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室内熱中症事件で保護責任者遺棄致死罪③~裁判員裁判
室内熱中症事件で保護責任者遺棄致死罪③~裁判員裁判
~前回からの流れ~
京都市北区に住んでいる18歳のAさんは、1歳になる息子のVさんと2人で暮らしていました。
ある8月の日、Aさんは出かける用事があったのですが、Vさんは特に汗をかいているわけでもなく、よく寝ていました。
そこでAさんは、特に冷房を付けずにVさんを自宅に残し、出かけてしまいました。
Aさんは用事をすぐに済ませるつもりでしたが、「室内にいるのだから大丈夫だろう」と考え、それから4時間ほど家を空けていました。
するとVさんは室内熱中症になってしまい、帰宅したAさんが病院に連れて行きましたが、Vさんは死亡してしまいました。
その後、Aさんは京都府北警察署に保護責任者遺棄致死罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・Aさんが逆送・起訴されたら
前回の記事では、少年事件でも「逆送」され起訴されることで刑事裁判になりうるということを取り上げました。
では、Aさんが逆送され、起訴されてしまったとしたら、どういった裁判を受けることになるのでしょうか。
実は、Aさんに容疑がかかっている保護責任者遺棄致死罪は、裁判員裁判の対象となる犯罪です。
裁判員裁判の対象となる犯罪については、裁判員法(正式名称:裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)に定められています。
裁判員法2条1項
地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条又は第3条の2の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第26条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
1号 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
2号 裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
裁判員法2条1項2号の「裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件」とは、「死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪(刑法第236条、第238条又は第239条の罪及びその未遂罪、暴力行為等処罰に関する法律(大正15年法律第60号)第1条の2第1項若しくは第2項又は第1条の3第1項の罪並びに盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和5年法律第9号)第2条又は第3条の罪を除く。)に係る事件」(裁判所法26条2項2号)のことを指します。
保護責任者遺棄致死罪は、「3年以上の有期懲役」が法定刑に定められている犯罪ですから、「裁判所法第26条第2項第2号に掲げる事件」です。
さらに、保護責任者遺棄致死罪では「故意の犯罪行為により被害者を死亡させ」ていますから、裁判員法2条1項2号に該当することになり、裁判員裁判の対象となるのです。
ですから、Aさんの事件が逆送され起訴された場合には、Aさんは裁判員裁判を受けることになります。
・裁判員裁判
裁判員裁判は、裁判官3人に加え、一般の国民の中から選ばれた裁判員6人が審理に参加する裁判の制度です。
裁判員は、プロの裁判官3人とともに、被告人が有罪なのか無罪なのか、有罪だとして刑罰はどの程度が適切なのかを判断することになります。
裁判員裁判は、一般の法律知識のない裁判員が参加することもあり、通常の刑事事件の裁判よりも特殊な手続きや日程となっており、それに合わせた弁護活動が必要となってきます。
例えば、裁判員裁判の際には必ず公判全整理手続という手続が取られます。
これは、争点や証拠を整理し、裁判本番になってスムーズに進行ができるようにするための準備の手続です。
通常の裁判ではこの手続がとられるかどうかは事件ごとの事情によりますが、裁判員裁判の場合は必ずこの手続がとられます。
また、裁判員裁判は連日裁判が行われることが多いことも特徴です。
通常の裁判では、1回の裁判が行われた後、次回の裁判まで1~2か月程度時間が空くことが多いのですが、裁判員裁判では裁判員の予定調整の負担を減らすために連日開催することが多いです。
最高裁判所の統計によると、多くの裁判員裁判で期日は5日間前後となっています。
裁判員裁判では、こうした手続きや期日に特徴があることに加え、一般の国民から選ばれた裁判員が審理に参加することから、裁判員にもわかりやすく争点やこちらの主張を伝えなければなりません。
ですから、裁判員裁判の弁護活動については、刑事事件・裁判員裁判への知識のある弁護士に相談されることをお勧めいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件専門の法律事務所ですから、裁判員裁判対象事件の弁護活動についても安心してご相談いただけます。
少年事件で逆送されてしまった、裁判員裁判となりそうだ、とお困りの際は、弊所弁護士までご相談ください。
室内熱中症事件で保護責任者遺棄致死罪②~逆送
室内熱中症事件で保護責任者遺棄致死罪②~逆送
~前回からの流れ~
京都市北区に住んでいる18歳のAさんは、1歳になる息子のVさんと2人で暮らしていました。
ある8月の日、Aさんは出かける用事があったのですが、Vさんは特に汗をかいているわけでもなく、よく寝ていました。
そこでAさんは、特に冷房を付けずにVさんを自宅に残し、出かけてしまいました。
Aさんは用事をすぐに済ませるつもりでしたが、「室内にいるのだから大丈夫だろう」と考え、それから4時間ほど家を空けていました。
するとVさんは室内熱中症になってしまい、帰宅したAさんが病院に連れて行きましたが、Vさんは死亡してしまいました。
その後、Aさんは京都府北警察署に保護責任者遺棄致死罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・少年事件でも刑事裁判に?
