女性を騙して車に乗せて監禁罪で逮捕された事例
泥酔した女性らを騙して車に乗せて監禁罪で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事案
京都府下京警察署は、監禁罪の疑いで男性(35)を逮捕した。
男は、京都市内で泥酔していた女性とその女性を介抱していた友人女性を見つけ、わいせつ行為をする意図を隠して「家までおくってあげる」といって車の後部座席にのせた。
男は乗車時に聞いていた女性の自宅住所ではなく山間部へ車を走らせていたところ、途中巡回中のパトカーとすれ違った。
その際、男が挙動不審だったたことに気づいた警察官が、男を停車させ男に事情を尋ねたところ、わいせつ目的で車にのせていたことを認めたため監禁罪の疑いで逮捕した。。
介抱するのに集中していたため友人女性は、男が自宅に向かっていないことに気づいていなかったとのこと。
(フィクションです)
監禁罪とは
刑法220条
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
刑法220条は逮捕罪と監禁罪を規定しています。
「不法に」とは、一般的な違法性阻却事由がないことをいいます。
具体的には、刑訴法に基づいて警察官が犯人を逮捕する場合や、被害者が逮捕・監禁されることに同意している場合には違法が阻却され、「不法に」逮捕・監禁したとはされません。
逮捕とは、羽交い絞めして動けなくした場合のように、直接的な強制作用を加えて場所的移動の自由を奪うことをいいます。
監禁とは、一定の場所から脱出できないようにして場所的移動の自由を奪うことをいいます。
本件では、男は、女性らを車の後部座席に乗せています。
走行している車から脱出することは容易ではありませんから、女性らを車に乗せて走行する行為は監禁といえそうです。
したがって、男には監禁罪が成立する可能性があります。
もっとも、本件で被害女性らは、自分の意思で男の車に乗っています。
被害者自身が、場所的移動の自由が失われることに承諾を与えているといえそうですから、「不法に」監禁したとはいえず、監禁罪は成立しないのではないでしょうか?
被害者の承諾
結論としては、判例は、被害者が本当のことを知れば場所的移動の自由の喪失に承諾しなかったであろう場合には、被害者の承諾は無効である、としています(最高裁決定33年3月19日、広島高裁昭和51年9月21日)。
本件では、たしかに被害女性は男の車に自分から乗っているものの、それは男が家まで送り届けてくれると言ったからであり、わいせつ目的という男の本心を知っていたなら乗車しなかったと考えられます。
したがって、被害女性の同意は無効であり、やはり監禁罪が成立する可能性があります。
意思能力の要否
ところで、介抱されていた女性は泥酔していたようです。
泥酔女性に関しては、場所的移動の自由が奪われていることにそもそも気づいていなかったと思われます。
この点について、監禁罪を定める220条が守りたかったもの(法益といいます)は、現実に移動しようと思ったときに移動できる自由であると考える立場(現実的自由説)があります。
この見解に立てば、被害者に意思能力が必要であり、場所的移動の自由がはく奪されていることを被害者が現実に認識することが必要となります。
この立場によれば、本件の泥酔女性については、泥酔のため意思能力がないとされれば、監禁罪は成立しない可能性があります。
これに対し、監禁罪の法益は、移動しようと思えば移動できる自由である(可能的自由説)とし、被害者に意思能力は不要であり、被害者に場所的移動の自由がはく奪されていることの現実の認識は不要であるとする立場があります。
この立場によれば、本件の泥酔女性についても、泥酔していたという事情をもって、監禁罪の成立が否定されることはなく、監禁罪が成立する可能性があります。
裁判例は、後者の可能的自由説にたっているとされるので、やはり本件では監禁罪が成立する可能性があります。
わいせつ目的誘拐罪
刑法第225条
営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
本件では監禁罪だけでなくわいせつ目的誘拐罪が成立する可能性があります。
誘拐とは、欺罔や誘惑を用いることで、生活環境から離脱させて自己または第三者の実力的支配下に移す行為をいいます。
わいせつの目的で誘拐を行った場合は、わいせつ目的誘拐罪が成立します。
本件では、男は女性らを家に送る目的ではなくわいせつ行為をする目的で車に乗せたようです。
女性らに家に送ると誤信させたわけですから、誘拐にあたると考えられます。
ですので、監禁罪だけでなくわいせつ目的誘拐罪も成立する可能性があります。
警察に逮捕されるとどうなる?
事件を起こし逮捕された場合、逮捕後72時間以内に、勾留という逮捕に引き続く10日間の身柄拘束の必要性について、検察官と裁判官から判断されます。
弁護士には、検察官と裁判官に対し、勾留に対する意見書を提出することができます。
逮捕後速やかに弁護士に弁護活動を依頼していれば、このタイミングで釈放を求めることができます。
意見書を提出する機会を逃さないためにも、早い段階で弁護士に相談することが大切です。
仮に、釈放されずに起訴された場合、身柄介抱のため次にとれる手段は、裁判所に対する保釈請求です。
保釈が認められた場合、保釈金を支払うことで身体拘束から解放されます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、監禁罪を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
早い段階で弁護士に依頼することで、早期に身柄を解放することができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談、初回接見サービスのご予約は、0120-631-881にて受け付けております。