食中毒から刑事事件に?①~業務上過失致死傷罪

食中毒から刑事事件に?①~業務上過失致死傷罪

Aさんは、京都市下京区でお総菜を販売する飲食店を経営しています。
ある日、Aさんの飲食店でお惣菜を購入したり、食事をしたりした人たちが軒並み体調を崩してしまったと連絡が入りました。
保健所の検査が入り、体調を崩した人たちは、Aさんの飲食店の総菜が原因の食中毒で体調を崩してしまっていたことがわかりました。
その後、Aさんは保健所から、「もしかすると行政処分だけでなく、刑事事件になって刑事処分が下される可能性がある」と聞きました。
Aさんは、そうなれば自分は京都府下京警察署に逮捕されてしまうのではないかと不安になり、まずは刑事事件に詳しい弁護士に聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・食中毒に注意

梅雨入りが遅れていた関西も、つい先日梅雨入りとなりました。
梅雨の時期から夏の時期になると話題に上りやすいことの1つとして、食中毒が挙げられます。
梅雨は雨の日が多くなる関係上、湿気が多い時期です。
梅雨が明ければ本格的な夏となりますが、そうなれば今度は温度が上昇します。
高温多湿の環境では、食品についた菌が増殖しやすく、食中毒のリスクが上がってしまいます。
食中毒は、嘔吐や下痢、それに加えて腹痛が起こるものが多く、皆さんのイメージもそういったものが多いかと思います。
しかし、それらの症状にとどまらず、発熱などの症状が出る食中毒もあり、重症化すれば食中毒といえど命の危険があるものもあります。

こうした食中毒そのものに注意することはもちろん当然ですが、この食中毒に関連して刑事事件となる可能性もあることにも注意が必要です。

・食中毒で業務上過失致死傷罪

食中毒に関連して起こりうる刑事事件の1つに、業務上過失致死傷事件があります。
業務上過失致死傷罪は、刑法に規定されている犯罪です。

刑法211条
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

この刑法211条の前段が、業務上過失致死傷罪と呼ばれる犯罪の規定です(後段は重過失致死傷罪という犯罪です。)。

業務上過失致死傷罪の「業務」とは、「人は社会生活上の地位に基づき反復・継続して行う行為であり、かつ、他人の生命・身体に危害を加えるおそれのあるもの」というとされています(最判昭和26.6.7)。
今回のAさんのように、当事者が飲食店や飲食物を販売する業者であった場合、そうした業者であるという社会的立場に基づき、飲食物の販売・提供を繰り返しているということができます。
また、飲食物が安全でなかった場合、今回のテーマとなっている食中毒のようなことが起きてしまうことからも、「他人の生命・身体に危害を加えるおそれ」があるとも考えられます。

そして、業務上過失致死傷罪の罪名に入っている「過失」とは、簡単に言えば不注意のことを指します。
条文上では「必要な注意を怠り」と書いてあります。
つまり、「業務」を行うにあたって要求される注意義務に違反すること=すべき注意をしなかったことが業務上過失致死傷罪の「過失」という部分にかかってくるのです。
例えば、今回のAさんの場合、お惣菜を客に提供するまでに、食品や店内、使用する器具などの衛生管理を行い、お惣菜を食べた客が食中毒などにならないようにしなければならないはずです。
そうした注意を怠っていた場合、「過失」があるとされ、業務上過失致死傷罪が成立しうるということになるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした食中毒にかかわる刑事事件のご相談ももちろん受け付けております。
食中毒という言葉と刑事事件という言葉は、なかなか結び付けづらいかもしれません。
だからこそ、いざ当事者になってしまった際に、どうしたらよいのか思いつきづらいことでしょう。
弁護士刑事事件の専門家です。
お困りの際は遠慮なくご相談ください。

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