当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕?②
当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府京田辺市にあるショッピングモールに自動車を運転して買い物に来ていました。
Aさんが帰ろうと駐車場から車を発進させた際、運転を誤って、前に停まっていた自動車に追突させてしまいました。
Aさんが車内から様子を伺ったところ、その車には誰も乗っていないように見えたため、「高速で走っているところをぶつかったわけではないのだし、車も大きく壊れたわけではない。放置しても大丈夫だろう」と考えたAさんは、そのまま車を運転して帰宅しました。
すると後日、Aさん宅に京都府田辺警察署の警察官がやってきました。
Aさんは、先日駐車場で車をぶつけてしまったことを思い出し、当て逃げの犯人として取調べを受けるのだろうと思っていました。
しかし、警察官は「ひき逃げ事件の被疑者として逮捕する」という旨を伝え、Aさんはひき逃げ事件の被疑者として逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・当て逃げだと思ってもひき逃げに?
今回のAさんは、自分のした行為が当て逃げだと思っていたようですが、実際にかけられた容疑はひき逃げでした。
前回の記事で確認した通り、当て逃げもひき逃げも、交通事故を起こしながら道路交通法の義務に違反する道路交通法違反ということは共通しています。
そして、その交通事故で人が死傷しているのかどうか、それに対して救護等をしたのかどうかによって当て逃げかひき逃げかが代わってくることになります。
ですから、簡単に考えれば、交通事故が物損事故なのか人身事故なのかによって当て逃げかひき逃げか変わるということになります。
今回のAさんは、駐車場で自動車を動かした際に低速度で他の車にぶつかったようです。
その際、Aさんは相手の車に誰も乗っていないと思ってそのまま立ち去っていますが、その中に人がいて怪我をしていれば、それは人身事故となる可能性があります。
たとえ駐車場での低速度での交通事故であっても、捻挫やむちうちなどの怪我を負ってしまい診断書が出ることは考えられますし、その怪我が交通事故に由来するものであれば、人身事故として処理されることも考えられます。
今回のAさんの場合も、Aさんが見落としていたところに車の搭乗者がいて、Aさんの車との衝突によって怪我をしていたことが考えられます。
駐車場や渋滞中などに起こった低速度の交通事故でも、人身事故になる可能性があることに注意しましょう。
どちらにせよ、人身事故でも物損事故でも起こしてしまった場合には道路交通法上の義務がありますから、そのまま立ち去らないようにしましょう。
・ひき逃げをしてしまったら何罪?
前回の記事でも触れた通り、ひき逃げ行為自体は道路交通法に違反した道路交通法違反という罪になります。
これは当て逃げ行為の場合も同じですが、ひき逃げをしてしまった場合には、この道路交通法違反のほかにも犯罪が成立します。
人身事故を起こしてしまった場合には、自動車運転処罰法の中に規定のある、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪といった犯罪が成立します。
これはひき逃げや当て逃げといった行為ではなく、人身事故を起こしてしまったこと自体に成立する犯罪です。
今回のAさんのような不注意によって相手に怪我を負わせてしまった交通事故の場合、過失運転致傷罪が成立する可能性が高いでしょう。
自動車運転処罰法5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
まとめると、ひき逃げ事件の場合、ひき逃げ行為に成立する道路交通法違反と、人身事故を起こしたことに成立する過失運転致死傷罪などという、2つの犯罪が成立することになるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こうした当て逃げ・ひき逃げのような交通事故に関連した刑事事件のご相談も受け付けています。
当て逃げ・ひき逃げといった、現場から一度逃げているという事情のある刑事事件では、逃亡のおそれが高いとして逮捕されることも珍しくありません。
突然の逮捕は刑事事件に強い弁護士にぜひご相談ください。