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ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕①私電磁的記録不正作出・同供用罪

2020-01-29

ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕①私電磁的記録不正作出・同供用罪

ポイント獲得のためのホテルキャンセルで逮捕されたケースで、特に電磁的記録不正作出・同供用罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、旅行をするとき、Xというサイトを利用し、利用するホテルの予約をしていました。
というのも、Xを利用してホテルの予約をしてホテルの利用をすれば、ホテルの利用料金の一部がAさんがよく使っているYというカードのポイントで還元されるサービスがあったからでした。
ある日Aさんは、このサービスは、ホテルの予約をキャンセルしても、ホテル側が手続きをしなければ予約者へのポイント付与はそのまま行われるシステムであることに気が付きました。
そこでAさんは、京都市右京区にあるVという高級なホテルに偽名と偽の連絡先で予約を入れては予約日当日に無断でキャンセルすることを繰り返し、Yカードのポイントをもらっていました。
するとある日、京都府右京警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんは私電磁的記録不正作出・同供用罪と偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和2年1月22日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・私電磁的記録不正作出・同供用罪

私電磁的記録不正作出・同供用罪という犯罪はなかなか聞きなじみのない犯罪かもしれません。
私電磁的記録不正作出・同供用罪は刑法に定められている犯罪です。

刑法161条の2
1項 人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2項 前項の罪が公務所又は公務員により作られるべき電磁的記録に係るときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
3項 不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。

この刑法161条の2のうち、それぞれ1項が私電磁的記録不正作出罪、2項が公電磁的記録不正作出罪、3項が不正作出電磁的記録供用罪という犯罪となります。
今回のAさんは、刑法161条の2の1項と3項の疑いをかけられていることから、逮捕容疑が私電磁的記録不正作出・同供用罪というまとめ方であったのでしょう。

さて、この私電磁的記録不正作出・同供用罪ですが、どういった場合に成立する犯罪で、Aさんの事例ではなぜこの犯罪の容疑がAさんにかかることになったのでしょうか。
まずは私電磁的記録不正作出罪について見ていきましょう。
私電磁的記録不正作出罪が成立する条件は、その条文から、
①「人の事務処理を誤らせる目的で」
②「その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を」
③「不正に作った」
というものです。
これらに当てはまった場合、私電磁的記録不正作出罪の成立が考えられることになります。

①の「人の事務処理を誤らせる目的で」とは、他人が行うはずの正しい事務処理を誤らせ、本来正しくあるべき内容とは異なるものとすることを目的として、という意味です。
事務処理とは、財産上身分上その他人の生活に影響を及ぼし得る全ての仕事を指すとされています。
今回のAさんについて当てはめてみましょう。
サイトX・ホテルVでは、サイトを通じて予約・利用したホテルの料金の一部をポイント還元していますが、Aさんは利用してもいないホテルの利用料金のポイント還元を受けようと偽の予約情報を登録していることになります。
すなわち、Aさんはサイト・ホテル側に、本来とは異なった、誤った予約情報を基にポイント還元等の事務処理をさせることを目的として今回の行為をしているわけですから、私電磁的記録不正作出罪の「人の事務処理を誤らせる目的で」に該当すると考えられるのです。

次に、私電磁的記録不正作出罪のいう②「その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を」とは、財産上身分上その他人の生活に影響を及ぼし得る全ての仕事に使う権利・義務・事実証明に関係するデータのことを、ということを指します。
今回のAさんの事例では、Aさんはサイトやホテルがポイント還元等に利用する予約情報というデータを作っているわけですから、これにも当てはまりそうです。

最後に、私電磁的記録不正作出罪の条文にある「不正に作った」という言葉ですが、これは事務処理を行おうとする者の意思に反して、権限がないのに、もしくは権限を濫用して、電磁的記録を作ることを指すとされています。
今回のAさんの事例で考えてみましょう。
Aさんは偽の予約情報というデータを作っているのですが、当然サイトやホテルは偽の予約情報登録されることは望んでいないと考えられますので、事務処理を行おうとする者の意思に反していると考えられます。
そして、Aさんには偽の予約情報を登録する権限があるわけではないため、Aさんには私電磁的記録不正作出罪の「不正に作った」という部分も該当することが考えられるのです。
これらのことから、Aさんには私電磁的記録不正作出罪が成立する可能性があると考えられます。

さらに、刑法161条の2の3項にある不正作出電磁記録供用罪は、先述した「人の事務処理を誤らせる目的で」その不正作出した電磁的記録を事務処理に使用されるコンピュータ等で処理しうる状況に置くことで成立しますが、Aさんは予約情報を登録=事務処理に使用されるコンピュータ等で処理しうる状況に置いているといえるため、不正作出電磁記録供用罪の成立も考えられるということになるのです。

私電磁的記録不正作出・同供用罪など、刑法の中でも聞きなじみのない犯罪は多く存在します。
そういった犯罪にかかわる刑事事件にお困りの際は、刑事事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご相談ください。
弊所では、弁護士による初回無料法律相談・初回接見サービスのご予約を24時間いつでも受け付けております。

エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件④

2020-01-27

エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件④

エステクーリングオフに関わる特商法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府八幡市で個人経営のエステ店を経営しています。
ある日、Aさんは、自身のエステに来店した客Vさんに対し、10万円で半年間エステに20回通える長期コースを勧めました。
その際、AさんはVさんに対し、あえてクーリングオフの説明をせず、案内をしていました。
その後、VさんはAさんに勧められたエステの長期コースを契約し、帰宅しました。
しかし、帰宅したVさんが家族にエステのことを話したところ、クーリングオフの話題となりました。
Vさんがクーリングオフの話をされていないことを話すと、Vさんの家族がおかしいと気づき、京都府八幡警察署に相談。
その結果、Aさんは特商法違反の容疑で京都府八幡警察署に話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・クーリングオフ可能なことをあえて知らせないと…

前回の記事で取り上げた通り、Aさんの事例のようなエステの長期コースは、特商法クーリングオフを使うことができると決められています。
しかし今回のAさんは、先述のようにクーリングオフが利用できるはずのエステの長期コースの勧誘・契約の際に、Vさんにクーリングオフについてあえて知らせずに案内しています。
このことに何か問題はないのでしょうか。

実は今回のAさんが捜査を受けているのは、このクーリングオフをあえてVさんに教えずに案内をしていることが原因であると考えられます。
特商法では、今回のAさんのエステの長期コースのような「特定継続的役務提供契約」に際して、以下のような禁止行為を定めています。

特商法44条
1項 役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供等契約の締結について勧誘をするに際し、又は特定継続的役務提供等契約の解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。
1号 役務又は役務の提供を受ける権利の種類及びこれらの内容又は効果(権利の場合にあつては、当該権利に係る役務の効果)その他これらに類するものとして主務省令で定める事項
2号 役務の提供又は権利の行使による役務の提供に際し当該役務の提供を受ける者又は当該権利の購入者が購入する必要のある商品がある場合には、その商品の種類及びその性能又は品質その他これらに類するものとして主務省令で定める事項
3号 役務の対価又は権利の販売価格その他の役務の提供を受ける者又は役務の提供を受ける権利の購入者が支払わなければならない金銭の額
4号 前号に掲げる金銭の支払の時期及び方法
5号 役務の提供期間又は権利の行使により受けることができる役務の提供期間
6号 当該特定継続的役務提供等契約の解除に関する事項(第48条第1項から第7項まで及び第49条第1項から第6項までの規定に関する事項を含む。)
7号 顧客が当該特定継続的役務提供等契約の締結を必要とする事情に関する事項
8号 前各号に掲げるもののほか、当該特定継続的役務提供等契約に関する事項であつて、顧客又は特定継続的役務の提供を受ける者若しくは特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの

2項 役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供等契約の締結について勧誘をするに際し、前項第1号から第6号までに掲げる事項につき、故意に事実を告げない行為をしてはならない。

3項 役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供等契約を締結させ、又は特定継続的役務提供等契約の解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。

この特商法44条2項では、「前項第1号から第6号までに掲げる事項」について故意に事実を告げない行為を禁止しています。
この「前項第1号から第6号までに掲げる事項」には、特商法44条1項6号「当該特定継続的役務提供等契約の解除に関する事項(第48条第1項から第7項まで及び第49条第1項から第6項までの規定に関する事項を含む。)」という事項も含まれています。
この中には、前回までの記事で取り上げてきた「特定継続的役務提供等契約」のクーリングオフに関する事項(特商法48条1項以降)が入っているのです。
つまり、特商法では、今回のAさんのエステの長期コースが該当したような「特定継続的役務提供等契約」について、クーリングオフについて故意に伝えないことは違反になるのです。
なお、特商法では「特定継続的役務提供等契約」締結時にその契約のクーリングオフについて明らかにした書面を交付しなければならないことになっています(特商法42条2項5号)。

故意にクーリングオフについて告げない行為をして特商法違反となった場合には、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」するという刑罰を受けることになります(特商法70条1項)。

このように、クーリングオフに関する規定は法律の様々な部分に定められており、クーリングオフに関する刑事事件を理解するだけでも苦労することでしょう。
もしも自分やご家族がこういった刑事事件に関与してしまったら、刑事事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご相談ください。
ご相談者様の状況に合わせて、専門スタッフが丁寧に弊所弁護士によるサービスをご案内いたします(0120-631-881)。

エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件③

2020-01-25

エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件③

エステクーリングオフに関わる特商法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府八幡市で個人経営のエステ店を経営しています。
ある日、Aさんは、自身のエステに来店した客Vさんに対し、10万円で半年間エステに20回通える長期コースを勧めました。
その際、AさんはVさんに対し、あえてクーリングオフの説明をせず、案内をしていました。
その後、VさんはAさんに勧められたエステの長期コースを契約し、帰宅しました。
しかし、帰宅したVさんが家族にエステのことを話したところ、クーリングオフの話題となりました。
Vさんがクーリングオフの話をされていないことを話すと、Vさんの家族がおかしいと気づき、京都府八幡警察署に相談。
その結果、Aさんは特商法違反の容疑で京都府八幡警察署に話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・エステの長期コースとクーリングオフ

前回までの記事では、Aさんのエステの長期コースは特商法の対象となる「特定継続的役務提供に係る商取引」に当てはまることがわかりました。
では、この「特定継続的役務提供に係る商取引」のクーリングオフについて、特商法ではどのように定めているのでしょうか。
クーリングオフ自体を定めている特商法の条文は、以下のものです。

