
Aさんは心配の余り、京都市東山区の道路にある電柱に、「感染者の多いX国の人は来るな」といった内容のチラシを貼っていきました。
しかし、そのチラシを貼っているところを目撃した通行人とAさんがトラブルになり、さらにその様子を目撃した人が京都府東山警察署に通報。
駆け付けた警察官がAさんに事情を聞いたところ、Aさんがチラシを電柱に貼っていることがわかりました。
すると、Aさんは京都市屋外広告物条例違反の容疑で京都府東山警察署に現行犯逮捕されることになりました。
(※令和2年2月21日NHK NEWS WEB配信記事を基にしたフィクションです。)
・チラシを貼ったら刑事事件?
今回のAさんはチラシを貼ったことで逮捕までされてしまっています。
記事を読まれている方の中には、「チラシを貼ったくらいで逮捕されるなんて大袈裟だ」「チラシくらいで犯罪になるのか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実はこうした行為も犯罪となり、態様等によっては逮捕されてしまう可能性も否定できないのです。
京都市では、「京都市屋外広告物等に関する条例(以下、「京都市屋外広告物条例」)」という条例が定められています。
刑事事件に関連する条例というと、痴漢や盗撮等で適用される各都道府県の迷惑防止条例が思い浮かびやすいですが、条例は都道府県単位だけでなく、市町村単位でも制定することができます。
今回の京都市屋外広告物条例は、京都市で定められている条例ですから、その効力の及ぶ範囲は京都市内に限られるということになります。
この京都市屋外広告物条例では、以下のような条文が定められています。
京都市屋外広告物条例5条
何人も、次に掲げる物件に、屋外広告物を表示し、又は掲出物件を設置してはならない。
ただし、法定屋外広告物、管理用屋外広告物及び公益、慣例その他の理由によりやむを得ないものとして別に定める屋外広告物並びにこれらの掲出物件については、この限りでない。
(略)
6号 前各号に掲げるもののほか、電柱、公衆電話所、アーケードの支柱、擁壁、煙突、電波塔、高架水槽、彫像、観覧車その他の建築物等で、その物に屋外広告物を表示し、又は掲出物件を設置することにより都市の景観に悪影響を及ぼすおそれがあるものとして別に定めるもの
つまり、京都市内では、やむを得ない理由なしに電柱等に「屋外広告物」を表示等することは禁止されているのです。
では、その「屋外広告物」とは何かというと、以下のように決められています。
京都市屋外広告物条例2条
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
1号 屋外広告物 屋外広告物法(以下「法」という。)第2条第1項に規定する屋外広告物をいう。
屋外広告物法2条1項
この法律において「屋外広告物」とは、常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいう。
このことから、京都市屋外広告物条例が電柱等に表示してはいけないとしている「屋外広告物」には、Aさんの貼り付けたようなチラシのような貼り紙も含まれるであろうことがわかります。
Aさんはこのチラシを無許可で電柱に貼り付けていますし、その理由も「法定屋外広告物、管理用屋外広告物及び公益、慣例その他の理由によりやむを得ないもの」でもないでしょう(この対象となる物は、具体的には京都市屋外広告物条例施行規則4条に定められています。)。
そのため、Aさんは京都市屋外広告物条例違反となると考えられるのです。
今回のAさんのように、電柱等にチラシを貼って京都市屋外広告物条例違反となった場合、30万円以下の罰金に処せられます(京都市屋外広告物条例47条1号)。
30万円以下の罰金という法定刑の犯罪であるため、原則として通常逮捕や緊急逮捕はされないのですが、今回のAさんのような現行犯逮捕の場合は逮捕されてしまうこともあり得ます。
自治体ごとに異なる法定刑や内容が決まっている条例違反事件では、どのような見通しであるのか、どういった犯罪であるのかといったこともなかなか分かりづらいでしょう。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、条例違反事件のご相談・ご依頼も受け付けていますので、条例違反の刑事事件に関する不安や疑問もお気軽にご相談ください。
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