今回のAさんは保護責任者遺棄致死事件の被疑者となっていますが、Aさんの年齢は18歳です。
ご存知の方も多いように、20歳未満の者が事件を起こした際には、少年事件として扱われ、少年法に基づいた手続きによって事件が進んでいきます。
原則として少年事件では成人の刑事事件のように、起訴・不起訴という考え方はなく、公開の法廷に立ち裁判を受けたり、刑事罰を受けたりすることはありません。
代わりに家庭裁判所での審判(非公開)を受け、少年院送致や保護観察といった保護処分を受けることになるのが一般です。
しかし、今回のAさんの保護責任者遺棄致死罪のような特定の犯罪に限っては、この原則の流れではない手続きとなる可能性が出てきます。
・逆送
少年法では、いわゆる「逆送」という手続きが定められています。
少年法20条
1項 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
2項 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき16歳以上の少年に係るものについては、同項の決定をしなければならない。
ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。
警察の捜査から検挙された少年事件の場合、検察官に事件が送られた後、今度は検察官から家庭裁判所に事件が送致されます。
その家庭裁判所から検察官に事件が送られることで、たどってきたところを戻るような形になるため、「『逆』送致」略して「逆送」と呼ばれるのです。
そして、逆送された後の少年事件の手続きについては、少年法では以下のように定められています。
少年法45条5号
検察官は、家庭裁判所から送致を受けた事件について、公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑があると思料するときは、公訴を提起しなければならない。
ただし、送致を受けた事件の一部について公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑がないか、又は犯罪の情状等に影響を及ぼすべき新たな事情を発見したため、訴追を相当でないと思料するときは、この限りでない。
送致後の情況により訴追を相当でないと思料するときも、同様である。
この条文の通り、逆送されて検察官のもとへいった少年事件については、基本的に起訴されることになります。
つまり、少年事件であっても、この逆送をされれば起訴され、刑事裁判となるのです。
刑事裁判で有罪となれば、刑務所(この場合は少年刑務所)に行くことになる可能性も出てくるのです。
では、逆送される条件とはどういったものかというと、先ほど挙げた少年法20条1項・2項に定められているものとなります。
今回のAさんが容疑をかけられている保護責任者遺棄致死罪について考えてみましょう。
保護責任者遺棄致死罪は、保護する責任のある者が相手を保護せずに死なせてしまったという犯罪です。
つまり、「(保護する責任のある者が)保護しないという故意」を持って行い、その結果相手を死なせてしまう犯罪ですから、少年法20条2項のいう「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」となります。
そのため、Aさんの事件は原則として逆送されることになると考えられます。
・逆送は避けられない?
少年法20条2項の規定に当てはまる事件は「原則逆送事件」とも呼ばれますが、条文の但し書きにあるように、当てはまったからといって絶対に逆送されるわけではなく、個別の事情によっては逆送を避けられる可能性もあります。
犯行動機や少年の周囲の環境等、様々な事情を考慮した結果、少年に保護する必要性(要保護性)があると判断されれば、逆送を回避できる可能性もあります。
逆送の結果起訴され、有罪となればもちろん前科はつきます。
さらに、少年の更生を主眼においた保護処分ではなく、罰として刑事罰を受けることになります。
こうしたことから、逆送を回避したいと考える方も多いですが、そのためには家庭裁判所に少年の要保護性を訴えていかなければなりません。
少年事件は手続きや考え方が難しく、まだ一般に浸透していない部分も多いですから、専門家の弁護士にまずは相談してみましょう。
弁護士のフルサポートを受けておくことで、もしも逆送されてしまった場合にも迅速に裁判に向けて活動を開始することもできます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件だけでなく少年事件も専門に取り扱っています。
逆送事件にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。
室内熱中症事件で保護責任者遺棄致死罪①
室内熱中症事件で保護責任者遺棄致死罪①
京都市北区に住んでいる18歳のAさんは、1歳になる息子のVさんと2人で暮らしていました。
ある8月の日、Aさんは出かける用事があったのですが、Vさんは特に汗をかいているわけでもなく、よく寝ていました。
そこでAさんは、特に冷房を付けずにVさんを自宅に残し、出かけてしまいました。
Aさんは用事をすぐに済ませるつもりでしたが、「室内にいるのだから大丈夫だろう」と考え、それから4時間ほど家を空けていました。
するとVさんは室内熱中症になってしまい、帰宅したAさんが病院に連れて行きましたが、Vさんは死亡してしまいました。
その後、Aさんは京都府北警察署に保護責任者遺棄致死罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・室内でも熱中症になる
熱中症というと、炎天下の中外にいるとなってしまうというイメージも強いですが、たとえ室内であっても熱中症にはかかってしまうことがあります。
毎年、車内にいた子どもが熱中症になるなどするケースが報道されていますが、車内だけではなく室内であっても、湿度が高かったり、風の通りが悪かったり、冷房を使用していなかったりすると熱中症になってしまうこともあります。
