マルチ商法と特商法の「連鎖販売取引」
マルチ商法と特商法の「連鎖販売取引」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市左京区在住のAさんは、マッチングアプリで知り合った女性Vさんをデートに誘い、左京区内に出かけることとなりました。
しかし、AさんはVさんとデートをするつもりではなく、Aさんが販売会員となっている販売会社Xの会員に登録するよう勧誘するつもりでした。
Aさんは、Vさんを京都市左京区内の建物に案内すると、Aさんと同じ販売会員であるBさんと一緒に、販売会員に登録するよう勧誘しました。
Vさんは帰宅すると、京都府下鴨警察署に「デートと騙されてマルチ商法の勧誘をされた」と相談。
捜査の結果、Aさんは違法勧誘による特商法違反の容疑で京都府下鴨警察署に逮捕されてしまいました。
(※令和3年11月11日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・マルチ商法とは
いわゆるマルチ商法とは、すでに販売会員になっている人が会員になるように他の人を勧誘し、さらにそこで会員になった人がまた他の人を勧誘して会員を増やしていくという販売形態のことを指します。
マルチ商法は、他にもMLMやネットワークビジネス、ネットワークマーケティングと呼ばれることもあります。
マルチ商法という言葉はあくまで一般で呼ばれている俗称のため、明確に法律で定義されているわけではありません。
マルチ商法と聞くといいイメージのない方も多いかもしれませんが、マルチ商法=必ず違法なものというわけではありません。
マルチ商法という言葉が使われる際には、会員が新規の会員を勧誘して増やしていく販売形態全般を指す場合もあれば、そのうち悪質・違法なもののみを指す場合もあります。
違法なマルチ商法の中には、無限連鎖講、いわゆるねずみ講と呼ばれる違法なものもあり、ねずみ講については「無限連鎖講の防止に関する法律」という法律で禁止されています。
・マルチ商法と特商法の「連鎖販売取引」
マルチ商法は、特商法(正式名称「特定商取引に関する法律」)で「連鎖販売取引」という取引として制限を受けています。
特商法第33条第1項
(略)「連鎖販売業」とは、物品(施設を利用し又は役務の提供を受ける権利を含む。以下この章及び第五章において同じ。)の販売(そのあつせんを含む。)又は有償で行う役務の提供(そのあつせんを含む。)の事業であつて、販売の目的物たる物品(以下この章及び第58条の21第1項第1号イにおいて「商品」という。)の再販売(販売の相手方が商品を買い受けて販売することをいう。以下同じ。)、受託販売(販売の委託を受けて商品を販売することをいう。以下同じ。)若しくは販売のあつせんをする者又は同種役務の提供(その役務と同一の種類の役務の提供をすることをいう。以下同じ。)若しくはその役務の提供のあつせんをする者を特定利益(その商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんをする他の者が提供する取引料その他の主務省令で定める要件に該当する利益の全部又は一部をいう。以下この章及び第58条の21第1項第4号において同じ。)を収受し得ることをもつて誘引し、その者と特定負担(その商品の購入若しくはその役務の対価の支払又は取引料の提供をいう。以下この章及び第58条の21第1項第4号において同じ。)を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんに係る取引(その取引条件の変更を含む。以下「連鎖販売取引」という。)をするものをいう。
条文が長く分かりづらいかもしれませんが、
①物品の販売や有償で行う役務の提供の事業で
②物品の再販売・受託販売・販売のあっせんや、役務の提供・あっせんをする者を
③特定利益=取引料、加盟料、紹介料などが得られるといって誘い
④特定負担=商品の購入や役務の提供の対価の支払いや取引料の提供などを伴う取引をするもの
が「連鎖販売取引」であると定義されています。
例えば、「会員になれば割安で商品を購入できるため、他の人を勧誘して商品を売れば割安で購入できた分儲かる」「新規会員を入会させれば紹介料がもらえる」といった形で勧誘を行い、取引をするために入会金や保証金、サンプルの商品代などの金銭的負担が生じるといった形態は、この特商法の「連鎖販売取引」に当たることとなります。
マルチ商法と呼ばれる販売形態は、この形態に当たるため、「連鎖販売取引」として特商法の制限を受けることとなるのです。
特商法などの特別法は、条文が長かったり多かったりすることもあり、なかなか分かりづらいことも多いです。
だからこそ、特商法違反事件などの当事者になってしまったら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
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