タクシー料金を払わず逮捕

今回は、タクシー料金を支払わずに逃走したことにより逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事例
京都市左京区在住のAさんは、繁華街で飲酒後、帰宅するためにタクシーを呼びました。
タクシーに乗車して自宅周辺に着いた際に、タクシー運転手のVさんに対して「料金が高い。金なんか払わない。」と文句を言ってタクシーを降りてその場を離れようとしました。
VさんはAさんを追いかけて引き留めようとしましたが、Aさんは追ってきたVさんの胸ぐらを掴んでそのまま突き飛ばして転倒させて逃走しました。
Vさんは転倒しましたが、幸い怪我はなかったため、すぐに警察に通報しました。
Aさんは後日、警察の捜査により犯人と特定されて逮捕されることになりました。
(事例はフィクションです。)
Aさんは何罪となるのでしょうか
強盗罪(強盗利得罪)が成立する可能性があります。
強盗罪
強盗罪の条文は以下のように記載されています。
刑法第236条
1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期拘禁刑に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
強盗利得罪
一般的に強盗罪と聞くと、コンビニ強盗等の実際に現金や物を奪うことを想像するかと思われます。
事例のタクシー料金を暴行や脅迫を用いて踏み倒すような行為も強盗罪として扱われ、強盗利得罪と呼ばれています。
上記強盗罪の2項に記載されている条文がこれにあたります。
強盗利得罪の財産上の利益とは、財産以外の、サービスや債権など財産的価値があるものを指し、これらを不法に得ることで成立します。
自分が直接利益を得るだけでなく、他人にその利益を得させる行為も含まれています。
強盗罪における暴行又は脅迫
暴行とは、人の身体に対する有形力の行使のことをいい、脅迫とは、人を畏怖させるに足りる程度の害悪の告知のことをいいます。
強盗罪における暴行又は脅迫とは、相手の反抗を抑圧するに足りる程度でなければならないとされています。
相手の反抗を抑圧するに足りる程度とは、相手が抵抗できない状態にさせる程度の暴行や脅迫が必要だということです。
強盗罪が成立しない場合
相手に対して行われた暴行又は脅迫が、反抗できないほどではなかった場合は、強盗罪は成立せず、恐喝罪や暴行罪が適用されることになるでしょう。
反抗を抑圧する程度かどうかについては、暴行や脅迫がどのようにして行われたのかだけではなく、その時の時間や場所、お互いの体格差や性別、年齢等を総合的に判断されることになります。
例えば、ご高齢の脚もおぼつかない様な犯人がナイフを持って、屈強な被害者に対して、お金を出せと言った場合に、被害者が全く畏怖しない場合に強盗罪は成立せず、恐喝罪や暴行罪に留まるでしょう。
繰り返しになりますが、暴行又は脅迫が反抗を抑圧するに足りる程度であったかどうかは客観的基準によって判断されますので、社会通念上一般に反抗を抑圧するに足りる程度に至っていると判断されるのであれば被害者が反抗を抑圧されていなくても強盗罪が成立します。
一方で、社会通念上一般に反抗を抑圧するに足りる程度に至っていないと判断される場合であれば、被害者がかなり臆病な性格で実際に反抗を抑圧されたとしても強盗罪は成立しないでしょう。
事例の検討
事例のAさんは、Vさんに対してタクシー料金を支払わない旨を告げてその場を立ち去ろうとしました。
そして追いかけてきたVさんに対して、胸ぐらを掴んで押し倒す暴行を加えて逃走しました。
Aさんは、本来支払うべきタクシー料金を支払わずに立ち去ったことで、財産上の利益を得たと判断されるでしょう。
Aさんの暴力行為は、Vさんを転倒させているため、反抗を抑圧する程度の暴行を加えて抵抗できない状態にさせたと判断されて強盗罪(強盗利得罪)が成立するでしょう。
今回、Aさんの暴力行為でVさんは怪我をしていませんが、仮にAさんの暴力行為によってVさんが転倒した際に、怪我もしくは頭の打ちどころが悪く死亡させてしまうとどうなるのでしょうか。
この場合は、強盗罪よりもさらに重い処罰が規定されている、強盗致死傷罪が成立する可能性もあります。
強盗致死傷罪
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の拘禁刑に処し、死亡させたときは死刑又は無期拘禁刑に処する。
(刑法第240条)
強盗致死傷罪の法定刑は、負傷させた場合は無期又は6年以上の拘禁刑、死亡させた場合は死刑又は無期拘禁刑とされており、裁判となれば実刑の可能性が非常に高くなります。
このような場合には、早急に弁護士へ相談・依頼を行い、示談交渉等を行うことをお勧めいたします。
まずは刑事事件に強い弁護士を探しましょう。
弁護士へ依頼して、示談交渉等の弁護活動をしっかりと行うことで、結果によっては執行猶予判決を獲得できる可能性もあります。
逮捕されてしまうと
今回、Aさんは逮捕されています。
昨今、防犯カメラがあちらこちらに設置されています。
タクシーにもドライブレコーダーが搭載されていて、車外車内を撮影していることが多いと思われます。
事例のような事件は防犯カメラ捜査によって犯人の特定が比較的に容易になっているといえ、事件後に警察が逮捕状を持って自宅に来る可能性があります。
被疑者として逮捕されてしまうと事件の内容にもよりますが、起訴までの期間に最長23日もの間、身体を拘束される可能性があります。
逮捕されてしまえば、まずは早期の身柄解放活動を行うことが最優先となるでしょう。
私選弁護人であれば、逮捕後でもすぐに被疑者との接見が可能です。
身体拘束の期間が長引けば長引くほど、多くの不利益をこうむることになり、社会復帰が難しくなるといえます。
身柄解放活動は捜査の早い段階であればあるほど、有利に行うことができます。
ご家族が逮捕された場合は、早期に弁護士に逮捕された方へ接見依頼することをお勧めいたします。
まずは弁護士へ接見を依頼し、弁護活動に関するアドバイスを受けましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件に精通した法律事務所です。
逮捕されてしまった方のために「初回接見」(有料)を実施しており、ご相談のお問い合わせについては、24時間365日受付しております。
ご家族が逮捕されてしまった方やその他の刑事事件・少年事件でお困りの方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご相談ください。

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