また、熱中症はその時暑かったという場合だけでなく、その人が疲れていたり睡眠不足であったり、暑さに慣れていなかったりしてもかかってしまいます。
人間は汗をかいていなかったとしても皮膚や呼気から水分を出しており、さらに寝ているときには汗等でコップ1杯の水を出していると言われています。
室内だからといって油断することなく、こまめな水分補給や温度・湿度の管理をするよう注意しましょう。
・保護責任者遺棄致死罪
今回のAさんは、保護責任者遺棄致死罪の容疑をかけられていますが、保護責任者遺棄致死罪とはどのような犯罪なのでしょうか。
刑法218条(保護責任者遺棄罪)
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。
刑法219条(保護責任者遺棄致死罪)
前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
つまり、刑法218条の保護責任者遺棄罪を犯してしまい、その結果人を死なせてしまった、というのが保護責任者遺棄致死罪となります。
今回のAさんについて考えてみましょう。
「保護責任者」とは、条文で言う「老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者」のことを言います。
「保護する責任」があるかどうかは、法律や契約によって保護する義務があったり、道理として保護しなければならないような立場にいたりするかどうかといった事情を考慮して判断されます。
Aさんの場合、被害者であるVさんは実の息子で同居しており、さらに1歳になる非常に幼い年齢です。
2人暮らしであることからも、Aさんには「幼年者」であるVさんを保護する責任があるといえるでしょう。
そして、Aさんは4時間程度、冷房を付けずにVさんを家に置いたまま家を離れています。
Vさんは1歳になる子供ですから、自分で水分補給をしたり冷房を付けたりといったことは難しいことが明白です。
加えて、8月であれば高温になることも予想はたやすいことから、Aさんの行為はVさんの「生存に必要な保護」をしなかったものと考えられます。
ですから、まずAさんには保護責任者遺棄罪が成立することが考えられます。
さらに、その結果、Vさんは熱中症となり死亡していますから、保護責任者遺棄致死罪が成立すると考えられるのです。
さて、この保護責任者遺棄致死罪は、条文にある通り、「傷害の罪」(ここでは被害者がなくなっているため、「傷害致死罪」)と比較して重い刑により処断されます。
傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役(刑法205条)となっていますから、保護責任者遺棄致死罪の法定刑は3年以上の有期懲役となります。
ここで問題となるのは、Aさんの年齢が18歳であることです。
20歳未満の者が起こした事件は少年事件として扱われるため、こうした法定刑や刑事罰とはまた異なる処分や期間が定められています。
しかし、実はAさんの事件の場合、刑事裁判が全く無関係になるかというと、そうではないことに注意が必要です。
こちらについては次回詳しく取り上げます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、熱中症に関連した保護責任者遺棄致死事件のご相談も受け付けております。
まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
少年の建造物損壊事件で釈放を目指す②
少年の建造物損壊事件で釈放を目指す②
~前回からの流れ~
高校1年生のAさんは、友人のBさんと一緒に帰宅中、いつも利用している京都府宇治市内の駅にいました。
すると、駅構内にある階段の壁が古くなり、塗装がはがれかけているのが目に入りました。
Aさんは、「こんな壁だったらすぐ壊れるんじゃないか。試しに蹴ってみよう」と言って、Bさんと一緒に面白半分で壁を蹴りつけました。
すると、2人が蹴りつけた部分は崩れ、壁に穴が開きました。
Aさんらは面白がって、その後も壁を蹴りつけ、複数個所に穴を開けました。
その後、Aさんらは到着した電車に乗って帰宅したのですが、巡回にきた駅員が壁に穴が複数開いていることに気づき、防犯カメラ等を確認したところ、Aさんらが壁を蹴りつけて穴を開けているところが映っていました。
駅員は京都府宇治警察署に通報し、捜査の結果、Aさんらは建造物損壊罪の容疑で逮捕されることになりました。
Aさんの両親は、Aさんがもうすぐ期末テストを控えていることから、なんとか釈放を目指すことはできないかと、京都の少年事件を取り扱う弁護士に相談しました。
(※令和元年6月20日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・少年事件で釈放を目指す
今回の事例のAさんは、建造物損壊罪の容疑で逮捕されてしまっています。
何度か取り上げてきているように、少年事件であったとしても、相当な嫌疑がかけられており、必要性が認められていれば、逮捕され勾留されることも十分考えられます。
逮捕されてその後引き続き勾留されたとすると、逮捕・勾留合わせて最大で23日間は身体拘束されるという計算になります。
しかし、Aさんのように高校などの学校に通っている場合、23日間も欠席するということになれば、出席が足りなくなってしまったり、試験を受けられずに単位を取れなくなってしまったりして、留年してしまうおそれが出てきます。
さらに、それだけ長期間の欠席をするとなると、学校に理由を言わなければならなくなり、おのずと事件について知られてしまうことになる可能性が高くなってしまいます(警察等捜査機関が学校へ連絡する協定が結ばれていることもあり、そうした場合には少年事件が起こった際、原則として警察から学校へ連絡する、という措置が取られることもあります。)。
そうなれば、停学や退学といった厳しい処分が下される可能性もありますし、そういった処分がなかったとしても、長期の欠席により学校内外に事件が知られ、少年が学校に戻った際に事件のことが知られていることによって、学校生活が送りにくくなるということも考えられます。
