不動産会社の経理担当者を業務上横領罪の疑いで逮捕
不動産会社の経理担当者が業務上横領罪の疑いで逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事件概要
京都府右京警察署は、京都市内の不動産会社Vで経理業務を担当していた会社員の女性A(49)を業務上横領罪の疑いで逮捕した。
Aは、V社の創業から経理業務を含むバックヤード業務を担っており、会社のお金の管理は事実上Aに一任されていた。
警察の取調べに対し、Aは、「息子がFXで多額の借金を負ったことを知り、なんとか返済資金を工面できないか考えた結果、会社のお金を横領してしまった。」と容疑を認めている。
(フィクションです)
業務上横領とは
刑法253条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。
刑法では、横領罪がいくつか規定されています。
単純横領罪(刑法252条)、業務上横領罪(刑法253条)、占有離脱物横領罪(刑法254条)があります。
単純横領罪とは、「自己の占有する他人の物を横領」する罪であり、業務上横領罪とは、「『業務上』自己の占有する他人の物を横領」する罪です。
両罪は、横領した他人の物が「業務」上、自己が占有する物であったかどうかで区別されます。
そして、「業務」とは、金銭その他の財物を委託を受けて占有・保管することを内容とする職業もしくは職務をいうと解されています。
京都府右京警察署によると、Aは、勤務する不動産会社において創業当初から経理業務を担当し、事件当時は会社からお金の管理を一任されていたようです。
したがって、Aの職務は、業務上横領罪における「業務」に該当する可能性があり、Aには、業務上自己の占有する会社のお金を横領したとして業務上横領罪が成立する可能性があります。
では、Aの行為は横領に当たるのでしょうか?
横領とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、他人の物に対し経済的用法に従って所有者でなければできないような処分をする行為です(最判24年3月8日)。
所有者でなければできないような処分とは、具体的にいうと、食べ物であればそれを食べることなどであり、お金であればそれを消費することなどです。
本件では、Aは、自分の管理下にあった会社のお金を、息子の借金の支払いにあてたようです。
金銭債務の支払いのためにお金をあてるのは、そのお金の持ち主にしか許されない行為ですから、Aがした行為は横領に当たる可能性があります。
以上から、本件では業務上横領罪が成立する可能性があります。
なるべく早く弁護士に相談を
業務上横領罪のように被害者のいる犯罪では、被害者との間で示談が成立しているかどうかが、検察官の起訴するかどうかの判断や裁判官の量刑の判断に影響します。
したがって、できるだけ早くに示談交渉に着手することが重要となります。
本件のように、被害者が、加害者の勤務先の場合、全くの見ず知らずの他人ではないため自分で示談交渉できると思われるかもしれません。
たしかに、本件Vにとっては、Aは創業当初からずっと一緒に働いてきた仲間ですが、会社のお金の管理を一任するほど信頼していたにもかかわらず、その信頼を裏切ってお金を勝手に使った人物です。
したがって、VはAに対し強い処罰感情を有している可能性があり、Vから法外な示談金を請求されるなどして交渉が難航したり、そもそも示談交渉に応じてくれない可能性が高いです。
そこで、被害者との示談交渉は弁護士に一任されることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、業務上横領事件をはじめとする豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分や罪の減軽、執行猶予付き判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。