盗撮から児童ポルノ製造事件に発展したケースで、特に盗撮行為について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
◇事件◇
京都府向日市に住んでいるAさんは、盗撮に興味を持っていました。
ある日、Aさんはどうしても我慢ができなくなり、京都府向日市にある駅構内のトイレに盗撮用のカメラを仕掛けると、女性客がトイレを利用する様子を盗撮していました。
しかし、盗撮用カメラに気づいた利用客から通報され、捜査の結果、Aさんは盗撮事件の被疑者として京都府向日町警察署で話を聞かれることになりました。
その際、Aさんは、京都府迷惑防止条例違反と建造物侵入罪、児童ポルノ禁止法違反という3つの犯罪の容疑をかけられていることを知りました。
Aさんは、自分の盗撮行為に3つも犯罪が成立することに驚き、今後の対応を弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・盗撮と成立する犯罪
今回のAさんが行ったような駅構内での盗撮行為は、多くの場合、各都道府県の定める迷惑防止条例違反となることが多いです。
京都府でも、「京都府迷惑行為防止条例」という迷惑防止条例が定められており、その中で公共の場所や公共の乗り物で盗撮する行為を禁止しています。
盗撮によって京都府迷惑防止条例違反となった場合、通常は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(京都府迷惑防止条例10条2項)、常習であれば「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(京都府迷惑防止条例10条4項)という刑罰が科せられます。
なお、京都府迷惑防止条例では、改正によって公共の場所や乗り物以外にも、ホテルの客室や教室、会社の更衣室などで行われた盗撮についても規制されることになっています。
迷惑防止条例によって規制される盗撮行為の場所や態様は、都道府県によって異なります。
盗撮事件の起きた場所によって迷惑防止条例違反となるのか、それとも軽犯罪法違反や後述の建造物侵入罪になるのかが違ってくることになりますから、盗撮事件にも対応している弁護士に相談し、自分がかけられている、もしくはかけられる可能性のある犯罪はどういったものなのか理解しておくことが大切です。
さらに、Aさんのように盗撮目的でトイレなどに立ち入った場合には、刑法の建造物侵入罪が成立する可能性もあります。
建造物侵入罪は、建造物の管理者の意思に反する立ち入りをすることによって成立すると考えられていますが、盗撮目的でのトイレの立ち入りを許可する管理者はいないだろうと考えられるからです。
建造物侵入罪となった場合、「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」という刑罰に処せられます(刑法130条)。
ちなみに、盗撮事件で都道府県の定める迷惑防止条例違反にも建造物侵入罪にも当たらないようなケースでは、軽犯罪法違反となる場合もあります。
軽犯罪法違反となった場合の法定刑は、「拘留又は科料」です。
盗撮事件では、上記で紹介したような迷惑防止条例違反や建造物侵入罪、軽犯罪法違反といった犯罪がそれぞれ単独で容疑がかかったり、今回のAさんのように盗撮行為をした態様によってはこのうち2つの犯罪の容疑がかかったりします。
しかし、今回のAさんは、今回取り上げた京都府迷惑防止条例違反と建造物侵入罪だけでなく、児童ポルノ禁止法違反という犯罪の容疑もかけられているようです。
これはなぜなのでしょうか。
次回の記事で詳しく触れていきます。