こうした不利益を回避するために、少年事件で逮捕・勾留が行われた際に釈放を目指してほしい、という少年本人や親御さんからの相談も、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には多く寄せられています。
では、具体的に、弁護士は釈放を目指してどういった活動をすることができるのでしょうか。
まずは、検察官への働きかけが考えられます。
逮捕に引き続く身体拘束である勾留は、まずは検察官が必要かどうか判断し、請求を行います。
そもそもこの勾留の請求をしないように、検察官に釈放を求めて交渉するのです。
しかし、この交渉を行うには、逮捕後すぐに弁護士に相談し、活動を開始してもらう必要があります。
なぜなら、逮捕が行われた事件が検察官の元へいく(送検される)のは、逮捕から48時間以内であり、さらに検察官が勾留請求をするのかどうか決めるのは、送られてきた事件を受け取ってから24時間以内と決まっているからです。
そして、勾留請求がなされた場合、次に交渉するのは裁判官です。
検察官の行った勾留請求を認めずに、被疑者である少年を釈放してほしいと交渉することになりますが、こちらも先ほど同様、限られた時間の中で行われる必要があります。
つまり、ここまでの2つの活動、すなわち、検察官へ勾留請求をせずに釈放してほしいと交渉する活動と、裁判官に勾留請求を認めずに釈放してほしいと交渉する活動は、逮捕から最大72時間以内に行われる活動となるため、釈放を目指したい、少しでも釈放のチャンスを増やしたいということであれば、逮捕後なるべく早く弁護士に活動を依頼することが望ましいといえるのです。
では、勾留が決定されてしまったら釈放を目指すことはできないのかというと、そうではありません。
勾留決定後は、勾留決定に対する不服申し立てを行うことができます。
さらに、被害者と示談が締結できるなど、何か事情が変われば、勾留を取り消す申し立てをすることもできます。
少年事件で釈放を求める際には、どのタイミングで活動を開始するにしても、ご依頼者様の協力も必要不可欠です。
少年事件の場合、自立していない少年が被疑者であることが多いです。
そうした場合には、ご家族等が監督者となり、釈放しても問題がないということをPRしていくことが考えられます。
どういった監督が必要とされるのか、どういったことなら無理なく実現できるか、といったことを、弁護士とご依頼者様とで突き合わせ、協力することによって、より具体的に釈放を求める活動を行うことができます。
不安なこと、気になることは包み隠さず弁護士に相談し、一緒に釈放を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年事件の身柄解放活動も多数ご依頼いただいています。
突然の逮捕にお困りの方、子供の逮捕にお悩みの方は、まずは0120-631-881までお電話ください。
少年の建造物損壊事件で釈放を目指す①
少年の建造物損壊事件で釈放を目指す①
高校1年生のAさんは、友人のBさんと一緒に帰宅中、いつも利用している京都府宇治市内の駅にいました。
すると、駅構内にある階段の壁が古くなり、塗装がはがれかけているのが目に入りました。
Aさんは、「こんな壁だったらすぐ壊れるんじゃないか。試しに蹴ってみよう」と言って、Bさんと一緒に面白半分で壁を蹴りつけました。
すると、2人が蹴りつけた部分は崩れ、壁に穴が開きました。
Aさんらは面白がって、その後も壁を蹴りつけ、複数個所に穴を開けました。
その後、Aさんらは到着した電車に乗って帰宅したのですが、巡回にきた駅員が壁に穴が複数開いていることに気づき、防犯カメラ等を確認したところ、Aさんらが壁を蹴りつけて穴を開けているところが映っていました。
駅員は京都府宇治警察署に通報し、捜査の結果、Aさんらは建造物損壊罪の容疑で逮捕されることになりました。
Aさんの両親は、Aさんがもうすぐ期末テストを控えていることから、なんとか釈放を目指すことはできないかと、京都の少年事件を取り扱う弁護士に相談しました。
(※令和元年6月20日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・建造物損壊罪
建造物損壊罪は、その名前の通り、建造物を損壊した際に成立する犯罪です。
刑法260条(建造物等損壊及び同致死傷)
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。
よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
この刑法260条の前段の「他人の建造物」を「損壊した」という部分に該当した場合、建造物損壊罪が成立することになります。
今回のAさんの建造物損壊事件は、Aさんが高校1年生であることから少年事件として処理されるため、原則としてAさんは刑事罰を受けないことになりますが、もしも成人の刑事事件であった場合、「5年以下の懲役」という法定刑から、起訴されれば必ず刑事裁判を受けることになる上、有罪となって執行猶予がつかなければ刑務所に入ることになるという非常に重い犯罪であることがお分かりいただけると思います。
なお、刑法260条後段には、建造物損壊罪を犯した際にそれによって人を死傷させた場合に成立する、建造物損壊致死傷罪が規定されています。
こちらについては、「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」とあります。
傷害罪の法定刑が「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(刑法204条)、傷害致死罪の法定刑が「3年以上の有期懲役」(刑法205条)となっていますから、建造物損壊致傷罪の場合は「15年以下の懲役」、建造物損壊致死罪の場合は「3年以上の有期懲役」となるでしょう。
さて、この建造物損壊罪が成立するには、先ほど述べたように、「他人の建造物」を「損壊」したと認められる必要があります。
