【事例紹介】恐喝罪、強要罪の容疑で逮捕された事例

京都市伏見区で起きた恐喝・強要事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警伏見署は17日、恐喝と強要の疑いで、(中略)容疑者を逮捕した。
3人の逮捕容疑は共謀し(中略)知人男性(56)宅で、数年前にうち1人が京都府警に逮捕されたのは情報提供のせいだと男性に因縁をつけ、などと現金10万円を脅し取り、40万円を支払う念書を書かせた疑い。3容疑者は容疑を否認している。

(1月17日 京都新聞 「「仕事行けん身体にしたろか」逮捕逆恨みで恐喝 容疑の3人逮捕」より引用)

恐喝罪

刑法第249条
1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

簡単に説明すると、恐喝罪は、相手を怖がらせる程度の暴行や脅迫を加えて財物を交付させた場合や財産上不法な利益を得た際に成立します。

今回の事例では、3人の容疑者らが共謀して被害者に「仕事行けんような身体にしたろか」などと言って現金を脅し取ったとされています。
一般の人が「仕事行けんような身体にしたろか」と言われた際に怖いと思うのであれば、この行為により現金を交付させているので恐喝罪が成立します。

強要罪

刑法第223条1項
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

強要罪は、簡単に説明すると、脅迫や暴行を用いて相手に義務のないことを行わせたり、権利の行使を妨害した場合に成立します。

今回の事例では、容疑者らが「仕事行けんような身体にしたろか」などと言って被害者に40万円を支払う念書をかかせたとされています。
報道を見る限り、被害者が40万円を支払う念書を書く義務はないように思われます。
容疑者らが言った「仕事行けんような身体にしたろか」という言葉が、一般の人からみても脅迫にあたると認められる場合には、強要罪が成立することになります。

恐喝罪と強要罪

恐喝罪強要罪はどちらも暴行、脅迫を手段にしている点で類似しているように思われます。
しかし、恐喝罪が成立するためには財物が交付されることが必要ですし、強要罪が成立するためには相手の義務にないことなどを行わせる必要があります。

先ほど、今回の事例で念書を書かせたとされている行為について、強要罪が成立する可能性があると述べました。
しかし、「念書を書くことで40万円を支払うと言っているのだから恐喝罪にあたるんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
なぜ恐喝罪ではなく、強要罪が成立するのでしょうか。

繰り返しになりますが、恐喝罪が成立するためには財物の交付もしくは財産上不法の利益を得ることが必要です。
ですので、今回の事例で恐喝罪が成立するためには、念書が財物にあたる、もしくは財産上不法の利益にあたる必要があります。

今回の事例でいう念書とは、40万円を支払う約束をする書面であると推測されます。
そうなると、あくまでも約束ですので、念書があるからといって必ずしも40万円が手に入るとは限りません。
財産上不法の利益を得たというには確実性が必要です。
念書だけでは確実に40万円が手に入るとは思えませんから、念書を書かせる行為だけでは、財産上不法の利益を得たといえないでしょう。

では、念書は財物といえるのでしょうか。
先ほども述べたように、念書があるからといって、40万円が必ず手に入るわけではありません。
したがって念書は財物にはあたらないと判断される可能性が高いので、今回の事例では恐喝罪ではなく、強要罪が成立すると考えられます。

刑事事件では示談を締結することが重要だと聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
実際に、示談を締結することで科される刑罰が軽くなる可能性があります。

今回の事例のように被害者が知人である場合は、謝罪や賠償などの示談交渉を加害者自らが行ってしまうこともあるかもしれません。
示談を断られるだけで済めばいいのですが、最悪の場合、証拠隠滅を疑われたり、証人威迫罪などの別の罪が成立する可能性があります。
そういった可能性をなくすためにも、示談交渉を行う際には弁護士を付けることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件に詳しい法律事務所です。
初回接見サービス、初回無料法律相談を行っていますので、刑事事件でお困りの際は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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