特商法48条1項

役務提供事業者又は販売業者が特定継続的役務提供等契約を締結した場合におけるその特定継続的役務提供受領者等は、第42条第2項又は第3項の書面を受領した日から起算して8日を経過したとき(特定継続的役務提供受領者等が、役務提供事業者若しくは販売業者が第44条第1項の規定に違反してこの項の規定による特定継続的役務提供等契約の解除に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は役務提供事業者若しくは販売業者が同条第3項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによつて当該期間を経過するまでにこの項の規定による特定継続的役務提供等契約の解除を行わなかつた場合には、当該特定継続的役務提供受領者等が、当該役務提供事業者又は当該販売業者が主務省令で定めるところによりこの項の規定による当該特定継続的役務提供等契約の解除を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して8日を経過したとき)を除き、書面によりその特定継続的役務提供等契約の解除を行うことができる。
(以下略)

この特商法48条1項は、今回のAさんのエステの長期コースの事例のような「特定継続的役務提供に係る商取引」にあたる特定商取引でクーリングオフが可能であることを定めています。
特商法48条2項から8項は、クーリングオフのさらに細かい決まりが定められています。
この特商法にあるクーリングオフの決まりを簡単にまとめると、エステの長期コースのような特商法上の「特定継続的役務提供に係る商取引」である契約については、特商法で定められている契約内容を明らかにする書面を受け取った時から8日間以内(事業者側がクーリングオフに関して不実告知をした場合等についてはクーリングオフにについて記載した書面を受け取ってから8日間以内)であれば、クーリングオフが可能ということになります。
つまり、Aさんのエステの長期コースの事例のように、クーリングオフについてあえてVさんに知らせなかったような場合には、たとえ契約から8日間が経っていたとしても、クーリングオフは可能となるのです。

クーリングオフというと何か物を買った時に利用する制度というイメージのある方もいるかもしれませんが、このように、エステの長期コースのようなサービスを受ける契約についてもクーリングオフが使えるケースがあるのです。
なお、クーリングオフの適用される契約等については、特商法だけでなく様々な法律に規定があります。
あらかじめどういった契約や販売方法にクーリングオフが適用できるのか調べておくとよいでしょう。

こうしたクーリングオフに関わる刑事事件についても、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では刑事事件専門の弁護士にご相談いただけます。
見ていただいて分かるように、クーリングオフについての規定は長く・細かく・難しいことも多いです。
そもそもその契約・販売方法等が該当するクーリングオフがどの法律によって定められているのか、それがどういった法律なのかがわからないという方もいるかもしれません。
自分や家族がクーリングオフに関わる刑事事件の被疑者となってしまったら、法律の専門家である弁護士に解説してもらうことをおすすめいたします。

エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件②

2020-01-23

エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件②

エステクーリングオフに関わる特商法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府八幡市で個人経営のエステ店を経営しています。
ある日、Aさんは、自身のエステに来店した客Vさんに対し、10万円で半年間エステに20回通える長期コースを勧めました。
その際、AさんはVさんに対し、あえてクーリングオフの説明をせず、案内をしていました。
その後、VさんはAさんに勧められたエステの長期コースを契約し、帰宅しました。
しかし、帰宅したVさんが家族にエステのことを話したところ、クーリングオフの話題となりました。
Vさんがクーリングオフの話をされていないことを話すと、Vさんの家族がおかしいと気づき、京都府八幡警察署に相談。
その結果、Aさんは特商法違反の容疑で京都府八幡警察署に話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・エステの長期コースは特商法の対象?

前回の記事では、特商法の対象となる「特定商取引」の1つ「特定継続的役務提供に係る商取引」は、サービスの提供をしている事業者が「政令」で決められた基準より長い期間にわたって「特定継続的役務」にあたるサービスを提供する内容であり消費者がその内容に応じて「政令」で決められた基準よりも多い料金を支払う契約(1項)や、サービスの販売業者が「政令」で決められた基準より長い期間にわたって「特定継続的役務」にあたるサービスを受けられる内容のものを消費者に「政令」で決められた基準よりも多い料金によって販売する契約(2項)であるということを取り上げました。
では、その「特定継続的役務」にあたるサービスはどういったサービスなのかというと、前回取り上げた特商法の条文の次の項に規定があります。

特商法41条2項
この章並びに第58条の22第1項第1号及び第67条第1項において「特定継続的役務」とは、国民の日常生活に係る取引において有償で継続的に提供される役務であつて、次の各号のいずれにも該当するものとして、政令で定めるものをいう。
1号 役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもつて誘引が行われるもの
2号 役務の性質上、前号に規定する目的が実現するかどうかが確実でないもの

各号のいずれにも該当するもの」とされていることから、この特商法の条文の1号にも2号にも該当するとして「政令」で定められているものが特商法のいう「特定継続的役務」というサービスになるのです。
今回の事例のようなエステの長期コースはこの「特定継続的役務」に当てはまるサービスなのでしょうか。

ここで、今まで見てきた特商法の条文の中に出てくる「政令」とは、特商法施行令のことを指しています。
その特商法施行令を確認してみると、「特定継続的役務」とされるサービスの中には、「1 人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと(2の項に掲げるものを除く。)。」や「2 人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、体重を減じ、又は歯牙を漂白するための医学的処置、手術及びその他の治療を行うこと(美容を目的とするものであつて、主務省令で定める方法によるものに限る。)。」が含まれています(特商法施行令12条、別表第4)。
これらは、まさにエステのサービスの内容と言えるでしょう。
エステのサービスは、先ほど確認した特商法41条2項の「役務の提供を受ける者の身体の美化又は知識若しくは技能の向上その他のその者の心身又は身上に関する目的を実現させることをもつて誘引が行われるもの」でもあり、「役務の性質上、前号に規定する目的が実現するかどうかが確実でないもの」でもありますから、これを継続的に行う有償サービスであるエステの長期コースは「特定継続的役務」であると考えられるのです。