過去の判例では、「建造物」について、「家屋その他これに類似する建築物を指称し、屋外を有し障壁または柱材をもって支持されて土地に定着し、少なくともその内部に人が出入りすることのできるものであることを必要とする」(大判大正3.6.20)、「器物が建造物の一部を構成しているといえるためには、毀損しなければ取外しができない状態にあることを要する」(大判明治43.12.16)とされています。
そして、「損壊」については、「物理的に毀損し、またはそのほかの方法により効用を滅却・減損させることをいう」(大判昭和5.11.27)とされています。
今回のAさんらの事例で考えてみると、駅構内にある階段の壁は駅舎の壁でしょうから、「家屋その他これに類似する建築物」で「屋外を有し障壁または柱材をもって支持されて土地に定着」している「その内部に人が出入りすることのできるもの」であると考えられるでしょう。
さらに、そうした壁を容易に取り外せるとは考えにくいですから、「毀損しなければ取外しができない状態にある」ものでしょう。
Aさんらはそうした駅の壁を蹴りつけて穴をあけていますから、「物理的に毀損」しています。
壁に穴が開けば、壁の効用(例えば駅構内と外界との遮断)は滅却・減損されているといえるでしょう。
こうしたことから、Aさんらが行った行為は建造物損壊罪にあたる行為であると考えられるのです。
少年事件の場合、最終的な処分が考えられるうえで重視されるのは、少年事件を起こしてしまった少年の更生です。
そのため、たとえ成人の刑事事件では不起訴処分で終わるような態様の事件であったとしても、少年事件では長期間の調査が行われたり、少年院送致といった処分がくだされたりということが考えられます。
一方、もちろん態様等詳細な事情にはよるものの、建造物損壊罪のような重い犯罪であったとしても、対応をきちんと行って社会内での更生が可能であるということが認められれば、保護観察処分や不処分の獲得につながる可能性もあります。
だからこそ、少年による建造物損壊事件にお悩みの際は、お早めに少年事件に強い弁護士にご相談ください。
0120-631-881では、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の専門スタッフが、いつでも弊所弁護士によるサービスをご案内しています。
遠慮なくお電話ください。
強制わいせつ罪の少年事件と示談
強制わいせつ罪の少年事件と示談
京都市東山区に住んでいるAさん(10代)は、自宅の近くで強制わいせつ事件を起こし、京都府東山警察署の警察官に強制わいせつ罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、どうにか被害者の方へ謝罪し、示談して穏便に解決できないかと思い、少年事件に強い弁護士に相談しました。
そこでAさんの両親は、刑事事件と少年事件の違いを弁護士から詳しく聞き、少年事件と示談の関係について教えてもらうことになりました。
(※この事例はフィクションです。)
・少年事件で強制わいせつ罪…示談すれば解決?
強制わいせつ罪のような性犯罪事件では、当然被害者の方がいらっしゃいますから、被害者の方に謝罪し、被害弁償をすることがまず思いつきやすい弁護活動の1つでしょう。
そして示談を締結すれば、穏便に解決できる、というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
成人の刑事事件の場合、犯行態様や前科等、そのほかの事情にも左右されるものの、強制わいせつ事件で被害者の方と示談が成立すれば、不起訴処分が下されるなど大きな効果が出ることが多く見られます。
一方、少年事件は、成人の刑事事件とは違い、成人の刑事事件でいう「不起訴処分」にあたるものは原則として存在せず、原則すべての事件が家庭裁判所に送致されることになります(全件送致主義)。
これは、少年事件の手続きが、少年の更生に重きを置いていることからこうした手続きがとられているのです。
少年の更生のためには、専門的な見地から、少年事件が起こった原因や、再犯防止のための対策を考えなければなりません。
その専門家が、家庭裁判所なのです。
警察や検察は少年事件の専門家というわけではないため、少年事件の専門家である家庭裁判所に原則的に全ての少年事件を送致することで、少年事件それぞれに適切な判断を下せるようにしているのです。
ですから、少年事件の場合、原則的には、示談が締結できたからといって家庭裁判所に送られることなくすぐに事件が終了する、というわけではないのです。
では、少年の起こした強制わいせつ事件については、被害者の方と示談することは意味がないことなのか、というとそうではありません。
被害者の方のケアのためにも、少年が今後更生するためにも、被害者の方にきちんとした謝罪を行うことや、被害弁償を行うことは非常に大切です。
被害者の方へ謝罪や弁償ができていることは、少年自身やその家族が、起こしてしまった強制わいせつ事件について、被害者の方についてどう考え受け止めているのかを表すことになります。
被害者の方への謝罪の気持ち、少年事件を起こしてしまったことへの反省の気持ちは、少年が更生するうえで非常に重要なものです。
そのため、謝罪や示談が行われていることは、少年にとって有利な事情として働くことが多いです。
しかし、強制わいせつ事件のような性犯罪の示談は、大変複雑です。
弁護士のような専門家でも、まとめあげるには大変な労力と気遣いが必要です。
まずは弁護士に相談し、そこから被害者の方への謝罪・示談をどうすべきか、一緒に考えましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は、刑事事件・少年事件専門の弁護士ですから、上記事例のような事件のご相談ももちろん対応可能です。
初回は無料の法律相談のため、お気軽にご利用いただけます。
少年事件にお困りの方は、0120-631-881で、相談予約をお取りください。
専門スタッフが丁寧にご案内します。
逮捕されなかったのに後から身体拘束?
