匿名掲示板上で同僚の名誉を毀損した疑いで逮捕された事例
匿名掲示板上で同僚の名誉を毀損した疑いで逮捕された事例について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事件概要
京都府下京警察署は、京都市内の不動産会社に勤務する女性A(36)を逮捕した。
Aは、同じ会社の経理課で働くCさんと折が合わずにいたところ、Cが別部署の既婚男性と不倫関係にあることを知り、匿名掲示板上で、「Cは会社で既婚男性と不倫している。ろくに仕事もせずに何のために会社に来てるんだろう」などと投稿した疑い。
投稿から数日後、Cがこの書き込みに気づき会社と京都府下京警察署に相談した。
警察の捜査の結果、AのPCからの書き込みということが判明し、Aは逮捕された。
(フィクションです)
名誉毀損罪
刑法230条1項
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
本件で、Aは、会社の同僚であるCさんが不倫していると匿名掲示板に書き込んだようです。
このAの行為は名誉毀損罪にあたるのでしょうか?
まず、「公然と」というのは、摘示された事実を不特定または多数人が認識できる状態をいいます(最判昭和36年10月13日)。
不特定とは、相手方が限定されていないという意味です。
多数人とは、社会一般に知れわたる程度の人数という意味であり相当の多数であることを必要とします。
本件で、Aは、匿名掲示板でCさんが不倫しているという内容の書き込みをしています。
匿名掲示板への書き込みは、誰でもみることができます。
したがって、Aの書き込みは、不特定の人が認識できる状態にあったと言えそうですから、「公然と」人の名誉を毀損したと言えそうです。
次に、「事実を摘示」したといえるかも問題となります。
ここでの事実とは、事実証明の対象となりうる程度に具体的であり、かつ、それ自体として人の社会的評価を低下させるような事実をいいます。
Aさんは、「Cは会社で不倫している」という書き込みをしていますが、不倫しているかどうかは、真実かどうか照明の対象となりうる程度に具体的です。
会社で不倫していると言われると、その人は、非常識な人だと思われて社会的評価が低下する可能性があります。
以上より、Aは、公然と事実を摘示してCさんの名誉を棄損したとして、名誉棄損罪が成立する可能性があります。
なお、条文の規定上、名誉棄損罪の成立には、現実にAの発言によりCの名誉が棄損されたことが必要であるかのように思えます。
しかし、被害者の名誉が現実に棄損されたかどうかの判断は非常に困難ですから、判例によれば被害者の名誉が現実に侵害される必要はありません(大判昭和13年2月28日)。
できるだけ早く弁護士に相談を
名誉毀損罪は親告罪ですから、Cさんが告訴しないければAさんは起訴されません(刑法232条)。
起訴されなければ、前科がつくこともありませんから、告訴されないことが重要となります。
そのためには、被害者に対して真摯に謝罪をして告訴をしないという内容の示談をまとめる必要があります。
もっとも、加害者が直接被害者と交渉することは得策ではありません。
被害者にとっては、加害者は自分の名誉を毀損するような行為をした人物ですから、通常は強い処罰感情を有しているでしょうし、仮に交渉に応じてくれたとしても過大な要求をされる可能性もあります。
そこで、被害者との話し合いは、示談交渉のプロである弁護士に一任されることをおすすめします。
加害者と連絡を取ることに強い抵抗を感じる被害者であっても、弁護士相手であれば交渉に応じてくれることは少なくありません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、名誉毀損事件を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士示談交渉を行うことで、告訴されることを防げる可能性があります。
可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。