ということは、今回のAさんのエステの長期コースが特商法の適用対象である「特定継続的役務提供に係る取引」かどうかは、あとは「政令」の定めた基準より長い期間・高い料金かどうかによるということになります。
特商法施行令では、先ほど挙げた「1 人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと(2の項に掲げるものを除く。)。」や「2 人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、体重を減じ、又は歯牙を漂白するための医学的処置、手術及びその他の治療を行うこと(美容を目的とするものであつて、主務省令で定める方法によるものに限る。)。」とするサービスについて、基準の期間を「1月」、基準の料金を「5万円」としています(特商法施行令11条1項・2項、別表第4)。
つまり、半年間の契約=1月より長い期間で、10万円=5万円より高い料金のAさんのエステの長期コースは、特商法の対象となる「特定継続的役務提供に係る取引」であるといえるのです。

では、特商法で「特定継続的役務提供に係る取引」のクーリングオフはどのように規定されているのでしょうか。
次回の記事で詳しく取り上げていきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、逮捕された方向けの初回接見サービスだけでなく、逮捕や勾留といった身体拘束を受けずに捜査されている方向けの初回無料法律相談も受け付けています。
京都府刑事事件にお悩みの際は、ぜひ一度お問い合わせください。

エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件①

2020-01-21

エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件①

エステクーリングオフに関わる特商法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府八幡市で個人経営のエステ店を経営しています。
ある日、Aさんは、自身のエステに来店した客Vさんに対し、10万円で半年間エステに20回通える長期コースを勧めました。
その際、AさんはVさんに対し、あえてクーリングオフの説明をせず、案内をしていました。
その後、VさんはAさんに勧められたエステの長期コースを契約し、帰宅しました。
しかし、帰宅したVさんが家族にエステのことを話したところ、クーリングオフの話題となりました。
Vさんがクーリングオフの話をされていないことを話すと、Vさんの家族がおかしいと気づき、京都府八幡警察署に相談。
その結果、Aさんは特商法違反の容疑で京都府八幡警察署に話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・クーリングオフとは?

そもそも、クーリングオフとは、特定の契約に限って、契約してから一定期間内であれば無条件で消費者側から一方的にその申込みや契約を撤回・解除できる制度のことを指します。
クーリングオフは、消費者が頭を冷やしてもう一度契約等について考え直すための制度なのです。
このクーリングオフは、法律に「クーリングオフ制度」という言葉や法律でまとめて決められているわけではなく、クーリングオフの対象となる販売方法や契約等について定めているそれぞれの法律に個別の形でクーリングオフに該当する条文が特別に定められています。
先述したように、クーリングオフは、全ての販売方法や契約等に適用されるわけではなく、特定の販売方法や契約等に適用される制度なのです。

・特商法と「特定継続的役務提供に係る取引」

Aさんが違反したという容疑をかけられている特商法(正式名称:特定商取引に関する法律)を確認してみましょう。
まず、特商法の規制の対象となるのは、「特定商取引」と呼ばれる商取引であり、「特定商取引」は「訪問販売」、「通信販売及び電話勧誘販売に係る取引」、「連鎖販売取引」、「特定継続的役務提供に係る取引」、「業務提供誘引販売取引並びに訪問購入に係る取引」であるとされています(特商法2条)。
このうち、「特定継続的役務提供に係る取引」について、特商法では以下のように定義しています。

特商法41条1項
この章及び第58条の22第1項第1号において「特定継続的役務提供」とは、次に掲げるものをいう。
1号 役務提供事業者が、特定継続的役務をそれぞれの特定継続的役務ごとに政令で定める期間を超える期間にわたり提供することを約し、相手方がこれに応じて政令で定める金額を超える金銭を支払うことを約する契約(以下この章において「特定継続的役務提供契約」という。)を締結して行う特定継続的役務の提供
2号 販売業者が、特定継続的役務の提供(前号の政令で定める期間を超える期間にわたり提供するものに限る。)を受ける権利を同号の政令で定める金額を超える金銭を受け取つて販売する契約(以下この章において「特定権利販売契約」という。)を締結して行う特定継続的役務の提供を受ける権利の販売

つまり、サービスの提供をしている事業者が「政令」で決められた基準より長い期間にわたって「特定継続的役務」にあたるサービスを提供する内容であり消費者がその内容に応じて「政令」で決められた基準よりも多い料金を支払う契約(1項)や、サービスの販売業者が「政令」で決められた基準より長い期間にわたって「特定継続的役務」にあたるサービスを受けられる内容のものを消費者に「政令」で決められた基準よりも多い料金によって販売する契約(2項)が「特定継続的役務提供に係る取引」=特商法の対象となる特定商取引の1つであるとされているのです。

特商法のように、適用される範囲が限定されている法律を特別法と呼びます(特商法の場合は先述したように適用対象が「特定商取引」のみに限定されています。)。
特別法は、その適用範囲が非常に細かく分類されているがために分かりづらいこともあれば、範囲の定義が専門用語や解釈の必要な言葉によってなされているために分かりづらいということも多くあります。
だからこそ、特商法違反事件のような特別法に関わる刑事事件では、刑事事件に強い弁護士に早めに相談し、自分にかかっている容疑をきちんと理解し、見通しを把握することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が丁寧に相談対応をさせていただきます。
お困りの際はお気軽にお問い合わせください。

