収賄罪と贈賄罪
京都市中京区の一般企業で働いているAさんは取引先の一般企業に属するXに賄賂の話を持ち掛けられました。
これを断ったものの,以前Xから別件で業務上金品を受け取って便宜を図ったことがあり,京都府中京警察署に贈収賄罪を疑われるのではないかと不安になっていたAは弁護士に相談することにしました。
(このストーリーはフィクションです)
収賄罪とは
収賄罪とはあくまで大きなくくりであり,いくつかの類型に場合分けされています。
その中でも最も基礎的なものが単純収賄罪です。
単純収賄罪にあたるのは,公務員が、その職務に関し,賄賂を自分のものにするつもりで収受すること,「賄賂をよこせ」などと要求すること,相手方と話し合って賄賂をもらう約束することです(刑法197条1項前段)。
単純収賄罪の法定刑は5年以下の懲役です。
さらには,公務員が一定の職務活動を行うことを依頼されて賄賂を収受した場合には単純収賄罪ではなく受託収賄罪(刑法197条1項後段)に該当し,刑が7年以下の懲役と,さらに重くなってしまいます。
こうした刑罰規定は公務員の職務の公正とそれに対する信頼が、金品などの利益により歪められないために設けられています。
一般企業間で利益により取引が歪められたとしても,そのこと自体が収賄罪にあたるわけではありません。
上記の事案については,Aは公務員ではないので,単純収賄罪は成立しません。
ただし,通常であれば自分の勤める企業に損失が出るため行わないような取引を,便宜を図って行い,そのために企業に損害が発生した場合,背任罪(刑法247条)等別の犯罪が成立する可能性があります。
この場合金品を受け取ったことは「第三者の利益を図」ったことの重要な証拠となるでしょう。
贈賄罪とは
収賄罪とセットで処罰されるのが贈賄罪です。
収賄罪は賄賂を受ける側の罪であるのに対し,贈賄罪は賄賂を渡す側の罪になります。
賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処されます(刑法198条)。
ここで言われている供与とは,相手方に金品を受け取らせる必要があります。
したがって,上記の事案のXが仮に公務員であって、上記事案の様に相手方に賄賂を拒否された場合は供与には該当せず,その次の申し込みに該当します。
収賄罪における収受と贈賄罪における供与,そしてそれぞれにおける約束は両方あって成立します。
片方が欠けている場合には要求もしくは申込みの有無が問題となります。
そのため,上記の事案ではたとえAが公務員であったとしても,贈賄の収受を拒否している以上罪に問われることは考えにくく,Xのみが罪に問われるでしょう。
上記事案ではXは公務員ではないため,贈賄罪は成立しえません。
もっとも,Aが背任罪等別の犯罪に当たる場合,金品を送るなどして背任行為を持ち掛けたといえるXはその共犯となり得ます。
犯罪が成立しているかどうか分からない場合も多くはありません。
一見大丈夫と思っていても,他の犯罪に該当する可能性があります。
客観的に見て罪を犯してしまったのにも拘らず,自分は罪を犯した意識がないために調査を受け,あるいは容疑を否認していると,事件の被害者や警察などに悪印象を与えかねません。
そのため,不安であれば数多くの刑事事件をこなしてきた弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談することをお勧めします。
(お問い合わせ:0120-631-881)