コカインと覚せい剤を間違えて所持したら?②

コカインと覚せい剤を間違えて所持したら?②

~前回からの流れ~
滋賀県東近江市に住んでいるAさんは、コカインを使ってみたいと思い、インターネットでコカインを販売しているというBさんに連絡を取り、お金を渡して薬物を譲り受けました。
ある日、滋賀県東近江警察署の警察官が令状をもってAさん宅に家宅捜索に訪れ、Aさんの持っていた薬物を発見しました。
そこで、AさんはBさんから譲り受けた薬物をコカインだと思い込んで所持していたのですが、警察の捜査でその薬物が覚せい剤であったことが発覚しました。
Aさんは違法薬物を所持していたとして逮捕されてしまったのですが、Aさんは、「自分はあくまでコカインを所持している認識しかなかった。だが実際に持っていたのは覚せい剤だった。自分はいったいどういった犯罪で裁かれるのだろう」と不安に思い、家族の依頼で接見に訪れた京都府滋賀県刑事事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(※最決昭和61.6.9を基にしたフィクションです。)

・Aさんに成立する犯罪は?

前回触れた通り、日本では、コカインの所持は麻薬取締法で、覚せい剤の所持は覚せい剤取締法で規制されています。

麻薬取締法66条(コカインの所持等の規制)
ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者(第69条第4号若しくは第5号又は第70条第5号に該当する者を除く。)は、7年以下の懲役に処する。

覚せい剤取締法41条の2(覚せい剤の所持等の規制)
覚せい剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。

前提として、犯罪が成立するには「故意」が必要とされます。
故意とは、簡単に言えば、その犯罪をする・しているという認識や意思のことを指します。
例えば、窃盗罪が成立するには、「窃盗行為をする・している」「これは窃盗行為かもしれないが構わない」といったような認識・意思がなければいけないということになります(ですから、間違って商品を持って帰ってしまっただけで盗むつもりはなかったというようなケースでは、窃盗罪の故意がないということになり、窃盗罪は成立しないことになります。)。

ここで今回のAさんのケースを見てみましょう。
Aさんは、コカインを所持しているつもりでしたが、実際に所持していた薬物の正体は覚せい剤でした。
つまり、Aさん自身の認識としては、麻薬取締法違反を犯す故意しかなかったのに、覚せい剤取締法違反に当たる事実を実現してしまったということになります。
こうした場合、Aさんには犯罪が成立するのでしょうか。
犯罪が成立するか否かではもちろんのこと、覚せい剤取締法違反になるか麻薬取締法違反になるかでも、その法定刑に違いが出てきますから、犯罪が成立するのか、どの犯罪が成立するのかといったことは非常に重要なことです。

Aさんのケースの基となった判例(最決昭和61.6.9)では、以下のように判示されています。

(略)両罪は、その目的物が麻薬か覚せい剤かの差異があり、後者につき前者に比し重い刑が定められているだけで、その余の犯罪構成要件要素は同一であるところ、麻薬と覚せい剤との類似性にかんがみると、この場合、両罪の構成要件は、軽い前者の罪の限度において、実質的に重なり合つているものと解するのが相当である。
被告人には、所持にかかる薬物が覚せい剤であるという重い罪となるべき事実の認識がないから、覚せい剤所持罪の故意を欠くものとして同罪の成立は認められないが、両罪の構成要件が実質的に重なり合う限度で軽い麻薬所持罪の故意が成立し同罪が成立するものと解すべきである

つまり、客観的に見てAさんが犯した犯罪は覚せい剤取締法違反であるのに、Aさん自身が認識していた犯罪は麻薬取締法違反であるというずれはあるものの、覚せい剤取締法違反と麻薬取締法違反は、その対象となる薬物が異なるだけで実質的には似通い重なり合う犯罪であるため、法定刑の軽い麻薬取締法違反の範囲で犯罪が成立するということです。

こうした形で、違法薬物所持事件では、どういった犯罪がどのような理論で成立するのか、しないのかが問題になることもあります。
見通しを立てたり判断を行ったりするには、専門的知識や経験が必要となりますし、自分たちの主張があるのであれば、法律に基づいた主張を行わなければいけません。
だからこそ、コカイン所持事件覚せい剤所持事件にお困りの際は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士にご相談下さい。
弊所の弁護士刑事事件専門弁護士ですから、安心してご相談いただけます。
次回は、Aさんに対して取りうる弁護活動について触れていきます。
滋賀県東近江警察署までの初回接見費用:4万2,500円)

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