不倫発覚から刑事事件~恐喝罪②
~前回からの流れ~
京都府向日市に住んでいるAさんは、ある日、夫のBさんと知人であるVさんが不倫していることを知りました。
Aさんは怒り心頭となって、Vさんを自宅に呼び出すと、「今回のことを許してほしいと思うなら払えるだけ慰謝料を支払え。そうでなければVさんの職場にでも近所にでも不倫のことをばらまいてそれ相応の代償を払ってもらうから」と言い放ちました。
Vさんが「今は手持ちのお金がない」と言ったところ、Aさんは「では車でATMまで連れて行くからそこでお金をおろして支払え」と言い、Vさんを車に乗せると近くのATMまで連れていき、そこでVさんに預金を引き出させ、慰謝料として300万円を支払わせました。
Aさんの夫であるBさんは、一連の出来事の最中ずっとAさんのそばにいましたが、Aさんの剣幕を見て、特に止めることもせずに黙ってみていました。
その後、Vさんが京都府向日町警察署に相談したことから、Aさんは恐喝罪と監禁罪の容疑で逮捕されてしまいました。
そして、Bさんも恐喝罪と監禁罪のほう助の容疑で話を聞かれることになりました。
(※この事例はフィクションです。)
・不倫相手への慰謝料請求で恐喝罪?
前回の記事では、恐喝罪という犯罪について詳しく検討しました。
今回の記事では、Aさんが恐喝罪にあたるのかどうかについて考えていきます。
さて、今回のAさんですが、夫Bさんの不倫相手であるVさんに対し、慰謝料を請求しています。
ここで、「不倫相手に対して慰謝料を請求することは正当なことなのではないのか」とも思えます。
確かに、実際に不倫の事実があった場合には、不倫相手に対して慰謝料を請求できる場合があります。
しかし、問題はその請求等のやり方です。
過去の事案では、借金の取り立てについて恐喝罪の成否が争われたものがあります。
貸したお金を返してもらうことや、その催促をすることは正当な行為であるといえるでしょう。
しかし、その事案では、たとえ権利行使の手段として行った恐喝行為であったとしても、その権利の範囲内を超えた行為であったり、その権利行使の方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められるべき程度を超えているような場合には、恐喝罪が成立するとされました(最判昭和30.10.14)。
つまり、不倫の慰謝料を請求するという正当な権利があったとしても、その方法次第では恐喝罪になってしまうおそれがあるのです。
今回のAさんの言動を具体的に見てみましょう。
Aさんは、「不倫を許されたければ慰謝料を払え。さもなくば職場や近所に不倫の事実を広める」という旨をVさんに伝えています。
職場や近所に不倫の事実を広められるということは、Vさんにとって自身の社会的評価を下げる可能性のあること=害を加えられることであるといえます。
ですから、Aさんは害悪の告知=脅迫という手段を用いてVさんに慰謝料=財物を要求していることになり、恐喝行為をしていることになります。
そしてAさんは、その脅し文句に基づき、Vさんから慰謝料として300万円を受け取っています。
不倫の事実を広めることを脅し文句に慰謝料を請求することは、社会通念上一般に認容すべきものとは言い難いでしょうから、Aさんには恐喝罪が成立する可能性が高いと考えられるのです。
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