次回以降の記事では、エステの長期コースが特商法の対象となるのか、クーリングオフの対象となるのか、詳しく触れていきます。

ガールズバーで刑事事件②風営法違反

2020-01-19

ガールズバーで刑事事件②風営法違反

ガールズバー刑事事件となったケースで、特に風営法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市南区ガールズバーを経営していたAさんは、17歳のVさんを、18歳未満だと知りながら雇い、接客の際に性的な行為をさせていました。
しかしある日、Aさんの店に、京都府南警察署の警察官が訪れ、Aさんは児童福祉法違反と風営法違反の容疑で、京都府南警察署に逮捕されてしまいました。
どうやらAさんの店では、しばらくの間京都府南警察署による内偵捜査が行われていたようです。
Aさんの家族は、児童福祉法や風営法という法律を聞いたことがなかったため、刑事事件を専門とする弁護士に詳しく聞いてみることにしました。
そこで、Aさんの家族は、まずは逮捕されているAさんに会いに行ってもらうよう、弁護士に依頼することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・ガールズバーと風営法違反

前回の記事では、Aさんが18歳未満の「児童」であるVさんに性的な行為をさせていたことが児童福祉法違反に当たるだろうということに触れました。
今回の記事では、そもそもAさんの経営しているガールズバー自体が違法である可能性について触れていきます。

ガールズバーは、前回の記事で触れた通り、女性がカウンター越しに接客する形態を取るバーです。
ガールズバー=風俗営業といったイメージをする方もいるかもしれませんが、この形態でガールズバーを経営する分には、営業時間や店の広さ・明るさ等にもよりますが、風営法(正式名称:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の規定する「風俗営業」の許可を受ける必要はありません。
風営法で「風俗営業」とされているのは、以下のものです。

風営法2条1項
この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
1号 キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業
2号 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を10ルクス以下として営むもの(前号に該当する営業として営むものを除く。)
3号 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営むもの
4号 まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
5号 スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)

例えばキャバクラなどは、上記1号の「キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」に当たります。
こうした「風俗営業」は風営法上の許可を受けなければ営業することはできません。

風営法3条1項
風俗営業を営もうとする者は、風俗営業の種別(前条第1項各号に規定する風俗営業の種別をいう。以下同じ。)に応じて、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の許可を受けなければならない。

風営法上の許可を受けずに風俗営業をすれば、無許可営業となり風営法違反となるのです。

風営法49条
次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
1号 第3条第1項の規定に違反して同項の許可を受けないで風俗営業を営んだ者

では、風営法2条1項1号の「風俗営業」であるキャバクラとガールズバーでは何が違うのでしょうか。
それは、「接待」の有無です。
風営法のいう「接待」とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」であるとされています(風営法2条3項)。
これは、特定の客または客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うことであるとされています(警察庁の通達より)。
つまり、キャバクラのように客の隣についてサービスを行ったり、スナック等で一緒にカラオケをデュエットしたりといった場合は「接待」といえますが、ガールズバーでカウンター越しに飲食を提供する際に話を交わす程度は「接待」とは考えられていないということです。

しかし、今回のAさんは、ガールズバーでVさんに性的な行為をさせています。
こうした行為だけでなく、「接待」にあたる行為も含んだサービスを提供していたとすれば、Aさんは「風俗営業」にあたるものを無許可営業していたことになります。
そうなれば、Aさんには風営法違反も成立すると考えられるのです。

ガールズバー等で起こった刑事事件では、このように犯罪が複数成立することもあります。
さらに、店の関係者が複数人存在することも多く、逮捕等身体拘束の伴う捜査になることも多いです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、ガールズバーで起きた刑事事件のご相談もお受けしています。
まずはお気軽にお問い合わせ下さい。

ガールズバーで刑事事件①児童福祉法違反

2020-01-17

ガールズバーで刑事事件①児童福祉法違反

ガールズバー刑事事件となったケースで、特に児童福祉法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市南区ガールズバーを経営していたAさんは、17歳のVさんを、18歳未満だと知りながら雇い、接客の際に性的な行為をさせていました。
しかしある日、Aさんの店に、京都府南警察署の警察官が訪れ、Aさんは児童福祉法違反風営法違反の容疑で、京都府南警察署に逮捕されてしまいました。
どうやらAさんの店では、しばらくの間京都府南警察署による内偵捜査が行われていたようです。
Aさんの家族は、児童福祉法や風営法という法律を聞いたことがなかったため、刑事事件を専門とする弁護士に詳しく聞いてみることにしました。
そこで、Aさんの家族は、まずは逮捕されているAさんに会いに行ってもらうよう、弁護士に依頼することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・ガールズバーで刑事事件

ガールズバーとは、通常、カウンター越しに女性が接客する態様のバーを指します。
キャバクラ等は客の隣に従業員の女性、いわゆるキャバ嬢が座って接客する形になりますが、ガールズバーではカウンター越しでの接客になります。
こうしたガールズバーの形態で営業しているバーは多く存在しますが、そんなガールズバー刑事事件が起こってしまうことがあります。
今回は、Aさんの逮捕容疑である風営法違反と児童福祉法違反について詳しく注目していきます。

・ガールズバーで児童福祉法違反

児童福祉法という法律は、文字通り、児童の福祉の保障のための法律で、児童の健やかな成育や生活の保障、愛護などを理念とし、児童のための施設や禁止行為について規定しています。
児童福祉法では、満18歳未満の者を「児童」と定義しています。
今回の事例のAさんがガールズバーで働かせていたVさんは17歳ですから、児童福祉法の「児童」であることになります。