逮捕されなかったのに後から身体拘束?
Bさんは、息子である高校1年生のAさんと夫であるCさんと京都市右京区で暮らしています。
ある日、Bさんは、京都府右京警察署から、Aさんを痴漢事件の被疑者として取り調べている、という連絡を受けました。
Bさんが急いで京都府右京警察署に行くと、警察官から、「お母さんも迎えに来てくれていることだし、逮捕はせずに帰します。ただ、後日取り調べが残っているのでまた連絡します」と伝えられました。
その後、何度か京都府右京警察署に取り調べに呼ばれていたAさんでしたが、逮捕されずにすんでいたため、BさんとCさんはそれほど大事ではないのだろうと考えていました。
しかしある日、家庭裁判所から連絡が来ると、Aさんは少年鑑別所に収容され、4週間の観護措置を取られることになりました。
BさんとCさんは突然の身体拘束に驚き、少年事件に強い弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・後から身体拘束される?
今回の事例のAさんは20歳未満であるため、Aさんの起こした痴漢事件は少年事件として処理されます。
少年事件は成人の刑事事件とは異なった手続きや制度も多く、一般の方からするとわかりづらいことも多いです。
今回のAさんは、逮捕されずに捜査されていたものの、家庭裁判所に事件が送致された後に身体拘束されることになったようです。
逮捕されずに捜査されてきたのに、後から身体拘束されるような事態になることはあるのでしょうか。
まず、少年事件であっても、捜査段階、つまり、家庭裁判所に事件が送致される前は成人の刑事事件とほとんど変わらない手続きを踏みます。
ですから、被疑者が少年である少年事件でも、逃亡や証拠隠滅のおそれが認められれば、成人同様逮捕や勾留といった身体拘束をされることも考えられます。
しかし、今回のAさんは逮捕されずに帰宅を許されています。
内容が複雑でない事件であれば、逮捕されずに複数回取り調べがされているような状況であれば、その後逮捕や勾留によって身体拘束をされるということは考えにくくなります。
ですから、Aさんについても、逮捕されずに帰宅を許されていること、その後の取り調べも在宅捜査として進められていることからすれば、今後身体拘束されるおそれは少ないと見ることができます。
ただし、先ほど触れたように、Aさんの痴漢事件は少年事件です。
少年事件と成人の刑事事件の手続きの違いの1つに、「観護措置」の有無が挙げられます。
少年事件では、警察や検察といった捜査機関での捜査が終了した後、家庭裁判所に事件が送られます。
その後、家庭裁判所では少年の更生のためにどういった処分が望ましいかを決めるために、少年本人の性格や資質のほか、少年の周囲の環境や経歴といったことを調べていきます。
この際、より専門的に少年の資質を調べることが必要であると判断された場合には、少年鑑別所に少年を収容して調査を行う「観護措置」がとられることがあります。
この「観護措置」は、捜査段階に行われる逮捕・勾留といった身体拘束とは性質や目的が違うため、たとえ捜査段階で逮捕の必要がないと判断されて在宅捜査で手続きが進められてきた少年事件でも、家庭裁判所に送致されたら観護措置の必要があると判断された、ということが起こりうるのです。
実際に、今回のケースのAさんのように、逮捕・勾留されずに捜査されてきた少年事件が、家庭裁判所送致後に観護措置を取られ、少年が身体拘束を受けることになった、というケースはまま見られます。
観護措置は、より専門的に少年の資質等を調べてもらうことのできる措置であるため、少年にとってデメリットばかりがあるわけではありません。
例えば、本人や家族の気づかない問題が、専門家が少年の暮らしぶりを見ることによって明らかになるということもあります。
しかし、観護措置を取られてしまえば、少年は一定期間鑑別所の外に出ることができません。
観護措置は通常4週間程度とられることが多いため、それだけの間学校や職場を休むことになってしまいます。
だからこそ、観護措置を回避する、観護措置の時期をずらしてもらう、一時的に観護措置を取り消してもらうといった方法を弁護士と検討し、協力して取り組んでいくことが求められるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、0120-631-881で専門スタッフが24時間いつでも弊所弁護士によるサービスをご案内しています。
逮捕・勾留を伴う少年事件はもちろん、逮捕・勾留がなかったのに家庭裁判所送致後に身体拘束をされてしまったという少年事件に御困りの方もお問い合わせください。
盗撮事件からストーカー事件に?②
盗撮事件からストーカー事件に?②
~前回からの流れ~
京都府綾部市に住んでいるAさん(17歳)は、男子高校生です。
Aさんは、通っている塾の近くの商業施設でよく見かける女性Vさんに対して好意を寄せていました。
奥手な性格であったAさんは、見知った仲でもないVさんに声をかけることができず、いつもVさんの姿を探しては見ていました。
しかしある日、エスカレーターに乗った際、ふと前を見るとVさんが自分の前の段に乗っていました。
Aさんは出来心でVさんのスカートの中をスマートフォンで盗撮してしまいました。
これに気づかれなかったことに味を占めたAさんは、半年以上、Vさんを探しては近くに行って盗撮するということを繰り返していました。
するとある日、ついに盗撮行為を警備員に見つかり、Aさんは盗撮事件の被疑者として逮捕され、京都府綾部警察署に留置されることとなりました。
警察の捜査では、Aさんのスマートフォンから、Vさんの盗撮写真が大量に出てきていると聞かされています。
Aさんは、両親の依頼した少年事件に強い弁護士と接見した際、今後ストーカー規制法違反でも捜査される可能性があると言われました。
(※この事例はフィクションです。)
・盗撮からストーカーが発覚?
