【事例紹介】特殊詐欺事件 成立するのは何罪?①~詐欺罪~

京都府宇治市で起きた特殊詐欺事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警宇治署は13日、京都府宇治市の女性(81)がキャッシュカード2枚をだまし取られ、現金計223万円6千円を引き出されたと発表した。特殊詐欺事件として捜査している。
同署によると、(中略)女性宅に警察官を名乗る女から「名前がリストに載って(個人情報が外部に)漏れている」などと電話があった。通話中の約40分後に男が訪れ、キャッシュカード2枚が入った封筒を別の封筒にすり替えて持ち去った。
(中略)複数回にわたり同市内など京都府内のATMで現金が引き出されたという。

(9月13日 京都新聞 「【速報】キャッシュカード入り封筒をすり替え 81歳女性、ATMから現金引き出される」より引用)

特殊詐欺事件と成立する罪

今回の事例では、警察官を名乗る女性から電話があり、キャッシュカード2枚が入った封筒を別の封筒ですり替えられ、持ち去られたと報道されています。
今回の事例では、何罪が成立するのでしょうか。

詐欺罪

報道によると、今回の事例は特殊詐欺事件として捜査されているそうです。
特殊詐欺事件ということは、今回の事例では詐欺罪が成立するのでしょうか。

詐欺罪について考えていきましょう。

詐欺罪は刑法第246条1項で、「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」と規定されています。

詐欺罪は簡単に説明すると、人にうそをついて信じこませ、財物などを渡させると成立します。
また、うそをつけば何でもいいかと言うとそうでもなく、財物を渡すことを判断するうえで、重要な要素になる事柄でなくてはなりません。

詐欺罪が成立するためには、
①財物を渡す判断をするうえで重大なうそをつく
②相手がうそを信じる
③相手から財物を受け取る

以上の3つが必要になります。

では、今回の事例にあてはめて詐欺罪が成立するのかを考えていきましょう。

今回の事例では、警察官を名乗る女性が「名前がリストに載って(個人情報が外部に)漏れている」と電話しています。
おそらく電話をかけた女性は警察官ではないでしょうし、電話の内容も事実ではないでしょう。
警察官の身分を使われてしまうと話している内容なども信じてしまいますし、指示通りに動いてしまうことも多いでしょうから、警察官の身分を騙りうその内容の電話をすることは、財物を渡す判断をするうえで重大なうそにあたると考えられます。
ですので、上記の詐欺罪が成立するための要件の①は満たしていると考えられます。

報道によれば、電話の後に男が訪れてキャッシュカードが入った封筒を別の封筒と入れ替え持ち去ったと報道されています。
被害女性がキャッシュカードを封筒に入れて訪れた男性の応答をしていることから、被害者はうそを信じたのでしょう。
詐欺罪の成立要件②は満たしていると思われます。

では③の財物を受け取るはどうでしょうか。
今回の事例では、キャッシュカードが入った封筒を別の封筒と入れ替えています。
結果として、犯人はキャッシュカードを手に入れていますが、すり替えることで手に入れたのであって、被害者から受け取ったわけではありません。
ですので、③は満たしませんので、詐欺罪は成立しないと考えられます。

詐欺罪が成立しないとなると今回の事例では何罪が成立するのでしょうか。
次回のコラムでは、今回の事例で成立する可能性のある犯罪について解説します。

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