児童福祉法34条6号では、「児童に淫行をさせる行為」を禁止しており、これに違反して児童に淫行をさせた場合、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はその併科という刑に処されます(児童福祉法60条1項)。

児童福祉法34条
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
6号 児童に淫行をさせる行為

児童福祉法60条1項
第34条第1項第6号の規定に違反した者は、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

淫行」とは、「広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性行為類似をいうもの」と解されています(最判昭和60.10.23)。
この解釈からすると、上記事例のAさんはガールズバーを経営する立場にあり、Vさんを17歳と知りながら雇って接客をさせ、性的な行為をさせていたのですから、「淫行」をさせていたと考えられます。
つまり、Aさんの行為は「児童に淫行をさせる行為」を禁止している児童福祉法の条文にあたり、児童福祉法違反に当たると考えられます。

なお、この他にも「満15歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為」(児童福祉法34条5号)などが児童福祉法違反とされていますから、もしもAさんのガールズバーで「満15歳に満たない児童に主席に侍する行為を業務としてさせる行為」が行われていたとすれば、Aさんはこちらの行為についても児童福祉法違反になると考えられます。

児童福祉法違反事件の量刑については、初犯でも執行猶予がつかずに実刑判決が下る可能性があります。
特に、今回の事例のAさんのように、児童福祉法違反の店を経営していたような場合や、児童を何人も雇って性的な行為を繰り返させていたような場合は、下される判決が重くなることが予想されます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士児童福祉法違反事件にお困りの方のお力になります。
0120-631-881では、いつでも相談予約や初回接見サービスのお申込みを受け付けています。
刑事事件にお困りの方は、お気軽に弊所の弁護士までご相談ください。
次回の記事では風営法違反について取り上げます。

偽造大型免許で刑事事件④複数の犯罪

2020-01-15

偽造大型免許で刑事事件④複数の犯罪

偽造大型免許から刑事事件に発展したケースで特に複数の犯罪が成立する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府京田辺市にある運送会社で働いています。
ある日、Aさんは上司から、「Aさんが大型トラックを運転できるようになると任せられる業務も増えて助かる。給料もアップするし大型免許を取得してみたらどうだ」と話されました。
Aさんの会社では、大型免許を取得すると給料が上がる給与体系になっていました。
Aさんは普通運転免許しかもっていなかったため、その話を聞いて大型免許を取得することに決め、上司にもその旨を伝えました。
しかし、教習所に通って試験を受けたものの、Aさんは大型免許の取得試験に落ちてしまいました。
それでも給料が上がることなどをあきらめきれなかったAさんは、インターネットで偽造運転免許を購入できることを知り、自分の名義の偽の大型免許を購入し、上司に大型免許を取得したとして報告し、偽造大型免許を提示しました。
その後、Aさんは大型免許取得者として給料を上げてもらい、いわゆる大型トラックを使用する業務をこなしていました。
すると後日、Aさんは京都府京田辺市の道路で行われていた京都府田辺警察署の交通検問で運転免許証の提示を求められ、偽造大型免許を提示しました。
そこで警察官に偽造大型免許が偽物であることを見破られ、Aさんは無免許運転による道路交通法違反と偽造有印公文書行使罪の容疑で逮捕されてしまいました。
その後、Aさんが家族の依頼によって接見に訪れた弁護士に相談したところ、Aさんには詐欺罪の成立も考えられると伝えられました。
(※令和2年1月8日福井新聞ONLINE配信記事を基にしたフィクションです。)

・複数の犯罪が成立する刑事事件

刑事事件と一口に言っても、それぞれ成立する犯罪の種類はもちろん、数も異なります。
例えば、今回のAさんは、複数の種類・数の犯罪を犯してしまっています。

前回までの記事をまとめると、Aさんには以下の犯罪が成立すると考えられます。
①会社の上司へ偽造大型免許を提示したことによる有印公文書行使罪
②警察官に偽造大型免許を提示したことによる有印公文書行使罪
③大型免許を持たずに大型自動車を運転した無免許運転(道路交通法違反)
④大型免許を取得したと見せかけて給料を受け取った詐欺罪

これらの関係を見ていくと、①の会社の上司へ偽造大型免許を提示した行為は、④の大型免許取得者用の給料を受け取るための行為であるといえます。
つまり、④という目的を達成するために①という手段を使ったということです。
このように、複数の犯罪が成立する場合にそれぞれが手段と目的の関係にあるケースを「牽連犯」と呼びます。
牽連犯の関係にある場合、刑罰の重さは以下のような形で判断されます。

刑法54条1項
(略)…犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

つまり、①と④については、その法律で定められている刑罰の範囲のうち、最も重い刑罰の範囲で判断されるということです。
①の有印公文書行使罪の法定刑は1年以上10年以下の懲役であり、④の詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。
「1年以上」という下限が定められていることから、①の有印公文書行使罪の方が重い刑といえるため、①と④の関係では、「1年以上10年以下の懲役」の範囲で刑罰が判断されることになります。

しかし、②・③の犯罪や、それらと①・④の犯罪はそれぞれがばらばらの関係であり、目的・手段の関係になっているわけでも、同じ1個の行為で別の犯罪に当たっている(この場合「観念的競合」という考え方になります。)わけでもありません。
こうした場合を「併合罪」と呼びます。