前回の記事では、Aさんの商業施設での盗撮行為が、京都府の迷惑防止条例違反になるだろう、ということに触れました。
そのAさんは、最初は盗撮事件の被疑者として逮捕されているものの、弁護士の話ではストーカー規制法違反での捜査も考えられると言われています。
ストーカー規制法は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」という法律です。
ストーカー規制法は、その名前の通り、ストーカー行為を規制している法律で、ストーカー規制法の中で、ストーカー行為は以下のように定義されています。
ストーカー規制法2条1項
この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。
1 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
(略)
ストーカー規制法2条3項
この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第1項第1号から第4号まで及び第5号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。
つまり、ストーカー規制法にいう「つきまとい等」の行為を反復=繰り返すことで、ストーカー規制法の禁止しているストーカー行為となるのです。
今回のAさんの行動を見てみましょう。
Aさんは、Vさんに対して好意を持ち、その結果Vさんにつきまとって盗撮することを繰り返しています。
これらは、ストーカー規制法2条1項1号の「つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。」に当たる可能性があります。
ストーカー規制法のいう「つきまとい等」や「ストーカー行為」は、ストーカーの被害者がこれらの行為に気づいていなかったからといって否定されるものではありません。
加えて、ストーカー行為によるストーカー規制法違反は、近年の改正で非親告罪となっています。
ですから、たとえAさんの行為にVさんが気づいていなかったとしても、Aさんはストーカー規制法違反となる可能性があるのです。
特に、今回のように、AさんがVさんと分かる盗撮写真を撮影しており、データが残っていれば、それが継続的に繰り返されていることも分かります。
そうなれば、盗撮写真がきっかけでストーカー規制法違反の容疑で捜査されることも十分考えられます。
このように、最初は違う犯罪で検挙された少年事件でも、後々の捜査で別の犯罪の容疑がかかることが予想されるものもあります。
こうした見通しは、少年事件はもちろんのこと、刑事事件の知識・経験がなければ立てることが難しいです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件専門の弁護士が初回無料相談や初回接見サービスから相談者様のサポートを行います。
まずはお気軽にフリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
盗撮事件からストーカー事件に?①
盗撮事件からストーカー事件に?①
京都府綾部市に住んでいるAさん(17歳)は、男子高校生です。
Aさんは、通っている塾の近くの商業施設でよく見かける女性Vさんに対して好意を寄せていました。
奥手な性格であったAさんは、見知った仲でもないVさんに声をかけることができず、いつもVさんの姿を探しては見ていました。
しかしある日、エスカレーターに乗った際、ふと前を見るとVさんが自分の前の段に乗っていました。
Aさんは出来心でVさんのスカートの中をスマートフォンで盗撮してしまいました。
これに気づかれなかったことに味を占めたAさんは、半年以上、Vさんを探しては近くに行って盗撮するということを繰り返していました。
するとある日、ついに盗撮行為を警備員に見つかり、Aさんは盗撮事件の被疑者として逮捕され、京都府綾部警察署に留置されることとなりました。
警察の捜査では、Aさんのスマートフォンから、Vさんの盗撮写真が大量に出てきていると聞かされています。
Aさんは、両親の依頼した少年事件に強い弁護士と接見した際、今後ストーカー規制法違反でも捜査される可能性があると言われました。
(※この事例はフィクションです。)
・商業施設での盗撮
Aさんは今回、Vさんの下着等を盗撮しており、盗撮事件の被疑者として逮捕されています。
そこで、まずは盗撮をした場合に成立する犯罪について確認しておきましょう。
よく言われているように、盗撮それ自体が名前になったような犯罪はありません。
各都道府県で制定されているいわゆる迷惑防止条例や、軽犯罪について定めている軽犯罪法が主に盗撮に対処する法律となっています。
他にも、状況によっては刑法上の建造物侵入罪が問題となる場合もあります。
今回は迷惑防止条例に着目し、盗撮を考えていきましょう。
京都府では、「京都府迷惑行為防止条例」という迷惑防止条例が制定されています。
この中で盗撮に関する条文は以下の条文です。
京都府迷惑行為防止条例第3条
第1項 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
第2項 何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、前項に規定する方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
(1)みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影すること。
(2)みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等をすること。
(3)みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を撮影すること。
第3項 何人も、みだりに、公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある他人の姿態を撮影してはならない。
