覚せい剤使用事件で違法捜査を主張⑤

覚せい剤使用事件で違法捜査を主張⑤

覚せい剤使用事件違法捜査を主張するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~前回からの流れ~

Aさんは、京都府福知山市に住んでいます。
ある日、Aさんは京都府福知山市内の路上で京都府福知山警察署の警察官に職務質問され、帰路につきながらそれにこたえていると警察官が複数人そのまま自宅まで訪ねてきました。
Aさんが玄関を閉めようとすると、警察官がそれを手で押さえ、Aさん宅内に無断で立ち入り、Aさんに「腕を見せてください」などと言ってAさん宅内でAさんの腕の写真を撮影しました。
この際、Aさんには令状等が見せられることはなく、何の容疑で捜査されたかも伝えられませんでした。
さらにAさんは警察署同行するように求められ、そこで尿を提出するよう言われましたが、これを拒んだところ、先ほど自宅に立ち入って撮影された写真を基に取得した令状を基に、強制採尿されることになってしまいました。
その後、Aさんは覚せい剤を使用したという覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕されてしまったのですが、違法捜査を受けたのではないかと不満に思っています。
そこでAさんは、家族の依頼によって接見にやってきた弁護士に、自分が違法捜査を受けたのではないかと相談してみることにしました。
(※令和元年10月29日毎日新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・Aさんの場合~強制採尿

前回の記事では、Aさんの部屋への立ち入りについて、違法捜査となる可能性があることに触れました。
では、その部屋の立ち入りで得られた写真等を利用して行われた強制採尿についてはどうでしょうか。

今回のAさんは、強制採尿されてしまっています。
強制採尿は、言わずもがな強制処分にあたる捜査です。
よって、強制採尿をするには令状が必要となります。
強制採尿は、尿道にカテーテルを挿入して強制的に採尿する捜査手法であるため、令状を得たとしても人格権を侵害して許されないのではないかという論争があるほどです。
そのため、強制採尿をするにはより厳格な審査が必要になると考えられています。
判例では、強制採尿について、「…犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合に、最終週的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、その実施にあたっては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべきもの」であるとしています(最決昭和55.10.23)。
つまり、強制採尿は強制捜査の中でも特に慎重に判断すべきものであるといえるのです。

今回のAさんも、部屋への立ち入りをされた際に写真を撮られ、その写真を疎明資料として強制採尿の令状を取られ、強制採尿されてしまっているようですが、強制採尿の手続きが本当に適切であったのかが問題となります。
もしAさんの受けた部屋への立ち入りや写真撮影が違法捜査だったとすれば、違法捜査によって得られた証拠によって令状が発行されているのであれば、その令状は大きくゆがめられた判断で発行されたことになります。
ですから、こうした場合、違法捜査によって得られた証拠によって発行された令状に基づいて行われた強制採尿についても、適切な手続きで行われたとはいえず、違法捜査であるといえるのです。
そして強制採尿が違法性の大きい違法捜査であるということになった場合、強制採尿の結果である鑑定書も違法捜査によって得られた証拠ということになり、違法収集証拠排除法則によって証拠として使うことができなくなります。
このように、元々違法捜査によって得られた証拠がありそれによってほかの強制捜査も行われていた場合、連鎖的に違法捜査となってしまう可能性が出てくるのです。

刑事事件では、強制捜査により権利を侵害されることが仕方のないこともありますが、それが違法捜査ではなく適法な捜査であることが求められます。
さらに、前回までの記事でも見てきたように、違法捜査が行われたとしてもその違法捜査で集められた証拠が排除されるかどうかはケースによりけりであり、排除されるべき証拠は排除されるように主張していかなければなりません。
しかし、当事者自身やその周囲の方のみで、こうした違法捜査に当たるのかどうか、違法捜査に当たる捜査を受けたとしてどのように主張していくべきなのかといったことは分からないことの方が多いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門弁護士がそうした違法捜査に関するご相談も受け付けています。
まずはお気軽に弁護士までご相談ください(ご相談のご予約・お申込み:0120-631-881)。

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