精神鑑定を実施した精神科医が人の秘密を漏らした事件

精神鑑定を実施した精神科医が人の秘密を漏らした事件

手錠とガベル

精神鑑定を実施した精神科医が人の秘密を漏らした事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事案

京都府上京警察署によると、少年事件について家庭裁判所から鑑定依頼を受けた京都市内の病院に勤務する精神科医Aが、その少年事件について取材を進めている新聞記者に対して、鑑定資料として貸出しを受けていた捜査記録などを見せた疑いがもたれている。。
それを知った少年の父が被害届を京都府上京警察署に提出したところ、Aは、秘密漏示罪の容疑で上京警察署から出頭要請を受けた。
(フィクションです)

秘密漏示罪とは

刑法134条1項 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

秘密漏示罪は、医師のように職業の性質上人の秘密に接する機会が多い一定の職業に従事する者が、その業務をする上で知った人の秘密を漏らす行為を罰しています。

本件で、問題を起こし京都府上京警察署から出頭要請を受けたのは精神科医ですから刑法134条1項の「医師」にあたるといえそうです。
もっとも、Aは、医師として患者を治療する立場にあったわけではなく、裁判所から鑑定を命じられて鑑定をしたにすぎないようです。
したがって、Aの行った鑑定は、「医師の業務」ではなく「鑑定人の業務」であるとして、Aは秘密漏示罪の主体とならないと考える余地はないのでしょうか。

この点、最高裁は、医師が、医師としての知識、経験に基づく、診断を含む医学的判断を内容とする鑑定を命じられた場合には、その鑑定の実施は、医師がその業務として行うものといえるとしています(最高裁決定平成24年2月13日)。
Aは、精神科医としての知識、経験に基づいて少年の精神状態について医学的判断を内容とする鑑定を命じられたようなので、判例に従えばAの鑑定は、医師がその業務として行うものにあたり、秘密漏示罪の主体になる可能性があります。

次に、秘密漏示罪における秘密とは、一般に知られていない非公知の事実をいいます。
本件でAが新聞記者に見せた捜査資料には、少年が起こした事件に関する一般に知られていない非公知の事実が含まれていると考えられますから、秘密漏示罪の秘密に該当する可能性があります。

また、秘密漏示罪の「(秘密を)漏らす」とは、秘密を知らないものに告知することをいいます。
本件でAは、事件について調べている新聞記者に捜査資料を見せています。
新聞記者は少年の起こした事件の現場に居合わせたわけではないでしょうから、Aが事件の詳細を知らない新聞記者に捜査資料を見せた行為は、秘密漏示罪の「(秘密を)漏らす」行為に該当しそうです。
以上より本件では、秘密漏示罪が成立する可能性があります。

できるだけ早く弁護士に相談を

秘密漏示罪は、親告罪すなわち被害者などの告訴権者による告訴がなければ公訴を提起できない犯罪です(刑法135条)。
公訴の提起がされなければ、不起訴処分となり前科がつくこともありませんから、被害者の告訴を阻止できるかが重要となります。
仮に被害者が告訴をした場合でも、起訴前に告訴を取り消してもらえれば、やはり公訴を提起されません。

告訴を阻止するためには被害者と示談をすることが重要になります。
しかし、被害者は、加害者に対して処罰感情を抱いている可能性が高いため、加害者が自ら示談交渉をして、告訴の取下げを含めた示談を成立させるのは困難です。
そこで、示談交渉のプロである弁護士に示談交渉をお任せすることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、告訴を取り下げてもらい不起訴処分を得ることができる可能性があります。
告訴は、起訴されてしまった後では、取り下げることはできません。
可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
詳しくは0120ー631ー881までお電話ください。

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