京都府の迷惑防止条例第3条第2項では、いわゆる「公共の場所」での盗撮や、盗撮目的でのカメラの設置等を禁止しています。
例えば、駅構内でスマートフォンを差し出して盗撮する行為や、駅の階段に盗撮目的でカメラを仕掛ける行為などは、この条文に違反することになります。
さらに同条例同条第3項では、「公共の場所」以外で公衆の利用できる、公衆が通常着衣の全部又は一部をつけない状態でいるような場所での盗撮を禁止しています。
こちらについては、例えば大型商業施設のトイレで盗撮したような場合はこの条文に違反することになるでしょう。
Aさんは、商業施設内でVさんを盗撮しています。
商業施設内は不特定又は多数の人が出入りする場所であり、誰でも自由に出入りが可能です。
こうしたことから、商業施設内は「公共の場所」と考えられます。
ですから、その中でVさんの下着を盗撮したAさんには、京都府の迷惑防止条例違反が成立すると考えられるのです。
確かにAさんは盗撮行為をしていますし、迷惑防止条例違反が成立することに不思議はないと思いますが、Aさんにはストーカー規制法違反も成立する可能性がある、と話されています。
どうしてそういったことが考えられるのでしょうか。
こちらは次回の記事で取り上げます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年による盗撮事件・ストーカー規制法違反事件ももちろんご相談いただけます。
まずはお問い合わせから、0120-631-881までお電話ください。
オヤジ狩りで恐喝罪①
オヤジ狩りで恐喝罪①
17歳のAさんは、学校の同級生や先輩たちのグループ数人と一緒になって、夜ごと京都市西京区の路上でいわゆるオヤジ狩りをし、被害者から金品を巻き上げていました。
オヤジ狩りの被害が多発したことを受けて、京都府西京警察署は警戒を強化し、その結果、Aさんらは恐喝罪の容疑で逮捕されるに至りました。
Aさんの両親は、これをきっかけにAさんに更生してほしいと思ったものの、そもそもAさんがこの後どういった流れでどのような処分を受けることになるのか、全く分かりません。
さらに、まずはとにかくAさんと話をしたいと警察署に行ったものの、警察からは「逮捕されてすぐは会えません」と言われてしまいました。
困り果てたAさんの両親は、京都・滋賀の少年事件を多く取り扱っている弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・オヤジ狩りと成立する犯罪
オヤジ狩りとは、少年など比較的年齢層の若い者が中年の男性を標的として襲い、金品を巻き上げることを指します。
オヤジ狩りでは、オヤジ狩りをする方が集団で被害者を脅したり、暴行や凶器を用いて脅したりすることで金品を巻き上げるケースが多いようです。
オヤジ狩りでは一体どういった犯罪が成立するのでしょうか。
以下で成立しうる犯罪を見ていきましょう。
①恐喝罪
上記事例のAさんが容疑をかけられて逮捕されているように、オヤジ狩りで成立する犯罪としては、まず恐喝罪が考えられます。
恐喝罪は、刑法249条に規定されている犯罪です。
刑法249条(恐喝罪)
人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
恐喝罪のいう「恐喝」とは、脅迫または暴行を用いて相手を畏怖させ、財物の交付を要求することを言います。
脅迫は害悪の告知(害悪を加えることの告知)、暴行は有形力の行使を言います。
この時、脅迫または暴行の程度が相手の犯行を抑圧しない程度であることが求められます。
そして、この「恐喝」によって畏怖した被害者が財物を引き渡すことによって、恐喝罪は成立します。
オヤジ狩りは被害者を脅して金品を巻き上げる行為ですから、恐喝罪に当たりえます。
②強盗罪
オヤジ狩りで成立する犯罪として、もう一つ考えられるのが強盗罪です。
強盗罪は刑法236条に規定されている犯罪です。
刑法236条(強盗罪)
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
強盗罪の「暴行又は脅迫」は、①の恐喝罪とは異なり、相手の反抗を抑圧するに足りる程度であることが求められます。
そして、強盗罪のいう「強取」は、暴行・脅迫によって被害者の反抗を抑圧し、被害者の意思に反して財物の支配を自分(又は第三者)に移すことを指します。
①で取り上げた恐喝罪とこの強盗罪はどちらも暴行や脅迫を用いて他人の財物を手に入れる犯罪ですが、恐喝罪は財物を被害者から交付させるいわゆる「交付罪」であるのに対し、強盗罪は財物を被害者から奪ういわゆる「奪取罪」であるのはこういった理由からです。
さらに、この強盗罪を犯してしまった際に被害者に傷害を負わせてしまった場合には強盗致傷罪、被害者を志望させてしまった場合には強盗致死罪が成立します。
オヤジ狩りでも、暴行・脅迫の程度が被害者の反抗を抑圧するほど強いと判断された場合には、強盗罪が成立することになるでしょう。
暴行・脅迫の程度については、その態様や互いの年齢・人数・性別・体格、犯行の時間帯や場所等、様々な状況を考慮して判断されます。
事例のAさんは20歳未満であることから少年事件の手続きにのっとって処分が決められるため、原則として刑罰を受けることはありませんが、①の恐喝罪も②の強盗罪も非常に重い犯罪です。
「子どもがやんちゃしただけ」と軽く考えず、まずは専門家の弁護士に相談されることをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、成人の刑事事件のみならず、少年事件についても数多くの取り扱いがございます。
まずはお気軽に、お問い合わせ用フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
(京都府西京警察署までの初回接見費用:3万6,800円)
次回の記事では、Aさんに対してどういった弁護活動・付添人活動が考えられるのか、詳しく見ていきます。
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