刑法45条
確定裁判を経ていない2個以上の罪を併合罪とする。(以下略)

併合罪のケースでは、以下のように刑罰の重さを判断します。

刑法47条
併合罪のうちの2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。
ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。

併合罪という言葉からは、全ての犯罪の刑罰を単純に足して刑罰の重さを判断するというイメージがあるかもしれませんが、そうではありません。
併合罪の場合は、最も重い刑について定めた刑の長期の1.5倍が長期となる範囲で判断されるのです(ただし、但し書きにあるようにそれがそれぞれの犯罪の刑の長期の合計を超えることはできませんから、合計を超えるような場合は刑の長期の合計が長期となる範囲で判断されることになるでしょう。)。

例えば、Aさんの場合、有印公文書行使罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」、無免許運転(道路交通法違反)の法定刑は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」、詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。
となると、最も重い刑について定めた刑の長期は「(1年以上)10年以下の懲役」ということになりますから、「15年以下の懲役」の範囲でAさんに下される刑罰が判断されることになるでしょう。

複数の犯罪が成立している刑事事件では、このように刑罰の範囲だけでも非常に複雑で、刑事事件の知識がなければ見通しを立てることも大変です。
複数の犯罪の相互関係等を専門的立場から考えることのできる弁護士に相談し、見通しや弁護活動について詳しく聞くことをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門弁護士がご相談者様のニーズに合わせたサービスをご用意しています。
逮捕されてしまっている方、在宅捜査を受けている方、刑事事件化が心配な方など、状況を問わず、遠慮なくお問い合わせください。

偽造大型免許で刑事事件③詐欺罪

2020-01-13

偽造大型免許で刑事事件③詐欺罪

偽造大型免許から刑事事件に発展したケースで特に詐欺罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府京田辺市にある運送会社で働いています。
ある日、Aさんは上司から、「Aさんが大型トラックを運転できるようになると任せられる業務も増えて助かる。給料もアップするし大型免許を取得してみたらどうだ」と話されました。
Aさんの会社では、大型免許を取得すると給料が上がる給与体系になっていました。
Aさんは普通運転免許しかもっていなかったため、その話を聞いて大型免許を取得することに決め、上司にもその旨を伝えました。
しかし、教習所に通って試験を受けたものの、Aさんは大型免許の取得試験に落ちてしまいました。
それでも給料が上がることなどをあきらめきれなかったAさんは、インターネットで偽造運転免許を購入できることを知り、自分の名義の偽の大型免許を購入し、上司に大型免許を取得したとして報告し、偽造大型免許を提示しました。
その後、Aさんは大型免許取得者として給料を上げてもらい、いわゆる大型トラックを使用する業務をこなしていました。
すると後日、Aさんは京都府京田辺市の道路で行われていた京都府田辺警察署の交通検問で運転免許証の提示を求められ、偽造大型免許を提示しました。
そこで警察官に偽造大型免許が偽物であることを見破られ、Aさんは無免許運転による道路交通法違反と偽造有印公文書行使罪の容疑で逮捕されてしまいました。
その後、Aさんが家族の依頼によって接見に訪れた弁護士に相談したところ、Aさんには詐欺罪の成立も考えられると伝えられました。
(※令和2年1月8日福井新聞ONLINE配信記事を基にしたフィクションです。)

・詐欺罪

前回までの記事では、Aさんが偽造大型免許を警察官に提示したり上司に提示したりする行為が偽造有印公文書行使罪にあたること、さらに普通免許しかもっていないのに大型自動車を運転したことが無免許運転(道路交通法違反)にあたることに触れました。
しかし、今回の事例では、Aさんは弁護士から、さらに詐欺罪の成立も考えられると言われています。
Aさんの行為のどの部分が詐欺罪に当たりえるのでしょうか。

まず、詐欺罪は刑法246条に規定されている犯罪です。

刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

詐欺罪の典型的な例としては、いわゆるオレオレ詐欺に代表される特殊詐欺や、還付金詐欺といったものが挙げられるでしょう。
詐欺罪の「人を欺いて」という行為は、「欺罔行為」とも呼ばれ、その物を引き渡すかどうかの判断をする際に重要な事項を偽ることであるとされています。
つまり、財物を引き渡させるために、その事実が嘘であると分かっていればその財物を引き渡さなかっただろうという事実について嘘をつくことで詐欺罪の「人を欺」く行為となるのです。
その欺罔行為によって相手が騙され、財物を引き渡すことで詐欺罪が成立します。

今回のAさんの行為を考えてみましょう。
Aさんの勤める会社では、大型免許を取得している人は給料を上げてもらうことができることになるという明確な基準があります。
そしてAさんは、実際には大型免許を取得していないにも関わらず、偽造大型免許を示すことで大型免許を受けたかのように見せかけ、給料を上げてもらっています。
もちろん、会社としては大型免許を取得しているという事実があるからこそ、Aさんの給料を大型免許取得者として上げているわけですから、その資格が嘘であるなら給料を上げることはしないでしょう。
すなわち、上司等会社の人間をだますことによって、Aさんは上がった給料の分だけお金=財物を引き渡させていると考えられるのです。
ですから、Aさんには詐欺罪の成立も考えられるということになるのです。

ちなみに、詐欺罪には未遂罪も規定されており、財物の交付に向けた「人を欺」く行為を開始した時点で詐欺未遂罪が成立するとされています。
今回のケースで言えば、例えば偽造大型免許を見せられた上司が偽造大型免許であることを見抜いたとしても、Aさんには詐欺未遂罪が成立する可能性が出てくるということになります。

