滋賀県守山市で建造物等損壊・器物損壊事件①
Aさんは、滋賀県守山市に住んでいます。
Aさんは、隣の家に住むVさんとの折り合いが悪く、日頃から小さなトラブルを頻繁に起こしていました。
ある日、Aさんは…
①Vさん宅に招かれた際、Vさん宅の部屋を仕切っているふすまを蹴り壊しました。
②Vさん宅の外壁を斧で殴りつける等して壊しました。
③Vさん宅の玄関の扉を金属バットでたたく等して壊しました。
Aさんは、通報を受けて捜査を開始した滋賀県守山警察署に逮捕されたのですが、まさか自分の家族が刑事事件の被疑者として逮捕されるとは思ってもいなかったAさんの家族は戸惑い、まずは詳しい話を聞きたいと、京都府・滋賀県の刑事事件を取り扱っている弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
Aさんは、隣の家に住むVさんの家に関連する物を壊したことによって逮捕されています。
今回の事例で成立が考えられる犯罪は、建造物を壊した時に成立する「建造物等損壊罪」と、物を壊した時に成立する「器物損壊罪」でしょう。
まずはこの2つの犯罪がどういった犯罪であるのか確認してみましょう。
・建造物等損壊
建造物等損壊罪は、刑法260条に規定されている犯罪です。
刑法260条(建造物等損壊及び同致死傷)
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。
よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
建造物等損壊罪は、「建造物」か「艦船」を「損壊」した場合に成立する犯罪です。
この建造物等損壊罪の対象となる「建造物」とは、家屋やそれに類似する建築物を指すとされており、「建造物」と認められるには、屋外を有し障壁又は柱材で支えられて土地に定着し、その内部に人が出入りできるようになっていることが求められるとされています。
つまり、外塀や門については建造物等損壊罪の「建造物」とは認められないことになります。
そして、「損壊」とは、単純に物理的にその「建造物」を壊すということだけではなく、その効用を滅却・減損させることをいうとされています。
ですから、何かの建物を破壊した時はもちろん、その「建造物」の用途をなくさせたり、価値を下げてしまうようなことをしてしまったりすれば、建造物等損壊罪の「損壊」をしたということになります。
例えば、建物の外壁に大々的にペンキで落書きをしたような場合には、その建物の外観や美観を著しく損ねることになり、さらに原状回復に相当な困難を生じさせることから、その建物(「建造物」)の効用を減損させたとして建造物等損壊罪が成立する場合があります。
・器物損壊罪
器物損壊罪は、刑法261条に規定されている犯罪です。
刑法261条(器物損壊罪)
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
器物損壊罪の条文の「前3条」とは、先ほど触れた建造物等損壊罪と、公文書等毀棄罪、私文書等毀棄罪のことを指します。
つまり、この3つの犯罪の客体に当てはまらない「他人の物」を「損壊」又は「傷害」することで器物損壊罪が成立する、ということになります。
なお、この「他人の物」には、動産・不動産のほか、動物も含まれますから、他人のペットを傷つけたような場合にも器物損壊罪となります。
器物損壊罪のいう「損壊」は、先ほどの建造物等損壊罪でも類似の説明を行いましたが、物理的にその物を壊してしまうことのほか、物本来の効用を失わせることも含みます。
例えば、他人の食器に対して放尿した場合に器物損壊罪を認めた事例が見られます(大判明42.4.16)。
これは、食器に放尿するという行為によって、食器本来の効用である飲食に使用するということができなくなってしまう(洗ったとしても放尿された食器を使用して飲食するということは難しいと考えられる)ため、物の効用を失わせたと判断されたのです。
そして、器物損壊罪を考える上で重要な点の1つとして、器物損壊罪が親告罪であることが挙げられます。
刑法264条
第259条、第261条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
(※注:刑法261条が器物損壊罪)
親告罪とは、告訴がなければ起訴できない犯罪のことで、告訴とは、被害者等の告訴権者が、捜査機関等に対して犯罪被害の申告に加えて、犯人への処罰を希望する申告を言います。
ですから、器物損壊罪については、告訴がなされる前に示談を締結して告訴を出さないようにしてもらうか、告訴が出されてから起訴されるまでの間に示談を締結して告訴を取り下げてもらうかすることによって、起訴されることなく、前科がつくことを回避することができます。
一見違いが分かりやすいように見える2つの犯罪ですが、実はAさんのような事例の場合、どのような判断がなされるかは専門知識が必要となってきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件について、自分が犯してしまった犯罪が何なのか、またどういった時に成立するどういった犯罪なのか、ということから、その犯罪での弁護活動はどういったものが考えられるのか、見通しはどういったものなのか、というところまで、刑事事件専門の弁護士が丁寧にお答えいたします。
京都府・滋賀県の刑事事件にお悩みの際は、まずは一度、弊所弁護士までご相談ください。
次回の記事では、Aさんの①~③についてそれぞれ何罪が成立するのかを検討していきます。
(滋賀県守山警察署までの初回接見費用:4万1,200円)