覚せい剤使用事件で違法捜査を主張④

2019-12-02

覚せい剤使用事件で違法捜査を主張④

覚せい剤使用事件違法捜査を主張するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~前回からの流れ~

Aさんは、京都府福知山市に住んでいます。
ある日、Aさんは京都府福知山市内の路上で京都府福知山警察署の警察官に職務質問され、帰路につきながらそれにこたえていると警察官が複数人そのまま自宅まで訪ねてきました。
Aさんが玄関を閉めようとすると、警察官がそれを手で押さえ、Aさん宅内に無断で立ち入り、Aさんに「腕を見せてください」などと言ってAさん宅内でAさんの腕の写真を撮影しました。
この際、Aさんには令状等が見せられることはなく、何の容疑で捜査されたかも伝えられませんでした。
さらにAさんは警察署同行するように求められ、そこで尿を提出するよう言われましたが、これを拒んだところ、先ほど自宅に立ち入って撮影された写真を基に取得した令状を基に、強制採尿されることになってしまいました。
その後、Aさんは覚せい剤を使用したという覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕されてしまったのですが、違法捜査を受けたのではないかと不満に思っています。
そこでAさんは、家族の依頼によって接見にやってきた弁護士に、自分が違法捜査を受けたのではないかと相談してみることにしました。
(※令和元年10月29日毎日新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・任意捜査と強制捜査

これまでで、強制捜査の際には令状が必要であるということ、令状なしの強制捜査は違法捜査となり、その違法捜査によって得られた証拠は違法収集証拠排除法則によって証拠として使えなくなる可能性があるということがおわかりいただけたと思います。
では、そもそも任意捜査と強制捜査はどういった区別がされているのでしょうか。

第1回目の記事で取り上げた通り、任意捜査は被疑者・被告人の任意によって行われる捜査であり、強制捜査は強制的に行うことのできる捜査です。
捜査は任意捜査によって行われるべきであり、強制捜査は特別必要のある時にだけ行われるべきであるという任意捜査の原則という原則があり、さらに強制捜査は令状主義のほかにも、法律に決められている場合にのみ強制捜査が許されるという原則(強制処分法定主義)があるため、強制捜査以外の捜査が任意捜査とされています。

では、強制捜査がどういった捜査であるとされているかというと、「個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段」であるとされています(最決昭和51.3.16)。
ですから、この手段にあたる処分で捜査をした場合、強制捜査であるということになり、それが行われるには令状が必要であるということになるのです。

・Aさんの場合~部屋への立ち入り

まずは今回のAさんの事例の、警察官の部屋の立ち入りについて考えてみましょう。

今回のきっかけとなった職務質問自体は、警察官が何か犯罪をしている若しくはしようとしていると疑う合理的な理由があればすることのできる行為です。
そして、この職務質問はあくまで任意捜査、つまりはAさんの同意に基づいて行われるものですから、警察官がAさんについて何か犯罪をしている若しくはしそうと疑う合理的な理由があり、かつAさんが同意して警察官へ対応していたのであれば、問題にはなりません。

では、Aさん宅への立ち入りやAさんを撮影したことについて、検討してみましょう。
今回の事例の基となったケースでは、警察官らは女性である被告人が閉めようとした玄関のドアを押さえ、靴脱ぎ場までとはいえ断りもなく被告人の部屋に立ち入り、さらにドアを複数人で押さえて開いた状態にしたうえ、被告人が出ていくよう求めてもそれに応じずにとどまり続け、部屋内にいる被告人を撮影するという行為をしたようです。
これに対し、裁判所は、被告人の部屋への立ち入りやそこにとどまり続けた警察官らの行為は被告人の承諾を得て行ったものとは考えられず、被告人の意思を抑圧するものであったとしています。
そして、この行為は被告人のプライバシーや住居の平穏など個人的法益を害する強制処分(強制捜査)であるとしました。
前回の記事から触れているように、令状なしの強制処分(強制捜査)は違法捜査ですから、事例の基となったケースでは、部屋への立ち入りやそこに居座ったこと、撮影をしたことが違法捜査であるとされたのです。

今回のAさんの事例では、具体的に警察官らがどういった態様でAさんに嫌疑をかけたのか、そしてAさん宅にどれほどとどまりどのように立ち入っていたのかは詳しく書かれていませんが、事例の基となったケースのように、Aさんの意思を制圧するような形でAさんの権利を侵害する形で捜査をしていたのであれば、違法捜査であると判断されることも考えられます。

さらに、このケースの基となった事例では、被告人宅への立ち入りについて、嫌疑の具体性が乏しかったことに加え必要性・緊急性が低かった若しくはなかったとして、無令状で強制捜査をしたことは違法捜査の違法性が重大であるとし、この違法捜査によって得られた証拠=被告人の写真等は違法収集証拠であるとしました。

今回のAさんの事例でも、Aさん宅への立ち入りが違法捜査であると判断された場合、その違法性の大きさにより、Aさんの写真等が違法収集証拠排除法則により証拠として使えないと判断される可能性もあります。

こういった違法性の度合いについては、専門家の意見や考察を聞きながら判断し、適切に主張していくことが求められます。
違法捜査や違法収集証拠が絡んだ刑事事件では、刑事事件に詳しい弁護士に逐一状況を相談することが望ましいといえるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門弁護士がこういった複雑な刑事手続きについても丁寧にご説明いたします。
まずはお気軽に0120-631-881までご連絡ください。

次回の記事では、Aさんの強制採尿やそれによって得られた鑑定書について検討していきます。