児童ポルノを送らせて逮捕②~強要罪~
児童ポルノを送らせて逮捕されたケースの強要罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~前回からの流れ~
会社員のAさんは、SNSの配信機能を通じて、京都市下京区に住む15歳の女子高生Vさんと知り合いました。
ある日Aさんは、Vさんに対し、「ちょっとだけでいいから服を脱いでいる写真が欲しい。お礼にSNSのポイントをあげる」などと言って、Vさんに体を露出した写真を送るように求めました。
Vさんがそれに応じて下着姿の写真を撮り、Aさんに送ったところ、今度はAさんは「次は裸の写真を送ってこい。そうでなければ下着姿の写真をSNSでばらまいてやる」などと言い、Vさんにさらなる要求を行いました。
Vさんは怖くなり、しばらく要求に従って写真を送り続けていましたが、今後要求がさらに過剰になるのではと不安になったことから両親に相談しました。
その結果、Vさんは両親とともに京都府下京警察署に被害申告を行い、捜査ののち、Aさんは児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)と強要罪の容疑で逮捕されることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)
・強要罪
前回の記事では、Aさんの逮捕容疑のうち、児童ポルノ製造による児童ポルノ禁止法違反について取り上げました。
今回の記事では、もう1つの逮捕容疑である強要罪について詳しく取り上げていきます。
強要罪は、刑法223条に規定のある犯罪です。
刑法223条(強要罪)
1項 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3項 前二項の罪の未遂は、罰する。
強要罪は、簡単に言えば、脅迫や暴行によって相手を怖がらせることで、相手がする必要のない行為を無理矢理させる犯罪です。
強要罪で用いられる脅迫は、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知」をすることによって行われ、相手に恐怖心を生じさせる目的で行われるものを指します。
例えば、「痛い目に合わせるぞ。」といった文言であれば身体に害を加える告知をしたことになりますし、「車を壊すぞ。」といった文言であれば、財産に害を加える告知となるでしょう。
今回の事例では、AさんはVさんに対し、「従わなければ下着姿の写真をSNSでばらまく」という旨を伝え、それによってVさんに裸の写真を送らせています。
下着の写真をSNSで拡散されるということは、Vさんの名誉・社会的立場を下げることにつながるでしょう。
こうしたことから、AさんがVさんに「下着の写真をSNSでばらまく」と言ったことは、「名誉…に対し害を加える旨を告知して脅迫」したと考えられます。
そして、それによってAさんはVさんに裸の写真を送らせていますが、もちろんVさんにとって裸の写真をAさんに送ることは何の義務もないことです。
これをAさんの脅迫によってさせられているわけですから、Aさんには強要罪が成立することになるでしょう。
なお、今回のケースでは、最初に下着姿の写真をVさんに送らせたときには、Aさんは脅迫も暴行もしていなかったため、強要罪は成立しないと考えられます。
強要罪は条文を見てわかる通り、罰金刑の規定がありません。
ですから、有罪が確定した場合には、執行猶予が付かなければ刑務所へ行くことになります。
それだけ重い犯罪ですから、強要罪の容疑がかかってしまった場合には、早急に弁護士に相談し、今後の対応を決めましょう。
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