たとえ特殊詐欺のような組織的犯行が行われていない詐欺事件であったとしても、偽造有印公文書行使罪などほかの犯罪が絡むことによってより複雑になってしまうこともあります。
刑事事件専門の弁護士が所属する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こうした刑事事件のご相談も受け付けていますので、お気軽にご相談ください。

偽造大型免許で刑事事件②無免許運転

2020-01-11

偽造大型免許で刑事事件②無免許運転

偽造大型免許から刑事事件に発展したケースで特に無免許運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府京田辺市にある運送会社で働いています。
ある日、Aさんは上司から、「Aさんが大型トラックを運転できるようになると任せられる業務も増えて助かる。給料もアップするし大型免許を取得してみたらどうだ」と話されました。
Aさんの会社では、大型免許を取得すると給料が上がる給与体系になっていました。
Aさんは普通運転免許しかもっていなかったため、その話を聞いて大型免許を取得することに決め、上司にもその旨を伝えました。
しかし、教習所に通って試験を受けたものの、Aさんは大型免許の取得試験に落ちてしまいました。
それでも給料が上がることなどをあきらめきれなかったAさんは、インターネットで偽造運転免許を購入できることを知り、自分の名義の偽の大型免許を購入し、上司に大型免許を取得したとして報告し、偽造大型免許を提示しました。
その後、Aさんは大型免許取得者として給料を上げてもらい、いわゆる大型トラックを使用する業務をこなしていました。
すると後日、Aさんは京都府京田辺市の道路で行われていた京都府田辺警察署の交通検問で運転免許証の提示を求められ、偽造大型免許を提示しました。
そこで警察官に偽造大型免許が偽物であることを見破られ、Aさんは無免許運転による道路交通法違反と偽造有印公文書行使罪の容疑で逮捕されてしまいました。
その後、Aさんが家族の依頼によって接見に訪れた弁護士に相談したところ、Aさんには詐欺罪の成立も考えられると伝えられました。
(※令和2年1月8日福井新聞ONLINE配信記事を基にしたフィクションです。)

・無免許運転

無免許運転と聞くと、そもそも運転免許証を受けずに全く免許を持っていない状態で自動車を運転するケースを思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、今回のAさんは普通運転免許証は持っているようです。
こうしたケースでも、実は無免許運転になりうることに注意が必要です。

道路交通法では、運転免許について、以下のように定めています。

道路交通法84条
1項 自動車及び原動機付自転車(以下「自動車等」という。)を運転しようとする者は、公安委員会の運転免許(以下「免許」という。)を受けなければならない。
2項 免許は、第一種運転免許(以下「第一種免許」という。)、第二種運転免許(以下「第二種免許」という。)及び仮運転免許(以下「仮免許」という。)に区分する。
3項 第一種免許を分けて、大型自動車免許(以下「大型免許」という。)、中型自動車免許(以下「中型免許」という。)、準中型自動車免許(以下「準中型免許」という。)、普通自動車免許(以下「普通免許」という。)、大型特殊自動車免許(以下「大型特殊免許」という。)、大型自動二輪車免許(以下「大型二輪免許」という。)、普通自動二輪車免許(以下「普通二輪免許」という。)、小型特殊自動車免許(以下「小型特殊免許」という。)、原動機付自転車免許(以下「原付免許」という。)及び牽けん引免許の十種類とする。

そして、道路交通法85条1項の表において、「大型自動車」を運転しようとする場合には、第一種免許の「大型免許」を受けなければならないとしています。
この「大型自動車」とは、道路交通法施行規則2条によると、「大型特殊自動車、大型自動二輪車、普通自動二輪車及び小型特殊自動車以外の自動車で、車両総重量が一一、〇〇〇キログラム以上のもの、最大積載量が六、五〇〇キログラム以上のもの又は乗車定員が三〇人以上のもの」とされており、いわゆる「大型トラック」と呼ばれているものはこの大型自動車に分類されるトラックなのでしょう。

そして、道路交通法では無免許運転を以下のように禁止しています。

道路交通法64条
1項 何人も、第84条第1項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第90条第5項、第103条第1項若しくは第4項、第103条の2第1項、第104条の2の3第1項若しくは第3項又は同条第5項において準用する第103条第4項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。

道路交通法117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1号 法令の規定による運転の免許を受けている者(第107条の2の規定により国際運転免許証等で自動車等を運転することができることとされている者を含む。)でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は国際運転免許証等を所持しないで(第88条第1項第2号から第4号までのいずれかに該当している場合又は本邦に上陸をした日から起算して滞在期間が1年を超えている場合を含む。)運転した者

つまり、たとえ普通運転免許を持っていたとしても、道路交通法の定める「大型自動車」を運転しようというときにはそれだけでは足りず、「大型免許」を受けていなければそれは運転免許の効力のある範囲外の許されていない範囲での運転をしていることになりますから、無免許運転ということになってしまうのです。
このように、無免許運転は全く運転免許を持っていないというケース以外にも成立しうることに注意が必要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、無免許運転事件などの交通違反に関わる刑事事件のご相談も受け付けています。
今回のAさんのような、偽造大型免許に関わる無免許運転事件では、無免許運転以外の部分の容疑も絡み合い、複雑な刑事事件となることが考えられますから、こうしたケースでは早期に弁護士までご相談ください。

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