名誉毀損事件で逮捕回避
Aは京都市北区の大学に通う大学生です。
ある日友人Bとの一対一の会話の中で、「先週、物理学のP教授が違法薬物を扱っているという噂のある店を利用していた」ということを聞きました。
P教授の授業はつまらなく、成績評価も厳しいことから、Aは憂さ晴らしをしてやろうと思い、SNS上に「P教授がこの前、違法な薬物を売ってる店で薬を買ってたってBが言ってた」と軽い気持ちで書き込みました。
それから数日たった後、家に京都府北警察署から警察官が来て、任意同行を求められました。
軽い気持ちでしたネット上の書き込みですが、これはなにか犯罪に当たるのでしょうか?
さらにAは大学の後期試験を控えており、これをきちんと受けて単位を取らなければ留年してしまう可能性があります。
そうしたことからAは逮捕・勾留という形で拘束されないことを強く望んでいますが、このような場合、どうすればいいのでしょうか?
(事例はフィクションです)
~名誉毀損罪(刑法第230条)~
結論から言ってしまうと、Aの行為は刑法230条1項の名誉毀損罪に当たる可能性があります。
刑法第230条1項には「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金に処する。」とあります。
「公然と事実を摘示し」とは、多数または不特定多数の人が認識しうる状態で事実(真実である必要はない)を示すことをいい、「人の名誉を毀損した」とは、人の社会的評価を低下させる行為をすることをいいます。
「毀損した」という文言になっていますが、人の社会的評価の低下を測ることは難しいということもあり、実際に結果的に社会的評価の低下をもたらしたかどうかは犯罪の成立に影響せず、あくまで「『人の社会的評価を下げる危険がある』と評価される事実の摘示」があるかどうかが問題となります。
摘示の方法は限定がなく、確かな情報であると受け合った場合はもちろん、噂として広めたというような場合も変わりなく名誉毀損罪が成立しうるということになります。
~インターネット上での名誉毀損~
Aは誰にでも閲覧可能なSNSサイトで事実を摘示したわけですから、Aの行為は公然となされたといえます。
また、違法薬物販売店で薬物を購入したという点について、これは犯罪に当たる蓋然性が高いことから、社会的評価を低下させる事実と評価できるでしょう。
また、AはあくまでBが言ったことの受け売りとして発言していますが、「Bがこのように言っていた」というAの発言が公然となされたことがP教授の社会的評価を下げる危険性があるわけですから、いわば「あいつが言っていたのを書いただけ」という弁解は、名誉毀損罪の成立を妨げません。
~逮捕されたくない…どうすれば?~
Aは現在大学の後期試験を目前に控えており、今期できちんと試験に合格し、単位をとらなければ留年してしまいます。
どうにかして逮捕を免れる方法はないものでしょうか?
逮捕(逮捕状による逮捕;刑事訴訟法199条)は「逮捕状」を必要とします(逮捕状による逮捕;刑事訴訟法199条)(例外として、現行犯逮捕・緊急逮捕)。
「逮捕状」は裁判官が発行するものであり、「犯罪がある」と警察官や検察官が考えただけでは発行されません。
逮捕状は
①被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合(刑事訴訟法199条1項)
に発行することができますが、
②明らかに逮捕の必要性がないと認める場合
具体的には、
被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他初犯の事情に照らし
②―1:被疑者が逃亡する虞(おそれ)がなく、
かつ
②―2:罪証を隠滅する虞がない
等の事情により明らかに逮捕の必要性がない場合には、裁判官は令状の請求を却下しなければなりません(刑事訴訟法規則143条の3)。
したがって、②-1と②-2の事情があることを証明できれば、逮捕は免れることもできるでしょう。
例えば、警察に呼び出されているがその後逮捕が不安だという場合には、こうしたことを主張し、逮捕の必要性がないことを訴えることで逮捕のリスクを減らしていくことが考えられます。
しかし、法律上のツボを押さえて上記を主張することは、刑事弁護に熟達した弁護士の援助がなくては難しいでしょう。
逮捕が不安な方、現在刑事事件に巻き込まれており、今後の逮捕を避けたいとお考えの方、そのご家族・ご友人の方は、ぜひ弊所、刑事弁護に強い「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」の弁護士にご相談ください。
「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」の弁護士は、手厚い弁護活動によりあなたのかけがいのない日常をお護りします。
初回法律相談:無料
京都府北警察署までの初回接見費用:37,300円